第49話
「よう、みんな!俺はギルフォードライ王国第一王子、ロキヒノ・リードギルフだ」
『俺様は、『桃浦金竜之介』様だ!」
ロキヒノに桃浦?お前ら、なんでここに?
「いや、俺ら出番が無くてさ。で、出番が無いならここに出ればいいってトモヨが」
トモヨちゃんさぁ……。
つか、二人とも普通に戦ってるだろ?
『もちろん、戦ってるぜ!けど、雑魚ばっかでつまんねんだよ!本編見たら、マスターとか姐さんとかは八武衆?とか強そうなのと戦ってるじゃねえか』
「それと戦ってる連中ばかりクローズアップされて、俺らは映らないし!」
メタ発言やめろって……。しゃーねえだろ?明らかに、どいつもこいつも誰かと因縁のある相手なんだからよ。
むしろ、俺の相手のサトシとかいうのと、お前ら因縁は無いのか?あいつ、人間だぞ。
「ねえな。誰だよ、あいつ?」
『おう!きっと、俺様の親戚のおじさんの孫の息子の友達の知り合いの近所に住んでた奴だったと思うから、俺に譲ってくれやマスター!』
それは何も知らんという事だろ、桃浦……。
「お~に~い~さ~ま~!こんな所で何をしているんですか~!」
うわ、鬼の形相を笑顔で隠したトモヨちゃんが現れた。
「うお!……トモヨか。いや、出番が無いならここに行けってお前が言ったろ?」
「はぁ!?わたしは、出番が無い時でもここでわたしがカナタさんを支えると言っただけですよ!誰がお兄様に来ていいと言いましたか!?そもそも、ここはわたしとカナタさんとの愛の巣ですよ!お兄様が来ていい道理はありません!」
いや、それもおかしいよ?
「いいじゃねえか。俺とカナタは親友なんだから、ちょっとくらい多目に見ろって」
「嫌です!」
あ、なんか兄妹喧嘩が始まった。
『あれ、ロキヒノの妹か?なんか、おっかねえな……』
お前ですら本能的に恐怖を感じるのか、桃浦。
まあ、いいや。とりあえず、本編始まるから〆て桃浦。
『お!俺が〆ていいのか!?』
どーぞ。
『よっしゃあ!行くぜ!最初から最後までクライ……!』
ソレダメー。はい、スタート!
『最後まで言わせろや!いいじゃねえか!今更だろうが!』
──・──・──・──・──・──・──
「はぁ!」
俺は、サトシの剣を下から上に弾き上げると、姿勢を低くして一気に懐へと飛び込む。何だかんだで、そのデカい剣は間合いに入ると動きが鈍るんだよ!
『何!?ぐっ!』
サトシの腹に、蹴りをぶち込む。今回は、クリーンヒット!
今回は、俺の全力蹴りだ。さすがのサトシも、吹っ飛んで……無い?3メートルほど後ずさっただけで、持ちこたえてやがる。
『ハハハ!いいぞいいぞ!そう来なくちゃ、面白くねえ!』
「別に、てめえを喜ばせる為に戦ってるんじゃねえよ!」
『せっかくの祭だ!もっと楽しませろよ、救世主!』
サトシが、剣を振り回して迫ってくる。あいつが剣を振り回す度に、家々が吹き飛び、更に剣の攻撃範囲内にいた魔物まで斬り裂かれていく。
「お前!?味方の魔物も斬り飛ばしてるけど、それでいいのか!?」
『あ?知るか、ボケ!そいつら、大将が勝手に送っただけの兵隊だ!俺の味方なんかじゃねえわ!俺の前に立つ奴は、誰であろうと敵だ!』
見境無しか、こいつは!だったら、こいつに魔物を片付けさせるか!
家々を破壊しながら振り回されるサトシの剣を避けながら、移動する。その結果、俺達は少し大きめの広場に出てきた。
広場では、多種多様な魔物が群がって兵士達と一進一退の攻防を続けていた。
「あ、あれは救世主様!?」
「救世主様が戦っているのは、何者だ!?」
「デカい剣を持っているぞ!?」
「救世主様が戦っている以上、敵なのだろう!あの敵も攻撃だ!」
まずい!ここで兵士達が無駄に攻撃したら、サトシがそっちに攻撃を仕掛けに行きかねない。
『あーん?うるせえぞ、人間ども!』
サトシが、兵士達に剣を向けた。最大に剣を伸ばして、横一文字に振り払う。
「てめえの剣が向くのは、そっちじゃねえ!」
俺は、素早くサトシの前に割り込むと、剣を蹴り上げて兵士達から逸らした上で、その刃をオーバーヘッドキックして魔物の方へと流した。
『何!?』
さすがのサトシも咄嗟に勢いは止められなかったようで、その剣が集まっている魔物を両断した。
「凄い!」
「さすがは、救世主様だ!」
「こいつはサモンドスレイヴだ!近付くな!こいつの相手は、俺に任せろ!」
兵士達に声をかけて、俺は生き残った魔物の群れへと突入する。
「グオ!」
クマベアーが、右手を上げて殴りかかってきた。それを、袈裟懸けに斬り裂いて倒す。
それにより、ここの魔物連中も俺を標的にする。思う壺!
『そいつは、俺の獲物だ!邪魔すんじゃねえ、てめえら!』
俺に攻撃しようとした『アークライト・デーモン』を、サトシが後ろからバッサリと斬り倒した。
まあ、俺との戦いに邪魔になるなら魔物だって平気で倒すよな!この調子で、どんどん魔物連中を倒していってくれよ!
『お姉さま。ちょっと痛くしますけど、少しの辛抱ですからね?すぐ、昔のお姉さまに戻して差し上げます』
ミイナは、翼を大きく広げた。
『ニードル・フェザー?あなたの得意技だったけど、それわたしには通じた事一度も無いでしょう?ちょっと喧嘩する度にすぐにキレて撃ちまくってたけど』
マホが、呆れたように肩をすくめた。
ニードル・フェザー?名前からして、翼の羽根を飛ばして針のように突き刺すような技かな?しかし、さすがはお姉さま。落ち着いてるな、マホ。
『それは、どうでしょう!』
そんなマホの様子には構わず、ミイナは翼を羽ばたかせて無数の羽根を撃ち出した。飛んでくる羽根の根本が、やっぱり針のように尖っている。
『今のわたしは、鞭持ちだっていうの!』
マホは、鞭を伸ばして振り回した。その鞭が、飛んでくる羽根を叩き落とす。かに、見えた。
ところが、鞭が当たった瞬間、羽根が大爆発を起こした。
『!?爆発した!?』
『これは!ダークネスさまから戴いた新たな力、『ボム・フェザー』です!』
更に、ミイナが羽根を発射する。
どうやらそれは、物体に触れた瞬間に爆発する羽根、『ボム・フェザー』らしい。しかも、それはダークネスが彼女に新たに与えた力のようだ。それじゃあ、マホはその技の事は知らなくて当然か。
『くっ!』
最初の爆発で、鞭の先が吹き飛んでいた。あの鞭は魔力で生成されるのですぐに直るけど、それでも若干のタイムラグがある。
爆弾羽根が、マホを襲った。
『きゃぁ!』
マホは、咄嗟に自身の翼を前に回してガードに使った。そして、爆弾羽根が爆発。マホは、赤い血を撒き散らしながら地面に落ちていく。
『……こ、の!』
落ちながらマホは鞭を再生させて、ミイナに向けて走らせた。自分の作った爆発の煙に視界を遮られていたミイナは、その鞭に気付くのが遅れる。
『え!?』
鞭は、ミイナの腕に絡み付いた。
『ちょ!?』
『あんたも、来なさい!』
マホが、ミイナを引き寄せた。結果、二人の天使は接近しそのままもつれ合って地面に転がり落ちる。
『んぎ!』
『くあっ!』
マホは背中から、ミイナは顔から地面に激突した。
『いったぁ!まさか、新技引っ提げてくるなんて、完全に油断した!』
立ち上がったマホの翼は、血みどろになっていた。そりゃ、翼にだって神経も血管も通っているだろうから、さっきの爆発はキツいだろうな。
まあ、今回は服が無事だったから見てる分にはよかったけど。
『あいたぁ!あの状況でよりにもよって顔から落とすとか、なんて酷い事をするんですか、お姉さま!』
ミイナもすぐに立ち上がって、マホに抗議していた。顔は砂だらけだし、ちょっと細かい傷ができてないか?顔に傷は、確かに女性相手だと同情はするかも。
でも、攻撃仕掛けたんそっちやん?
『攻撃仕掛けてきたの、そっちでしょ!』
『お姉さまが私の言う事を聞かないからですよ!』
『あんたこそ、わたしの言う事を聞きなさい!』
『相変わらずお姉さまは頑固者ですね!』
『あんたこそ!』
二人は、顔を見合わせていがみ合った。
ただ、なんか空気がさっきまでのシリアスな雰囲気から、痴話喧嘩的な空気に変わってきたんだけど……。
『ああ、もう!いいです、わかりました!』
ミイナは業を煮やしたのか叫び声を上げると、マホをビシッと指差した。
『じゃあ、こうしましょう!勝負です、お姉さま!負けた方が勝った方の言う事を全面的に聞く!それで行きましょう!』
『ええ、いいわよ?昔から、喧嘩になるとこうやって白黒着けてきていたものね。で、今回はどんな勝負をするの?』
ミイナがぶち上げた勝負を、マホはあっさりと受けた。と言うか、昔から喧嘩になると勝負で決着を着けるやり方をしてきたようだ。
ますます、ただのカップルやんけ……。マホがこんなんじゃ、そりゃロキヒノの先祖の人とも深刻な関係にはならないわな。こいつの事だから、きっと勝負の後は仲直りセッ……。いやいや、想像するのはやめよう。
『もちろん、組み伏せてキスした方の勝ちです!』
『ああ、いつものね』
そして、勝負の方法がこれって。
ヤバい、ゲロ甘すぎて砂吐きそう。もう、勝手にその辺でイチャイチャしてろよ!なんでこんなんを送り込んで来たんだ、ダークネスのバーカ!
『あ?大将はバカだって何度も言ってんだろうが!今更確認する事か』
魔物を潰しながら、サトシがツッコミを入れてくる。
あ、「ダークネスのバーカ!」だけは口に出てたみたいだ。そして、一切上司を擁護する気の無いサトシ。いい部下を持って、涙ちょちょぎれるよダークネス。




