第42話
力比べが終わったと思ったら、とんでもないタイミングでダークネスが現れた。
しかも、最初の前哨戦に選ばれたのが人間領国!鉱石領国も選ばれてるけど、まあそっちはとりあえず脇に置いて。
おまけに、前哨戦の告知即開始という鬼畜スケジュール。
お前、運営としてのセンスねえよ、ダークネス!
そうして、王都リードギルフに送り込まれてくるダークネスの軍隊神王軍。あの軍、種族はバラバラみたいだ。
てめえらダークネス軍がどれだけ強いのか知らないが、俺がいる限りお前らの好きにはさせないぜ!一匹残らず、叩き潰してやる!
さあ、ファイトだよ!……ファイオー!だった。
──・──・──・──・──・──・──
コロシアムの外に出て見ると、既に市街のあちこちで火の手が上がっていた。360度、どこを見ても煙が立ち上っているのが見える。
「王子!」
コロシアムの出入り口には、兵士達が集まっていた。ここを守る為の、衛兵の部隊だ。
「中の魔物は蹴散らした。市民が来たら、受け入れて保護しろ!」
「は!」
俺達は、邪魔にならないように出入り口から離れて王都を見回す。
「くそ!敵が多すぎる!」
「広範囲に広がり過ぎね。まさか、直接王都の中に軍を送り込まれてくるなんて思わなかったわ!」
「せっかくの城壁も台無しかよ!」
ロキヒノが、悔しそうに剣を振る。
まあ、確かに神王軍には意味は無かったけど、外から他種族が攻めてくるのを止める事はできているだろうから、全く意味が無いって事は無いと思うぜ?
神王軍の蓮の花は、定期的に落下していた。それはつまり、その落下の度に家屋を破壊し、魔物を拡散し、市民を蹂躙しているという事。
「ふざけやがって、ダークネス!」
俺は、デッキからカードを引いた。引いたのは、『桃浦金竜之介』のカード。
「サモンドスレイヴサモン!現れろ、『桃浦金竜之介』!」
口上を省略して、『桃浦金竜之介』を呼び出す。
『へ!なかなか楽しい場面に呼び出されたじゃねえか!』
現れた桃浦は、周りの状況にウッキウキだった。言いたい事はわからんでもないが、今は喜んでる場合じゃねえぞ!
『よう、マスター!この状況なら、好き勝手暴れていいんだろうな!?』
「あん?何を生温い事を言っているんだ、桃浦?」
『あ……?』
俺の言葉に、桃浦は少しだけ目を丸くする。
「相手は、ダークネスの軍隊だぞ?暴れるなんて生温い事言わずに、一匹残らず殲滅しろ!一匹だって、生かして帰すな!」
俺は、左拳を突き出して言い切った。
これは、向こうから乗り込んできた戦争だ。なら、のこのことやって来た連中は、全て叩き潰すのみ!
俺の言葉を理解した桃浦は、それはそれは嬉しそうに笑った。
『ははは!それでこそ、俺のマスターだぜ!』
さすがは、桃浦。戦いに喜びを感じる、バトルマニアめ。
その時、城から伸びる大通りの一つに、蓮の花が落下してきた。その落下に、避難してきた市民が巻き込まれている。
そして蓮の花の中から、剣と盾を持った骸骨の兵士『スケルントン』がわらわらと湧いて出てくる。
「行け!桃浦!」
『任せろや!行くぜ行くぜ行くぜ行くぜ!テメーら、ビビって逃げんじゃねえぞ!』
桃浦が、持っていた剣を抜いて敵目掛けて走っていく。さすがサモンドスレイヴだけあって、移動速度は人間よりも速い。
「あれも、カナタのサモンドスレイヴか!よし!俺も行くぜ!」
ロキヒノも、『スケルントン』軍団に向けて突進する。あいつも桃浦に負けず劣らずの速さなんだけど、やっぱりあいつ人間超えてね?
「サモンドスレイヴサモン!現れろ、『ゲン・ムレイザー』!」
次に引いたカードは、『ゲン・ムレイザー』だった。当然、すぐに呼び出す。
『やれやれ。大変な状況で呼び出されちゃったね、これは』
「状況は見ての通りだ。言っておくが、今は手を抜いていられる場面じゃないからな?」
俺が言うと、ブラックはハットを押さえて笑った。
『もちろん、全力で当たらせていただきますよ。何しろ、僕はダークネスが大っ嫌いですからね』
「?大嫌い?」
『ええ。あの飄々として、周りを小馬鹿にした態度。何を考えているのか読ませない、その言動。被るんですよね、キャラが僕と』
ブラックは、冗談めかして言った。
でも、こいつ意外に腸煮えくり返ってそうだな。そんなに許せないのか、自分とのキャラ被り。
「メィム!お前はブラックと一緒に城の裏側から王都の裏門に至るルートの敵を殲滅してくれ!」
「あたし?ん、わかったわ」
『それでは、マドモアゼル。不肖、このブラック・ト・ギリアムが現場までエスコートいたしましょう』
ブラックは、さっとメィムの前に来て手を差し出す。
いや、今戦いの真っ最中だから。
「いえ、結構よ。むしろ、ついて来られるかしら?」
メィムが、踵を鳴らした。すると、踵のローラーが下に下がり、地面に接地される。よく見ると、足の裏には小さなタイヤも発生しているな。これは、昔懐かしのローラースケートシューズだ!
「ローラーダッシュ!」
メィムは、ローラースケートで走り出した。自分で走らなくていいんだから、これは便利だ。
『あらら。これは、なかなか。さすがは、マスターですね』
俺に「さすが」って、あのローラーブーツ俺が渡したのを知ってるのか。
『では、僕も行きます!』
「ああ!全て叩き潰せ!」
『仰せのままに』
翼を広げて、ブラックも出撃する。
『おいおい、これは驚いたな。今、サモンドスレイヴを二体召喚したのか?』
空を飛んでいた敵を蹴散らしたアクセル・スピーダーが、驚いた様子で降りてきた。今の召喚を、見られていたみたいだ。
『我もいるぞ?』
マホとダブル・ジョーカーも、降りてきた。
『!そういやそうか!三体もサモンドスレイヴを召喚できるだと!?お前、一体どうなっているんだカナタ!?』
複数召喚には、さすがのアクセル・スピーダーもビックリか。まあ、実はマックス四体なんだけどな。
『彼方くんは、マトモじゃないんですよ♪』
「そこは普通じゃないと言え!」
『はー……。さすがは、お前の主だな、フィリップ』
『であろう?』
そして、ドヤ顔のダブル・ジョーカー。
『ち。俺とアダルとの力比べでは、カナタは思いっきり手を抜いていたという事か。なかなか、ショック受けるな』
「手を抜いていたというか、対等の立場で戦わないと納得しなかったっぽいし……」
確かに、サモンドスレイヴを限界まで呼び出して魔法使いまくれば早めに終わったんだけど、それだとなんとなく余計な騒動を引き起こしそうな気がしたからな。あと、ダブル・ジョーカーとアクセル・スピーダーの一騎討ちを邪魔したくもなかったし。
『まあ、おかげでフィリップとの戦いは楽しませてもらった。そこは、礼を言おう』
「はは、気にしないで?……マホとダブル・ジョーカーは、上空の敵の殲滅を頼む。その為に、二人にはこれを使っておこう」
俺は、ブラックが飛んでいった後に引いたカード二枚を示した。
「勅命発動。『エクストリーム・ジョーカー・フルバースト』」
一枚目は、ダブル・ジョーカー専用の必殺技カード。
『おお!』
「先に発動しておけば、好きな時に使えるだろ?」
『うむ。ありがたい』
「マホには、これを。名の下に発動、『砦をまもるよカーテン』」
マホを対象にして発動したのは、名の下にカードの『砦をまもるよカーテン』。
魔法が発動すると、マホにパレオのように腰巻きが巻かれた。どうしてそうなるのかはよくわからないけど、それはそれで好都合。
『何これ?なんで腰巻き?』
「どうしてそんな形になったのかは知らん。砦を守るカーテンらしいから、そうなったんだろうよ」
まあ、カーテンだし。
『どんな効果があるの?』
「わからんが、魔フォーのカード効果が50%の確率で相手の攻撃を無効にするから、相手の攻撃をたまに回避するんだろ?」
魔フォーでは、使い捨ての攻撃無効化カードだからな。こっちでも、攻撃を回避してくれるに違いない!
『いい加減だなぁ……。でも、こういう長いの今更邪魔なんだけどなあ』
マホは、腰巻きを若干邪魔そうに引っ張っていた。
ここに来た頃にはカードのイラスト通りにドレス姿だったマホも、今やすっかりミニスカートが定着したもんな。元々活動的だったのか、それが似合ってるし。
「勝手に外すなよ?」
『駄目?』
「駄目。……それしてれば、空飛んでても下から見にくいだろ」
俺は、少し視線を外しながら答えた。それを聞いて、キョトンとするマホ。
『下から……?あ、もしかしてパンツ?別に、気にしないよ』
マホは、笑い飛ばす。いやまあ、お前自身は全然気にする様子も無く飛び回ってたからそうだとは思ってたけど、こっちはそうは思えないんだよ。
「こっちは気にするんだよ」
『別にいいじゃない。パンツ見えると、嬉しいでしょ?』
マホが、腰巻きを引っ張って足を見せる。
いや、俺がどうこうじゃなくて……。
「……俺以外の奴に見せんな」
はっきり言って、どこの誰だかわからない奴にマホの下着を見られるのは、あんまり嬉しくない。……ああ、はいはい!「俺以外」の奴に見られるのは、ぶっちゃけ不愉快だ!見せるなら、俺だけにしろ!
俺の言葉を聞いてポカンとしていたマホは、ややあって嬉しそうに微笑んだ。
『……うん。他の人には見せないよ。だから、彼方くんには見せてあげるね?』
「いや、俺にも見せる必要は……」
『もちろん、見るならパンツだけじゃなくその先も……ね?』
自身の唇に指を置いて、妖しげに誘いをかけるマホ。なんか、トモヨちゃんみたいになってんぞ、お前……。
「あのな……。アクセル・スピーダーはどうするんだ?勇者の所に戻るのか?」
『今の状況は、アダルの所に戻っている場合じゃないだろう。アダルは、育ての親と一緒に城に行ってしまったしな。ここが落とされては、アダルも殺されて俺も消滅する。俺も、ここの守りに参加しよう』
アクセル・スピーダーも、こっちの側で参加してくれるようだ。これは、心強い味方になるぜ!
「じゃあ、アクセル・スピーダーにはこの勅命カードを使おうと思うけど、勝手に使ったら駄目かな?」
俺は、胸ポケットに入れていたカードを取り出した。さっき、コロシアム内での戦いの時に引いた五枚の内の使わなかった一枚だ。
さっき、勝手に指示したと勇者に怒られたからな。勇者は近くにいないから、せめてアクセル・スピーダーに聞いておこう。
『ああ、さっきアダルが何か言っていたな。まあ、気にする必要は無い。俺は、ありがたく受け取るぞ?』
「そう?じゃあ、勅命発動。『竜の咆哮』」
アクセル・スピーダーの許可が出たので、俺は勅命カードを発動した。
発動させた勅命カードは、『竜の咆哮』。魔竜族を対象にする勅命で、ダブル・ジョーカーの『エクストリーム・ジョーカー・フルバースト』の簡易版とも言えるカード。『エクストリーム・ジョーカー・フルバースト』が全体破壊なのに対し、このカードは相手一体の破壊になっている。
まあ、実際の魔法効果がどうなっているのかまではわからない。
『ほう。これは、どんな魔法だ?』
「多分、敵を破壊する効果だと思うんだけど、実際に使って確かめてくれ」
ここから先は、君自身の目で確かめてくれ!
『そうか。よし、わかった』
「マホとダブル・ジョーカーはとにかく空を飛ぶ敵を倒してくれ。アクセル・スピーダーは王城の上空に位置して、王城に迫る敵を蹴散らしてくれ。アクセル・スピーダーは、最後の砦だ」
人間は空を飛べないし、ここの国には飛び道具が精々弓矢くらいまでしかないから、空を飛ぶ敵にはどうしても対処がしずらい。メィムみたいな遠距離攻撃魔法が使えれば、まだいいんだが。
ここで、航空戦力であるマホと二体のドラゴンがいたのは幸運だったぜ。




