31話 思い出す?
ゲームしてたら時間経つの早すぎるて、動画見てても早くて、小説書く時も早く感じて、仕事だけが遅く感じるという謎。
俺は樹と桜木は放っておいて、高台から荷物を置いている待機所に移動した。
なぜなら、あの2人は自分たちの世界に入っていたのでとても話しかけられたものではない。というより話しかけても聞こえないだろう。実際、聞こえてなかったし。
そんな事を考えながら、待機所に戻ると次のゲームに向けて親父が準備をしていた。
そんな親父は俺が戻ってきたことが分かると嬉しそうに聞いてくる。我が父親ながら、なかなか表情は読みづらいのだが。
「大地。久しぶりのサバゲはどうだ?」
「まあ、楽しいよ。その、親父。色々ありがとう」
そう。今回のサバゲに向けて親父が色々と用意してくれた。
楓たち女性陣の装備は親父が用意した。女性に怪我をされるのは悪いからと結構しっかりした物を買ったようだった。頭にヘルメット。顔にはフルフェイスのマスク。腕や肘の関節部にはプロテクター。上下は迷彩柄の長袖長ズボンの服。そして身体を守るベスト。3人をパッと見ると、自衛隊員のようだった。いや、いくらなんでも使いすぎだろ…。
礼を言われた親父は照れながら言う。
「いいんだよ。親としてこうして息子が友達と遊べてることが大事だからね。ただ後で一緒にお母さんに謝ろうな…。」
いいことを言った親父だったが、最後の一言で台無しだった。
そりゃ、あれだけ買ったのだ。流石にお袋にバレないわけがないのだ。お袋に謝る時はもちろん俺も一緒に謝るつもりだ。言い出したのは俺だもんな。
「うん。分かったよ」
「絶対だよ?この間も色々買って怒られたばっかりなんだ」
「いや。それなら、やっぱり考えさせてくれ」
「そ、それはないよ…」
親父は見捨てられたような顔をしているがこれは仕方ないだろう。
親父。まさかここに来る前にも散財したばっかりたったのか。そりゃ怒られるに決まっているだろう。それなのに息子を付き合わせよそうとは、なんていう親なんだ…。
と、冗談半分で俺がそんな事を考えていたら、楓と朱音が帰ってきた。
「ただいま!」
「ん。戻った」
機嫌がなおった楓といつも通りな朱音。いや、朱音は若干落ち込んでいるように見える。気のせいだろうか?
「おかえり、2人とも。なんの話をしてたんだ?」
楓に連行されるように朱音が連れて行かれて気になっていた俺は質問する。連行と言うと大袈裟だが、あの光景は連行と言う言葉があっていたのだ。
その連れて行った張本人の楓が言う。
「大地くんには…うん、関係ない話だよ?うん、関係ないよ!」
いや、今の間。何かしら関係のあるやつだよな。言葉にも詰まっちゃってるし。逆に関係ありますよってアピールしちゃってるじゃん。まあ、俺の予想だけど。
そのように言われると余計に気になるのが人間というものだ。だから俺はもう1人、知っているであろう人物に聞いてみる。
「そうなのか?朱音?」
「ん。…多分、関係ない」
俺から顔を背けながら言う朱音。
それ嘘つく人がする態度だよな、と思わなくもないが、ここまで否定されると言うことは本当に俺には関係のない話かもしれない。まあ、これ以上聞くのも悪いしな。
そう考えた俺は言う。
「そっか。まあ、ほら、次のゲームの準備をしようか」
もう時期に次のゲームが始まるので基本的な事を2人に教える。弾倉の取り方やその弾倉に弾の入れ方など基本的な事。ゲームの始まる前に教えとけって話だと思うが、俺と樹はゲームの最中に教えられると思っていたのだ。やはり経験しながらの方が分かりやすいと思っての考えだったのだが、肝心の教える立場である俺と樹が早々に退出した。予想外もいいところだ。ならば親父は、と思ったが俺たちにはあんまり干渉しないようで1人で楽しんでいた。なんて親なんだ…。
そんなわけで俺の準備時間は楓たちに色々と教える時間になったのだった。
*
さて、俺たちは準備を終えて今はフィールド内にいる。
隣には楓がいた。朱音は親父に色々教わるようで、流石の親父も断れずに教えるようだった。
樹と桜木はずっとあの高台のフィールドが見える場所でまだ2人の世界に入っていた。高台からフィールドが見えると言うことは、逆も然りでフィールドから高台も見えるわけで。俺が見ると今もいちゃついていた。そんな2人は放っておいてもいいだろうと俺は判断したのだ。
2人を見ていると楓が聞いてくる。俺が見ているから気になったのだろう。
「大地くん。2人とも放っておいてよかったの?」
「あれはな。流石に気まずくて話しかけられなかったよ」
「あはは…。確かにね。…」
フィールド内でフルフェイスのマスクをしているので表情は見えないが、苦笑いしながら言う楓。
楓から見てもとても話しかけられた雰囲気ではないようだった。そんな楓は2人を見ながら何か考え事をしているようだった。
俺がそんな楓を見ているとホイッスルがなる。ピーピーピーと3回ホイッスルが鳴った。ゲームスタートの合図だ。
楓は突然鳴ったその音にびっくりして身体を縮こまらせていた。少し面白い。そんな楓と目があった。
「大地くん?笑ってない?」
「い、いや、笑ってないぞ…?」
本当は少し笑ったけど。それを察してか楓は続ける。
「本当?」
そう言って近くに来て下から顔を覗き込むようにする楓。
今、フルフェイスのマスクのせいで少し怖いが素顔だったら俺は嬉しかったのだろう。うん。素顔だったらね。と、質問に答えないとな。
そう思った俺は
「あぁ、本当だよ」
と一言。だが、楓はあまり気にしていなかったのか。
「ふーん。それならいいけど。ま、行こ!」
「そうだな」
俺の手を引いて行こうとする楓。俺は突然の事でどうすることもできなかったが、まあ、いいか。そう思い手を引かれてついて行く。気のせいかもしれないがその時の楓は嬉しそうだったように感じる。
*
楓に前線から離れた所でなんだかんだと教えながらゲームが始まってしばらく経った時、それは起こった。
「周りを見ながら行くんだよね?」
「そうそう。撃つ時、味方だったら申し訳ないだろ?だからどの辺りに味方がいて、逆にどの辺りに敵がいるがとか。大体でいいから頭に入れとくといいと思う」
俺もベテランの経験者ってわけではないが、FFをした時の気まずさはすごかった。その時は優しい人だったからよかったのだが、それが余計に申し訳なく感じてしまった。それからは気をつけるようになったけど。
そんな事を考えていると、前にいる楓の足元に紐が見えた。毛糸ぐらいの太さの紐。その紐の先には板のようなものがあった。その板の中には弾が入っており紐が引っ張られると弾が出てくる仕組みのトラップだ。動画で見たことあるので知っていたが本当に珍しいトラップだ。
楓は俺のアドバイスをちゃんと聞いてくれているようで周りを見ていて、足元の紐には気づいていないようだった。楓があと一歩、いや半歩でも進むと作動するだろう。もう既に少し引っ張っている。
「楓!危ない!」
俺は咄嗟に楓を庇うように抱き寄せる。弾が出てくる方に俺が割り込む形になる。
「きゃっ!」
パシュ!と音がして弾が出てくる。パララ、と音がして球が背中に当たったことが分かる。しかし、弾は意外と少なかったし痛くもなかった。俺が動画で見たやつでは、受けた人は少し痛そうで弾ももっと多かったはずなのだが…。なんか大袈裟にしたようで恥ずかしい。
「ね、ねぇ…。大地くん?」
俺の胸元でこちらを見上げながら楓が聞いてくる。
「あ、悪い」
非常に気まずかった。だって勝手に大袈裟に騒いで、女の子を抱き寄せたのだから。しかも、なんてことなかったし。
「俺、ヒットだから先に戻ってるよ」
俺は気まずさからそう言って待機所に戻ろうする。
「あ、私も戻るよ…。流れてきたの当たっちゃった。ごめんね。守ってくれたのに」
「いや、大丈夫だよ。戻ろうか」
「うん」
そう言って俺たちは2人で待機所に戻ることになった。
戻る時、気まずい雰囲気の中、俺は考え事をしていた。
あの状況、何か覚えがある。俺が楓を抱き寄せた時の事だ。なんだったかな…。思い出せそうなんだけど。
俺はそんな考え事をしていたらいつの間にか家に帰っていた。
「大地。もう家だよ」
そういう親父の顔はやけにニヤニヤしているように感じた。
話進めたくて無理やりこじつけた感ありますが、大目に見てください。




