第22話
巨大ロボ、グレート・バリアリーフの戦闘力は強大だった。それを倒す為にできる事は、捨て身で弱点を突く事のみ。
全員の力を結集させて、俺達はグレート・バリアリーフの胸の隠された宝玉を破壊する事に成功した。これが、結束の力だ!
俺達の前で、巨大ロボが崩れ落ちていく。
よっしゃあ!これで、新しい章の始まりだ!いざ、イントゥザ……、エクディウム!
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グレート・バリアリーフが、合体形態を維持できずに崩壊していく。
やっぱり、あの宝玉はかき集めたパーツを一つにまとめる制御装置だったか。ありがとう、あなたのおかげで勝てたよ、ポケドラさん。
「ふおー!ギャフン!」
瓦解して地面に落ちていく残骸の中から、バリアリーフが放り出された。体のあちこちがバチバチとスパークしているので、グレート・バリアリーフの崩壊はあいつ本体にもダメージを与えたようだ。
と言うか、ギャフンって言った!よりにもよって、ギャフンって!
「お、おのれ……。たかがニンゲーンごときに破壊されるとは。こ、ここは一度撤退をして態勢を立て直し……」
「おら!」
残骸から這いずって逃げようとしていたバリアリーフだが、その手をロキヒノが思いっきり踏みつけた。
「ぐあ!ニ、ニンゲーン!」
「さあ!これで終わりだ!」
髪も体も赤に染めて、なおロキヒノは真っ赤に燃える剣を振りかざす。
その姿、まさに「炎の剣士」!
バリアリーフへの最後のトドメを刺すのは、ロキヒノこそが相応しいだろう。だから、俺はあえて接近せず元の茂みに降下するようにマホに指示した。
「ま、待て!」
「あん?」
バリアリーフが、ロキヒノに待ったをかける。まあ、あんな奴が素直に最期を遂げるわけがないよな。
「わ、我輩は確かに無断で改造を行っーた!だが、それは人間にも恩恵のある行為であーるぞ!我輩に改造されれば、寿命で死に怯える事もなーい!病気や怪我をする事もなーい!いつまでも、不滅の体で生きていけるのであーる!」
なんとか、ロキヒノの篭絡を試みるバリアリーフ。
「……不滅の体ねえ。けど、お前が改造した人間四人は、消滅しちまったぜ?消える事を不滅なんて言うのか、鉱石族の世界じゃ?」
「ぬぐ……。しかーし!我輩の頭脳は確実に世界の発展に欠かせない物ーだ!偉大なる我輩の頭脳を、この世から消してはならないのだ!!」
バリアリーフが、往生際悪く叫ぶ。
ああ、悪役としてパーフェクトだよ。その最後の悪あがき、まさに悪の科学者の末路って感じ。
「てめえを生かしておいたら、世界が発展する前に滅ぶわ!今、ここでぇ……!」
「待て待て待て!」
「消え失せろ!!」
ロキヒノは、炎の剣でバリアリーフを頭の先から股まで真っ二つにした。
「待っで……」
「全開!『フレア・ブレード』!!」
真っ二つにしたバリアリーフを、炎の剣の炎を全開にして燃やした。
「……トーリ。お前が斬ったミサイルの残骸、集めて持ってきてくれ」
『は、ミサイル?ああ、これですか?承知しました』
俺はトーリに、凍りついて転がっているミサイルの残骸を集めさせた。
『ふふ、わたしも手伝うよ。上からの方がいいでしょ?』
マホが、話しかけてきた。俺の考えている事は、お見通しらしい。
「ああ、頼む」
トーリが集めた残骸を抱えた俺を抱いて、再びマホが空を飛ぶ。
「はぁ、はぁ。クズ野郎が……」
「ロキヒノ。ちょっとそこから離れろー」
バリアリーフを苦々しげに睨んでいるロキヒノの上空まで行って、そこから軽く声をかけた。
「カナタ?」
「最後の一押し、しとかないとな」
「?あ、ああ。わかった」
体を引きずりながら、ロキヒノが離れていく。十分に離れたのを確認して、俺は持っていたミサイルの残骸をバリアリーフに放り投げる。
「枯れ木に花を咲かせましょうー」
『花っていうか、花火?』
「多分、汚い花火」
バリアリーフの上や周りに落ちた残骸は、ロキヒノの点けた炎に炙られた。当然、トーリの氷は溶けていく。
そして、バリアリーフの炎がミサイルの火薬?爆発物質?に引火して、大爆発を起こす。
「ぎゃあぁぁあ!」
爆発の向こうから、バリアリーフの断末魔が聞こえた。やっぱり、まだコアが残っていたか。念を入れてよかった。
「たまやー」
『たまきん~』
「?なんだ、それ?」
『いや、いつかは彼方くんのそれをいただくぞ~っていう決意表明』
「は!?」
いや、その言葉からそれって、それはつまりあれって言う事だよな……?
『うふふ。案外ウブだよね、彼方くん。ムッツリ~』
マホが、俺の首筋を妖しく撫でてくる。空を飛んでいる状態だから抵抗できなくて、マホにされるがままになるしかない。
「そ、そういうお前はどうなんだと……」
『あ~ら。わたしは、あなたの何倍もの年期があるのよ~?ふふ、お姉さんが色々教えてあげちゃおうか?』
ああ、こいつは精霊になる前からの記憶も普通にあるんだっけ。つまり、俺の十倍以上の生きてきた記憶があるわけで……。
「やっぱり、お婆さん……」
『その言い方だけはやめて!』
その言葉だけには、シュバッと来るなぁマホ。
とりあえず、俺達は地面に降りた。
『まあ、実際は困る事があるにはあるんだけどね』
「ん?何が?」
『ほら、わたし百合の女王だったでしょ?だからぶっちゃけ、男の子と付き合った事無いんだよね~。参った参った』
なんか、今日は次から次とカミングアウトするなぁ、マホは。つーか、それを聞かされて俺にどう反応しろと?
「……まあその辺はともかく、これからもずっと一緒だぜ、パートナー」
『!……うん!』
俺達は、一緒に歩いていった。
「さて。大丈夫、なわけはないわな?」
俺は、例の茂み近くで腰かけてリゥムの治療を受けているロキヒノを見下ろした。いやまあ、わざわざ聞かなくてもボロボロなのは見ればわかるんだが。
「いやー、今回はさすがにちょっとキツかったな」
なぜか、ロキヒノはそう言って笑っていた。……お前もドMか?
「むしろよく生きてるな、お前……」
「体だけは頑丈なんだよ」
「でも、さすがにここでは治療するのは無理だよ?」
リゥムは、傷口を洗浄してガーゼと包帯を巻いて応急処置をするしかできなかった。いくら妹が治癒魔法の使い手でも、この場にいないんじゃ意味は無い。
「無茶しすぎだ。まあ、半分くらいは俺が無茶させたわけだけど」
「別に、お前に無茶させられたわけじゃねえぜ?カナタはカナタで戦ってたし、ただの役割分担じゃねえか。全員で任務を成し遂げるのが、仲間ってもんだろ?だから、まあ気にすんなって」
ロキヒノが、そうやって笑い飛ばす。強いな、ロキヒノ。
仲間、か。なんか、凄くくすぐったいような、でも心地いい言葉だな。俺は向こうの世界で、そんな言葉を返せる人間に出会っていただろうか。
一人だけ、いるか。その為に、この世界に来たんだ。
「でも、医者に行こう?今度は、唾を付けるだけとかは駄目だよ?」
「り、了解……」
リゥム、オカン……。
「……トーリ」
俺は、ロキヒノから離れるとトーリ声をかけた。トーリは、片膝をついて控えている。
「よく来てくれた、トーリ。お前がいなければ、俺達は勝てなかったと思う。来てくれて、ありがとうな」
『もったいなき御言葉、痛み入ります!このトーリ・サッカー、殿のお役に立つ事ができて感無量でございます!』
トーリが、激しく頭を下げる。このままエスカレートしていくと、ガッツリ土下座でもしそうな勢いだ。
「本当に助かった。……これから先も、何があるかはわからない。これからも、俺と一緒に戦ってくれるか?」
『もちろんです!我が身の全ては、殿の為に!』
「そうか。よろしく頼むな」
『は、ははぁ!』
トーリは、正座をして平伏した。また、頼もしい仲間が一人、加わったわけだ。
「ところでトーリ?お前はどうする?普段からサモンドスレイヴとして実体化しているか?それとも、一旦カードに戻るか?」
『そ、そうですね……』
トーリは、チラッとマホの方に目を向けた。俺もチラッと見てみると、マホは鋭い眼光でトーリを睨んでいる。
その目から読み取れるのは、「わたしの邪魔をするな!」という強烈なプレッシャー。
(バリアリーフよりマホの方が怖い……)
『拙者は、一旦カードに戻ります。ご用の際は、またいつでもお呼び下さい』
あ、トーリ逃げた。
「そうか。じゃあ、また頼むな」
『はい。それでは』
トーリの姿が消えて、『ブレイドラ・レンゲリス』のカードが手元に戻ってきた。
それは、まさに戦闘終了の合図。俺がそう考えた途端、俺が出していた他のカードの効果や消えたカードも戻ってくる。
「あ」
「消えた……」
リゥムに渡していた、『イージスの盾』。ヒナギに渡した、『バンシューティング・ギャレン』。俺が持っていた、『アゴ・ストーム・セイバー』と『ドリル・カイザー』。あと、途中でツーカーに破壊された『サガン・スピア』も手元に復帰する。
ああ、そういえば胸ポケットに入れ直した『迫真の発光』は魔札道具のパスケースが壊れただけで、カード自体は入ったままだ。
「さて、こうなるとデッキの並びはどうするか……」
戻ってきたカードをデッキケースに入れながら、俺は思案する。『ブレイドラ・レンゲリス』のカードにトーリが宿っていたように、他のサモンドスレイヴカードにも精霊が宿っているかもしれないって事だよな?
まあ、調べたい所だが、それはまた今度だな。




