第23話
グレート・バリアリーフを倒した俺達は、事態の収拾作業に入った。
とりあえず、発端のイッヌを届けて、ボロボロのロキヒノを医者にかからせる。その一方で、救出した『シャイン・ポケッツ・ドラゴン』のラナさんとマナちゃんを町で静養させる為に、拾った魔法で人間の姿へと変身させる。
こうして、ラナさんとマナちゃんを人間の姿に変わらせた。これで、二人を町へ連れていく事ができる。
さあ、僕達の領域に招待してあげるよ!……俺も余所者だけどな!
──・──・──・──・──・──・──
「まったくもう~。これだから男って……」
あの場を離れてしばらくして、メィムは俺を解放した。まあ、プリプリ怒っているんだけども。
「しゃーねえじゃん。あんなのを、いきなり見せられたらさぁ。あれは、目行くだろ」
「……いやまあ、あそこまで行くとさすがにわからないでもないけど……。あたしですら、一瞬釘付けになったし……」
「感想も、凄いしかでねーわ」
「確かに……。リゥムですら霞むなんてね」
メィムが、ため息をついて自分の胸元をなぞっていた。
んー、まあ。安易な慰めをしても逆効果だろうから何も言わないが、女の子の魅力ってそこだけじゃないだろ?だから、あんまり気にすんなよ!俺はほら、真穂があれだったからそんなんでも嫌いじゃないし!
そんなんでもとか、絶対ぶっ飛ばされるな。
「はぁ。とにかく、あのままにはしておけないからさっさと服を買って戻りましょう。ちなみに、カナタはどんな服が好み?女性の服は」
「スカート……。あ、いや!べ、別になんでも!」
俺は慌てて言い直したが、既に遅かった。メィムは、ニヤニヤ笑ってにじり寄ってくる。
「へ~。スカートが好みなんだ~?うふふ、もしかして女の子女の子してる格好が好きなのかしら~?」
「別にそういうわけじゃ……」
正直、真穂がスカート派で私服をスカートしか穿かない人間だったから、それで刷り込まれているんだよな。女子の格好はスカート!って。
「もしかして、あたし達に会ってラッキーって思ってた~?」
メィムが、スカートをチョイと持ち上げてそんな事を言っていた。
いや、お前はその下は短パンだってわかってるから、そんな事されても何とも思わないな。あと、お前らに会えてラッキーだって思ってるのはマホの方だろうよ。
「俺は、別に……」
「そう?……あたしは、カナタとマホに出会えてよかったと思ってる」
メィムがそう言ったので、俺は顔を向けた。彼女は、さっきとは違って柔らかく微笑んでいる。
「リゥムの事、助けてくれてありがとうね」
「ん?ああ、あれか。いいよ、気にするな。仲間、だろ」
ロキヒノも言ってたし。
「うん。あなた達二人を見てると楽しいし、リゥムも楽しそうだし、ヒナギはなんかカッコよくなってきちゃったし。仲間になってよかったわ。最初は、助ける気無かったのにさ」
「ん?助ける気が無かった?」
「だって、カナタが拐われてたあの時、カナタが10メートルくらい上から落下するのをわかってて攻撃したし」
メィムは、苦笑していた。
そういや俺、あの時高い場所から落とされたんだった。人拐いドラゴンに捕まってたから。こいつ、俺が落ちる事を想定してて攻撃したんか。
「そうだった。お前、躊躇無く攻撃してたな」
「そこはほら、カナタだからなんとかすると思って」
「お前あの時、俺の事知らんかっただろうが!」
もっと言えば、俺も知らなかったけどな!自分のできる事。
「あはは。あの時はごめんて」
「まあ、終わった事だからもういいけどさ」
「や~ん、カナタってば男前~。愛してるわ~」
いきなりのメィムの言葉にドキッとしたけど、あの態度はマホと違ってただのおためごかしみたいなもんだな。
そういうとこだぞ、メィム。絶対、それで勘違いした男子を量産してきたろ。
「はいはい。つっても、どうせお前の愛は全部リゥムに向いてるんだろ?そっちに愛情注いどけよ」
「え……」
俺の言葉に、メィムは絶句していた。しかも、耳まで真っ赤になっている。
ありゃあ、これはガチで妹に対してマホってるな?いやまあ、そんな様子は所々で見受けられたけども。
「な、何を言ってるのかしら!?あ、あたしがリゥムをそんな……!?」
下手な言い訳タイムが始まったな。ふむ、フォローはしとくか。
「妹が大切なのは姉妹なんだから、当たり前なんじゃねえの?それが、姉妹愛ってヤツなんだろ?」
「へ?……そ、そりゃもちろんよ!リゥムは、あたしの一番大切な妹!あたしは、リゥムを愛してるわよ!」
「まあ、そうだろうな」
「そうよ!まあ、とにかくさっさと服を買いましょう」
スタスタと、メィムが歩いていく。
うーん、リゥムの態度を見る限り、あっちは姉妹以上の感情は無さそうだけど。俺がどうこう言う立場じゃないけど、まあがんばれ。
そんなこんなで、俺達は二人分の服を買ってラナさん達の所に戻った。女子陣が説明して、とりあえず服を着てもらう。もちろん、俺はその様子を見られないように遠くで隔離されていたので、どんな風に着ていたのかは知らない。
「なるほど。人間の方が色々な体色をしているように見えたのは、こういう事だったのですね」
ラナさん達には、人間が服を着ているという概念自体が無かったみたいだ。まあ人間に興味が無いと自分の常識で判断するから、そんなものか。
そんな折、リゥムが戻ってきた。一人で。
「リゥム、ロキヒノは?」
「イッヌを届けた後、お医者さんに診てもらったら手術が必要だって事で。だから、今日は病院に入院するんだって」
リゥムが、説明した。さすがに、ちゃんとした医者に見せたら入院させられるわな。
「そうか。まあ、ボロボロだったからな。しょうがない。部屋はこっちで手配を……」
ラナさんとマナちゃんが静養する為に、ホテルの部屋を用意しないといけないからな。金はまあ、ロキヒノに後でなんとかしてもらおう。
「入院する前に、ホテルの部屋は用意していったよ、ロキヒノくん。お金も、一週間分くらいポンと出していった」
「何!?いつの間に……。ロキヒノ、変な所では優秀なんだよな」
「変な所はないでしょう。それなら、町に戻りましょう」
ラナさんとマナちゃんを連れて、俺達は町へと戻った。
人間の町は珍しいらしく、マナちゃんはあっちをキョロキョロこっちをキョロキョロとおのぼりさん状態だ。
ホテルには、確かにロキヒノの名前で新しく部屋が取られていた。
多分だいぶ先にはなるけど、旅の終わりが来たらロキヒノに雇ってもらおうかな。
女子陣が、二人を部屋に連れて行って使い方を教えるそうだ。まあ、そこには俺が行く必要は感じなかったので、俺は教えてもらったロキヒノの入院先へ行ってみる事にした。
「病院の外観は変わらんな」
教えてもらった病院は、向こうの世界で言う総合病院のような趣だった。受付のお姉さんに病室を聞いて、俺は階段を上がる。今日は、階段を上がったり下がったり忙しいな。だから、エレベーターを作れエレベーターを。
「結局入院か」
ロキヒノの病室は、さすがに個室だった。
「おう、カナタ。まあ、どうしても血を止められない箇所があるらしくてな。今からトモヨを呼びつけるよりは現実的だろうとな」
「王女様もいちいち呼び出されたらそりゃ大変だろう」
「んー、まあトモヨはすっ飛んで来るとは思うけど、そろそろ「血は止めてあげますから、その代わり足を一本もらいますね♡」とか言ってくるだろうからな」
そろそろって、王女様にめっちゃ迷惑かけてる系か。
「わお、冗談キツい子だな」
「いや、あいつは本物だ。あいつは、やると言ったら必ずやる。あいつに、冗談は通じないんだ」
「え」
ロキヒノの態度を見て、俺は息を飲んだ。あいつのあの様子では、王女様はかなりヤバそうな感じだ。
なんなんだ、ここの王家。脳筋兄貴にヤバそうな妹って。
「トモヨは小悪魔だ。お前は関わり合いにならない方がいいぞ」
妹を小悪魔呼ばわりした上で、明らかに親切心から関わるなと言う兄。どんな妹なんだよ、王女様。興味は引かれるが、あのロキヒノがこう言うくらいだから関わらん方がいいな。
「……そうだな。なるべくそうするわ」
「ああ。俺は、親友が壊れる所は見たくない」
いや、ホントにどんな王女様なんだよ!
まあ、どうせド庶民の俺が関わる事は実際問題、無いだろう。これは、さすがにフラグにはならないはずだ!
「明日すぐ手術やって、すぐに退院するからそれまで待っててくれ」
「そもそも、お前が家に帰るのに付き添ってんだから、お前が動けない間は動かねえよ」
「それもそうだな。あ、手紙書いたんでヒキャク屋に行って出しといてくれないか?王宮宛てって言えばわかるだろうから。ほい、金」
ロキヒノが手紙と金を出してきたので、俺はそれを受け取った。
「わかった。まあ、手術前くらいは大人しくしてろ。日課だからって鍛練なんかに行こうなんてするなよ?」
「さすがに今日はしねえよ」
いまいち信用できなかったが、俺は病室を出た。受付でヒキャク屋の場所を教えてもらって、手紙を出してくる。
(……ああ、そういえば。ダブル・ジョーカー、起きてるか?例の鉱石族との戦いは終わったぞ)
俺は、ホテルへの帰り道、ダブル・ジョーカーに話しかけた。ダブル・ジョーカー、まだ俺の中の奥に引っ込んだままだったんだ。
(『……真か?』)
ややあって、ダブル・ジョーカーが答えた。かなり、警戒しているみたいだ。
(周り見れば、わかるだろ?)
(『……ふむ。確かにそうみたいだな』)
俺の中に、ダブル・ジョーカーの気配が帰って来た。
(『それで、戦いはあったのか?やはり、敵は鉱石族であったか?』)
(ああ。鉱石族の科学者が、世界中の生物を改造して自分の支配下に置く為の実験をしていたよ。獣生族だけでなく、人間や魔竜族まで改造しようとしてた)
(『やはり鉱石族であったか。それで?町にいるという事は、決着は着いているという事なのか?』)
(ああ。改造生物で世界を支配しようとしていた悪の組織、ジュッカー・フィフティーンはその首領バリアリーフと共に滅ぼしてやったよ)
(『それはまた……。ヒーロー特撮かロボットアニメのような展開だったようだな』)
正に、その通りだよ!
(ああ。……それに関して、ダブル・ジョーカーに謝らないといけない事があるんだ)
(『?我にか?』)
(ああ、実はさ……)
俺は、ダブル・ジョーカーに敵の首領、バリアリーフの使った真の力の事を事細かに説明した。それはもう、その情景が思い浮かぶくらい、臨場感たっぷりに。そう、グレート合体の様子を!
(『バ、バカな……。グレート合体による巨大ロボ、グレート・バリアリーフだと……』)
ダブル・ジョーカーの声は、愕然としているようだった。
(そうなんだよ!しかも、胸に輝くはライオンの顔!!)
(『なんだとぉ!?パーフェクトではないか!!』)
(おまけに、その必殺技は全方位ミサイル!)
(『あ、あの伝説の!?な、なんという不覚!そんな、そんな歴史に残る瞬間を見逃していようとは……!』)
ダブル・ジョーカーの嘆きの声が聞こえる。多分、今のダブル・ジョーカーはorzな体勢になっているんだろうな。
(『マスター!なぜ、我を呼んでくれなかったぁ!?』)
おおぅ、ダブル・ジョーカー涙声なんだけど。ガチショック受けとる。
(巨大ロボ相手で生き残るので必死でさ。呼んでる余裕が無かったんだ。まあ、代わりに『ブレイドラ・レンゲリス』のトーリは呼んだけども)
(『ぬぅ……、巨大ロボ相手ではやむを得んか。?『ブレイドラ・レンゲリス』?あやつ、こちらに来ていたのか』)
(ああ。ダブル・ジョーカーも知ってはいたのか?『ブレイドラ・レンゲリス』に精霊がいた事?)
(『まあ、我は主に桜咲真穂嬢のデッキにいたが、君とも近くにいたからな。君のデッキの精霊はだいたい知っている』)
トーリも、元からいたのか。あいつも、十年どうこう言っていたしな。
(そうか。……そういや、『ブレイドラ・レンゲリス』は本名トーリ・サッカーらしいんだけど、ダブル・ジョーカーには本名ってあるのか?)
(『ん?まあ、あるにはある。だが、我はこの名前で通っているがな』)
(確かに、万策尽きしカバもダブル・ジョーカーって呼んでたな。……でもまあ、相棒なんだし、俺にくらい本名を教えてくれよ。そんなに隠したいか?)
(『別に隠すつもりは無いが。……我が名はフィリップ。フィリップ・レフトだ』)
ダブル・ジョーカーが、本名を教えてくれた。
フィリップ……。なんか、賢そうな名前だ。さすが、知識の番人。
(呼ぶのは、どっちがいい?)
(『ダブル・ジョーカーで良い。こう言ってはなんだが、そちらの方が有名だしな』)
(了解。……次は頼むぜ、ダブル・ジョーカー)
(『うむ。次に鉱石族が出てきた時は、積極的に出て行こう。次こそ、決定的シーンを見なければ!』)
燃えてるなぁ、オタク知識の番人。
(『ところで、グレート・バリアリーフでは別の物を思い出すのだが……』)
(やっぱりお前もそれ、思い出すか)
あれって、ホントにどこにあるんだ?




