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異世界探して右往左往しても見つけたい!  作者: キングスロード田中
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第40話その2

「こんな、バカな……」


  勇者は、舞台に両手をついて落ち込んでいた。


  まあ、負け方が落ちてきた金だらいにぶつかってKOみたいな、コントのオチみたいな負け方だもんな。ちょっと情けなくて、ショックは受けてしまうよな。かわいそうに。

  やったの、俺だけどね!


  まあ、そう落ち込みなさんなって。あんたが弱いわけじゃなく、俺が強いだけだから。なんて、言ったら怒られるよな、きっと。


「いやー、さすがはカナタだ。あそこまで圧倒的な差があるとは、なかなか痛快痛快」


  ユギカザさんは、嬉しそうに笑っていた。とりあえず、力比べはご満足いただけたようで何より。


「サモンドスレイヴを一体しか出さなかったから、あれでもカナタさんは手加減をしていたようですね?」

「おお、そういやそうだったな!ち、そこは見てみたかったぞ。その相手には、勇者では役不足であったか」

「あなた。こういう時は、力不足と言うべきですよ」

「お?そうか?あははは」


  ミチヨさんのツッコミを、笑って誤魔化すユギカザさん。

  ああ、うん。ロキヒノそっくり。


「これが、あの兄さんが認めた人……。さすがは、兄さんだ」


  ノオト君的には、俺を認めたつまり俺の力を見抜いたロキヒノが「さすが」なのな?まさか、メィムの男子バージョンじゃないよね?どうしてもあの子、線が細いし華奢だから変な風に見えてしまうんだよなぁ。


  こっち来てから変な奴たくさん見てきたから、どいつもこいつも変に見えるのかな?うん、先入観はよくないな。


「あぁ、カナタさん最高です……。ああん、ベッドでメチャクチャにして欲しいです」


  その変な奴筆頭のトモヨちゃんは、相変わらず変だった。

  あの子、年齢詐称してない?言ってる事だけ聞いてると、明らかに二十歳超えてるレベルの発言してるんですけど!?


『むしろ、わたしが彼方くんをメチャクチャにしたい……』


  マホはマホで、相変わらずな様子だし。なんつーか、この二人に囲まれてるって何気にヤバい事なんじゃないか?二人に襲われたら、抵抗できないぞ?二人、例の件で意気投合してたし。


  怖いなー、とずまりしとこ。


「やっぱり、トオノくんだよぉ……」


  リゥムは、顔を真っ赤にして俺の方を見つめていた。それだけを見れば、ただ「すっご~い」って感心してるだけに見えなくもないけど、メィムから既に聞いてるからなぁ。つい、そういう目で見てるんだろうかと思ってしまう。


  リゥムに関してだけは、俺の自意識過剰じゃないと思う!そうであってくれ!


「さすが、トオノさん……」


  ヒナギちゃんは、ねぇ……。そのブレなさは、むしろお前がすげえよ。


「まあ、カナタじゃね……」


  メィムは、周りを見て苦笑していた。

  なんか呆れた様子だけど、その呆れの対象って俺なの?周りの女子陣なの?俺は、一生懸命戦ってただけよ?


  ロキヒノが、舞台に上がって近付いてきた。そして、俺の右腕を掴んで高々と掲げる。


 “「勝者、カナタ!!オラァー!」”


  ボクシングの勝者のように、ロキヒノから勝ち名乗りを受けた。それに合わせて、会場中から拍手が起こる。

  正直、目立つのは好きじゃないけど、こういう風に称えられるのは気分いいな。みんなから受け入れられるって、素敵。


『まさか、あのアダルがこてんぱんとはな。さすがはカナタだ』


  アクセル・スピーダーは、勇者が負けたのに笑っていた。


『あちらは我がマスターの勝利となったが、まだ続けるか?続ける意味は無いが』


  俺と勇者の戦いが決着した以上、もうダブル・ジョーカーとアクセル・スピーダーの戦いを続ける必要は無かった。仮にアクセル・スピーダーがダブル・ジョーカーを倒して俺まで倒した所で、それは試合後のリングに乱入しただけでしかないからだ。


  もう、勇者の負けは覆らないよ。


『それでも、一矢でも報いなければサモンドスレイヴの名折れだろう』


  アクセル・スピーダーは、拳を握った。

  ありゃ、アクセル・スピーダーはまだヤル気らしい。うーん、これは一応止めた方がいいのだろうか?


「おーい。ダブル・ジョーカーどうするー?」

『すまぬ、マスター。少し、時間をくれ』


  ダブル・ジョーカーも拳を握り、アクセル・スピーダーに向き合った。

  ああ、ダブル・ジョーカーもヤル気満々なのね?とりあえず、一定の決着着くまでは向こうも終われないって感じか。


「ロキヒノ。ダブル・ジョーカーとアクセル・スピーダーの戦いがもうちょっとかかるみたいだから、やらせていいか?」

 “「お!いいぞいいぞ!戦え!そして勝て!」”

「お前はどこ目線で言ってるんだ?」


  ロキヒノの言っている事はよくわからないけど、とにかく戦ってもいいらしい。


「二人とも、とりあえずは気の済むまでやっていいってさー。ま、あんまり怪我すんのもあれだから、ほどほどになー」

『おお!恩に着るぞ、カナタ』

『すまぬな、マスター。何、すぐに済む』


  再び、二人が対峙する。


『すぐに済むとは、言ってくれるな?』

『無駄に時間を取らせるのも、マスターに悪いしな』

『できるか!?』


  アクセル・スピーダーが、ダブル・ジョーカーに殴りかかった。その右のパンチを、ダブル・ジョーカーが右手で受け止める。


『ちっ!』


  続いて打ってきた左の拳も、ダブル・ジョーカーは左手で受け止めた。

  そして、ダブル・ジョーカーは腕を引いてアクセル・スピーダーの両腕をクロスさせて固定化した。


『何!?しまった、これは……!』

『行くぞ、ストッパー!』


  アクセル・スピーダーの腕を固定しながら、ダブル・ジョーカーがグルグルとその場で回り始めた。その回転はどんどんと速度を増していって、竜巻のような風を生み出す。


『きゃ!』

「ちょっと……!」

「わわ、ひゃぁ!」

「はわわ~!」

「さすがにこれは……」


  マホ達は、髪とスカートを押さえるのに必死だった。

  でも、お前こないだ散々丸見えで飛んでたよな、マホ?いやまあ、今回は観客席に人が大勢いるからあれだけど……。あとメィム?お前短パンじゃん。


『くそ!おのれ、フィリップ!』

『マスター!そこから、離れろ!』


  ダブル・ジョーカーが、竜巻の中から忠告を飛ばしてきた。そんな事を言うって事は、まさかここに降りてくる気か!?


「ロキヒノ、退避だ!」

「おう!」


  俺とロキヒノは、慌てて舞台から降りた。一応、未だに落ち込んでいた勇者の首根っこを掴んで猫のように持ち上げて、ついでに避難させる。


『くらえ、ストッパー!『ジョーカー・スピン・シュート』!』


  ダブル・ジョーカーは、腕を固定させたアクセル・スピーダーを連れて急降下。そのままの勢いで回転しながら、アクセル・スピーダーを頭から舞台に叩き付けた。


  腕をクロスさせて動けなくし、その相手をきりもみ状に地面に叩き付ける技。それが、ダブル・ジョーカーの技の一つ『ジョーカー・スピン・シュート』か!うん、きりもみシュートってわけだな!


『ぐはっ!』


  スピン・シュートの威力に、舞台がぶっ壊れた。アクセル・スピーダーは頭から舞台に突き刺さっているし、そこを中心に割れ目が走っている。床は凸凹になってて、これはまともに使えない状態だぞ。


『ふむ。我の一勝追加だな』


  パンパンと、両手を叩いて一丁上がりな状態のダブル・ジョーカー。


  さすがは、最強の王と謳われただけはあるわ。本気出したら、瞬殺してんじゃないか。うん、俺らいいコンビだな。


 “「サモンドスレイヴ対決もカナタの勝利ー!強すぎんぞ、カナタお前ー!」”


  ロキヒノが、俺の頭を抱えて髪をぐしゃぐしゃかき混ぜてきた。俺は別に髪型とかセットしてないし気にしないけど、やめろやい!


『ああ、くそ!また負けたか!』


  アクセル・スピーダーが、自力で舞台から首を抜いて声を上げた。

  案外、今の技を受けてもピンピンしてるぞアクセル・スピーダー?まあ、耐久力の高さはさすが魔竜族って感じだな。


『久し振りに、いい運動をさせてもらったぞストッパー』


  ダブル・ジョーカーは、スカッとしたぜ!な様子だった。確かに、今まではほぼ瞬殺ばかりでガッツリ戦ったのは俺が見た限りだと初めてだからな。いい運動になったのは、確実だろう。


『くそ。やはりまだまだ強いな、フィリップ』

『王たる者、常に頂点に君臨してこそ、だろう?』

『ああ。さすがは、フィリップだ』


  ガッと、握手を交わすダブル・ジョーカーとアクセル・スピーダー。二人ともそこそこ血まみれなんだけど、すげえ爽やかな空気が流れている。


  うむ、友情だな。


 “「サモンドスレイヴ同士の素晴らしい友情ー!拍手だぁ!」”


  なぜか涙を流しながら、ロキヒノが拍手を促した。それを受けて、観客達も惜しみ無い拍手をダブル・ジョーカーとアクセル・スピーダーに送る。


  なんか、ロキヒノは友情って言葉に弱そうだな。


『お疲れ様、彼方くん』


  マホ達が、近付いてきた。


「さすがは、カナタさんですね。信じていた通りになりました」


  トモヨちゃんは、俺が勝ったからかニコニコだった。まあ、全員ニコニコなんだけど。


「まあ、さすがはカナタよね?むしろ、額に食らったのが驚くくらい」


  メィムは、俺の前髪を手でかき上げてそんな事を言った。

  だから、お前は男子との距離が近いっての。自然にさらっと触れてくるけど、そんな事をされたら男は勘違いするって!


「そういや、まだ×印は残ってる?」


  自分では、額の×印は見えないんだよな。


「まだありますね。どうすれば消えるんでしょう?」


  ヒナギが、首を捻っている。一応、まだ残っているようだ。


「ああ、剣をもらうぜ?しばらくすりゃ、消えるよ」

「そうなのか」


  俺は、ゴム剣をロキヒノに渡した。


「ああ。勇者の剣は……。ありゃ?どっかに飛んでったか?」


  落ち込んでいる勇者はゴム剣を持っていなかったので、ロキヒノは剣を探しに行った。そういや、あいつは舞台で崩れ落ちる時にゴム剣を落としていたな。アクセル・スピーダーがそこに落とされたから、飛んでいったか巻き込まれて潰されたか。


  責任は、取らん。俺は、悪くねえ!


「あ。消えたよ、トオノくん」


  リゥムが、×印が消えた事を教えてくれた。よかった。


「それじゃあ、カナタさん。治療をしますので……。ちょっと、かがんで下さい」


  トモヨちゃんが、俺の唇の傷の治療の為に手を伸ばしてきた。そうやって一生懸命手を伸ばして背伸びをしているトモヨちゃんは、凄いかわいい。特に、ん~ん~とぷるぷる手を伸ばしている様子はたまらねえ!


『トモヨちゃん、萌える~』

「かわいいわ、トモヨちゃん……」

「キュート♡」

「トモヨちゃん、かわいいです」

「ナイス萌え」


  俺も、思わずサムズアップする。


「萌えなくていいですから、かがんで下さい」


  さすがのトモヨちゃんも、ちょっとムッとしている。

  なので、俺はかがもうとした。


 “「ぴんぽんぱんぽーん」”


  だがその時、チャイムが全世界に鳴り響いた。


 “「さあ。時間だよ、みんな」”


  ダークネスが、再び現れた。




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