第44話
リードギルフは、一気に戦場と化していた。
あまりにも唐突な攻撃に、王都に配備されていた兵士達も個別の対応を余儀なくされている。市民に至っては、取る物も取りあえず身一つで逃げるしかない。
俺達も兵士達も、あの四十七士ですら片っ端から戦うしかない状況。ダークネスの軍隊はあまりにも散開し過ぎていて、一部隊単位で対処するしかなかったからだ。
さすが、ダークネス。侵略行為すら、行き当たりばったりか。
こんな時だからこそ、希望を持って戦場を駆けるしかない!
俺が、面白カッコよく活躍してやるぜ!
『笑われる事にならなければよいな』
ツッコミのダイレクトアタックはやめて、ダブル・ジョーカーさん。
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病院は、『カッター・ツムリ・ドラゴン』の他、『アークライト・デーモン』、クマベアーの混成部隊に襲われていた。
「『ウィンド・カッター』!」
「『ファイヤーボール』!」
兵士達が、魔法や物理攻撃で抵抗しているが、いかんせん敵の方が多い。
「なんとしても、『光子のバリア』だけは死守するんだ!」
病院自体は、ガラスのような光のドームにすっぽりと覆われていた。それを、『カッター・ツムリ・ドラゴン』やクマベアーがバンバン叩いて壊そうとしている。なんだか、どこかの研究所のバリアみたいだな。
今聞こえた『光子のバリア』は名の下にカードで、魔フォーでは相手から与えられるあらゆるダメージを3ターンの間シャットアウトする防御カードだ。
現実の魔法効果も、敵の攻撃を防ぐ光のバリアを作り出す魔法みたいだな。
ただ、見た所問題はあれを病院に掛けている魔法を使っている兵士が、本人はバリアの外にいるらしい事だ。バリアを張っている兵士は四人いて、それを護衛の兵士がガードしている感じ。
「ぎゃあ!」
その一角のガードが崩され、兵士が『アークライト・デーモン』の矛に貫かれた。
バリア魔法を使っていた兵士が倒れ、光のドームが四分の一だけパリンとガラスが砕けるように割れた。あの魔法、効果範囲がそれほど広くないから、四人で協力してドーム状にしていたのか。
「まずい!」
「なんとかしろ!」
「こちらも手一杯です!」
崩れた一角から、ダークネス軍が病院の敷地内に入ろうとする。それを阻止しようにも、他の兵士達も自分の領域を守るので精一杯だ。
だから、俺が止める!
「行かせねえ!」
先頭の『アークライト・デーモン』を真っ二つにしながら、俺はダークネス軍の前に躍り出た。
「てめえら!一匹残らず、殲滅してやる!」
桃浦に、一匹残らず殲滅しろと啖呵を切ったんだ。当然、俺もやるぜ!
「あ、あれは誰だ!?」
「わ、わかりません!?」
俺は、本気の動きで片っ端からクマベアーや『アークライト・デーモン』の首を斬り落としていった。こいつらは鉱石族じゃない以上、数を片付けるには首を落としていくのが一番早い。
「あ、あれは救世主様だ!」
「そうだ!さっき見た救世主様だぞ!」
「あれが、噂の救世主様か!」
兵士達が、口々に叫ぶ。
俺の事なんかいいから、ちゃんと守れ!病院も、自分も!
「ギャオォ!」
上空から、『カッター・ツムリ・ドラゴン』が急降下して襲いかかってくる。ここに来たばかりの時は為す術無く捕らえられたが、今の俺は違うぞ!
「おりゃあ!」
俺は一体の『アークライト・デーモン』の首を落とすと、その体を踏み台にして急降下してくる『カッター・ツムリ・ドラゴン』に向かって飛んだ。
こっちはもう、本気で飛べば5メートルくらい垂直飛びできるんだぜ!
「ゲハッ!」
俺は、『カッター・ツムリ・ドラゴン』の顔面に剣を突き刺して、その体に手をかけて背中の上に飛び乗った。念の為に背中から心臓を突き刺して、そいつの体を更に踏み台にして別の『カッター・ツムリ・ドラゴン』へと飛びかかる。
飛んだ先の『カッター・ツムリ・ドラゴン』は、両手の爪を光らせて俺を切り裂こうとする。けど、その腕を両方斬り落として、首を落としつつそいつも踏み台にする。
まさに八艘飛びのように、空中を飛ぶ『カッター・ツムリ・ドラゴン』を倒しつつ飛び回る。マンション塔での戦いの時、リゥムを助ける為にやった瓦礫飛びが、ここで活きているのかもしれない。
「凄い……」
「さすがは、救世主様……」
兵士達が、呆然と俺の戦いを見上げていた。
いや、お前ら!ボーッとしてないで、戦えよ!棒立ちして上を見上げていたら、ダークネス軍に殺されるぞ!?
「ギュア……」
けど、そのダークネス軍の魔物も俺の戦いをなぜか見上げていた。
こいつら、アホか!?
「ガアガア!」
次に向かった先の『カッター・ツムリ・ドラゴン』は、翼を羽ばたかせて上昇しようとしていた。確かに、俺は飛行能力自体は持って無いから、高度を上げられたりすると追う事ができなくなる。
だが、あっまーい!
「V2ホッパー、射出!」
俺は、素早く取り出したV2ホッパーの衛星を『カッター・ツムリ・ドラゴン』の翼に向けて発射した。衛星は翼に当たり、小さな爆発を起こす。
「ホギャァ!」
翼をもがれた『カッター・ツムリ・ドラゴン』が落ちてくるので、真っ二つにした上で踏み台にして次へ向かう。
確かに今は召喚していないが、スケールとは今も共にいる。召喚はしていなくても、俺達はデッキの全員で戦っているんだ!
「『オーリ・リョウカ・グラン』!」
突然、激しい爆音が響いた。その音のした方に視線を向けると、そこには巨大ハンマーでクマベアーを叩き潰しているハンドレッドの姿があった。
それだけじゃない。サの人やヴィオリン担いだ音楽プレーヤーの人、四十七士の何人かがやって来て魔物と戦闘を始めていた。
よかった、援軍の到着か!
ハンドレッドの叫んだのって、勅命カードの『オーリ・リョウカ・グラン』の事かな?魔フォーでのカード効果は手札を一枚捨てて相手サモンドスレイヴを一体破壊する効果だけど、それを必殺技として使ってるみたいだな。食らったクマベアーが、本当に煎餅のようにペシャンコになってるよ。
「し、四十七士の方々!」
「病院を守りに来たぞ!」
「あ、ありがとうございます!」
さすが、王国を守る守護騎士と言われているだけはあるわ。四十七士が現れた事で、明らかに人間側が押し始めた。
「はぁ!」
だったら、俺も負けられないぜ!
「あれは、救世主か……」
「空中を飛び回りながら、ドラゴンを倒していくぞ」
「なんという力だ……!」
ハンドレッドが、ニヤリと笑った。
「アダルですら勝てなかったのも頷ける。救世主、さすがだ」
さすがは、もういいよ!
四十七士の援軍もあって、病院の周りにたむろしていた魔物は一掃する事に成功した。
とは言え、まだ戦いは続いている。ダークネスの軍は、今も続々と送り込まれて攻め込んできているのだ。一つの戦いに区切りが着いたからと言って、のんびりしていられる状況ではない。
「四十七士の人!ここの防衛は任せる!俺は、別の場所へ向かう!」
ここの事は四十七士に任せて、俺は次に向かう。V2ホッパーで、魔物の多い場所を検索しながら。
「凄いですね、彼は……」
サの人が、ハンドレッドと話していた。
「ああ。あれなら、本当に救ってくれるかもしれないな、ギルフォードライ王国を」




