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平穏な日々ー1

「お出かけ……ですか?」


朝食を食べながら、公爵様に提案された。

アレクお兄様と、シャーロット様は安産祈願に先程行かれた。


「そう、昨日は強行突破だったから疲れていなければどうかと思って。スカイロッド領は海に面していて、タウネード港という有名な港があって……。」


「是非!是非行きたいです!」


海は見てみたいと思っていた。

なんとなく騒がしくて、大きな船が沢山あって、色んな人が行き交っている。

珍しいものも沢山あってきっときっと……美味しいものが沢山ある!!


「何が見たいかな?質の良い真珠の産地としても有名だし、物流にも力を入れているから隣国の宝石や名品も沢山あると思うが。」



「あの、……か、海鮮料理が食べたいです。」


顔が赤くなっているのを意識しながら、できれば食べ歩きがしたい。と言ってみた。


王都に帰ったら中々行けないかもしれないし、是非とも!是非とも!!あの、3種の……



「……エビ、牡蠣、ホタテの、三大海鮮焼き…?」


「へ?」


今まさに頭に思い浮かべた三種の神器ならぬ、三種の海鮮焼きが、公爵様の口から発せられ、固まってしまう。


「いや、以前君が食べたいと言っていたなぁと思って。」


口元を隠し、笑うのを堪えられないように肩を震わせている。


以前の私は特に貴族らしくなかったのだろうか。

私が固まっていると、公爵様は優しく微笑んで、


「じゃあ、それを食べに行こうか。」


と天使の如く微笑んだ。





✴︎✴︎✴︎


「どう?」


口いっぱいに広がる磯の香り、ミルキーで濃厚な味。


「か、かかかか、牡蠣。美味しいです。もう一個いいですか?」


そう言うと、下を向いていても、肩をプルプルと振るわせているので笑われているのはバレバレだ。

公爵自ら皿に載せた焼き立ての牡蠣に、くし切りのレモンを添えて渡してくれる。


下町の、観光客向けの市場のど真ん中。

ここでは市場で買ったものを食べられる場所になっていて、炭や網も置いてある。


もちろん注目の的で、周りに侍女と3人の騎士が護衛として立っている。


普通貴族はこんなところで食べないからか、周りの客の目が異様なものを見る目でこちらを伺っている。

でも、そんなことを気にしていたら美味しいものも美味しくないので目の前の網焼きに集中した。


「公爵様、牡蠣は召し上がりましたか?プリプリで美味しいですよ。」


そう言うと、牡蠣を取って口に入れた。


「……なるほど。これが世界の三大海鮮焼きか。」


「三種焼きです!」


思わず赤くなってツッコむと、分かってるよと笑われた。


初めて会った時とは随分印象が違う公爵様にドキドキしてしまう。


その後も色々と食べ歩きをしたり、露店を見て回ったりしたが、公爵様は嫌な顔一つせず、楽しそうに付き合ってくれた。







「ちょっと寄りたいとこがあるんだがいいかな?」


初めて公爵様から行き先のリクエストが出て、それが嬉しくて、ウキウキしながら向かった。


見るからに高級と分かるジュエリーショップに着くと、これまた高級な個室に案内される。

店の支配人が、ジュエリーボックスを開くとそこにはいろんな色のアクセサリーがいくつか並んでいた。


「エルナ、君の媒体石のアクセサリーを作りたいんだが。」


真剣な顔をしてスッと箱を私の目の前に寄せられた。


「君が崖から転落したと聞いた時、媒体石があれば、君の身が守れたんじゃないかと思う。媒体石を持って、使い方をマスターしていれば、こんな事にならなかったんじゃないかと何度も思ったんだ。」


「ダイアモンドに、ピンクダイアモンド、ブルーダイヤモンド、ルビー、サファイア、エメラルド、アレキサンドライト、トルマリン、ガーネット。スカイロッド公爵様にご注文頂いた原石をご用意いたしました。それぞれアクセサリーに加工したものもご用意いたしましたので、併せて御覧下さい。」


そう言って、沢山の宝石が目の前に並べられる。

どれも見たことがある。


「……あの……。恐らくどれも、媒体石として使えないと思います。」


「使えない?」


公爵様は不思議そうに私の顔を見た。


「ソチアル伯爵邸にいた頃、ミゲル様に言われて媒体石をプレゼントしたいからと探したことがあるんです。どれも反応しなくて……。」


公爵様は無言で先を促した。


「私がこのアレキサンドライトの指輪をしているから、恐らくアレキサンドライトが媒体石だろうって言われて高度魔法の練習をしようとしたんですけど反応しなくて。それで、貴族の方が媒体石として使っている何種類かの宝石で試したんですが、どれもダメでした。」


見つけられない度にミゲル様は落ち込んでいた。『君にプレゼントしたかったのにな。』と。


「ミゲル様が相性があるから、ゆっくり探して、見つかればアクセサリーを作ろうって。若しくは記憶を失って、高度魔法の使い方がうまくいかないのかもしれないって言われたので……。」


しばらく、眉間に皺を寄せ公爵様が黙っていたのでダメ元でも挑戦した方がいいのかもしれないと思い、もう一度鉱石に目をやった。


「……なるほど……。贈るつもりだったのか……。」


ざわり。と、なんとなく不穏な空気を感じた上に、気乗りはしなかったがわざわざこの場を用意してくれたのが申し訳なくて聞いてみた。


「あの……とりあえず、試してみましょうか……?」


「……いや、いい。ここにあるのはもう試したんだろう?」


優しくそう言われて、支配人に原石の箱を下げるよう言い、


「こちらのアクセサリーは全て貰って帰るから、そのように。エルナ、他に好きな宝石はあるか?」


と宣った。


「はい?」


いや、媒体石関係ないからいらないよね。


「思いつかないなら、いくつか持って来させようか。支配人、何かエルナに似合いそうなのをいくつか持ってきてくれ。」


公爵様がそう言うと、支配人は綺麗な礼を取る。


「畏まりました。」


「いえ、畏まらないでください。」


思わず突っ込んでしまう。


「私、もう今日は沢山楽しませていただきましたし、お腹もいっぱいですし、大満足です。……こんな高価なもの頂くわけには……。媒体石としても使えませんし、こちらのアクセサリーも必要ありません。」


そう言うと、公爵様は優しく微笑んだ。さっきから優しい笑顔から不穏なものを感じる。

そして少し顔を近づけて、壮絶な色気を含んだ声で言う。


「エルナが楽しんでくれて嬉しいよ。」


全身の毛が総毛立つように足先から何かが這い上がる。

不快でないそれは全身の血が巡るスピードを押し上げる。


「でも、僕はまだ一番楽しみにしていた事をしていない。」


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