第31話
ようやく、王都に辿り着いた俺達。
王都は、バトル・ファイオーに向けて大にぎわい。色々と、凄い状況だった。
そこの王城で、彼女は微笑みながら現れた。間違いない、あれがロキヒノの妹のトモヨ・リードギルフだ。なぜ直感したのか、全くわからないんだけどな。
なんだろう?何かが……。何かがこう……、目覚めろその魂!……かな?
──・──・──・──・──・──・──
「カナタさん」
そう言って、その少女は微笑んだ。
え?なんで、俺の名前を?この子、俺の事は知らないんじゃ?まあ、俺もこの子の事は知らないんだけど。
「おう。久し振りだな、トモヨ」
ロキヒノが、少女に声をかけた。
その子は、俺の直感通りロキヒノの妹のトモヨ・リードギルフらしい。
「ん……」
そういえば、ロキヒノはジュッカー・フィフティーンとの戦いの後に、家に向けてヒキャクを出していたな。もしかして、その時に俺の事も書いていたのか?
そうして見てみれば、ロキヒノの同行者で男は俺一人だ。なるほど、それでわかったのかな?……ホントに?
ロキヒノに声をかけられた王女様だけど、なぜか微笑みを浮かべたまま反応しない。
「おい?どうした、トモヨ?」
再度声をかけると、ようやく王女様が顔をロキヒノに向ける。
「ああ、いたのですかお兄様。影が薄すぎて気付きませんでした」
ズガンッと、いきなり毒舌を吐いてきたぞ、あの王女様。赤髪に白い鎧のロキヒノが影薄いって、あり得なくないか?
「いるわ!」
「はいはい。お帰り下さいませ、お兄様」
「俺がここ以外のどこに帰るんだよ!?」
「あ~ら、ごめんなさい。お帰りなさい、でした」
なんだか目を細めて、楽しそうにロキヒノを翻弄する王女様。
ああ、ロキヒノが言っていた通り、王女様小悪魔だ。あれは、男をからかって翻弄して楽しむ系の女の子だ。これは、ロキヒノが言う通りに関わり合いにならない方がいいな。絶対、俺は勝てない系だぞ。
「む。お兄様、また怪我をされてきましたね?治療はしてあげますから、腕と足どちらを失いたいですか?」
王女様、ロキヒノが怪我をしている事に気付いたらしい。
うわー、本当に言ってるよ。しかも、目が笑ってない。
「どっちも嫌だ!……一応治療して、手術もしてきたからもう大丈夫だよ」
「あら、珍しい。お兄様が、病院の存在を知っているなんて」
「知っとるわい!」
「だって、いつもは「助けてトモえもん~」って泣きついてくるので、病院の事なんて知らないと思ってました」
ニヤニヤ笑いながら、王女様はズバズバ切り込んでくる。
あー、駄目だこれは。口では、絶対にロキヒノは勝てない相手だな。王女様、年齢的に小学生だっけ?いや、ロキヒノに対して強すぎる。
しかし、この世界にまさか「ドラ○もん」があるとは……。もしかして、F先生も真穂みたいに転生してきてる?
(『そんな物は、この世界には無いぞ?』)
(え?だって、今……)
「泣きついてねえ!……いやまあ、いつも治してくれてるのは感謝してる」
ロキヒノは、王女様に対してペコリと頭を下げた。
なんか、いたずらを叱られて謝っている子供みたいなしょんぼり具合だな。しかも、謝っている相手がロキヒノよりかなり小さい王女様だから、なんだかおかしくてつい笑う。
そして、そんなロキヒノを見て「仕方ないなぁ」とでも言いたげに、王女様は微笑んだ。どっちが年上なんだか。
「まあ、後で見せて下さいな。魔法はかけますから。それより……」
王女様は、俺達の方へ顔を向けた。
「ちゃんと、お客様を紹介して下さい。みなさんが、お兄様の連絡にあった「仲間」さんなのですよね?」
やっぱり、ヒキャクに俺達の事も書いて送ってたのか。送ったのは俺だけど、当然ながら中身は見なかったからな。
「ああ、そうだな!」
ロキヒノは顔を上げると、俺の横まで来て肩に手を置いた。
「まずは、こいつが俺の親友のカナタ・トオノだ」
「ん?俺らって親友なのか?」
病院でも言ってたけど、すっかり親友扱いなんだな。
「いいだろ?俺ら、ガッツリ一緒に戦った仲じゃねえか」
「いや、俺はいいんだけど。王子様が、俺みたいな庶民を親友扱いして大丈夫なのか?」
俺が言うと、ロキヒノは思いっきり笑った。
「お前が庶民!?何言ってんだよ!お前は、俺よりよっぽどレアな人材じゃねえか!」
こいつ、どういう意味でレアって言葉を使ってるんだ?
「とにかく、俺とお前は見えるけど見えない物で結ばれた親友なんだよ。だから、これでいいのだ!」
どこのバカ◯ンの親父だ?
「見えるけど見えない物というのは何ですか、お兄様?」
王女様が、近付いてきた。
近くで見ると、髪や所作も相まってかわいいよりも綺麗だと感じる子だな。黙ってれば、結構年齢以上に見えるかも。ただ、しゃべると声がかわいらしいので、むしろ幼く感じるからちょっと不思議。
「そりゃ、お前。「友情」ってヤツよ」
ロキヒノは、物凄いドヤ顔で胸を張って言い切った。
場に、何とも言えない空気が流れた。正直、笑えばいいのかツッコミを入れればいいのか、判断に困る状況だ。
まあ、多分ロキヒノは本気で言っているんだと思うけど。
(『笑えばいいと思うよ』)
(古!ネタが古いぞ、ダブル・ジョーカー!)
ネタ入れの為に、口調まで変える徹底振り、さすがオタク!
「さすがロキヒノ、クサ」
『自分が言われたら、ちょっと反応に困っちゃうね』
「笑っちゃ駄目だよ、ヒナギちゃん」
「くすくす。そういうリゥムちゃんも……」
後ろの方で、女子陣がこそこそ小声で話し合っていた。お前ら、他人事だと思って。
「初めまして、カナタ・トオノさん。ロキヒノ・リードギルフの妹のトモヨ・リードギルフと申します。粗忽者の兄に付き合って同行いただきまして、ありがとうございました」
王女様は、ロキヒノを放置して挨拶をしてきた。
その洗練された所作は、さすがは王女様というか、育ちの良さを感じさせる物だった。彼女からは、ロキヒノには一切感じないロイヤルファミリー感を感じる。
正直、緊張する。
「あ、えっと。は、初めまして王女様。俺……自分は」
気後れしているのを感じながら、俺は姿勢を正して挨拶を返そうとする。と言っても、こういうロイヤルファミリーみたいな相手には、どういう風に挨拶していいのかもよくわからない。
「トモヨ」
俺の挨拶を遮るように、王女様が唐突に言った。
「……え?」
「わたしの名前は、「王女様」ではなく、「トモヨ」です。ですので、どうかトモヨとお呼び下さい」
「え?で、でも……」
「トモヨと呼ばない限りは、返事いたしませんので」
王女様は、いきなりプイと横を向いてしまった。
それには、俺も後ろの女子陣も唖然とするばかりだった。「王女様と呼べ」と言われるならわかるけど、「王女様と呼ぶな名前で呼べ」って言われたぞ?どう考えても、普通は逆でないかい?
「……えっと、トモヨ様?」
仕方ないので、名前で呼んでみる。
「わたしは、あなたよりも年下ですよ?」
王女様はそれだけ言って、またそっぽを向いてしまった。
えーっと、これもお気に召さないと?わざわざ年下を強調するって事は、それは……。でも、そんな呼び方していいんかい?
「ト、トモヨちゃん……?」
普通はどう考えても怒られそうだけど、とりあえず呼んでみる。怒られたら、謝ろう。
「はい、カナタさん」
王女様は俺に顔を向けて、にっこりと笑った。これが、正解だったらしい。
「あ、改めまして初めまして。カナタ・トオノと申します。本日は、お会いできて光栄であります」
なんか緊張で語尾がおかしくなったけど、俺は改めて挨拶をした。
「はい、初めましてカナタさん。こちらこそ、会えて嬉しいです。これから、末永くよろしくお願いしますね?」
王女様、トモヨちゃんも挨拶を返してくれた。
さっきまでと違って、年齢相応のかわいらしい満面の笑顔を見せている。いやー、かわいいわ。ただ、「末永く」って何さ?
「で、こっちが懸賞金稼ぎチームのヒナギ・エンリとメィム・ウィステリア。その双子の妹の、リゥム・ウィステリア。そして、聖天族のマホ・ブルームだ」
ロキヒノが、女子陣をトモヨちゃんに紹介する。楚々とした仕草で、トモヨちゃんは俺の横を通って女子陣に近付いた。
「?」
通り過ぎる瞬間、トモヨちゃんは俺にウィンクを飛ばしてきた。
うーん、いまいちどういう子なのか掴めん!
「みなさま、初めまして。トモヨ・リードギルフと申します。みなさまは是非、トモヨとお呼び下さい。あ、「様」は無しでお願いしますね」
トモヨちゃんは、マホ達には最初からそう教えていた。
いや、俺の時も最初から教えて?いきなりそっぽ向かれて、実は意外にダメージ食らってるよ?
「痴れ者の兄をここまで守っていただき、ありがとうございました」
丁寧に、トモヨちゃんは頭を下げる。
口調は優しいけど、内容は結構辛辣だな。ロキヒノに対して。
「しれもの、てどういう意味だ?」
ロキヒノはこんな感じに聞いてきたから、意味が伝わっていないらしい。勉強した方がいいぞ、痴れ者。
「ヒナギ・エンリです。初めまして、トモヨちゃん」
「リゥム・ウィステリアです。よろしくね、トモヨちゃん」
「リゥムの双子の姉の、メィム・ウィステリアです。よろしく」
『マホ・ブルームです。よろしくね~』
「……あなたがカナタさんのパートナーの、マホさんですか。よろしくお願いいたします」
ロキヒノの奴、パートナーの事まで書いていたのか。
『え?あ、うん。よろしく』
とまあ、つい王城に入ってトモヨちゃんに挨拶までしたけど、よく考えたら俺達の任務はここで終了なんだよな。ロキヒノを無事に家まで送り届ける、それが俺達の今回の任務だったからな。
ミッション、コンプリート!




