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異世界探して右往左往しても見つけたい!  作者: キングスロード田中
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第33話その2

「王!」


  突然、謁見の間の扉が開かれた。そして、中に一人の中年オッサンが入ってくる。


「?誰……?」


  オッサンが入ってきた途端、先程までの和やかな空気が消し飛んだ。衛兵達がビシッと姿勢を正し、私語も無くなって厳格な雰囲気が帰ってくる。まあ、ここ謁見の間だったからこの空気の方が正しいはずなんだけど。


「中央政府評議会の議長、トランド・ハークロ様です」


  いつの間にか側にいたトモヨちゃんが小声で、あのオッサンの事を教えてくれた。


  中央政府評議会の議長?凄い、偉そうな肩書きだな。日本で言う所の、総理大臣みたいな物なのかな?

  トランド・ハークロって名前は、どこかで聞いたような気がするけど、どこだっけ?そもそも、なんでこの国の政治家を知ってる気がするのかって事なんだけど。


「……お兄様を遠征に行かせた、張本人です」

「あ」


  トモヨちゃんの言葉で、思い出した。その名前は、ロキヒノと王様が話している時に出てきた名前だ。

  つまり、あのオッサンがロキヒノを死地に送った上で、連絡を怠った奴か。そんなふざけた真似をしたのが、下っ端じゃなくて評議会の議長とかいうお偉いさんとか、どうなってんだよこの国は?


{「そうすれば誰かの得になる」}


  トモヨちゃんは、そう言っていたな。その得をするのは、あいつか?でも、そんな事をして一体どんな得が?


「王!聞きましたぞ!」


  トランドとかいうオッサンが、ツカツカと玉座の方に近付いてくる。


「おー、ハークロさん。久し振りー」


  オッサンの姿に気付いたロキヒノが、手を振ってのんきに挨拶をしていた。


「お?おお!これは、ロキヒノ様!ロキヒノ様も、お戻りになられていましたか!」


  オッサンは、挨拶に気付くと進行方向を少し変えてロキヒノに歩み寄った。そして、両手でしっかりと握手をする。

  久し振りに会った、親戚のおじさんみたいな空気だな。


「ああ。今さっき帰った所だよ」

「話は聞いております。見事、人拐いドラゴンも山賊も退治していただけたようで!これで、我が領も平和になります!」

「?我が領?」


  我が領って、なんであのオッサン自分の物みたいに言ってるんだ?この国の王様は、ユギカザさんだろ?


「中央評議会のメンバーは、四十七に分かれた地域を管轄している領主でもあります。わかりやすく言えば、知事さんでしょうか?」


  へー、今までいた場所の責任者でもあったのか。

  でも、ドラゴン達に懸賞金掛けてたの町の人達だし、山賊は注意換気しただけで放置だったし。ジュッカー・フィフティーンの事は仕方ないにしても、このオッサンってとてつもない無能なのでは?


(『……』)


  それにしても、トモヨちゃんは察しがよくて助かるな。一言つぶやいただけで、的確に答えを返してくれるのはありがたい。


(『……果たして?』)

(?なんだ、ダブル・ジョーカー?)

(『いや、別に……』)

(なんだよ?解説役を取られて、拗ねているのか?)

(『そういうわけではない!ただ、色々と考察要因があるなと思っただけよ』)

(ふーん。……何を考察してるのかはわからないけど、まとまったら俺にも教えてくれな?)

(『うむ』)

「ああ。平和になるなら、何よりだ」

「で、トランド?今日は何用だ?」


  王様が、オッサンに尋ねた。元々オッサンは、王様に会いに来ていたみたいだもんな。たまたまロキヒノを見かけてそっち行っただけで、帰って来ていた事すら知らなかったみたいだし。


「はい。例の救世主が来ていると聞いて参りました」


  ん?救世主の話は、中央政府にまで伝わっていたのか。て事は、オッサンの用事は俺って事かよ。


「ああ。うむ。彼が、その救世主カナタ・トオノだ」


  王様が俺を手で示したので、オッサンも俺の方に目を向ける。


「ほう……。貴様が?」


  オッサンが、無遠慮にジロジロ見回してくる。こんなオッサンに見つめられても、なんも嬉しくねえー!


「は、はぁ。救世主かどうかはわかりませんけど……」

「ふむ。どこの生まれだ?高校はどこを出たのだ?救世主と言う割に、どうしてそんなみすぼらしい格好をしている?」


  オッサンが、矢継ぎ早に質問を投げ掛けてくる。


  生まれとか高校とか、そんな事聞いてくるなんて、こいつ典型的な肩書き主義か。つか、生まれは日本で高校は○×高校、なんて言っても通じないだろ、あんた。

  あと、みすぼらしいってなんだよ!?そりゃロキヒノみたいに立派な鎧とか着てないし普段着だけど、みすぼらしいって罵られる覚えは無いぞ!?


「ハークロ様。わたしの旦那様に、酷い事を言うのはやめていただけないでしょうか?」


  トモヨちゃんが、俺に寄り添ってきてオッサンに言い返した。

  あ、トモヨちゃん怒ってる。俺の為にわざわざ怒ってくれるなんて、これが彼女かぁ……。いやいや、友達の為に怒るのは普通だから感動してどうする。真穂も、結構俺がバカにされると怒ってたしな。


「これはトモヨ様。え?旦那様?」

「はい。わたし達、両親公認の下婚約いたしましたから♪」


  トモヨちゃんの言葉に、オッサンは驚愕していた。

  いや、俺も驚いたんだけど。え?もう、婚約って扱いなの?お友達から始めるって話したような気がするんだけど?


(『君は最終的に「結婚を前提とした」部分を否定しなかったからな。だから、向こう側はそう受け取ったのだろう』)

(あ、しまった……!)


  そこを、曖昧にしちゃったなぁ。さすがに、今からそこを否定するのはよくないよな?


(『下手すれば刺されるぞ?この王女、何気に怖そうだしな』)

(底知れないよな、この子……)


  ああ、とりあえず川の流れに身を任せよう……。


「なぜ、そんなどこのウマナミの骨とも知れぬ奴を?」


  馬の骨か、俺は。次は、凡骨とか言われるんかな?


「この国を救っていただける方ですから」

「それは、本当なのですかな?そもそも、それを言っているのはトモヨ様のみ。我々には確認のできぬ事ですからねぇ。そのような者と婚約するとか、トモヨ様は騙されてはおりませんか?」


  オッサンが、胡散臭い物を見るような視線を俺にぶつけてきた。

  まあ、言っている事はわからなくもない。急に現れた門外漢がいきなり王女と婚約するとか言われたら、俺があんたと同じ立場だったら同じように警戒するだろう。

  けど、俺の事を何も知らないのに好き勝手言われるのはムカつく!


「騙されているわけがありません」

「しかし……。そもそも、貴様はどこの生まれの者だ!?救世主になるくらいなのだから、さぞや立派な学校を出たのであろうな!?」


  うーん、この学歴至上主義者め。


「そんな事は、どうでもいいじゃないですか?学歴よりも、実際に行った成果を見るべきだと思いますよ、ハークロ様?」


  トモヨちゃんが、反論する。

  ここの王家は、ロキヒノもそうだけど学歴・生まれよりも成果を重視する主義だよな。結局、ロキヒノには一回も学歴とか聞かれなかったし。


  まあ、婚約しようって相手の生まれとか一切考慮してなさそうなトモヨちゃんは、それはそれでいいの?とは思うけど。つっても、調べさせようとしたって、俺の経歴なんて出てこないんだけどな!ある日突然、発生したからねー。


「そこは、トモヨの言う通りだと思うぜ、ハークロさん。むしろ、あんたはカナタに感謝しなきゃいけないくらいだし」

「は?それは、どういう事でしょうかロキヒノ様?」

「あんたんとこの人拐いドラゴンも山賊も、鉱石族の陰謀も叩き潰したのは全部、そこのカナタなんだぜ?」

「は!?し、しかしそれはロキヒノ様が……」

「やられそうだった俺を、カナタが助けてくれたんだよ。ドラゴンは、俺が行く前にカナタが倒しちまってたしな」

「こやつが……」


  ロキヒノの話を聞いて、オッサンが俺の方に目を向けてきた。ていうか、睨んでる?


「……チッ」


  なんか、舌打ちされたんだけど?小さくてロキヒノとかは気付いてないみたいだけど、今明らかに舌打ちされたんだけど、なんでだよ?


(『……まるで、「貴様が王子を助けやがったのか!」とでも言いたげな舌打ちだったな?』)


  舌打ちには、ダブル・ジョーカーも気付いていたようだ。そして、それって……。


(まさか……。このオッサン、本気でそれを狙って?)

(『さあな?あくまで、我の印象だからな。この事に関しては、王女に聞いた方が早いと思うぞ?』)


  トモヨちゃんは、怒った目でオッサンを見つめていた。彼女が怒っているのは、俺の事だけじゃなく、ロキヒノの一件の事もあるからか?


「本当ですか、それは?」

「俺が、証人だぜ。あと、一緒に戦った仲間も、証人になれる」


  ロキヒノが、マホ達を指で示す。このオッサン、マホ達の事は認識してたんだろうか?こういうタイプの奴って、興味の無い人間は視界に入れないタイプだからなぁ。


「ふん。……それでは、その救世の力とやらを我々評議会にも見せて欲しいものですな」


  見せろったって……。


「ん?どういう事だ、トランド?」

「王!隣のコロシアムの使用許可をいただきたい!そこで、我らに見せていただきたいのですよ!救世主の力と言うものを!」


  なんか、オッサンが面倒臭い提案をしているぞ?

  そういえば、この城の隣に大きな建物が建っていたな。何かと思ってたけど、あれコロシアムなのか。てか、なんで城の隣にコロシアム?


「コロシアムで、何をすると言うのだ?」

「無論、力比べという奴ですよ」

「力比べ。カナタと、誰を比べるのだ?」

「ワシが育てた最強の男、『勇者』ですよ」


 オッサンが、ドヤ顔で言い切った。

 来やがった!本当に来やがった、ファンタジー世界の超王道『勇者』!よーしよしよし。異世界モノ直球展開来たぜぇ!


(『……喜んでいるが、戦うのは君だぞ?』)

「あ」




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