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異世界探して右往左往しても見つけたい!  作者: キングスロード田中
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第37話

 トモヨちゃんもマホもかわいいけど、ミチヨさんいいよね……。


「あの、わたしはみなさんとシェアするのは嫌ではありませんが、さすがにカナタさんをお母様とシェアするのは……」


  さすがのトモヨちゃんでも、そこは駄目なんだ?


  ところでその……、君は一体何者なの?


「そこは、本編で探って下さい」


  やっぱ、駄目か。


  そして、今日は例の勇者との力比べの日。


「みなさん、お待ちかね~!Gファイト!レディー、ゴー!」


  ちょっと、トモヨちゃん?


 ──・──・──・──・──・──・──


「おはようございます」


  朝起きると、メイドさんが呼びに来たので、一緒に王様の執務室へと行った。執務室には、王様が一人いるだけだった。


「おお、カナタ。昨日は、ちゃんと寝れたか?」

「はい」

「それは何よりだ。……ふむ」


  王様は、立っている俺をじっと見つめてきた。


「?王様?」

「……いや。昨日も思ったのだが、それで戦って来たのか?」


  それで、というのは服装の事かな?まあ、パーカーにジーンズなんていう、思いっきり普段着な格好をしているから不思議に思うのは仕方ないか。ロキヒノとか、立派な鎧を着けてるからな。


「ええ、まあ」

「あれだったら、何か鎧なり何なり用意させるが?」

「え?いえ、必要無いです。こっちの方が、身軽ですから」


  せっかくのご厚意だけど、今回は辞退させてもらおう。下手にゴテゴテするよりは、普段着の方が慣れてていい。俺の装備なんて、デッキケースで十分。


「そうか。まあ、慣れない物を渡しても邪魔になるだけかもしれんな。で、魔札道具はどんな物を使っているのだ?」


  わざわざ朝早くから呼び出したのは、これが目的?王様、めっちゃワクワクした顔をしてるんだけど。


「あれ?トモヨちゃんからは聞いていませんか?」

「いや。トモヨは、知っているのか?」

「いえ、あの子なら知っているんじゃないかと思いまして……。えっと、お……自分は魔札道具を使わないんです」

「?使わない?使わないとは、どういう事だ?」

「文字通りの意味です」


  俺は、デッキケースからカードを一枚引いた。

  引いたカードは、名の下にカードの『ミラーミラージュ』。ゲームでは、相手サモンドスレイヴの攻撃を無効にしてしまう名の下にだ。


「名の下に発動。『ミラーミラージュ』」


  俺は、カードを王様に見せた後、魔法を発動する。俺の手からカードが消えて、効果が適用される。


「お?」


  王様がポカンと俺を見ている間に、俺は移動した。なのに、王様の見ている先には俺の姿が残っている。


  どうやらこのカード、ヴィジョンを作り出して相手に虚像を見せる幻覚魔法みたいだ。俺が触れてみてもその像には触れられずに手がすり抜けたので、そのヴィジョンは完全に幻影らしい。


「?どうした、カナタ?」


  ヴィジョンの俺が動かなくなったので、王様が心配そうに声をかける。でも、その間に本体の俺は王様の背後に回った。


「こっちですよ、王様」


  王様の肩を、トントンと叩く。


「!?カ、カナタ!?え!?ふ、二人!?」


  振り返った王様は、後ろに俺がいる事にびっくり仰天していた。慌ててヴィジョンの方の俺の事も確認して、前と後ろをキョロキョロしている。


  このカード、本体の俺に気付いてもヴィジョンは消えないんだな。で、本体が別にいる事を認識すればその姿も見える、というような魔法だろうか。


(『恐らくは、君が触れたからだろう。生命体に触れる事で、本体が出現する。そんな感じであろう』)

(……暗殺者みたいな魔法だな)

(『実際、使っている暗殺者がいるかもしれぬな。ただ、過信はするな?この魔法、恐らく虫に触れても本体が露呈するぞ?』)

(蟻を踏んだ瞬間、引きずり出される事に……。なんか、すげえ間抜けになりそう)

「はい。これが、自分の能力です」


  俺は、魔法を解除しながら元の位置に戻った。


「……す、すげえな!カナタ!サモンドスレイヴもたくさん呼べて、魔札道具も要らずに魔法も使い放題だなんて!お前、一体なんなんだ!お前、一体なんなんだ!」


  王様は、机から立ち上がって近寄ってきた。そして、なぜか豪快に笑いながら背中をバンバンと叩いてくる。

  ああ、ロキヒノの豪快さ&背中を叩いてくる仕草は王様譲りか。つか、痛い。


「いやー、最高だなカナタは!お前みたいな奴が息子になってくれて、俺はワクワクが止まらねえぞ!」


  やっぱり、もう息子扱いなのな。


「トモヨが嫁ぐと言い出した時は何を考えているのかと不安だったが、全くの杞憂だったな!本当に、我が娘ながらあいつには勝てんわ!」


  王様も、トモヨちゃんには形無しみたいだな。むしろ、男はあの子には勝てないんじゃないだろうか。


(『負けまくっている君が言うと、説得力あるな』)

(やかまし!)

「カナタよ。今日の力比べ、面白いバトルを期待しているぞ?」

「まあ、頑張ります」


  ホント、ロキヒノそっくりだ。


  とりあえず、まずは朝食に行く事にした。さすがに、腹が減ってはイクサになれぬ、だもんな。


(『そんな言葉だったか……?』)

「あと、カナタ」


  出て行こうとする俺を、王様が呼び止めた。


「いつまで、「王様」なんて呼ぶ気だ?俺は、ユギカザだ。ちゃんと、名前で呼べ。それから、「様」なんてアホなもんは使うなよ?」


  王様が、ニカッと笑って言った。


  こんな人の血を引いてたら、そりゃロキヒノは陽キャになるわな。衛兵達のノリが良かったのも、この人の影響か。

  と言うか、様付けたらアホって……。


「はい。ユギカザさん」

「……そこは、養父さんじゃねぇか?」

「さすがに、まだ早いですって……」


  この夫婦は、まったくもうー。



  食堂に行くと、マホ達もトモヨちゃんもいた。


「おはようございます、カナタさん♡」


  ああ、トモヨちゃんは朝から眩しくなるような笑顔だ。


  さすがに今は時間が無いので、例の事を確認するのは力比べの後にしよう。嫌な事にはならない、と思う。


(『せっかくの人生初の恋人を手放したくはないものな?』)

(そこツッコミ入れるの、やめていただけますか、ダブル・ジョーカーさん)


  どうせ陰キャだよ!どうせ、二十年陰キャだよー(血涙)。


  食事が済むと、すぐにコロシアムに移動する。


「そうだ、カナタさん」


  移動途中、トモヨちゃんが寄って来た。


「カナタさん。これを、わたしに着けてくれますか?」


  彼女がそう言って取り出したのは、大きな宝石が付いた黒い色のベルト?というか、太さはともかく長さが短いから首輪?


「何?首輪?」

「チョーカーと言って下さい」


  トモヨちゃんは、苦笑していた。ああ、首に巻くあれね、あれ。


(『わかっていない』)

(最近ツッコミ激しいね、君)

『まあ、彼方くんじゃね』

「オシャレには疎そうよね、あいつ」

「まあ、トオノくんはあれでいいんじゃないかな?」

「でも、わたしもピンと来ませんでした」


  なんか、マホ達にも笑われたよ。


  俺の味方は、ヒナギちゃん!君だけだ!君に決めた!……何をだ。


「ん?お。そりゃ、例のあれか?」


  ロキヒノがトモヨちゃんのチョーカーを見て、そんな事を言った。


「はい。今日は、せっかくなので着けようかと」

「例のあれって?」

「はい。このチョーカーは、王家の秘宝の一つである魔札道具で、『ピンク・ブロッサム』と言います」


  トモヨちゃんの持っているそれは、ロキヒノの剣や鎧やマントと同じ王家の秘宝で、『ピンク・ブロッサム』という名前のチョーカーらしい。しかも、それが魔札道具にもなっているみたいだ。


  しかし、宝石は別にピンク色じゃないし、チョーカー本体は黒だしで、なんでピンクなんて名前なんだ?なんか、王家の秘宝ってズレてね?


「え?それ、魔札道具なの?」


  それを知って、マホ達も近付いてくる。


『でもこれ、どこにカード入れるの?』


  マホが、チョーカーを見ながら首を捻る。確かに、あのチョーカーにはカードを入れる為のスロットが見当たらないし、カードを収納するだけの深さも無い。


「これはちょっと変わってまして、宝石にカードを当てるとなぜか宝石の中に吸い込まれるのです」

「へ~」


  どうやらトモヨちゃんは、持っている魔札道具すら規格外みたいだな。まあ、自動的に修復する鎧とかあるんだから、今更今更。


(『?そんな鎧が存在しているのか?』)

(あ、ダブル・ジョーカーには言ってなかったっけ?ロキヒノの着けてる鎧が自動修復鎧なんだよ。いくら壊れても元通り、らしいぜ?)

(『ほう……。なかなか面白い物を持っていたのだな』)

(なー)

「わたしは普段、ほとんど着けないのですが。でも、今日はカナタさんの晴れ舞台ですので、わたしもこれくらいは着けてオシャレを頑張ってみようかと」


  そう言って、微笑んでくるトモヨちゃん。


  健気!婚約者が頑張って戦うから、それに合わせて自分も普段しないオシャレを頑張ってみようとか、なんて健気な子なんだ!

  よーし、おじさんトモヨちゃんの為になんでもしちゃうぞー。


(『もしそれを彼女に直接言った場合、彼女は何て言うと思うかね?』)

(え?……多分「今、なんでもって言いましたね?」かな……)

(『まあ、彼女は見逃さないであろうな』)

『トモヨちゃん、健気!』


  マホが、トモヨちゃんに抱きついていた。おい。


「トモヨちゃんは、化粧は必要無いからなぁ」

「肌とか艶々だもんね」

「十歳ですからね」


  でも、マホも含めてお前らも化粧はしてなさそうだけど?精々、リップくらいか?


「そういう事で、カナタさんに着けていただきたいのですが?」

「俺に?」

「はい。カナタさんに……、して欲しいです」


  なんか、トモヨちゃんの言葉には聞いてると別の意味がありそうな気がするのは、俺の考えすぎだろうか?


(『彼女がナニをして欲しがっているのは、事実であろう』)

(直球火の玉ストレートはNG!)

「お願いします」


  トモヨちゃんから、チョーカーを受け取った。女の子にチョーカーを着けてあげるとか、人生初体験だよ。

  トモヨちゃんは、長い髪を持ち上げると首を露出させた。……うなじが。


『うなじが色っぽい……。ドキドキする』


  同じ感想か、マホ!サムズアップ!


「これ、どうやって着けるんだ?」

「後ろに、とめるのがあると思いますが」

「ああ、これか」


  少し手間取りながら、俺はトモヨちゃんにチョーカーを着けてあげた。こういう時、サッとスマートに着けてあげられないのが、ちょっと情けない。


「カナタさん。ありがとうございます」


  トモヨちゃんは、また眩しい笑顔を見せてくれた。


  ああ、ちくしょう……。いっそ、流されてしまいたい。こんないい子に好かれるなんて、俺の人生で一生に一度あるかないかだぞ?


(『少なくとも、あと二回はそう思いそうだが?』)


  ……まあ、そうだな。マホとリゥムも、いい子だよ。


  一生に四度は無いと、そう思うんだよな。


(『編集点を入れたか』)

「これでわたしは、カナタさんの所有物ですね?」

「え?……トモヨちゃん?それってもしかして?」

「だって、カナタさんに首輪をハメられましたから♪」


  やっぱり、首輪じゃん……。



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