第25話その2
「こ、鉱石族ですか……?」
後ろの方で、ヒナギが不安そうに言っているのが聞こえる。
まあ、昨日の今日だからな。あまりいい印象無いのは、仕方がないか。俺も、人の事言えないし。
『大丈夫だよ。あれは、わたし達の仲間だから』
マホが、ヒナギにフォローを入れていた。
「そ、そうなんですか?」
『そうそう。昨日のあいつとは全然違うから、大丈夫。安心して』
「マ、マホちゃんがそう言うのでしたら……」
ヒナギは、マホの言葉に一応納得したようだ。ただ、その横でメィムが首を捻って不思議そうな顔をしているのが気になる。別に、言ってる事を信用していないってわけではなさそうだけど。
『久し振りだねー、スケール君。君、スポーツカータイプだけどこんな整地されてない所を走っても大丈夫なのかい?』
『問題無い』
ブラックに聞かれると、スケールは短く答えた後少し車高が高くなった。
スケール、話す時にヘッドライトがパチパチ光ってるな。なんか、それっぽい。というか、ロボットに変形しそうだな。
『『ドライ=ブロン』か。……前から思っていたのだが、お主ロボットに変形したりとかはできぬのか?』
あ、ダブル・ジョーカー同じ事考えてた。
『できない』
『なんの事なんだい、ダブル・ジョーカーの旦那?』
『いや、何でもない』
ダブル・ジョーカーが、そっぽを向いた。もしかして、オタクネタを入れた事にちょっと恥ずかしくなった?
「サモンドスレイヴを四体召喚ですか……。なんと言えばよろしいのでしょうか……」
ラナさんは、呆然としていた。まあ、普通ならあり得ない光景なんだろうな。
「そんなの、カナタ樣すご~い!でいいんだよ、ママ!」
対するマナちゃんは、楽しそうだ。
「ラナさんの気持ちは、凄くわかるわ」
「あはは……」
「でも、本当に凄いですよトオノさん」
ヒナギ……。お前、マナちゃんみたいになってるぞ。
「あんた……。マナちゃんそっくりになってるじゃない、ヒナギ」
あ、メィムも同じ事考えてた。
「そ、そうですか?」
自覚無しか、ヒナギちゃんよ……。
まあとにかく、これでサモンドスレイヴが計四体。魔フォーではフィールドに出せるサモンドスレイヴは四体までだったけど、ここはどうかな?
「ドロー」
引いたカードは、五体目のサモンドスレイヴである人間族の『桃浦金竜之助』。トーリと同じ武士系のサモンドスレイヴだけど、格好が赤い着流しなので武士というよりは浪人に見える。
向こうの世界では特に変に思わなかったけど、この世界にこんな日本人みたいな奴いんの?トーリですら格好は侍っぽいけど、本名はトーリ・サッカーでカード名は『ブレイドラ・レンゲリス』という横文字なのに。
「ふむ。このカードは……」
(『おい、マスター!やっとオレを引いたのかよ!いつまでも待たせやがって!早く、暴れさせろ!』)
頭の中に、物凄い怒鳴り声が聞こえてきた。
え、これもしかして『桃浦金竜之助』の声?めっちゃ、チンピラなんだけど。
『殿。今のは桃浦さんの声ですね?』
トーリが、声をかけてきた。トーリにも聞こえたのか、あの声。
というか、桃浦が名字なのか。
(『てめっ、トーリ!何オレを差し置いて出てやがんだ!』)
なんか、カード自体が動き出してトーリに向かっていったぞ。まあ、トーリも最初は自分でデッキから飛び出してきたけど。
『いえ、殿に呼ばれたので……』
(『お前が先に出てどうすんだ!オレに出番を譲れ!』)
『そ、それを拙者に言われても……』
『相変わらず、柄が悪いですねセンパイ』
ブラックが、会話に入ってきた。そして、復活するセンパイ呼び。
(『てめえもか、このハネ公!オレに出番をゆ・ず・れ!』)
桃浦が、ブラックにもにじり寄っていく。
ハネ公?ブラックには翼があるから、それでか?それだと、マホまで「ハネ公」になるけど。
『ホントに、センパイは騒がしいんだから。……あんまり騒がしいと、お仕置きされちゃいますよ?』
ブラックは桃浦のカードを手に取ると、さりげなくイラスト面を女子陣の方に向けた。
(『うげっ!』)
明らかに、マホを見てぎょっとしてたな桃浦。
……えーっと、マホってもしかして俺のデッキの中じゃボス的な扱い?しかも、かなり恐れられてるし。
(『……ていうか、今敵はいねえのか?』)
桃浦が、俺の手元に戻ってきた。
「ああ。今は、ちょっとした実験中でな。サモンドスレイヴを何体まで出せるか、魔法をどこまで使えるか。それを、調べている所なんだ」
(『ああ。それでトーリか』)
『ム。それはどういった意味でしょうか?』
あ、トーリでもちょっとムカッて来てるみたいだ。
(『はっ!戦闘なら、オレを優先するに決まっているからな!戦闘以外なら、お前程度で十分だって事だよ!』)
『それは、聞き捨てなりませんね!拙者だって、殿のお役に……』
(『てめえの話なんかにゃ、興味ねえな。じゃあ、マスター!さっさと、実験してくれや』)
「……ああ。わかった。ちょっと離れてくれるか、トーリ?」
『は、はい!申し訳ありません、殿!』
トーリが頭を下げながら下がったので、俺は召喚準備に入る。
のだが、召喚の為の魔法陣がいつもみたいに発生しない。
「……あれ?魔法陣出てこないな?」
(『どうしたい、マスター?』)
「いや、召喚の為の魔法陣が出てこなくてさ……」
『ふむ。召喚制限ではないか?』
ダブル・ジョーカーが、近付いてきて言った。
「召喚制限?やっぱり、召喚できるのは四体までって事か?」
『ではないか?そうでなければ、魔法陣が形成されるであろう?』
こんな所まで、現実がゲームに縛られてるのか。色々、よくわからないな。この世界も、俺自身も。
(『で、どうなんだよ?』)
「悪い、桃浦。どうやら、今は席が埋まっててお前を呼び出せないらしい」
(『ふーん、そうなのか。まあ、今は別に戦闘中ってわけでもないから、オレは呼ばれなくても構わねえけどよ』)
案外、桃浦はあっさりとしていた。まあ、戦闘中じゃなくて暴れられないから、桃浦には意味が無いのか。
うん、チンピラ思考。
「悪い。また、次な」
(『おう!今度は、トーリよりも先に呼べよ!』)
『なぜ、拙者狙い撃ちなのですか……?』
俺は、桃浦のカードをデッキの一番下に戻した。別に持っててもいいしゲームでは勝手に戻すのはルール違反なんだけど、この世界では手が塞がると邪魔になるし、戻したからってルール違反にはならないみたいだしな。
その後、俺は召し物を二枚発動しようとしたが、発動したのは先に発動した一枚『サガン・スピア』だけだった。
「俺が発動した召し物は、『ローリングバルカン・キャノン』に『イージスの盾』。それから『バンシューティング・ギャレン』に『サガン・スピア』の四枚。ローリングバルカンは破壊されたけど、数には入ったままという事で、これも発動限界数は四枚か。俺の場合、破壊されても場から排除されなくて意味無く制限数にカウントされてしまうという事だな」
これも、魔フォーと同じルールか。まあ、『ドリル・カイザー』はそれを超えられるだろうけど。
「勅命発動。『エンタメ・イリュージョン』」
勅命カードも、発動できるのは四枚までだった。
『ちょっと、マスター?派手で恥ずかしいですけど?』
ちなみに、『エンタメ・イリュージョン』を発動するとなぜかブラックに七色のマントが装着されていた。勅命カード『エンタメ・イリュージョン』は、魔王族が自分の場にいる時に発動できて、相手のサモンドスレイヴを破壊すると破壊したサモンドスレイヴの攻撃の数値分、追加で相手のHPを削る事ができる勅命だ。
「いや、白スーツのブラックに言われても……」
ブラックの素の格好も、十分派手だと思うぞ?
まあ、ここまで来れば大体は予想通り、名の下にカードも発動制限は四枚だった。
魔フォーは、基本「全てが4になる」と言われたゲームで、フィールドに出せるカードとデッキに投入できる枚数が四枚ずつだったからな。魔Ⅳってな。まあ、強力カードは一枚しか入れられない物とか設定されてたけど。
「はぁ。こんな所か」
とりあえず、それぞれの発動枚数が把握できたのは収穫だった。特に、破壊されたカードがそのまま制限数にカウントされるのはヤバかった。それを知らずに使ってたら、肝心な場面で使えないなんて事になる危険性があったぜ。
『うむ。無尽蔵に使えるわけではない、というのがわかったな』
「ああ。今までは何とか間に合っていたけど、これからは少し考えないとな」
『だが、出し惜しみはノーだぞ?』
「それでやられちゃ、意味無いからな」
俺は、サモンドスレイヴ達に顔を向けた。
「ダブル・ジョーカー。ブラック、トーリ、スケール。今日は、俺の実験に付き合ってくれてありがとうな」
『構わぬよ。こちらにとっても、知識を増やす有意義な時間であった』
『マスターのお役に立てたなら、幸いだよ』
『殿の為ですから!』
『いつでも、役に立つ』
「ああ。じゃあ、また頼むな」
俺は、サモンドスレイヴを全員カードに戻した。
「それじゃあ、今回の出し物は終了な?リゥム、ヒナギ。二人とも、召し物持っててくれてありがとうな」
「ううん、いいよ」
「はい」
俺は、二人に渡していた召し物も回収した。全てのカードが手元に戻ってきたので、一応確認してからデッキに戻す。
いや、今回は俺一人だけだからいいんだが、カードの確認はある意味癖だからな。大会とかイベントとか、ちょっと油断するとパクパクする奴とかいるしさ、カードゲーム業界。俺や真穂はまあ、被害受けた事無いけど。
『お疲れ~、彼方くん』
「どうぞ、座りなさいな」
レジャーシートに空きを作ってくれたので、俺はそこに座った。すると流れるようにお茶を出してくるヒナギが、何だか甲斐甲斐しい。
「なんと言うか、驚く事ばかりでした。人間が、ここまで凄かったなんて」
ラナさんは、最後まで驚きっぱなしだったようだ。
「あの、ラナさん?カナタを人間の基準に置かないでもらえますか?あんな事できる人間、他にいませんから。むしろ、人間超えてますよこいつ」
「人間超えてるって……。じゃあ、俺はなんなんだよ?」
「ん?ん~、超越族でいいんじゃない?」
「なんかイメージ悪いから、やめろ」
「カナタ樣は、もう神様でいいよ~!」
マナちゃんが、俺に抱きついてきた。
ああ、ついに神様に昇格だよ。
「えっと、なんだっけ?「カナタって人間の名前は、もう捨てた。これからはカナタ神と呼べ!」だっけ?」
メィムが、茶化すように言う。
いや、それはツーカーに教えた悪役の言葉だから!
「呼ばんでいい!」
「あはは」
こんな風にゴチャゴチャやっている間に昼になっていたので、俺達はそこで持ってきていた弁当を食べて過ごした。ちなみに、この弁当は材料を買ってメィムとヒナギがホテルの厨房を借りて作ったらしい。
「マホとリゥムは?」
『えっと、わたしは……』
「ちょっと苦手で……」
マホとリゥムは、料理が苦手のようだ。
「おう、みんなどこに行ってたんだ?」
昼食を終えてホテルに戻ると、ロキヒノが退院してきていた。手術後、ほとんど無理やり出てきたらしい。
「これ以上寝てると逆に死んじまうわ」
王家の人達よ……。誰かこの脳筋を、ちゃんとしつけろよ!




