幕間 休日の勉強会4
昨日飲みに行ったので投稿できなかった。
どうも愛楽です。
今日は日曜日。時間はあったはずなのに…。
え?これってデート?
朝のショッピングモールで俺は楓と2人でいる。2人でいるのでデート。そう自覚すると途端に緊張し始める。してはいたのだが、それはそれ。この緊張感は喋るのもたどたどしくかるものだった。
「楓…?今の、この状況ってさ。アレ…だよ、な?」
俺はそう疑問を口にする。俺から、デート。その言葉を使うことはできなかった。だって恥ずかしいんだもん。
「へっ!?あ、あれって!?な、なにかな!?」
まだ顔が真っ赤だった楓は気付いたように言う。
まあ、アレでは通じないだろう。だから、俺は恥ずかしいが改めて言う。
「その、デートって、言ってもいいのかって、思って…」
「で、デート!?」
驚いたように言う楓。
どうやら違ったようだ。それとも俺みたいに気付いていなかったのか?いや、誘った本人が気づかないことはないだろう。それなら違うんだろうな。多分、荷物持ちとかそんなのだろう。そう思うと先ほどの緊張は嘘のように消えた。
「いや、悪い。気にしないでくれ」
「い、いや、うん。その、大地くん。その服にあってるね…」
少し戸惑ったが顔の赤いままの楓が言う。
今の俺の服装は朱音とここで買ったものだ。白シャツとベージュのパンツを着ている。前に着ていた全身真っ黒よりはだいぶマシになっただろうから褒めて貰えるのは嬉しかった。
「ありがとうな。この服、ここで朱音と買ったんだ」
すると、顔が真っ赤だった楓がピクッと動いて下を向く。次に顔を上げると顔の色は戻っており、笑顔は笑顔なんだが作ったような怖い笑顔だった。あ、これは…。
「へー?朱音とね?一緒に買いに来たんだ?」
「いや、そうじゃない!?そうなんだけど!?今は違うんだ!」
俺は必死になって言うが、事実で本当のことなので言い訳ができない。意味が分からないことを言ってしまった。
相変わらず笑顔が怖い楓が言う。
「なにが違うのかな?一緒に買い物をしたのはしたんだよね?」
「そ、そうだけど…。楓?どうしたら、その、許してくれる?」
俺は諦めて許してもらう方向を取る。大体の女性は自分から折れないからな。これはラブコメから学んだ。
「んー?それじゃあね?今日は一緒にデートすること!かな?」
意外と学んだことは役に立ったのだが、デート。少し考えた楓はそう口にした。
俺と楓。執事とお嬢様。いや、俺は一般人か。そんな一般人とお嬢様が並んだところで彼氏彼女には見られないだろう。そんなことを考えて俺は了承した。
「わ、分かったよ」
「うん!よろしい!なら行こ?」
「ああ」
機嫌がなおった楓に俺は素直に従う。俺は一般人。楓はお嬢様。逆らえるわけがない。ま、こんなに可愛いことデートすることなんてもうないだろう。役得と思いながら俺は過ごすことにした。
*
「もうお昼になるけどどうする?」
楓が言う。俺は時間を確認する。
ただ楓と他愛のない話をしながら歩いていただけなのだが、もう11時半。そろそろ昼ごはんの時間となっていた。
「そうだな…。楓はなにが食べたい?」
「うーん。そうだね?…大地くんはなにが食べたい?」
そう楓に逆に問われてしまった。
なにを食べるか?正直なんでもいいのだが、男でそれは禁句だと思ってる。なんでもいい。言うだけなら簡単だが、言われた方はたまったもんじゃない。なので俺はちょうど見えたレストランを指差して言う。
「あそこに入ろうか?早めに入った方が混まないだろうし」
レストランでメニュー見ながら食べるものを決めるのもいいだろう。種類も多いし、値段もそんなに高くない。そう俺は思う。
「うん!そうだね!」
楓が返事する事で俺たちはレストランに向かう。
お店に入ると店員と思われる若い女性が言う。
「お2人様ですか?」
「そうです」
「それではこちらにどうぞ」
俺が答えると席まで案内される。若干だが店員さんの顔がニヤついてるいるように見えた。まあ、俺の気のせいだとは思うが。
楓と向かい合うように席に着く。俺は先にメニュー表を楓に渡す。
「先に選んでくれ。俺、時間かかるからさ」
大してかからないとは思うがこういう時はファーストレディだ。
「そう?なら先に選んじゃうね」
そう言って楓はメニュー表を持って睨めっこを始める。
少し眉をひそめて見ているのだが、こういう時も様になっていて可愛らしかった。
少しすると、
「うん!これにしようかな?はい、大地くん」
どうやら決まったようだ。俺は渡されたメニューを見る。色々とあるが、少し悩んだ挙句、この間の楓と朱音が作ったオムライスが美味しかったな、とオムライスを頼むことにする。
「俺はオムライスにしようかな?」
「えっ!?私もオムライスにしようとしてたの!」
そう言う楓。偶然というのはあるのだろう。今がまさにそれ。
「そ、そうなのか?それじゃオムライス二つだな。俺が頼むぞ?」
「うん!」
嬉しそうに楓が言う。
そう言う事ならと俺はオムライスを二つ注文した。こういう時は意外と緊張しないんだよなぁ…。なぜか電話先や相手の顔が見えないと緊張する。
注文してしばらくしてオムライスがくる。意外と大きかった。
「楓…?大丈夫か?食べきれる?」
「う、うん。た、多分大丈夫…」
俺は全然食べるので大丈夫だ。だが、女の子の楓はそうもいかないだろう。だから心配したのだが、本人が大丈夫、そう言うなら大丈夫だろう、と思う。
「いただきます!」
「い、いただきます!」
普通に言う俺とたじろいだように言う楓。やはり大きさに圧倒されているようだ。
最終手段は俺が食べるか?でも、女の子の残したものを食べるのは気が引ける。姉貴の場合は別だが。
そうして俺たちはオムライスを食べた。
俺はというと、前に楓と朱音が作ったものに比べるとなにか物足りない気がしたが、楓は満足、いや、口元を軽く抑えてまずそうだ。もちろん、まずいとは美味しくなかった訳ではなく、状況を示している。
「だ、大丈夫か?楓?」
「だ、うっ。やっぱり少しお花摘みに行ってくるね…」
「あぁ、分かった」
楓がお手洗いに向かうと俺は会計に向かう。
こういう時は親父が言うからな。先に払っとくのがどうたらこうたら。
しばらくすると楓が帰ってきた。
落ち着いたようだ。
「楓?少し楽になったか?」
「うん…。それじゃ会計して早く帰ろう?朱音も待ってると思うし…」
「支払いなら終わってるから帰ろうか」
「そ、それは悪いよ!いくらだったの!?出すよ!」
楓がそう言う。
だが、そう言われてもここは男の俺の顔を立てて欲しい。だから俺は誤魔化す。
「朱音が待ってるんだろう?行くぞ?」
「そうだけど…。大地くん?後でね?」
「はいよ」
そう言って俺たちは急いで帰路に着く。
もうすぐに勉強する時間になるので、朱音を待たせるのも悪い。
帰り道、特になにもなかった。いや、道中、横にいる楓が頬を染めてなにかしようとしていたが俺には分からなかった。そういう意味では何かあったのかもしれない。
*
「2人とも、遅い」
俺と楓が家の前に着くと朱音が待っていた。
「わ、悪い」
「ごめんね。朱音」
「ん。」
俺と楓の謝罪を朱音は素直に受け取ったようだ。
だが、朱音がボソッと何か言う。
「楽しそう…」
「ん?どうした?」
「なんでも、ない。」
何か朱音が言ったのだが俺には聞き取れなかった。
すると朱音の方を見て楓が言う。
「楽しかったよ。朱音」
「っ!?楓。今度テストで、勝負するっ…」
「もちろんいいよ?」
そうして楓と朱音は今度、テストで勝負をするようだ。
俺は無関係だとありがたいんだけど…。
「大地くんも、もちろん勝負だよ!?」
「そうだよ、大地。これは、3人の勝負」
「分かったよ…」
何故かは知らないけど俺の考えを読まれている気がしなくもない。こうやって参加させられるのだから。
「それじゃ!一番点数が低かった人が他の2人の言うことを聞くってどうかな!?」
「ん。わたしは、それでいい」
「2人がいいならいいけど…」
楓がそう提案すると朱音が同意する。俺は2人がいいならと肯定したが、よく考えるとこの展開、よく小説である展開じゃないか?いや、だが、ここは現実だ。そんなことはない。
そうして、俺たち3人はテストの点数の勝負をすることになったのだ。
その後の勉強はいつもより気合いが入った2人に俺は着いていけなかった。やる気の意味でも、勉強の内容の意味でも。
まあ、こう言う展開になりますよね