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異世界探して右往左往しても見つけたい!  作者: キングスロード田中
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第47話その2

 マホとダブル・ジョーカーの守っている小学校は、群がってくる魔物の数もだいぶ減っていた。さすがに、二人の突破は難しいと判断したのだろう。


『ふむ。だいぶ、こちらへ来る敵も減ったようだな』

『その分、他に回っただけだろうけどね。兵士さん達~。ここは、そろそろお任せしてもよろしいですか~?』


  マホが、兵士達に尋ねていた。ここへの攻撃が減りつつある以上、別の攻撃を受けている場所を守りに行くのは普通だろう。


「は、はい!ありがとうございました!天使様、救世主様のサモンドスレイヴ様!」

「ここは、我々が守ってみせます!」

「どうか、王都の他の民をお守り下さい!」

「ありがと~!天使様~、ドラゴン様~!」

「ありがたやありがたや」


  兵士達並びに学校の窓から手を振っている子供達に感謝されながら、二人は小学校から離れた。


「さすがは、救世主様のサモンドスレイヴ様と天使様だ」

「あれだけの敵から我らを救って下さるとは」

「天使様、かわいかったなー」

「天使様のスカート、見えそうで見えないのが最高によかった!」

「エモかったなぁ……」

「でも、見たかった!」


  兵士達が、口々に話している。


  ほら、戦闘中でもやっぱり野郎はスカートの裾を気にしてるんだよ!カーテン腰巻きを巻かせておいてよかったぜ。


『さて、どこに行く?』


  マホが、先を飛ぶダブル・ジョーカーに聞いた。


『一旦、王城に戻るぞ。いかに適当侵略のダークネス軍とはいえ、今現在こちら側に強化効果が掛かっている事くらいは気付くだろう。そうなれば……』

『狙われるのはトモヨちゃんのお母さんだって事だね!?』


  確かに、こっち側の強化の理由がバレれば狙われるのはミチヨさんだな。実際、ミチヨさんの歌声は王都中に響いているから、その理由は推測されやすいかもしれない。


『そうだ。ストッパーがいるはずだが、我らも防衛に回った方がいいだろう』

『だね。……それにしても彼方くん、今どこで戦ってるんだろう?まあ無事だとは思うんだけど、怪我とかしてないといいんだけど』


  飛ぶ方向を王城に向けながら、マホがつぶやいた。


  心配してくれるのはありがたいな、マホ。まあ、今の俺はよくわからん闇サトシとかいうのを相手にしてる最中なんだけどな!



『オラオラ!どうした救世主!もっと真面目にやれや!』


  サトシは、あのバカデカい剣をメチャクチャに振り回してくる。おまけに、なぜか7メートルくらいまで剣先が伸びてくるので距離を開ける事も無意味だった。


「なんなんだ、お前の剣は!?なんで剣先が伸びてくんだよ!?」

『あ?は、俺のこの剣『ベノム・マサラ』の刃は、今まで殺した奴らの血と怨念で形作られているんでな。殺せば殺すほど、デカく強くなってくんだよ。まあ、さすがに常時長いままでいると邪魔なんでな、普段は短くしてるだけだってこった!』

「なんだと!?」


  奴の剣は、人間を殺せば殺すほど長く強固になっていくだと!?と言うか、3メートル強のあの状態が、一番短い姿なのかよ!


「だから、その剣は赤黒いのか!?」

『おうよ!お前も、俺の剣の錆にしてやるよ救世主!!』

「ふざけた事を!」


  俺はこいつの相手で手一杯だから、王城の方は任せたぞマホ!ダブル・ジョーカー!


  ……と、思ったんだけどな。



『じゃあ、急ぎましょう!』

『うむ!』


  マホとダブル・ジョーカーが、王城に向かう。


『『グラヴィティ・プレッシャー』!』

『ぬっ!?』


  突然、ダブル・ジョーカーが上からの何かを受けて、物凄い勢いで地面に叩き付けられていた。

  ダブル・ジョーカーが叩き付けられた道は、隕石が落ちたかのようにクレーターになって土煙を巻き上げている。今の一瞬に、とんでもない衝撃がダブル・ジョーカーに与えられたみたいだ。


『!?ダブル・ジョーカー!?な、何!?』


  マホは、慌てて上空を見上げた。


『……ドラゴン?』


  上空には、黒い姿のドラゴンが飛んでいた。何やら、タイヤのような形のベルトを体に斜めに巻いていて、そこにはガンベルトの銃弾のように謎の小瓶を並べて装着している。

  こいつの雰囲気は、明らかに他の魔物とは別物だ。これは、まるで……!


『……ふん』


  その黒いドラゴンは、マホの隣を通り過ぎて直下のダブル・ジョーカーへと向かう。


『ちょ!ダブル・ジョーカー!』


  マホが、慌ててそのドラゴンを追おうとする。だが、


『あなたの相手は私ですよ。……お姉さま』


  今度は、別の方向から声が飛んできた。


  その声は、確かに「お姉さま」と言った。となれば、それはマホに向けてかけられた言葉としか思えない。


『その、声は……!?』


  驚愕した様子のマホが、慌てて振り返る。


  振り返ったマホの前には、一人の天使が浮かんでいた。ただ、その天使はマホとは違って背中の翼は黒く、その瞳に光が無い。髪はブロンド、緑のドレスを着ているが、その両手首に大きな手錠が掛けられているのが見える。手錠自体は繋がっていないので、ファッションアイテムに見えない事もない。


『ミ、ミイナ……?』


  そこに彼女がいる事が信じられないと言った様子で、マホはつぶやいていた。


『お久しぶりですね、お姉さま』


  天使は、ニコリともせずに挨拶をした。


  どうやら、その天使は「ミイナ」という名前のマホの知り合いの天使らしい。

  今の時代にもマホの知り合いが生きていて、感動の再会!……て、感じではないな。そのミイナって天使には笑顔が全く無いし、マホは困惑顔だ。


『ミイナ、なの?え?本当に……?』


  マホが、愕然とした様子で尋ねる。


『私の顔は見忘れましたか、お姉さま?』

『だって、あなたわたしが死ぬより前に死んで……』


  どうやら、あのミイナって天使はマホがサモンドスレイヴになる前、生前にマホが死ぬ前には死んでいたようだ。それが今現れたって事は、彼女は普通の状態じゃないという事。


『そう言うお姉さまも、すっかり若返ってかわいらしくなっているじゃないですか?まるで、最初に出会った頃のようですよ』


  まあ、向こうにしてもマホの姿はおかしいよな。マホがいくつで死んだのかは知らないけど、今の見た目はすっかり少女だし。魔フォーのカードイラストがあの姿だったんだけど、なんであんな年若い姿だったんだろう?クイーンになるなんて、もっと年齢を重ねた後の事になるような気がするけど。


『そ、そうね……。今のわたしは、クイーンになった当初の姿だしね』


  少しだけ照れたように、マホが答える。


  おい、お前二十歳でクイーンになってたのかよ。……あんなエロい奴が若い身空でクイーンになったら、その権力を使って好みの女子を食いまくってたんだろうな。

  で、この天使は「お姉さま」呼びときた。元ハーレムの一員か?


『わたしは死んだ後サモンドスレイヴになって、色々あって現世に転生し直したから……』


  色々つうか、俺の為だよな。うーん、マホに報いるのに俺にできる事はあるだろうか?もちろん、アレ以外で!


『サモンドスレイヴになるばかりではなく、現世に復活までするなんてさすがはお姉さまですね。当時から、聖天族一の力を持つ若き女王と言われただけはあります』

『いや~、あはは……』


  照れ臭そうなマホ。でも、言われた事は否定しない。まあ、実際に言われていたんだろうからそれを否定する理由は無いか。


『でも、私もそんなお姉さまに一歩近付けましたよ?』

『……ここにいるって事は、ミイナもサモンドスレイヴにランクアップした、という事ね?』

『はい』


  マホの言葉を、ミイナは即肯定する。


  まあ、そうだろうな。マホよりも前に死んだ天使が今ここに存在しているという事は、サモンドスレイヴになったとしか考えられない。


  ただ、こんな聖天族のサモンドスレイヴカード、魔フォーにあったかな?少なくとも、こんな翼が黒くて手首に手錠をした聖天族は俺は知らないぞ?


『そう。……そんなあなたがどうしてここに?あなたのマスターの命令で、こんな戦いの最中にやって来たの?』


  サモンドスレイヴだとわかると、気になるのはマスターの存在だ。サモンドスレイヴは、マスターに召喚されないとこの世界に出てくる事ができないからな。もちろん、マホのように召喚システムを捨てる事でそれに縛られない事は可能らしいけど、それやると能力が落ちるらしいのがな。おかげでマホも、魔札道具無しでは魔法が使えなくなったし。


『お姉さまこそ、こんな所で何をやっているのですか?どうして、たかが人間の為に戦っているのですか?』


  ミイナが、マホに聞き返した。


  どうやら、ミイナは人間に対していい印象は持っていなさそうだな。たかがとか、魔王族が使いそうな言葉なんだが。


『相変わらず、人間は嫌いなのね?……前も言ったけど、人間は全てが悪人では無いわよ。わたしのマスターも、優しくて綺麗な魂を持っている人。そんな人を守る為に、わたしは今戦っているわ』


  綺麗な魂とか言われると、ちょっと照れるな。て言うか、そんな風に思ってくれていたんだな。


『まあ、ちょっと奥手でだいぶヘタレ野郎なのが難点なんだけどね』


  ため息混じりに、マホが言葉を続けた。

  お前……、第三者に変な認識を広めるなよ!よーし、いいだろう。そこまで言うなら、罰として絶対お前には手を出してやらん!思い知らせてやる!


『……男、ですか?』


  ミイナが、うつむいて聞いてきた。


  あ、もしかしてこれってミイナの地雷じゃ。百合少女特有の、男を抹殺レベルで嫌ってるタイプか?


『あ、えっと……』


  マホは、しまったという表情をしていた。


  お姉さまなんだから、ミイナのその特性も理解していたはずだよな?それを的確に踏み抜くとか、何やってんだよ団長!

  て言うか、女の子だと誤魔化せ!いや、駄目か!?野郎って言っちゃった……。


『これだから人間は……。お姉さままで……』


  ミイナが、顔を上げた。その表情から見えるのは、憎悪と憤怒。


『今度こそ私が……、私が人間を滅ぼす!』

『ちょ、ちょっと待って!極端に走るのは駄目よ!悪い人がいれば、いい人もいるわ!心の中に善と悪があるのは、別に人間に限った話じゃない!それは、わたし達聖天族だって例外ではないでしょう!?』

『人間は、その性根が悪!私が、人間を滅ぼす!その願いを神が聞き届けてくれたからこそ、私のマスターは私をサモンドスレイヴとしてランクアップさせてくれた!』


  神が願いを聞き届けた?マスターが、ランクアップさせた?そんなの、どう考えても答えは一つしかないじゃねえか。


『マスターがランクアップさせた?あなたのマスターは、誰なの!?』

『私のマスターは、ダークネスさまです。私は、ダークネス八武衆の一人、「光」のミイナ!人間を滅ぼす者!』


  翼を広げて、ミイナが叫んだ。


  やっぱり、彼女もダークネス八武衆の一人か!


『あなた……、ダークネスのサモンドスレイヴに成り下がったって言うの!?ダークネスのせいで、わたし達聖天族もどれだけの同胞が死んだと思って……!?』

『人間を滅ぼす事に比べれば、些細な事!』


  ミイナは、マホの言葉を遮って言い切った。同族の死を、些細な事と言い切るか。


『……仲間達の命よりも、自分の恨みを優先するのか……。結局、わたしは最後まであなたの心を救えていなかったのね』


  マホは、鞭を構えた。


『むしろ、私がお姉さまの心を救ってみせますわ。人間ごときに犯された、その穢れきった心をね。そして……、昔のように愛し合いましょう』

『ミイナ……』


  二人の天使が、対峙する。それは、酷く悲しい光景。きっと、マホだってあのミイナだって互いを大切に思ってきただろうに。


  そして、そんな天使達を例の黒いドラゴンが見上げていた。


『ほう。あの天使、「光」の奴の知り合いだったか』

『ダークネス八武衆か……』


  土煙の中から、ダブル・ジョーカーの声がした。そして、土煙を翼の羽ばたきで吹き飛ばして、無傷のダブル・ジョーカーが現れる。


『貴様がここにいるという事は、貴様もそのダークネス八武衆とやらだな、『ビルドライブ・ドラゴン』のラビッツ・デザードよ』


  ダブル・ジョーカーが、そのドラゴンを睨み付ける。


  どうやら、あのドラゴンはダブル・ジョーカーが知っているドラゴンみたいだな。当然もう死んでいるはずだから、あいつもサモンドスレイヴだって事だ。そして、ダークネス八武衆のミイナと一緒に現れてかつダブル・ジョーカーを攻撃してきたという事は、こいつもそういう事なのだろう。


『久し振りだ、我が王。いや、元王よ。……そうだ。我はダークネス八武衆が一柱、「地」のラビッツ!我が王ダークネスが召喚せしサモンドスレイヴ!』


  黒いドラゴンが、ダブル・ジョーカーを前にして堂々と宣言する。やはり、このドラゴンもダークネスのサモンドスレイヴか!


  と言うか、これでダークネスのサモンドスレイヴは三体目だぞ!?という事は、ダークネスもサモンドスレイヴを複数召喚する能力を持っているって事なのか?それは、正直いい気分がしないな。俺と同じ能力持ちだなんて。


『ふ……。魔竜四天王の次は、ダークネス八武衆か。貴様も忙しい事だな』


  なるほど、あのドラゴン・ラビッツはダブル・ジョーカーの魔竜四天王の一人だったのか。つまり、アクセル・スピーダーの同僚だってわけだ。


『ほう。意外と驚いていないのですな、元王よ?』

『つい先程、ストッパーに再会したばかりだからな。二番煎じではインパクトは薄れるというものさ』


  ダブル・ジョーカーは、鼻で笑っていた。まあ、あのダブル・ジョーカーが驚いていたとしても、敵を前にして動揺を見せるなんて事はしないわな。


『貴様こそ、我に驚いたのではないのか?』

『ええ、正直驚きましたよ。まさか、こんな人間領国であなたの気配を感じ取る事になるとはね。そして、ストッパーまでいるのですか?それも驚きだ』


  対するラビッツの方は、驚いていた事を隠していなかった。

  そりゃまあ、人間領国を攻撃に来たらダブル・ジョーカーがいるんじゃ驚くわな。当然のように、ダークネス軍に敵対してるし。


『貴様、なぜダークネスなぞの陣営に所属している?ダークネスを主として認めたという事なのか?』

『当然でしょう?ダークネスは、憎き龍帝族を滅ばした我らの恩人!ダークネスに我の力が欲しいと言われれば、力を貸すのは道理!』


  ラビッツが、両手を左右に広げて演説する。

  龍帝族を滅ぼした事を、こいつは恩と捉えたのか。その考えは多分間違ってはいないんだろうけど、なんか釈然とはしないな。


『むしろ、あなたこそダークネスにその力を捧げるべきでは!?あなたの愛した女を殺した龍帝族を滅ぼしてくれた、ダークネスに!』


  ダブル・ジョーカーの愛した女!?え、ダブル・ジョーカーが龍帝族を滅ぼした裏には、その女の影があったって事?

  一体、ダブル・ジョーカーの過去に何が?


『……黙れ』


  ダブル・ジョーカーが、ラビッツを睨んだ。その声には、明らかに怒りがこもっている。と言うか、ガチで頭にキテるだろうこれ。


『サモンドスレイヴとなった我が、何も知らぬと思ったか?ダークネスは、何度生まれ変わろうと我の敵だ!』


  ダブル・ジョーカーが、声を荒げた。

  何があったのかは俺にはわからないけど、ダブル・ジョーカーがダークネスに対して本気で怒っているのはわかる。


『我はこの戦争をマスターと共に戦い抜き、今度こそあのダークネスを滅ぼしてみせる!それを邪魔すると言うのであれば、貴様も容赦はせぬぞラビッツ!』


 ダブル・ジョーカーは、ラビッツに向けて拳を向けた。それは、ラビッツだけじゃなくダークネスに対する宣戦布告。


  そうか、ダブル・ジョーカー。お前がそういうつもりなら、一緒にあのふざけた奴を本気でぶっ潰そうぜ。俺も、あいつにはイラッと来てるんだ!


『そんな事は、させませんな。たとえ元王、あなたを殺してでも!』

『やれるものならやってみるがいい!』


  ダブル・ジョーカーとラビッツは、完全に決裂した。そもそも、ダークネス完全否定派と肯定派、交わるはずは無かった。


  過去の因縁が絡み合い、人間領国での戦いは続く。



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