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異世界探して右往左往しても見つけたい!  作者: キングスロード田中
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第30話

 種族の命運をかける戦い、バトル・ファイオー。


 サモンドスレイヴになる前のマホは、その戦いに身を投じていた。

 そして、そこで色々あったらしい。特に、人間族の王妃ルミホ・リードギルフは元カノでなんのかんのあって別れたっぽい。


  マホだって、長い間生きてきたんだからそりゃ色々あるよな。


  君は、刻の涙を見る!……のか?


 ──・──・──・──・──・──・──


『……と、いう事だ』


  ちびダブル・ジョーカーが、夜中の事を説明してくれた。


  朝起きると、マホがロープで縛られて眠っていた。なので、ダブル・ジョーカーに説明を求めると、これだ。


「うーん。まさかとは思って一応の用意だけはしたんだけど……。まさか、本当に想定通りのムーヴをかましてくるとは」

『天使のような、悪魔の天使だからな』

「もはやわけがわからんな」

『あん……。彼方くんってば、大胆……。もっとぉ……』


  縛られながら、マホは身悶えていた。それは明らかに寝言だけど、よくあんな状態で寝られるものだ。


「って言うか、なんであんな縛り方なんだ?あれって確か亀の甲羅……」

『我は知らぬな。我は行け、と言っただけだ。あれを発動したのはマスターなのだから、マスターがああいう風に縛りたかったのであろう?』

「え、俺が?」


  俺は、縛られているマホを見て、息を飲んだ。


  俺が、マホをあんな風に縛りたい……?いやいや、あり得ない。マホをしつけたい!と考えた事はあっても、縛りたいなんて考えた事は無い。俺には、あんな趣味は無いはずだ!少なくとも、今までの俺の趣味嗜好にあんなのは入ってなかったはずなのに!


  とにかく、服を着替えてから『ライドルン・ロープ』を解除した。


「戦闘でも使えそうではあるが……」

『ロープ自体の強度は並だから、過度の期待は禁物だぞ?』

「そんな感じだよな?まあ、デッキ入りは見送るか。生活魔法だ」


  俺は、『ライドルン・ロープ』をリュックの中のストレージケースに戻した。


  デッキ外にあるカードも、一応使えるんだよな。まあ、制限枚数には入るんだろうけど、戦闘中じゃないから制限まで使う事無いから無問題。


「マホ。起きろ」

『……ん~?あ』


  俺が揺り動かすと、マホはすぐに目を覚ました。


『彼方くん?……ん!』


  マホは飛び起きて、自分の体をまさぐった。もう、既に体を縛ってたロープは解除したってばよ。


「さて、おはようマホ?」

『あ、うん。おはよう、彼方くん……』


  マホは、バツが悪そうに愛想笑いをして挨拶をしてきた。


  あの表情じゃ、自分の行動を知られていると気付いているな。まあ、ダブル・ジョーカーと攻防を繰り広げていたんだから、当たり前か。


「……まったく。油断も隙も無い」

『うぅ……。ごめんなさい』


  マホは、ベッドの上に正座して小さくなっていた。怒られてる小学生だな、こりゃ。


『そういう彼方くんだって、油断も隙も全然無いよ~』

「まあ、罠を仕掛けておくのはゲーマーの基本だからな」


  ちょっと、ドヤ。


『……!や~ん。わたし、彼方くんにハメられちゃったぁ~♪』


  マホが赤面した頬を両手で押さえ、体をクネクネさせながらそんな事を言った。


  一瞬閃いた!みたいな顔をしたのは、そんなつまらん事を思い付いたからかい!人聞き悪すぎるだろうが!


「罠にって付けろ、罠に!」

『もう……。据え膳食べなきゃ男の恥って言葉知らないの?』

「武士は食わねど高楊枝って言葉もあるんだぜ?」

『こっちの世界には無いから、そんな言葉は知らな~い。まったく、奥手なのかヘタレなのかどっちなのよ?』

「お前のムーヴは、そういう問題じゃない」


  ジトー。


「ところで。今日にはもう王都に着くけど、お前は本当に大丈夫なのか?」

『?何が?』

「いや、だから。王都って、元カノさんがいた所だろ?」

『え?ああ、そういう事?』


  俺が尋ねると、マホはいきなり笑い出した。


  おい、ちょ待てよ。一応、あの話を聞いて気を使ったんだぞ?なんで、いきなり笑い飛ばすんだよ?


『大丈夫だよ。わたしとルミホは、大恋愛の末に揉めて別れたとか、男に寝取られて失恋したとか、そういう重い関係じゃないから』

「……そうなのか?」

『うん。だいたい、ルミホは軽い性格だったからね~。付き合ってたのもえっち目的だったし、フォウンダさんと結婚した後もちょくちょくわたしの所に来ては遊んでったし。そもそも「女子とはノーカンノーカン」なんて言う子だったから、わたしも最初から真面目な付き合いする気無かったし』


  マホは、豪快に笑い飛ばしてしまった。


  うん、元カノとは色々あったのは確かみたいだけど。俺が考えてたような、深刻な事態は全くと言っていいほど無さそうだな。


「っていうか、結婚した後もとか、それっていわゆる不倫では……?」

『だから、女子とはノーカンな子だったのよ。わたしにしてみても、まあハーレムの一人ってだけな所あったし』


  そういやこいつ、ハーレム・クイーンだった。なんて、的確なカード名だろうか。カード名付けた人、すげぇ。


「……お前、カード名を『ハーレム・クイーン・マホ』にされてどう思ったんだ?」

『なんで、わたしの事を知ってるんだろう?とは思ったわよ?この世界では、そう呼ばれてたし。でも、魔フォーの制作スタッフって公表されてないじゃない?だから、考えるだけ無駄だなってすぐに忘れた』


  軽い……。軽いな、こいつは。いやまあ、答えの出ない事をグダグダ考えてても仕方がないから、正しいっちゃあ正しい反応なんだけど。


  イラストレーターの名前すら公表されてないからな、魔フォー。


『だいたい、ルミホに対して思う所があれば、その子孫のロキヒノくんに対しても何か思うはずでしょ?わたし、何かそんな態度を取ってた?』


  言われて、俺は思わず両手をポンと打ってしまった。


  そういえば、ロキヒノは元カノの子孫に当たるのか。確かに、マホはロキヒノに対しては普通の友達付き合い的な事しかしてなくて、何も思い入れは無さそうだったな。というか、基本ロキヒノには興味が無さそう?


「まあ、確かにそんな様子無かったな。それどころか、お前ロキヒノには特に関心無さそうだよな?」

『そりゃまあ。ルミホの子孫っても、所詮男の子だし。わたしが興味あるのは、彼方くんだけだよ』


  そう言って、マホは微笑む。


  そんな事を言いながら微笑みを向けてくるのは、正直反則だよ。どうしても、揺れちまうじゃねえか。


  でも、今は駄目だ。俺には、どうしてもあいつに言いたい言葉があるんだ。それを見失うのは、できれば避けたい。変に溺れると、絶対見失いそうな気がするんだよな。自分の性格的に、さ。今はとにかく、自制自制。


「でも、女の子にも興味津々なんだろ?」

『そこはもちろん!かわいい女の子なら、誰にだって興味津々だよ!興味ある男の子は、彼方くんだけだって話』


  俺は、苦笑した。


  こいつの場合、すぐ女の子に走ってくれるから、誤魔化すのは容易いんだよな。そういう点は、動かしやすいわ。


「なんだかなぁ……。まあ、それなら問題無く王都に行けるな。ちなみに、ロキヒノには妹がいるそうだけど、そこは興味無いのか?」

『トモヨちゃんの事でしょ?そこはもう、会えるの楽しみだよ!』


  一緒に戦った兄より、会った事も無い妹の方がよっぽど琴線に触れているか。


「妹さんは十歳って事だったけど、年齢は気にしないのか?」

『なんで?』


  俺の質問に、マホは本気で意味がわからない、と言いたげな顔をしていた。


  そっかぁ……。ロリである事すら、気にしないか。いくらお前も女だからって、それでいいのか?


「……守備範囲広そうだな、お前」

『ん?わたし、守備範囲は無いよ?女性であれば、基本誰でもウェルカム♪男性の守備範囲は、「遠野彼方くん」っていう範囲の人』


  女性の守備範囲、広!そして男性の守備範囲、狭!


「とりあえず、朝飯食いに行くか」

『あ。わたし、部屋に戻って着替えてくるよ』

「ああ」


  俺達は、朝の食事に部屋を出た。



「よっしゃあ!出発しようぜ、カナタ!」


  今日も、スケールに乗って王都を目指す。


「……なんか、今日は馬車が多い?」


  メィムが疑問に思うように、王都に近付けば近付くほど街道を行き来する馬車の数が格段に多くなっていた。まあ王都だから元から出入りする数は多いんだろうけど、今までに立ち寄った町とは比べ物にならない数だ。


  そして、見えてくる……壁?


(『王都……首都は、バトル・ファイオーの標的になるからな。当然、守りを固めるさ。人間領国では、王都を防壁で囲んで城塞都市を築いているようだ』)

(そうか。首都を落とされたらその時点でゲームオーバーだもんな)


  どうやら、王都は全域を石造りの壁で囲っているらしい。バトル・ファイオーの事があるから、当然と言えば当然の防衛策の一つか。その防壁も結構な高さで、外から見ているとなかなか威圧感のある首都だな。


『マスター』

「ん?どうした、スケール?」

『V1ホッパーからの映像を受信。王都の正門、裏門共に大量の出入りする馬車で渋滞が発生中の模様』


  スケールの報告と共に、モニターに馬車とそれに乗っている人間、そして兵士達にごった返している門の様子が映し出された。


「うわ。めっちゃ人いんな」

「ん?これ、なんだ!?王都の正門じゃねえか、それ!?」


  モニターの画像に気付いたロキヒノが、驚いて声を上げていた。それが聞こえて、メィム達三人もその映像に気付く。


「え?何それ!?」

「あ。見た事ある。確かに、正門だよ?」

「でも、ここからは見えませんよね?」

「正門は、もうちょい先だろ!?これって何なんだ、カナタ?」


  ロキヒノは、モニターを見た後遠くの防壁の方に顔を向けて、またモニターに戻るという事を繰り返していた。


  まあ、スケールの小型衛星の監視映像を中継しているだけだけど、テレビも見た事の無いロキヒノ達に説明するのは難しいな。原理とか説明した所で理解できるかわからないし、そもそも説明できるほど俺も詳しくない。液晶がどうやって映像を映し出しているのかとか、そんな事は知らんわ!


「スケールの能力、千里眼だ。遠くの物を映し出して、ここにあるモニターで見る事ができる能力なんだ」


  悪い、スケール。お前の固有能力って事にしといてくれ。


「せんりがん……。移動も早いし、遠くも見る事ができるって、やっぱすげえな!お前のサモンドスレイヴは!」

「馬車なんか比較にならないわね!」

「うん、凄いよ」

「さすが、トオノさんです」


  ロキヒノが、珍しくスケールを褒めてくれたんだけど……。ヒナギちゃんは、本当に変わらないね。全くブレなくて、ある意味尊敬するよ。


『マスター。このまま行くよりは、近くで降りて歩いて入った方が早いと思われる』


  ただでさえ門に行くまでに時間かかりそうなのに、スケールの姿じゃどう考えても兵士に止められるよな。スケールの提案は、もっともだ。


「わかった。手近な所で停めてくれ。みんな、王都へは歩いて入ろう」

「そうだな。なんかわからんけど馬車が一杯だし」

「確かに、歩いていった方がいいかもね」

「だね。スケールさんには、楽をさせてもらっちゃった」

「はい。ありがとうございます、スケールさん」

『マスターにとっての仲間ならば、自分にとっても仲間。礼は不要』


  あれ?もしかして、スケール礼を言われて照れてたりする?


(『あやつにとっては、生物を乗せて走る事こそが存在意義だからな。久し振りに大勢乗せてたっぷり走れたので、満足しているのだろう』)

(ダブル・ジョーカー。……車なんだから、よく考えたらそうだよな。何かを乗せて走る為に生まれてきたと言っても過言じゃないわけか。ん、満足したか)


  車なんだから、思いっきり走るのが一番だよな。


  それでも、あえて言おう!俺達の満足は、これからだ!


「今回は、本当に助かった。ありがとうな、スケール」

『また、いつでも呼んで欲しい』

「ああ。また頼むな」


  俺は、スケールをカードに戻した。正直スケールは移動・運搬等に大活躍しそうなので、デッキ外の常に使いやすい所に置いておきたかったけど、とりあえず今はデッキケースに入れておこう。



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