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異世界探して右往左往しても見つけたい!  作者: キングスロード田中
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第50話

 ……。


「そんな机の下で何をされているのですか、カナタさん?」


  ん?ああ、トモヨちゃん。いや、最近誰かしらやって来るから警戒しててさ。


  て言うか、またトモヨちゃん来てるし。


「何度も言いますが、わたしは出番が無いんですよ。カナタさんが夜の相手をしてくれないから、一人寂しく慰める日々なんです!はぁ……」


  妖しげな言い方しない。だいたい、意味わかって言ってんの?


「わかってますよ?なんなら、今からカナタさんの前で実践しましょうか?」


  いや、いいから!だから、すぐ脱ごうとしない!


「婚約したんだから、別にいいじゃないですか……」


  はぁ……。


  まあ、俺も戦ってる最中だし行くわ。


「カナタさん。せめて原稿くらいは読んでいきましょう?」


  ああ、そうだった。


  ダークネス八武衆の猛攻は、続く。マホもダブル・ジョーカーも、血まみれになりながら戦っていた。果たして、俺達は王都を守る事ができるのか!?人間を、絶滅の危機から救う事はできるのか!?俺達の戦いは、これからだ!


「なんですか、その打ち切り漫画のような煽り文は……」


  俺はやっとこ登り始めたばかりだからな。この果てしなく長いしつけ道を……。


「まだ終わりませんから!わたしとえっちしてくれるまでは、カナタさんが死んでも生き返らせて終わらせませんから!」


  何気に凄い事口走ってるんだけど、トモヨちゃん……。


  トモヨ、恐ろしい子!


 ──・──・──・──・──・──・──


  もう何曲目なのか?


  ライヴ会場と化した王城のセンターステージは、すっかり盛り上がっていた。評議会メンバーや周りで警護している衛兵達がサイリウム?ブレード?とにかく、光る棒を持って歌に合わせて振ってるけど、あれは小型の『迫真の発光』ライトかな。


  まあ、その中で一番盛り上がっているのがユギカザさんなのはご愛嬌か。めっちゃコール入れてるし、踊りまくっているし厄介オタクみたいになってるよ。


  その王城へは、ダブル・ジョーカーの懸念通りに魔物が押し寄せていた。さすがの魔物も、今の状況で一番厄介な相手は人間側のバフの根源のミチヨさんだと気付いたらしい。

  それが魔物達が自力で気付いたのか、ダークネスが何か指示を飛ばしたのかはわからない。


  そんな魔物の群れを、一人で食い止めている王城正面のアクセル・スピーダー。


『カナタも凄い奴だったが、この王妃も凄いな。王都全土に声を飛ばし、その声で味方を強化してしまうとは。人間も、侮れん!』


  ミチヨさんのバフは、当然アクセル・スピーダーにも掛かっていた。次から次へと押し寄せる魔物の軍団を物凄い勢いで蹴散らしていく。


  他方面を守る兵士達の魔法も、威力が上がっているようで何とか空飛ぶ魔物を撃ち落としていた。


  だが、それらの防御の死角、センターステージの直上からまるで弾丸のように鳥の魔物が急降下していた。その魔物は、魔フォーのカードで見た事がある。あれは、キツツキの巨大化した化け物で確か鳥獣系獣生族の『ドリル・ペッカー』。その名の通り、嘴がドリル状になったキツツツキだ。


「シールド隊!直上から敵だ!直上にシールドを展開!」


  踊っていたユギカザさんが、素早く指示を飛ばした。我を忘れてライヴに没頭しているかと思いきや、しっかり状況は把握しているのはさすが王!


  指示に合わせて、衛兵達がミチヨさんに近付いて彼女を中心とした直上に魔法の『ヴェール・シールド』を展開する。

  突撃してきた『ドリル・ペッカー』は、『ヴェール・シールド』幕に阻まれて停止した。


  だが、『ドリル・ペッカー』はそれだけでは諦めず、嘴を回転させてシールドを破ろうとする。


「は!」


  停止した『ドリル・ペッカー』を、一振りの槍を手にしたユギカザさんが切り裂き倒した。


「歌え、ミチヨ!お前の声を、力をこの国の戦士達に届けるのだ!お前は、俺が守る!」


  槍尻で床を叩き、ユギカザさんが叫んだ。


  ユギカザさん、かっけえ……。そして、その声はミチヨさんのマイクを通して王都全土に響いているというね。


「素敵、王様!」

「王妃様とまさにお似合い!」

「さすがは、我らが王!」


  そんなユギカザさんは、市民に大人気だった。


「アダルよ!王と王妃をお守りするのだ!衛兵も、王と王妃を護衛しろ!」


  オッサンが、なぜか偉そうに指示していた。そういや、あのオッサン評議会議長っていう偉い奴だったっけ。


「はっ!」


  オッサンの指示を聞いて、勇者や衛兵達がステージに上がってミチヨさんを取り囲んで護衛する態勢になった。


  これ、テレビ中継があったら凄い異様な状況だっただろうな。


  そして、相変わらずオッサンの指示が無いと動かない勇者って……。もはや、勇者の置物じゃねえかあいつ。


「俺はいい!ミチヨを守れ!」

「いえ!王の御身もお守りしなければ!」


  新たな『ドリル・ペッカー』が、今度は何匹も雨のように降ってきた。それに対して衛兵達は魔法で対空攻撃を仕掛け、突破してきたモノはシールドで動きを止めてユギカザさんや勇者が倒していく。


「おう!」


  シールドで止まった『ドリル・ペッカー』をまた一匹倒して、ユギカザさんが一息つく。周りでは、衛兵達が今も別の『ドリル・ペッカー』を食い止めている。


  ところが、その衛兵と同じ鎧をまとっている人間が一人、音もなくユギカザさんの背後に近付いていた。その衛兵だけ、なぜか頭からスッポリとプロレスラーが被っていそうなマスクを身に付けている。目や鼻は見えないけど、口だけは見えるな。


「まだ来るぞ、油断するな!なっ!?」


  ユギカザさんが叫んだ次の瞬間、その胸から剣の先が飛び出していた。


「!?あなた!?」

「王!?」


  それは、マスクの衛兵が抜いた剣の先だった。ユギカザさんの後ろに忍び寄ったマスクの衛兵が、ユギカザさんを突き刺していたのだ。


  あまりにも突然の事に、誰もが言葉を失っていた。


  けど、俺は見ていたぞ!?ユギカザさんが刺された瞬間、オッサンが笑った所を!


「あなた!」

「父さん!」

「お父様!」


  ミチヨさんやノオトくん、トモヨちゃんの悲鳴がステージに響く。そしてそれは、ミチヨさんのマイクを通して王都に伝わっていく。



「父上?何かあったのか!?」


  当然、それはロキヒノの耳にも届く。


  ちなみにロキヒノと桃浦は、エレベーターの箱に手足が付いた鉱石族『エレベーターマン』と戦っていた。生物を扉を開けて中に入れて、そのまま消化して骨まで溶かして食ってしまう恐ろしい化け物である。

 道理で、エレベーター無いわけだ。


『なんかあったか?城に戻るか、ロキヒノ!』

「ああ!」


  ロキヒノと桃浦は『エレベーターマン』を蹴散らすと、慌てて王城の方へと引き返した。



  マスクの衛兵は、剣を引き抜いた。ユギカザさんが、ステージに倒れる。


「バカな!王が!」

「あいつは何者だ!?」


  ステージの評議会メンバーが、騒然となった。そして、指示が無いので呆然として立ちすくんでいる勇者くん。ホント、お前さ……。


「……ふ」


  マスクの衛兵は、ニヤリと満足そうに笑った。つまりそれは、戦いの中での事故ではなく、最初からユギカザさんを狙った暗殺だという事。

  こいつは、どさくさに紛れてユギカザさんを殺しに来た暗殺者だ!


『仕事を終えて満足ですかな、暗殺者殿?』


  そこへ、突然声が響いた。


「!?誰だ!?」


  マスクの衛兵が、突然の声に叫んでいた。


『しかし、残念でござった。そなたの突き刺したモノを、今一度じっくりと見てみるとよいでござるよ?』

「何!?こ、これは!?」


  声に促されて、マスクの衛兵が慌てて刺したユギカザさんに顔を向ける。


  そこには、丸太が一つ転がっているだけだった。どこにも、剣で刺し殺されたユギカザさんの死体は無い。


「な、なんだこれは!?俺は、確かに殺したはず!」

「あな、た……?」

「父さんがいない……?」

「これは、もしかして……」

「王が刺されたのでは、なかったのか?」

「どういう事?」

『それは、拙者の変わり身の術でござるよ』


  マスクの衛兵の後ろに、どこからともなく現れた影がそう言った。黒の装束に身を包み、目以外の顔を全て隠しているその姿。


  それは、まさに忍者!ニンジャ!NINJA!


「そ、それでは王はどこへ!?」

「ここだ」


  うろたえるマスクの衛兵の右肩に手を置いて、そのすぐ後ろにユギカザさんがいた。ユギカザさんは、既に右拳を握って振りかぶっている所だった。


「なっ!?ぶあっ!」


  マスクの衛兵の顔面にパンチが炸裂し、衛兵は吹っ飛ぶ。そしてユギカザさんは、間髪入れずに槍を振るう。

  槍の一撃が、衛兵のマスクを切り裂いた。


「がはっ!」


  衛兵が、ステージに倒れる。その男は、二十代半ばと思われる優男だった。金髪である事以外には特に特徴の無い、どこにでもいそうな男である。


「そ、そんなバカな……!俺は、確かに刺したはずなのに!一体、何をした!?」


  男が上体を起こして、叫ぶ。この暗殺者的には、ちゃんと殺した手応えがあったのだろう。それがなぜか不発に終わって、狐につままれた気分に違いない。


  ユギカザさんは、ニヤリと笑った。


「お前みたいな奴が出てくるのを予見していて、善後策を用意していったのだよ。我が息子、救世主カナタがな!」


  ユギカザさんが、ドヤァと言い放った。


  ああ、俺が息子だと王都全土に伝わってしまった。ミチヨさんのマイクを通したユギカザさんの言葉は、モニターとかとは関係無しに、サトシと戦っている最中の俺にすら聞こえたもん。


「救世主様が息子!?」

「え?でも、王家には子供は三人しかいないんじゃ?」

「もしかして、王女様と結婚?」

「あ!王女様と結婚したら義理の息子になるのか!」

「王女様は今年成人されたと聞いたし、救世主様が王女様と結婚されたのかー!」

「これは、ギルフォードライ王国も安泰だ!」

「祝え、救世主様と王女様を!」


  完全に、トモヨちゃんと結婚するって王都に広まっちゃったよ。ヤバい、これどう考えても「計画通り」ってトモヨちゃんがほくそ笑む状況やん!


「救世主だと!?」

『左様。拙者は、救世主カナタ・トオノのサモンドスレイヴ『シノビ・マイスター』。我が主様の命により、ユギカザ王の影となりて警護していたでござる』


  そう、俺は『シノビ・マイスター』こと本名カゲトラ・フウマを、ユギカザさんの護衛につかせていたんだ。だからこそ、王城外の戦いではダブル・ジョーカーと桃浦、ブラックの三体しかサモンドスレイヴを召喚しなかったのさ。



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