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異世界探して右往左往しても見つけたい!  作者: キングスロード田中
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第44話その2

 マホとダブル・ジョーカーは、空を飛ぶ敵を倒しながら移動していた。


『相変わらず、ダークネスの軍隊は種族がバラバラだな。これだけの戦力を、どうやって集めているのだ?』

『別に、不思議でもないでしょ?他の種族を嫌う者、世界自体を呪う者、ただ暴れたい者。そんな、不平不満を抱えた者達をスカウトすればいいんだから。わたし達だって、こっちに帰ってきてからは戦いに巻き込まれてばかりなんだから、争いの火種はいつまで経っても尽きる事はないわ』


  ダブル・ジョーカーの言葉に、マホが肩をすくめる。


  確かに、こっちに来て一週間とちょっと。その間、連続して戦いをして来ていた。魔竜族、魔王族、鉱石族。山賊やツーカー達、同じ人間族とすら戦った。そういう意味では、ダークネスに与する者がいてもおかしくはない。


『まあ、そうではあるな。ただ、ダークネスならばわざわざスカウトなどせずにさっさと洗脳して手駒にしそうではあるが』

『ああ、あいつならそうするかも』


  あっさり、ダブル・ジョーカーの意見に乗っかるマホ。


  この会話を、魔物を蹴散らしながらだらだらやっているんだから、こいつら超余裕だな。ダブル・ジョーカーはともかく、マホも案外強いじゃねーか。


『ん?あ!あれ見て、ダブル・ジョーカー!』


  急に声を上げて、マホがある方向を指差した。


  マホが指差していた先にあるのは、一つの大きな建物。そこに、やけに巨大な頭が光っているハゲタカみたいな鳥が集まっている。足の爪で兵士を掴んでいる奴もいるけど、かなりの大きさだ。下手すりゃ、ダブル・ジョーカーよりもデカいんじゃないか?


  そして、その建物の同じ敷地内には、運動場というかグラウンドがあった。そこって、もしかして学校じゃないのか!?


『学校だな。群がっているのは、ツルタカか』


  やっぱり、学校か!


  そういえば、あれは獣生族の『ツルタカ』か。ハゲタカの化け物みたいな物で、とにかく頭が光り輝いているのが特徴だった。


  とある大人のプレイヤーは、「また髪の話をしている……」とあれが出てくる度に絶望していたな。カードのフレーバーテキストにも、「頭が眩しく輝くハゲタカの化け物」って書かれていたし。


『学校って、子供達がいるじゃない!それに、普通は避難場所に指定されている場所でもあるでしょ?助けに行かなきゃ!』

『ではあるな。行こう!』

『ええ!』


  二人は、慌てて学校へ救援に向かう。


  V2ホッパーの映像で確認してみると、その学校は小学校のようだった。前哨戦が開始された時には既に授業が始まっていたようで、校舎には大勢の子供がいる。それに、近隣住民と思われる人間もたくさんいて、避難場所になっているのも確かなようだ。


  ここにも兵士達は展開していて『光子のバリア』を張っていたが、ツルタカは魔法攻撃を空を飛んでかわすので、防戦一方だった。


『クイーンよ!お主は先行して、人間達に少しの間だけ攻撃を止めるように伝えてくれぬか?』

『?なんで?』

『ツルタカを一網打尽で撃滅しようと思うが、その時に後ろから撃たれるのは割に合わぬからな』


  ああ、ダブル・ジョーカーは見た目は魔竜だからな。敵扱いされて撃たれる可能性は無い、とは言い切れないな。


『いいけど。自分で訴えた方がいいんじゃ?』

『人間は、天使であるお主の言葉なら聞くであろう。聖天族は人間に近い見た目をしているし、こう言ってはなんだがお主は容姿はまずまずだしな』


  ダブル・ジョーカーが、少しだけ笑って言った。


  へー、一応ダブル・ジョーカーから見てもマホはかわいい天使に映るんだな。見た目だけなら、かなり高水準だからなマホは。見た目だけなら。見た目だけなら!重要だから、ここ強調しておく!


『なぁに?褒めても、何にも出ないわよ?わたしの体はもう、彼方くんと女の子の為の物なんだから』

『貴様に興味など無いわ』


  あ、ダブル・ジョーカーちょっとイラッとしてる。ダブル・ジョーカー的には、マホは全く好みでは無いみたいだ。


『あはは、冗談よ。……わかった。さっきのあれ、使うの?』

『うむ。せっかく、マスターから受け取った力だからな』


  ダブル・ジョーカーの奴、さっき受け渡したあれを使うのか。


『わかったわ!バッチリ決めなさいよね!』


  マホが、飛ぶスピードを速めて学校へと向かう。


  学校を守っている部隊は、ツルタカの群れに苦戦していた。相手が空飛ぶ鳥の為に手持ちの剣や槍は届かず、弓矢や魔法攻撃は空中で簡単にかわされてしまう。


「くそう!空を飛ばれては……!」

「駄目です、隊長!攻撃を当てられません!」

「諦めるな!ここで我らが諦めれば、ここに避難している大勢の市民がツルタカの犠牲になってしまうのだぞ!ここが、踏ん張り所だ!」

「は!」


  ここの部隊も、市民を守る為に敢然と立ち向かう屈強な戦士達だった。こういう人達をこそ、勇者と呼ぶべきじゃないだろうか。少なくとも、自分の私利私欲の為に力を使う者には名乗る資格の無い言葉だろう。


  だから、頼むぞマホ!ダブル・ジョーカー!


『人間のみなさん!』


  そんな兵士達の前に、マホがやって来た。その登場の仕方は、まるで天上から下界に降臨してきたかのように神々しい。


「て、天使!?」

「て、天使様がどうしてこんな所に……?」


  兵士達は、突然の天使の降臨に困惑していた。


『みなさん。今から少しの間だけ、攻撃をやめていただけませんか?』


  マホが、兵士達にお願いをする。当然、兵士達の困惑は増すばかりだ。今、敵に命の危機レベルで攻められている所なのだ。なかなか成果は出ないものの、攻撃をやめたら殺されるだけでしかない。


「な、なぜですか!?」

「天使様!?」

「まさか、天使様も我々の敵ですか!?」


  あらゆる種族が敵に回っている今の状況、マホを敵と思ってしまうのも仕方ないのかもしれない。


『大丈夫。わたし達は、あなた達の味方よ。救世主、カナタ・トオノの名に懸けて、あなた達を守ってみせるわ』


  そう言ってマホは、優しく微笑んだ。


「救世主……?」

「あ!あの天使様は、力比べの時に救世主様の側にいた……!」

「そ、そういえば!」


  力比べを見ていた兵士は、ここにもいたらしい。そして、マホが俺の側にいた事に気付いたみたいだ。


「……全員に通達!一旦、攻撃中止だ!」


  隊長と呼ばれた兵士が、攻撃の中止を宣言した。それにより、人間側の攻撃が一旦沈黙する。

  それを見て、マホはにっこりと笑った。


『信じてくれて、ありがとう。あなた達はわたしが、わたし達が守ります!』


  マホは、校舎に背を向けた。その姿は、校舎を守って最前線に立つ戦う天使。戦場の女神、ワルキューレのよう。


『いいわよ、ダブル・ジョーカー!』

『応!』


  マホの前に、ダブル・ジョーカーが舞い降りてきた。それは、舞い降りる剣。敵に滅びを与える、罪を数える魔竜の王。


「あ、あのドラゴンは救世主様のサモンドスレイヴ!」

「そうだ!やはり、救世主様だ!」


  ダブル・ジョーカーは、あのインパクトだったからな。当然、記憶に残っている人間も多いらしい。


  有名になんてなりたくはないんだけど、俺の名前で安心できるならそれはそれでいいのかもしれないな。何かの役に立つのなら、俺の名前を広めるのを許そう!


『食らうがいい、鳥どもよ!『エクストリーム・ジョーカー・フルバースト』!!』


  ダブル・ジョーカーが、必殺技の息吹というか破壊光線『エクストリーム・ジョーカー・フルバースト』を放った。

  以前『カッター・ツムリ・ドラゴン』の集団を一撃で吹き飛ばした威力は相変わらずで、校舎を襲っていたツルタカを一気にまとめて吹き飛ばしてしまった。


『相変わらず、火力凄いわねぇ』

「す、凄い!一撃で!」

「さ、さすがは救世主様のサモンドスレイヴ!」

「やったぞ!」


  兵士達が、歓喜の声を上げる。


『……やれやれ。まだ来るか』


  校舎に群がっていた一団は全滅したが、懲りずに別の群れが急襲してきた。


「また、来た!」

『……ふん、よかろう。我が名は、ダブル・ジョーカー!救世主、カナタ・トオノのサモンドスレイヴ!我がマスターに仇為す者は、我が全て片付けよう!我と我が救世主を恐れるのならば、かかってくるがいい!!』


  ダブル・ジョーカーが、派手に名乗りを上げる。


  そして、その横にマホも並び立つ。


『わたしは、『ハーレム・クイーン・マホ』!救世主、カナタ・トオノと身も心も繋がる魂のパートナー!わたしの大切な人を守る為に、この国は絶対に落とさせない!』


  マホも、鞭を振るって名乗りを上げる。若干、気になる台詞があるような気もするけど、今はそんな事を気にしている場合じゃない。


『行くぞ、クイーン!』

『ええ!』


  二人が、ツルタカの群れに向かって飛び込んでいく。


「各員、天使様と救世主様のサモンドスレイヴに当たらないように注意しつつ、それぞれ援護を開始!我々も、共に戦うのだ!」

「了解!」


  兵士達も、マホとダブル・ジョーカーを援護する為に攻撃を再開する。



  大通りを、黒い波が王城に向けて進んでいた。


  いや、それは波じゃない。あれは、人間大の大きさの黒いネズミ。ドブネズミが巨大化した獣生族、『ネズミーラン』だ。このネズミ、カードのフレーバーテキストには「走らないと衰弱して死ぬ」という変わった弱点が記載されていた。


「魔法攻撃で、侵攻を止めろ!」


  兵士達は、遠距離からの魔法攻撃でネズミの足を止めようとする。その攻撃で、確かに先頭のネズミを次々と撃ち抜いていく。

  しかし、ネズミの数が尋常じゃなかった。先頭を倒しても、すぐにその死体が後続に踏み越えられて窮鼠の進撃は続く。


「ぎゃあぁ!」


  ネズミの鋭く突き出た鋭い牙は、あらゆる物を噛み砕いていた。ネズミに噛み付かれた兵士は、剣も鎧も肉も骨さえも食い散らかされて殺されてしまう。


「駄目だ!一時、撤退だ!態勢を立て直すんだ!」


  部隊は、慌てて撤退をはかる。


「!?君達もすぐに逃げるんだ!!」


  撤退中に、兵士が前に立っていた人間に声をかけた。


  彼らの前には、リゥムとヒナギが立っていた。既にリゥムは魔力の矢をつがえているし、ヒナギも銃を両手で構えている。


「おい、君達!?」


  兵士の声にも、二人は動こうとはしなかった。


  なぜなら、リゥムの矢は既に魔力で膨張していて、ヒナギの銃はぼんやり光っているように見えるくらい魔力が集中している。


「今は、構わず退却して下さい!」

「ここは、わたし達に任せて下さい!」

「ま、任せろといっても……」


  二人の態度を疑問に思いながら、兵士達はリゥムとヒナギの横を通り過ぎる。


「行くよ、ヒナギちゃん!」

「はい、リゥムちゃん!」


  二人は、ネズミの群れを見据えた。


「これが、トオノくんから教わった私の必殺技!『マジカル・シュート・アロー』!!」

「これが、トオノさんから受け継いだわたしの必殺技!『トレンシャルトリビュート・ブレイカー』!!」


  二人が、必殺技をネズミの大群に向けて放った。武器に集中させた魔力を一気に撃ち放つ、リゥムの『イージスの盾』の『マジカル・シュート・アロー』とヒナギの『バンシューティング・ギャレン』の『トレンシャルトリビュート・ブレイカー』。


「おおっ!?」

「な、なんだ!?」


  二人の放った膨大な魔力の奔流が、ネズミの大群を一気に吹き飛ばした。


「す、凄いぞ!」

「なんという威力の魔法だ!?」


  二人の技の威力というか迫力に、兵士達は驚愕しているようだった。思わず、撤退する為の足が止まっている。

  けど、当の二人は武器を構えたまま動かない。


「……今のでもまだ残るんだ」

「ですね。まさか、耐えきれるなんて、思いませんでした」


  二人の必殺技から逃れたネズミの残存兵力が、再び進撃を再開した。ただ、その数はすっかり減っていて、当初の五十分の一も残っていない。この数なら、各個撃破でも十分対応できる数だ。


「凄いな、お嬢ちゃん達!二人は何者だい!?」


  兵士達は撤退を中止したのか、リゥムとヒナギに近付く。


「私達は、救世主カナタ・トオノくんの仲間です」

「救世主カナタ・トオノさんに付き従わせていただいています」


  二人の答えを聞いて、兵士達は驚く事はせずに、むしろ納得したのか全員が頷いていた。


「あの救世主の仲間!?」

「さすがは、救世主様だ!仲間の少女も、これほどの強さとは!」

「凄いな、救世主!」

「ええ、凄いんですよトオノくん!」

「全てが最高の人なんです、トオノさんは!」


  兵士達に混じって、一緒に俺を上げているリゥムとヒナギ。

  いや、そこで直接戦っているのは二人なんだから、ちゃんと自分達を褒めてやれ?まあ、自分で自分を上げていたらそれはそれで痛いけど……。


  そんな彼らに、迫りくるネズミ。


「これだけ減ったんだ!我らも戦うぞ!」

「年端もいかぬ少女達だけを戦わせるわけにはいきませんね!」

「総員、攻撃!」

「おおー!」


  リゥムとヒナギの戦いが、兵士達の心に火を付けたようだ。兵士達が、一気にネズミに対して反転攻勢を仕掛ける。


「私達も!」

「はい!見ているだけなんて、もう無理です!」


  リゥムとヒナギも、その戦いの中に飛び込んでいった。



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