幕間2 彼女の心情。
続いちゃった…
誤字、誤字ごさまいます!
私がその事に気づいたのは、中学校での最後の夏の大会が終わった後だった。
本来、私は弱虫の自分が嫌だという理由で剣道を始めたはずだった。それが今では、あの夏季合同練習の時に会った男の子に会うために続けていた。続けていればまた会えるかもと。
しかし、現実はうまくいかない。
毎年、あの夏季合同練習に顔を出していたのだが、会えない。
また、地域の試合があると、あの子がいたチームはいるけど肝心のあの子はいない。
もう会えないのかも…。と、そう考えていた。
ちょうど中学校最後の大会が終わり、続ける理由も無くした。
大会が終わったあと、見学に来ていた祖父に伝えていた。
「私、今まで本当におじいちゃんに感謝してる…。でもね?続ける理由が分からなくなったの…。どうしたらいいの…?」
「そうか…。しかし、楓も最初の頃と比べると逞しくなったものだな。分かった。わしのことは気にしないで好きにしないさい」
そう、今では杖をつき始めた祖父が言う。
私は考えた結果。続けない事にした。
続ける理由をなくして、頑張り続ける気力がなかったのだ。
*
そんな気力が戻ったのは、高校に入学した時だった。
そう、彼がいたのだ。
神谷大地。
名前を忘れるはずがない。あの頃と比べると遥かに身長が伸びており、ほどほどに良い体つきをしている。あの頃と変わらない黒い瞳に惚けてしまった。
つい放課後、彼に声をかけてしまった。今までの感情を抑えきれなかった。
彼はどうやら、私のことを覚えていないようだった。
悲しかったけど、それよりもまた彼に会えたことが嬉しかった。
でも、急に話しかけて彼を困らせてしまったようだ。気まずさと周囲からの視線を感じて、私は逃げるようにその場を去るのだった。
次の日、教室に入ると、クラスの女の子が話しかけてきた。
「ねえねえ!北条さん!昨日の放課後、男の子と2人で話してたんだって!?」
多分、というより間違いなく神谷くんとのことだろう。
「うん。そうだけど…。それがどうしたの?」
「北条さんから声かけてるって事はそういう事なのかなって思って!!」
きゃー!!そう周りの女の子が声を上げている。
そんな中、私はそういう事…?って疑問に思っていた。
そういうことって、もしかして私が気があるみたいなことかな?確かにあるにはあるけど、恥ずかしいな。
誤魔化すように違う話題を広めて、他愛のない会話をする。
「ホームルーム始まるぞー」
担任の先生が入ってきた。
みんなが席に戻る中、私は神谷くんの方を見ていた。彼は何かに気づいたようにこちらを見る。
目が合った。彼は照れたのか顔を赤く染めていた。
意識してくれている。そう思うと私は恥ずかしくなった。
赤くなった顔を誤魔化すように前を向くのだった。
*
授業中、無意識で神谷くんの事を見ていた気がする。
私は、昼休みに彼と一緒に食事しようと思ったけど、クラスの子たちがお弁当を持って来た。断れずにそのまま一緒に食べたけど、神谷くんと食べたいなぁ…。放課後、一緒に帰ってみようかな?今まで我慢してたんだし、それぐらい、いいよね?そう思っていた。
放課後になると、彼は急いで帰ろうとしている。
私は急いで彼を止めようと思い、つい袖を掴んで引き留めてしまった。そして思いを伝える。
「一緒に帰ろう?」
思いのほか恥ずかしく感じた。
だが、彼は周囲を気にしつつ、とりあえず場所を移そうと提案してくる。
一緒に帰りたくないのかな…?
そんな思いがよぎるが、とりあえずついて行くことにする。
途中、質問された気がしたけど、なんだったかな?
神谷くんに続いて、図書室に入り、とりあえず話を聞いてみる。私は彼の名前を呼び、再度確認するけど、忘れる事はない。やっぱり彼はあの時の男の子だった。
でも、そんな私とは反対に彼は思い出せていない。
こんな悲しい気持ちになったのはいつ以来だろうか。こんな気持ちじゃ流石に一緒に帰れないと思い、適当に理由をつけて先に図書室を出る。
そういえばと、私はお隣の家に挨拶していないことに気づく。彼の登場ですっかり忘れていた。
親が基本的に家を空けているので、私しか家にはいない。そんな私が、ふとした拍子にお隣と会うのは気まずく感じるので、先に挨拶だけは済ませておこう。そう思い、気持ちを切り替え、お隣の家に挨拶をするために向かう。
すると、お隣が神谷さんだということに気づいた。もしかしたら彼の家かもしれない。そう思うと、嬉しさが込み上げて来た。
1人の家で夜、彼に忘れられていた悲しさと、そんな彼の家が隣だったら嬉しいな、という感情を抱いていたら眠っていた。
北条さんの心情シーンが長くなってますが、まだ続きます。
まだ続けてもいいんだろうか?




