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異世界探して右往左往しても見つけたい!  作者: キングスロード田中
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第39話

 始まった勇者との力比べ。

  やたら偉そうな勇者は、なんと召喚士だった!これが、あいつの切り札。国を救うと豪語した、その自信の根拠。


  ところが、あいつのサモンドスレイヴ『アクセル・スピーダー・ドラゴン』は生前ダブル・ジョーカーの部下をやっていた知り合いだった。


  互いに死んだ後にも大切な存在に会えるとか、なんて素敵なジャパネスク。


『何度も言うが、我とあやつは雄同士だからな?』


  ぶっちぎるぜ!


 ──・──・──・──・──・──・──


「あなたは、いちいち癪に触りますね……!」


  勇者、すっかり頭に来ちゃってるよ。


  それだったら、こっちが何かする前に仕事して欲しい所なんだけどな。アクセル・スピーダーにはすぐに声をかければよかったし、トモヨちゃんの事は一週間ちょい前に来たばかりの俺よりはよほどチャンスあっただろ?チャンスの前髪くらい、ちゃんと握っておけっていうの。


  まあ、トモヨちゃんがいつから俺にご執心だったのかは知らないけどな。


「惨めに!完膚無きまでに!叩きのめしてあげます!」


  勇者が、また飛びかかってきた。


「突き突き突き突き!」


  勇者は、大振りの斬り付けから、素早く数を打ち出せる突きに戦法を変えてきた。実際、突き連打の方がより多くの攻撃を繰り出せるので、効率的だ。何より、今回のゴム剣は先端の大きくなった部分で突かないと×印を与えられないから、理に叶っている。

  ただ、口で言う必要は無いよね?


「よ!ほ!は!た!」


  勇者の突きに剣を合わせて、それを右から左へ受け流すー♪


  ん?なんだっけ、これ?


「くっ!どうして素人のくせに、これを受けきれる!?」


  勇者は、驚愕していた。突きの中に時折フェイントを混ぜてこっちのタイミングを外そうとしているのに、それを悉く受けられて驚いているみたいだ。


「見たまま、返してるだけだぜ?」


  俺は本当に、ただ突いてくる剣先を見た通りに動いて弾いているだけだった。勇者の突きは確かに早いし数も多く、フェイントにも余裕で引っ掛かっている。

  それでも、強化された身体能力と動体視力のおかげで、後の先を取れてるだけさ。


  ツーカー達やバリアリーフとの戦いで、また戦闘力が上がった気がするぜ!これが、戦えば戦うだけ強くなるってヤツか!よし、目指せ戦闘民族!


  あ、死にかける事で強くなるのは、無しで。


「ならば!」


  勇者は、左足を前にして両足を広げ、剣を後ろに振りかぶった。どうやら、ここで渾身の突きを出してくるつもりのようだ。


  なので、俺も足を止めた。この渾身の突きを弾いて、返す刀で一気に×印をその額に刻んでやるぜ!


「はぁ!」


  勇者が、突きを繰り出してきた。それを、一気に弾く!


「!?」


  剣を弾こうとしたけど、勇者の右手には剣が握られていなかった。もちろん、左手にも握られていない。


  勇者の剣は、舞台の床に転がっていた。


  剣を弾くつもりだった俺の剣は、当然空振りした。そして、勇者の右手は突きを繰り出す動きのまま突き出され、俺の左頬にクリーンヒットする。


「がっ!」


  勇者の腕力は並じゃ無かったので、俺は吹き飛ばされてしまった。


  あいたー!勇者め、こっちのタイミングを完全に外す為に、剣を捨ててダイレクトアタックしてきやがった!いくら強化されてるからって、直接殴られるとそこは普通に痛いんだぞ!


『彼方くん!』

「カナタ!」

「トオノくん!」

「トオノさん!」

「!カナタさん!」

 “「これは、クリーンヒット!勇者の渾身の右ストレートが、カナタの顔面に炸裂したぞー!これは、痛い!」”


  ロキヒノの要らん実況で、会場が盛り上がる。

  まあ、この会場は基本的に勇者の味方ばかりだからな。外様の俺には完全にアウェーだから、勇者の活躍は盛り上がるわな。


  3メートルほど横に飛ばされて、俺は地面に着地した。飛ばされていた間に体勢を立て直したんで、舞台の床を転がるような無様な真似はしない。


  その間に勇者は剣を拾い、俺を追ってくる。


「もらった!」


  勇者が、即間合いに飛び込んでくる。動きは、まあ早い。


  あー、うん。そう?そういう事?そんなに、痛い目見たい?左の頬を打たれたからって、右の頬も差し出すような、そんな無抵抗主義者じゃないんだぜ俺?


  勇者が、剣を突き出してきた。狙いはどこか、なんてどうでもいいね!


「ふん!」


 俺は、勇者の剣の剣身を左手で鷲掴みにした。勇者の動きが、一瞬止まる。


「!?」


  動きの止まった勇者の腹に、前蹴りキックを叩き込む。俗に言う、ヤクザキックや!


「あぐっ!」


  腹にキックを受けて、勇者の頭が下がる。その喉元に、真下からゴム剣を食らわせて、そのまま突き上げた。

  今のは、さっき殴られた分!その前の前蹴りは、ついで!


「がはぁ!」


  勇者は、少し弧を描いて飛んでいった。そのまま、床に落ちてゴロゴロ5メートルくらい転がっていく。


  あ、場外に飛ばせばよかったか。


  そして、勇者が飛ばされる時、一緒に勇者の体から「ダーメ♪ダメ♪ダメ♪ダメ♪ダメ♪ダメ♪ぶっぶーですわ!」という謎の歌が聴こえてきていた。


「え?何、この歌?」

 “「カナタ反撃ー!追撃しようとした勇者、カナタの華麗なる反撃に崩れ落ちたー!しかも、ダメソングが流れたという事は、×印を刻んだという事だ!カナタ、早くも1ポイントを先取だぁー!」”


  ロキヒノが、絶叫する。それに対して、観客は「ああー」と残念な様子。

  仕方ないとは言え、依怙贔屓ひでぇな!


  そして、さっきの歌は「ダメソング」って言うのか。×印を刻むと、自動的に流れるみたいだな。うーん、どんな構造?やっぱ魔法、スゲー(棒)。


「そ、そんなバカな……。今の一撃を、あんな雑に返すなんて……」


  勇者が、腹を押さえて立ち上がった。鎧の無い、あとほんの少し下に下げるとヤバい場所に蹴りを入れたからな。

  ふふん、これぞ文字通りの倍返し!


「さすがは、救世主ですか……」


  悔しそうな、勇者の歯軋りが聞こえてきた。その喉元には、でっかく目立つ×印。

  さすがに歌はもう鳴ってないけど、あれかなり目立つな。額に刻印されると、結構恥ずかしいかもしれない。


「……ペッ!」


  勇者は、口の中を切ったのか血を少し吐いていた。まあ、たいした量じゃなさそうだから別に気にする必要も無いな。


「ト、トオノさん血が!」


  ヒナギの声がした。ありゃ、俺の方もさっき殴られた時に唇を切ってたみたいだ。


「ああ、大丈夫大丈夫」


  俺は血を拭うと、健在をアピールした。俺の方は唇をちょっと切っただけだし、その血も止まってるから何も問題無い。


「カナタさん!これが終わったら、わたしが治療しますから!」


  トモヨちゃんの言う治療って、例の魔法だよな?少し興味があるにはあるけど、回復魔法を掛けてもらうほどの傷でもない。


「いいよ、こんなの」

「いいえ、駄目です!カナタさんの唇に傷がついていると、わたしが困ります……」

「へ?何に困るの?」

「それはもちろん、キスをする時とかにですね……」


  モジモジしながら、どうしようもない事を言うトモヨちゃん。

  ホントに、あの子は……。なんか、あの子頭の中がピンク色に染まってない?そんな成長で、本当に大丈夫か?


「あ、あの……。私も口の中を切ったのですが……」


  なぜか、便乗しようとする勇者。


「コロシアムの医務室が空いていますよ?」


  しかしそんな勇者を、トモヨちゃんは笑顔全開で拒絶する。物凄いレベルでバッサリ切り捨てられているのに、トモヨちゃんの笑顔を見て赤面してトキメいてるんだから、勇者もいい面の皮だ。


「おのれぇ、救世主!」


  そして、そのヘイトはどうしてか俺に向けられるというね。

  理不尽だ!


「ん?」


  舞台の中央辺りに、ボタボタと赤い液体が降ってきていた。見上げると、それは笑いながら殴り合うダブル・ジョーカーとアクセル・スピーダーの血だった。


『『ハハハハハハハハ!!』』


  この二体のドラゴンは、俺と勇者の戦いと違って上空の一ヶ所からほぼ動かずに、足を止めての殴り合いをやっているから、双方ともに流血していた。

  やっぱり、高笑いしながら殴り合うのは怖いわ。


  しかし、あのダブル・ジョーカーが流血しながら戦っている姿は、なかなかレアな状況だな。今までのダブル・ジョーカーは、圧倒的力で無傷のまま敵を倒してきたから、血まみれのダブル・ジョーカーは新鮮だ。


「あらら……。わたしの魔法は、効くでしょうか?」


  トモヨちゃんが、ダブル・ジョーカーの事を見上げながらつぶいていた。


  確かに、トモヨちゃんの回復魔法が人間以外の種族やサモンドスレイヴに効果があるのかは、非常に興味がある。でも、ダブル・ジョーカー達は死なないし復活も容易だから、回復魔法は要らないかもね。


『相変わらず、「速」の俺より速いとかどうなっているんだ、フィリップ!』

『お前達を全て凌駕してこその王!』


  殴り合いは、ダブル・ジョーカーがアクセル・スピーダーを上回りつつあった。アクセル・スピーダーはその名の通り速さに特化した最速の戦士らしいけど、ダブル・ジョーカーの方が速度・手数共に上だったんだ。


  ダブル・ジョーカーの部下の四天王って、多分それぞれが一つの力に特化した集団なんだろうな。で、ダブル・ジョーカーはその上に君臨した王だから、四竜の力を一人で持ってて更に上回っていると。


  もう、あいつ一人でいいんじゃないか?状態だな。実際、ダブル・ジョーカーがバトル・ファイオーを勝ち抜いたらしいし。


「ストッパー!!」


  勇者が、アクセル・スピーダーを大声で呼んだ。その声を聞いて、ダブル・ジョーカーもアクセル・スピーダーも動きを止める。

  せっかく盛り上がってる決闘に、水を差すなよ!


『?アダル?』

「ブーストだ、ストッパー!!」


  勇者が、アクセル・スピーダーに指示を飛ばす。


  ブースト……?


『ブーストが必要か。それほどの相手か、カナタは。……ちょっと待ってもらってもいいか、フィリップ?』

『ほう。あの勇者、ブーストに適応できるのか。……ふむ。邪魔をするのは容易いが、マスターはそれを望まないだろうからよかろう』


  あらら、見逃しちゃったよダブル・ジョーカー。いや、俺別に相手に全力を出させるようなリスペクト精神持ってないから、何かやる前に潰してくれて一向に構わないんですけど?むしろ、楽に勝てるのならそれにこした事はないよね?


  まあ、仕方ないので俺も勇者の動きを見守っていよう。生暖かい目で。


『悪いな。行くぞ、アダル!』


  アクセル・スピーダーが、また腰のスロットルを回し始めた。さっきと同じように、アクセル・スピーダーの全身から蒸気が放たれる。

  と、その蒸気がアクセル・スピーダーの前に集まり始めていた。まるで、雲のような塊を作り出していく。


 “「おおっとー!?勇者のドラゴンが、何かを作り始めたぞ!?それはそれとして、わたあめって旨いよな!」”


  ロキヒノ、アクセル・スピーダーの雲を見てわたあめを連想したのか。つーか、こっちにもあるのな、わたあめって。


『やるぞ、アダル!『アクセル・ブースト・オン』!』


  アクセル・スピーダーが、作り出した雲をなんと勇者に向かって投げ落とした。雲は真っ直ぐに下降すると、勇者を包み込んだ。


  パンッと音がして、雲が四散した。


「な!?」


  雲の中から現れた勇者は、噴き上がる白銀のオーラに全身を包まれていた。



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