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異世界探して右往左往しても見つけたい!  作者: キングスロード田中
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第38話その2

『……『ダブル・ジョーカー・ドラゴン』だと?』


  ダブル・ジョーカーを見て、アクセル・スピーダーが小さく震えていた。それに、勇者も気付いたらしい。


「?ストッパー?」

『『ダブル・ジョーカー・ドラゴン』!まさか、フィリップか!?』


  アクセル・スピーダーが、ダブル・ジョーカーに向けて叫ぶ。


  フィリップと言えば、ダブル・ジョーカーの本名。やっぱり、あのアクセル・スピーダーはダブル・ジョーカーの知り合いだな。


『そうだ。久しいな、ストッパーよ』


  ダブル・ジョーカーも、相手の本名で返した。

  それを聞いて、アクセル・スピーダーは空中を飛んで近付いてきた。勇者置いてきぼりなので戦いの為ではなく、どうやら握手を求めてきたようだ。


『久しぶりだな、フィリップ。フィリップも、サモンドスレイヴにランクアップしていたか』

『うむ。お前もな』


  二体のドラゴンは、しっかりと握手を交わした。


「え?ス、ストッパー?」


  アクセル・スピーダーの唐突な行動に、勇者はポカンとしていた。いきなり自分を無視して敵のドラゴンに握手を求めに行ったんじゃ、それは驚くわな。

  そして、それは周りの観客も王族もロキヒノも、マホ達も同じだった。


『何?ダブル・ジョーカーの知り合い?』

「これは、さすがに予想外ですよ、カナタさん……」

「さすが、トオノさんです」

 “「おーっと!?カナタのダブル・ジョーカーと勇者のドラゴンが突然握手をしているぞ?これは一体どういう事だー!?つか、カナタ?何があった?」”


  実況が、気軽に実況対象に声をかけるなよ。お前審判でもあるんだから、不正を疑われるだろうが。

  王女と婚約発表した時点で、今更だけどな。


「ああ。なんか、二人サモンドスレイヴになる前の知り合いだってさ」

 “「そうなのか?……おおっと、今明かされる衝撃の真実ー!二人のサモンドスレイヴが生前の知り合いだなんて、なんて数奇な運命だー!」”

「な、なんだってー!?」


  俺の与えた情報に一番驚いていたのは、勇者だった。


「そ、それは本当なのかストッパー!?」

『ああ、そうだアダル。お前には、散々話しただろう?龍帝族を滅ぼした、我ら魔竜最強の王、そして最も尊敬する友『ダブル・ジョーカー・ドラゴン』のフィリップだ』


  アクセル・スピーダーが、勇者に答えていた。


  やっぱり、バトル・ファイオーを勝ち抜いて龍帝族を滅ぼした魔竜の王はダブル・ジョーカーの事だったんだな。


「ストッパーが、生涯に仕えた王はただ一人といつも自慢している……?」

「ふーん。……『アクセル・スピーダー・ドラゴン』さん。あんた、ダブル・ジョーカーの部下だったの?」


  せっかくなので、アクセル・スピーダーとコミュニケーションを取ってみよう。


『ああ。我ら魔竜に栄光をもたらした、真の王だからな。我らは、フィリップの側近魔竜四天王として、龍帝族と激しい戦いを繰り広げたものよ』

『四天王か、懐かしいな。他の奴らを見かけた事はあるか?』

『いや。同年代のサモンドスレイヴに会うのも珍しい。まあ、我々は召喚されなければ主以外には認識されないからな』

『ふむ。確かに、そうだな』


  四天王を従えて、頂点に君臨するダブル・ジョーカー。


  かっけぇじゃん!


「さすがは、ダブル・ジョーカーだな!」

『所詮は、過去の事に過ぎぬよ。今は、君のサモンドスレイヴでしかない』

「謙遜しなくていいって。ところで、「絶望がお前の終着点だ」ってのはどっちの決め台詞なん?ダブル・ジョーカーもアクセル・スピーダーさんも使ってたけど?」

『ん?その言葉なら、俺がいつも使っていたが……。なんだ、フィリップ?お前も使い出したのか?』


  決め台詞、アクセル・スピーダーのだったか……。パクったんかい!


『いや、一度言ってみたくてな。まさか、ストッパーに再会できるとは夢にも思っていなくてだな……』


  ダブル・ジョーカー、ちょっとバツが悪そうだ。焦った様子は、なんか珍しい。


「なんだよー、借りパクするつもりだったのか?」

『そ、そんなつもりはないぞ!?使ったのも、一回だけではないか!』

『ハハハ。別に構わないぞ?じゃんじゃん使え』


  アクセル・スピーダーが、右手の親指を立てた。


  ダブル・ジョーカーとアクセル・スピーダーが知り合いだったせいで、舞台上はすっかり和やかムードになっていた。実は今、力比べって戦いの真っ最中なんだけどな。


「ストッパー!」


  勇者が、怒鳴り声を上げた。


「何を雑談しているんだ!?昔の知り合いだろうと、今は敵だぞ!戻ってこい!」

『ん、すまんな。つい、懐かしくてな』

『そうだな』


  アクセル・スピーダーが、勇者の側に戻った。


「まったく……。そんな状態で、戦えるんだろうね?」

『それは、問題無いさ。フィリップよ!お前との訓練での対戦成績は729勝815敗だったな!?その負け数を、一つ返しておこうじゃないか!』


  過去の対戦成績細かく覚えてるとか、どんだけ記憶力いいんだよ……。


  アクセル・スピーダーは、腰のスロットルを回した。すると、アクセル・スピーダーの全身から蒸気が噴き出す。

  魔フォーの設定だとあのスロットルを回すと、アクセル・スピーダーのパワーがアップするという事になっていたけど、どうやら本当だったらしいな。文字通り、あれはアクセルレバーか。


  本当に、魔フォーの設定考えたゲームデザイナーって何者なんだ?「トムの勝ちデース!」とか言ってんのかな?まあ、会う事は無いだろうからどうでもいいけど。


『マスター。ストッパーとは、サシでやりあいたい。手出しは無用で頼むぞ』

「別にいいけど。仮にも王なんだから、負けるなよ?」

『無論。「君のサモンドスレイヴ」として、勝利しよう』


  ダブル・ジョーカーが、上空へ飛び上がる。


『アダルも、手を出すなよ?』

「残念ながら、そっちに構っている暇は無さそうだし」

『ん。行くぞ、フィリップ!』


  アクセル・スピーダーが、高速でダブル・ジョーカーに飛びかかった。けど、そのスピードに対処できないダブル・ジョーカーじゃない。


  アクセル・スピーダーの拳に、ダブル・ジョーカーも拳を合わせた。ガインッと、車が正面衝突したような激しい音がして、その衝撃波が直下の俺たちにまでビリビリと伝わってくる。

  拳を交えただけで、強者同士のプレッシャーを感じる。こいつは凄いぜ!


 “「凄い激突!サモンドスレイヴ同士の戦いだ!正直、俺も初めて見たぜ!みんなぁ、見逃すんじゃないぜ!!」”

「おおおー!」


  ロキヒノも観客も、大興奮していた。彼らはサモンドスレイヴの戦いを見逃すまいと、全員が上空を見上げている。


『何やってるんだか、ダブル・ジョーカーってば。あんたが主役になってどうすんのよ』


  そんなダブル・ジョーカーを見上げながら、マホは呆れ顔だ。


「まあ、サモンドスレイヴ同士の戦いなんて、滅多に見れる物じゃないからね」

「うんうん。ダブル・ジョーカーさん、カッコいい」


  肩をすくめて苦笑しているメィムと、楽しそうに見上げているリゥム。「ボーダードラゴン」て呼び方はやめたん、リゥム?


「トオノさん……」


  ヒナギは、若干不安そうに俺を見ている。


「まあ、カナタさんの足を引っ張らなければどうでもいいです」


  トモヨちゃんは、チラッとだけ上を見ると、すぐに視線を俺の方に戻していた。


  この広い会場で俺を見てくれているのは、ヒナギとトモヨちゃんだけか。よし、見てくれている二人の為に、頑張るぞー!


「まさか、あなたまでサモンドスレイヴを召喚できたなんて……」


  勇者は、ちょっとショックを受けているみたいだった。


  まあ、他人には無い特別な力を持っていると優越感に浸っていただろうからな。それが、想定外に同じ力を持つ者が現れちゃ、焦るか。しかも、それが愛しいトモヨちゃんを奪った憎き救世主ときた。


「ゴメンね、勇者さん。まさか、サモンドスレイヴを召喚できる本物だなんて思ってもみなかった。正直、舐めてたよ。ホント、ゴメン」


  いやー、勇者なんて結局肩書きだけの雑魚だと思ってたよ。どうせ「国を救う」もただのフカシだと思ってたから、完全に虚を突かれた。

  だからまあ、先に謝っておこう。叩きのめす前に、ね。


「失礼ですね」

「でも、同じ召喚能力だけじゃ、俺が勇者さんに及ばないなんて豪語するのはどうかと思うんだけど?そこは、謝ってくれないの?」

「謝る必要など、ありませんね!」


  勇者が、ゴム剣を構えて飛び出してきた。


  さて、今俺らの持っている得物はゴムでできたゴム剣。普通の剣とは違うから、どんな戦い方をすればいいのかいまいちわからんな。

  なので、とりあえず勇者が斬りかかってきたのをゴム剣で受けてみた。


  ゴム剣は、ブニョって変わった感触だったが、勇者の剣を受け止めていた。どうやら、そこそこの固さはあるみたいで、鍔迫り合いは可能みたいだ。


「あなたを倒してプリンセスを手に入れる。そこに、些かの変更もありません!」

「そういう事は、大声では言わない!」


  俺は、勇者の足元を蹴りで払った。けど、勇者はいち早く察知して一旦離れて、足払いをかわしていた。

  舞台を蹴って、勇者がもう一度斬りかかってくる。今度は、何度も何度も打ち下ろしてくるので、こっちも一刀一刀受けつつ後退する。


  しかし、ゴム剣で斬りかかるって表現合ってんの?


「なんですか!?型も動きもメチャクチャじゃないですか!?」

「そりゃまあ、剣とか修行してない素人だからね!」


  精々剣道を体育の授業でやったくらいの、素人剣法だからな。そりゃ、そっちの専門家から見ればメチャクチャだろうさ。


「素人?救世主のくせにですか!?」

「救世主イコール剣の達人ってわけじゃないだろう……」


  勇者は、力で押し込んでくる。さすがは勇者だけあって、パワーも動きもかなりのレベルだ。だいたい、改造されたツーカーと同じくらいだろうか。改造されていない人間だと思えば、かなりの強さって感じ。


  まあ、それだけだけど。


「ん!」


  ジリジリと後退していたら、俺は舞台の端まで追い込まれていた。これ、落ちたらどうなるんだろう?こういう時よくあるのは、場外は負けだけど。


「何!?」


  仕方ないので、俺はジャンプして勇者を飛び越えて、舞台の中央にまで戻った。助走も無しに3メートルくらい飛び上がったんだけど、こんな事できるなんてやっぱダブル・ジョーカーの強化はすげえや。


「ジャンプ力は凄いですね」


  よし、ジャンプ力は褒められた。


「おーい、ロキヒノ?ちょっといいか?」

 “「んー?どうしたカナタ?」”

「これってさ?場外に落ちたらどうなるんだ?」

 “「お?言ってなかったか?落ちたら負けだぞ?」”


  ロキヒノは、しれっと答える。


「お前、先に言えよそういう事は!」

 “「わりーわりー、忘れてたわ」”

「結構重要だぞ!忘れんな!」


  誰だ、こいつに審判させた奴は!


「お仕置き決定ですね、お兄様」


  あーあ。トモヨちゃん、怒ってるぞ?


  ガンガンガンと雷のように鳴っていた上の音が、静かになった。見ると、ダブル・ジョーカーとアクセル・スピーダーは、両手を合わせて腕力勝負になっていた。


『さすがは、フィリップだ!全く、力が衰えていないな!』

『お前もな!久々に、楽しくなってきたぞ!』


  腕力勝負も互角のようで、両者は拮抗していた。


『『ふん!』』


  ダブル・ジョーカーとアクセル・スピーダーが、弾かれるように離れて距離を取る。

  すると、ダブル・ジョーカーは両手を合わせてその間に光の玉を発生させる。あれは確か、万策尽きしカバを吹き飛ばしたダブル・ジョーカーの必殺技『チャージ・ブレイク・サイクロン』!


『来るか!』


  対するアクセル・スピーダーは、腰のスロットルを握ると、ズルリと引き抜いた。まるで、警棒のような形になっている。


  あれ、抜けるんだ……。


  その警棒の先に、目に見えるほどの高密度の風の塊が発生していく。ダブル・ジョーカーが光の玉をなら、アクセル・スピーダーは風の玉か。


『『チャージ・ブレイク・サイクロン』!!』

『『マキシマム・アクセル・グランドツアー』!!』


  両者の放った玉が、その中央で激突する。その力も拮抗しているのか、玉は激突した場所から動かない。

  そして、ダブル・ジョーカーとアクセル・スピーダーの間で爆発した。


  爆発によって飛び散った二つの技のエネルギーが、四方に飛び散った。結果、重力に引かれてかコロシアムを爆撃する。


「おわ!」

「くっ!」


  エネルギーは舞台を襲ってきたので、俺と勇者は慌てて避ける。


  爆撃は、観客席周りにも降り注いでいた。


「王!」


  特別観覧席では、素早く前に出てきたローブをまとった魔法使いっぽい衛兵が、シールド魔法を発動して王族を守っていた。さすが、その辺は素早い。


「オラァ!」


  観客席に飛んだいくつかは、四十七士が持っていた武器で弾き返していた。直接じゃない爆発の残りエネルギーとはいえ、ダブル・ジョーカーとアクセル・スピーダーの攻撃を曲がりなりにも弾き返すなんて、意外とやるな四十七士。


  エネルギーは、観客席の壁や屋根のある部分も爆撃して破壊していた。慌てて避けたり、落ちてくる瓦礫を持っている武器で兵士達が迎撃している。


  集まっているのが王国首都に配備されている精鋭の兵士達だけあって、みんな緊急事態への対処が早い。兵の練度は、かなり高そうだなギルフォードライ王国。


「きゃ!」

『あぶな!』


  エネルギーは、マホ達の周りにも落ちていた。まあ、直接誰かに当たる事は無く、その周りを穿っただけみたいだけど。


「!ダブル・ジョーカー!アクセル・スピーダー!技を使うのはやめろ!周りに被害を撒き散らすな!」


  俺は、上空の二人に向けて怒鳴った。あんなもんを何度も落とされては、さすがにいずれ死人が出てしまうわ!


『すまぬ、マスター』


  俺の声に周りを確かめたダブル・ジョーカーは、今の一撃での周りの被害にようやく気付いたらしい。


『と、そういう事だがストッパーよ?構わぬか?』

『ふむ。……救世主!お前の名前は!?』


  アクセル・スピーダーは、なぜかいきなり俺の名前を聞いてきた。まあ、あの勇者が俺の名前をわざわざ教えるとも思えないし、知らないのも無理は無いか。


「?カナタ・トオノ」

『カナタか!気に入ったぞ!それでこそ、フィリップの主だ!』


  アクセル・スピーダーは、スロットルを腰に戻した。とりあえず、わかってくれたのかな?


『やはり、肉弾戦こそ花だな』


  アクセル・スピーダーは、拳を握った。


『ふ……。このバトルマニアめ』

『ハハハハハハハハ!』


  ダブル・ジョーカーとアクセル・スピーダーは、再び殴り合いに戻る。

  まあ、それでお願いしたいんだけど、笑いながら殴り合うのはやめろ?それは、ちょっと怖いぞ?


「……ストッパーは私のサモンドスレイヴなんだけど、勝手に命令しないでもらえますか?」


  勇者は、俺が勇者の許可を得ずに勝手にアクセル・スピーダーに指示した事に、ご立腹のようだ。


「そう思うんなら、さっさと指示してくれればよかったと思うんですけど?」

「し、指示しようと思いましたよ!」

「思う前にやれって言ってるんですけど?」


  なんだろう?なんか、微妙に鈍い気がするな、勇者。周りの被害を見ても、なぜか棒立ちしてたし。


「あ、あなたに指示される覚えはないですよ!」


  勇者は、チラッとオッサンの方に視線を向けた。

  んー……?この勇者もしかして、オッサンに指示されないと想定外の事態に対処できないタイプの人間か?マニュアルに書かれていない事はできない、典型的な杓子定規に囚われた頭カチカチ人間か。


  本当に、そんなんで国を救えると思ってたのか?


「なんだかなぁ……」


  ため息出るわ、まったく。




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