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【コミカライズ】公爵に求婚された令嬢は裏切りを知る〜私を捨てたはずの公爵は愛を乞う〜  作者: 柏みなみ@10/24『そして、あなたは〜』②発売


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仕組まれた出会い-4

「まぁ、ごめんなさい。まだコントロールが難しくて。魔法が使えない平民のあなたには理解できないかもしれないけど。」


謝り方が杜撰すぎませんか、お嬢様。

口角が上がっていますよ。

平民相手に喧嘩売りますか。


これだから貴族は嫌いだ。何をしてもいいと思っている。

白いワンピースでは下着の色が透けるのが分かっていて水魔法を披露したのだと確信する。

彼女の父親の吐き気のする視線を感じた瞬間、我慢の限界に達した。


公衆の面前でこんな辱めを受ける謂れはない。


ラフター様がジャケットで周囲の視線から隠そうとしてくれたが断った。


「大丈夫です。ラフター様。子供の失敗にそんな目くじらを立てるものではありませんよ。」


カナリア嬢を睨みつけるラフター様を笑顔で制す。


「なんですって!?」


彼女から先ほどまでの勝ち誇った顔は消え去り、真っ赤になっている。


「まだコントロールが難しいんですものね。」


そう言って、風魔法と水魔法を同時展開する。

本当は火魔法も合わせての展開も可能だが火傷したといちゃもんつけられてはたまらない。

魔法のコントロールは小さい頃から母が毎日付き合って教えてくれていたから呼吸するように使える。

頭からかけられた水を集め、両掌の上で水球の形にして維持する。


「手を出していただけますか?」


「あ……あなた。……へ、平民のくせに。」


彼女は真っ青になりながら口をパクパクしている。

平民だからといって必ずしも魔法が使えないなんて事はないことは知っているでしょうに。

平民でも使える人間が稀にいることは周知の事実だ。



「手を、出して、いただけ、ますか。」


彼女に水球を渡した瞬間魔力が揺らぐのが分かった。


あぁ、本当に彼女は稚拙な魔法操作しかできないのだ。


こんな簡単な魔法ですら維持できないのか。


こんな魔力操作で何を奢ることができるのか。



「ほら、集中して下さい。また水が弾けますよ。そう、上手ですね。たくさん練習すれば上手くなりますよ。大丈夫。お父様もきっと上手にサポートしてくださいますから。」


態と、小さな子供をあやす様に言う。彼女のプライドは後どれくらいで砕け散るだろうか。

彼女に両手に水球を乗せそっと手を離す。


「行きましょう。」


振り返り、支配人に案内を促す。すぐにでも水魔法は弾けるだろう。早く離れなくてはまた濡れ鼠のようになってしまう。

そうして案の定聞こえた大きな水音と、甲高い悲鳴は無視をした。


ラフター様をチラリと見ると、不機嫌そうな顔をしていた。

これは、怒らせたかなと内心ため息をつきながら、案内された部屋へと向かった。







部屋に入ってからずっとラフター様は不機嫌だ。


「……怒ってます?カナリア嬢に恥をかかせた事……。」


「は?」


先程から不機嫌に魔法のことを聞かれ、ジワジワと首を絞められているようで居た堪れなくなった。

別に、彼が不機嫌になったことろで問題はない。

もう彼が店に来なくても問題はない。

今までと何も日常は変わらないのだ。


頻繁に店に通ってくれる彼が今日は来るかなと外を気にする必要もなくなる。


「だって、貴族の方に失礼なことをした訳ですし。社交界ではお付き合いは大事でしょうし……。つまり、ラフター様のお名前に泥を塗ったわけで……。」


そう思っても、私のゼリーのような意志の弱さが言葉を尻すぼみにする。



「スカイロッド家はあんな小物が汚せるものではないよ。むしろ鬱陶しいと思っていたからスッキリした。」


その言葉に嘘はないようで安心するが、何にイライラしていたのかは分からないままだ。

顔面偏差値が異常に高い人間は怒ると怖さも倍増するんだなと学んだ。

なので何に怒っていたのか答えを求めたいが、聞ける雰囲気ではない。



「エルナは魔法の媒体石は何を使ってる?」


「媒体石?」


突然、これまでの人生で聞いたこともない単語が飛び出した。


「媒体石と言うのは魔力を増幅させたり、高度魔法を使うときに媒体として使う鉱物だ。相性もあるが、ダイヤやサファイヤ、ルビーなんかを好んで使う者が多い。知らないのか?」


母も魔法は使えたが、見たことはないし、練習でも使ったことはない。

そんな高級なものはなくても十分だと伝えるも、納得のいかない顔をしている。


「でも、媒体石は持っておいた方が何かあった時のためには役に立つと思う。」


そう言ってラフター様は内ポケットから小さなジュエリーボックスを出した。


「本当は今日のお礼にと思って用意したんだが……。」


中に入っていたのは、小さな紫水晶が2つと恐らくダイヤであろう石を2つ使い、小さな花を模したネックレスだ。

見るからにこの色は……。


「いや、受け取れませんよ??」


「君の瞳の色を思いながら近い色を選んだんだ。是非受け取ってほしい……」


やっぱり。この色は私の目の色だ。

紫水晶といっても黒に近い濃い紫からピンクに近い色まで色々ある。でもこの紫水晶は本当に私の瞳の色そっくりだ。


「こんな高級なもの本当に頂けません。」


アメジストは高価じゃないかもしれないが、あのダイヤモンドは絶対に高い。絶対だ。それだけじゃない。細工も繊細で……。とにかく高そう……。


「……じゃあ、僕が付けよう。これは君に合わせて作ったから、君以外に渡せないし。」


ふう、とため息をついてラフター様は自分の首につけた。筋肉質な首に華奢な鎖が食い込むように……そこには小さな花のネックレス。

これは笑いを堪える方が辛い……。


すると、無駄に色気を垂れ流したラフター様がスッと目を細め、ネックレスを触りながらまるで君がそばにいるようだと揶揄った。


「……ネックレス……下さい。」


貰うのも、貰わないのも辛い。居た堪れなくなった私は潔く負けを認めた。


その時の勝ち誇った、ガキ大将のような、ラフター様のあの笑顔は……一生忘れない。




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