第26話その2
「なんか言ったか?」
『?どこに向かって言ってるの?』
「いや、何でもない」
結局、俺達はクルナ町で一週間超滞在していた。
ロキヒノは、退院から三日後には既に完治していた。それは、経過観察に診察に行った医者が驚いていたほど。
ちなみに、この人間領国にはレントゲンの機械は無かったが、『レンとゲン』という内蔵だけを透視する勅命カードを使って患部を診ていた。服は、透視できないらしいよ?
それから一週間、俺達はクルナ町の町長の依頼を受けて、改造生物の残党狩りを行っていた。マンション塔の崩壊から逃げ延びた改造生物が、街道に出て通行人を襲ったり町の方まで出没するようになっていたからだ。
奴らは、明確に人間に対する敵意を持っていた。人間を見かけると、即攻撃を仕掛けてくるようになっていたのだ。バリアリーフの呪いが、まだ残っている形だな。
そうこうしている内に、ラナさんとマナちゃんは体も回復。ようやく、自力で魔竜領国へと帰れるようになった。
「それでは」
マンション塔跡廃墟で、ラナさんとマナちゃんは変身を解除した。一週間ぶりに、二人のドラゴン姿を見る。ドラゴンなのに二人って、おかしいけどさ。
ちなみに、服を破かない為に二人は全裸になってから変身を解除したので、その瞬間は俺とロキヒノは後ろを向かされていた。
「なんか、人間の姿を見慣れちゃって竜の姿が凄く新鮮」
メィムが、苦笑しながら言った。
わかる。俺らにとっては、変身した人間の姿の方が一緒に過ごした時間長いからな。既にドラゴンの姿に違和感を覚えるようになっちゃったな。
そして、ドラゴンになると俺達より遥かにでかくなるラナさん。
「魔法、ありがとうございました」
ラナさんが、カードとパスケースを差し出してきた。
「まあ、なんかの役に立つかもしれないんで、持ってて下さい」
でも、俺は受け取らなかった。これは、全員の総意でもある。
「でも……」
「どうせ拾ったカードなので、気にしないで下さい」
一枚は俺のだけど、あまり有効な使い道思い付かないしいいだろ。
「……それでは。せっかくなので」
しばらくカードを見ていたラナさんは、納得してくれたようだ。
「カナタ樣……」
その横のマナちゃんは、泣きそうな表情だった。まあ、一週間ですっかり懐いてくれてたからな。俺も、なんか妹ができたみたいでちょっと楽しかったから、少し寂しい。
「俺、これから先も旅しなきゃならないから、魔竜領国にも行くよ。その時にでも会おうよ」
俺が頭を撫でると、マナちゃんは顔を明るくした。
「来てくれる!?」
「うん。行く行く」
「絶対だよ!絶対遊びに来てね!」
「ん。それまで、元気にやるんだよ?」
「うん!わたし、それまでにすてきなれでぃーになってるね!?」
「あ、うん。頑張れ」
誰だ、マナちゃんに変な言葉教えたのは?
「それでは、ありがとうございました」
「ばいば~い!」
ラナさんとマナちゃんは、翼を広げて魔竜領国へと向けて飛び去っていった。ラナさんがマナちゃんを気遣いながら仲睦まじく飛んでいく姿は、なんだかほっこりする。
『行っちゃったね。いつか、魔竜領国に行って会えたらいいね』
「ああ」
「しかしまあ、『ツキタネ・シーカバー・ドラゴン』のせいで竜の印象悪かったけど、ラナさん達のおかげでそれ払拭できたわ」
メィムが、う~んと伸びをしながらそんな事を言っていた。
まあ、お前はあれと散々戦ったからな。でもまあ、あのカバは特別素行が悪い奴だったという事で。あくまで重要なのは個人であって、種族が悪いわけではないさ。
「だね。マナちゃん、かわいかった」
「はい。ラナさんも、いい人でした」
『いい人っていうか、いいドラゴンだね』
「あ、そうでした」
女子陣は、そんな事を話ながら笑っていた。
「さて、ロキヒノ。そろそろ、お前んちに向かおうか」
ラナさんとマナちゃんが帰宅したので、こっちも王都へ向かう時間だ。いつまでも、「私が動く時ではない」とか言ってる場合じゃねえ。
「そうだな。だいぶ足止め食らったしな。まあ、今日は町長の所に行って依頼終了の報告をしてくるから、出発は明日にしよう」
「わかった。じゃあ、今晩はのんびりしよう。全員、町に帰るぞー。明日にはここを発つから、やり残しの無いようにしろな?」
「「「は~い」」」
俺達は、町へ戻る。
その途中、マホがちょこちょこと寄ってきた。
『彼方くん。今晩、お酒飲まない?』
「お前は、酒飲むのは禁止だと言ったはずだ」
『うにゅう……。やっぱ駄目?』
「当たり前だ。……だいたい、酒の勢いに任せてした所でお前記憶飛ぶだろ?お前は、覚えてなくていいのかよ?」
俺が聞くと、マホは視線を外した。
『それは……。その、覚えていたい』
「だろ?だから、お前は酒は全面的に禁止な」
『う~。しょうがないか……』
マホは、大きなため息をついていた。それでも、一応の納得はしてくれたみたいだからよかったわ。
いや~。女の子に迫られるのは嫌じゃないけど、さすがにあんなやり方と覚えてないってのは質が悪すぎだからな。今の内に、規制しなければ。
(『環境を荒らす者は、即「使っちゃダメカード」行きだな』)
「まったくだ」
禁止、禁止ー!
[バリアリーフ]タイプ:地
職業:科学者(鉱石族)
装備:両腕に仕込んだ改造道具
常に光る眼鏡
所持魔法:無し
合体機能あり
※人間領国のクルナ町付近にあるマンション塔で、生物を鉱石族(超越族)に改造していた鉱石族の科学者。
他種族を見下していて、実験体にしか思っていなかった。
魔竜であるラナ・アリウスとマナ・アリウスを改造する為、人間領国に潜伏していた。その実験と慣れの為に、辺りの獣生族と塔に隠れていた人間族四人を改造した。
その目的は、世界中を自らの作った改造生物で満たし、自らが世界を支配する事。
イッヌを探しに来たカナタ・トオノ達と交戦。切り札の巨大合体を見せるも、カナタ達の連携に突破されて崩壊。最後は、ロキヒノ・リードギルフに真っ二つにされた上、自らがばら蒔いたミサイルによって爆死した。
悪の組織ジュッカー・フィフティーンの首領。
[ジョシュ]タイプ:地
職業:助手(鉱石族)
装備:改造道具を仕込んだ六本の腕
倍作業をこなせる前後の顔
所持魔法:無し
合体機能あり
※バリアリーフ配下の鉱石族。同一規格の姿で、全部で十四体いる。一応感情のような物は見せたが、バリアリーフの命令には絶対服従の模様。
カナタ・トオノ達と交戦したが、全て破壊された。
[グレート・バリアリーフ]タイプ:地
職業:巨大ロボ(鉱石族)
装備:体長15メートルの巨大な体躯
全身に装備されたミサイル
所持魔法:無し
必殺技:目からビーム
ジム・ギガンテス
※追い詰められたバリアリーフが発動した真の力。破壊されたジョシュ達のパーツを一つに集め、グレート合体した最終形態である。
山をも砕き、周辺一帯を焦土と化す超攻撃力を持つ。
バリアリーフを中心に破壊されたジョシュを強引に呼び寄せて合体しているので、バリアリーフにとってはジョシュも強化パーツ程度でしかなかったようだ。
マンション塔を破壊し、山や周囲を爆撃した。
しかし、ロキヒノ・リードギルフとメィム・ウィステリアの陽動に撹乱され、ヒナギ・エンリの『スロー・ライフ』に動きを制限。その間に準備を整えたリゥム・ウィステリアとサモンドスレイヴ『ブレイドラ・レンゲリス』トーリ・サッカーによって、氷漬けにされた。そして、その一瞬にカナタ・トオノとマホ・ブルームの突撃で合体制御の宝玉を破壊され、合体が維持できず瓦解した。
合体キーワードは、「ベストビルドマッチ」。
[ブレイドラ・レンゲリス]タイプ:氷
職業:自称殿の一番の忠臣(人間族・サモンドスレイヴ)
装備:日本刀
マスター:遠野彼方
必殺技:四剣・一之太刀 剣・始・朔・月
※特殊能力「凍結」所持(斬った物を一瞬で凍らせる)
召喚口上「見えない力を導く為に!その勇気研ぎ澄ませ!乾坤一擲、一必奏成!天下御免の侍魂!いざ、出陣せよ!サモンドスレイヴサモン!『ブレイドラ・レンゲリス』!!」
カナタ・トオノの二体目のサモンドスレイヴ。
元々十年前にデッキに入れられたカードで、それ以来ずっと使い続けているサモンドスレイヴだった。期間だけ見れば、『ハーレム・クイーン・マホ』と同期。
カナタを主君と見定めていて、「殿」と呼び掛ける。
グレート・バリアリーフと戦うカナタの前に、自らデッキから飛び出し出現。その凍結の力をもって、戦いを勝利に導いた。
本名、トーリ・サッカー。




