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仕組まれた出会い-3

「あ、そうだ。一般客の多い所で公爵様と呼ばれると目立つから、ラフターと名前で呼んでくれないか?」


ランチ当日、迎えに来た公爵様に思わぬ提案をされ、固まった。


「公爵様を名前呼びは…、ちょっと。」


爵位持ちの貴族を名前で呼ぶなんて、恐れ多くて無理だ。公爵様は私を名前で呼ぶけれども、名前で呼ぶなんて恥ずかしすぎる。


「注目されたら、食事が不味くなるし、話に集中できないじゃ無いか。」


「……分かりました。ラフター様。」




連れて行かれたお店は、庶民の中でも裕福な層が行くレストランだ。

貴族のみが行くようなお店ではないが、私には十分敷居が高い。

最近友人がプロポーズされた時に連れて行ってもらったと話していた。

こんな格好で大丈夫かなと思いながら中に入るとすぐに支配人らしき人が来た。


店に一歩入った瞬間店の空気が変わるのが分かる。

女性は皆んな公爵様に目を奪われ、その後私を確認する。

こんな昼間だと言うのに匂い立つような色気を纏い、堂々とした佇まいの公爵様に比べ、明らかに場違いの自分に怯んでしまう。


やっぱりお店はこちらで指定するべきだったと思いながら……。

2階の個室に案内されている途中、背後から声がした。


「スカイロッド公爵様!!」


「……タナー伯爵」


声のする方を見ると、明らかに貴族と分かる格好をした中年の男性と、可愛らしい巻毛の女性が立っていた。

少し年下かなと思うも、胸を強調したデザインのドレスに最近の子は発育がいいなぁと驚く。


「ご無沙汰しておりますな、公爵。こんなところでお会いするとは思いませんでした。庶民も来る店のようですが、人気店と聞き娘にせがまれ来たのです。どうも満席のようで……。よろしかったらご一緒させていただけませんか?」


見事に私を無視している。

まぁ、変に目をつけられるよりいんだけど、先に部屋に行っちゃダメかな、ダメだよね。スッと気配を消すように頑張って壁との一体化を目指す。


その時、


「はい」


と、巻毛の巨乳美女が小さなカバンを私に渡した。


「え?」


「え?じゃないわよ。あなた公爵様のメイドでしょう?主人のお客様の荷物を持つのが当たり前でしょ?」


「はぁ。」と気の抜けた返事をした。


まぁ、そう思ってくれるなら、それでも良いかな。変な敵意を向けられるより、この場を何事もなく過ぎたい。分からないけど、このタナー伯爵親子とやらからはトラブル臭がする。


「エルナ。」


そう言って公爵様は私の手から彼女のカバンを取り、巨乳美女に渡した。


「カナリア嬢。彼女はメイドではなく私の連れだ。」


やめいやめいぃぃ。このままにしておけば何事もなく過ぎたのにと思うけれども、ラフター様は怒りを隠さない目でカナリア嬢とやらを威圧している。


「あの、ラフター様、私は別にお荷物をお持ちしても……。」


と言ったその瞬間、しまったと気づく。伯爵とカナリアの表情が一変し、店の雰囲気までもがざわついたのが分かる。


「まぁ。ラフター様ですって?お名前で呼ぶことを許可されているのね。……ご挨拶が遅れて失礼いたしましたわ。私はドロイド=タナー伯爵が娘、カナリア=タナーと申します。社交界でお会いした事がないと思いますけど、どちらの御令嬢かお名前を伺ってもよろしいかしら。」


美しい顔を引き攣らせながら、顎をツンとあげ問われた。

これはもう腹を括るしかない。


「エルナと申します。」


目上の者に対する礼として母に教わったカーテシーをして挨拶をした。


「どちらのエルナ様かしら。」


「ただのエルナです。家名はございません。レイストー通りで花屋を経営しております。」


その瞬間、彼女の眉間のシワは消え、美しく紅を引いた口角をあげた。「そう。」とだけ言った彼女は唐突に私への興味を失ったかのように、体の向きを変え、ラフター様に声をかけた。


突然の話題転換にも何も驚かない。貴族とはこういった類の人間が多いのだから。平民は会話するに当たらない。


「そうだわ、公爵様。私最近水魔法も使えるようになりましたの。ぜひご覧になっていただきたくて。」


そう言って、ほっそりとした手荒れひとつない白魚のような手で弧を描く。私の手とは違う、綺麗に伸ばして整えられた爪には赤いマニキュアが塗られている。


「カナリア嬢、それはまたの機会に……。」


ラフター様はため息をつき、話を切りたそうだがこの2人はしつこそうだなと感じ、話が一段落するまで一歩下がって見ていようと思い、右足を引いた瞬間。


「きゃっ。」


頭から水をバケツをひっくり返したような水を被った。


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