第20話
鉱石族のジュッカー・フィフティーンとの最後の戦いに突入した俺達。親子ドラゴンを救出しつつ、幹部格のジョシュを倒して首領バリアリーフを追い詰める。
だが、追い詰められたバリアリーフは、真の力を発動した。破壊されたジョシュ達の部品を結集させて自らに合体させる、グレート合体だ!
最強の敵、グレート・バリアリーフがその姿を現した!
でも、俺達はどんな相手でも負けない!かっとビン……いやいや。
──・──・──・──・──・──・──
巨大ロボ、グレート・バリアリーフが出現した。
グレート合体、その合体シークエンス、胸に輝くライオンの顔。全て、オールパーフェクトだ。完璧なんだよ、バリアリーフ!
けど、違ーう!名前だけが、違ーう!
「グレート・バリアリーフじゃ、サンゴ礁だろうが!ツメが甘い!」
『いや、こっちの世界にあのサンゴ礁地帯は無いからね?さすがにそれは、あれも言われても知らないだと思うよ?』
それは、わかるんだけどさ。あの名前じゃ、どうしても先にあれが浮かんじゃうんだよ。名前だけは有名だし、あのサンゴ礁地帯。どこにあるかは、よく知らないけど。
「さあ、踏み潰してやるぞ、ニンゲーンども」
グレート・バリアリーフが、フロアに顔を向ける。
合体して巨大ロボになったグレート・バリアリーフの身長は、軽く10メートルを超えていた。さっきも言っていた踏み潰すって、物理的に足で踏むつもりだったのな。
グレート・バリアリーフが、ゆっくりと下降してきた。
え?ちょっと待て?まさか、その巨体でフロアに降り立つつもりか?
「下がれ!」
俺は叫んだが、言うまでもなくロキヒノ達は後退していた。その前に、グレート・バリアリーフが降りてくる。
ズンと、グレート・バリアリーフが立った途端に床が揺れた。
「で、でかい……」
グレート・バリアリーフの高さは、ざっとで15メートルほど?だいたい、このマンション塔の半分くらいの大きさだ。
「ガハハハ!ちっぽけな虫けらどもーめ!ペシャンコなってしまーえぃ!」
なんか、バリアリーフの声が遠くの方から聞こえる。
ビキィッ!と、何かが壊れる音がした。
「あれって……」
グレート・バリアリーフの立っている床に、ヒビが入り始めていた。そりゃ、あんな巨大な物体が立ってたら、床が抜けるよな!?
加速度的にひび割れは走っていき、そして床が崩壊した。
「ぬおっ!?」
グレート・バリアリーフが、床を次々と壊しながら階下へと落ちていく。
当然、その崩壊にマンション塔自体が耐えられるわけがない。グレート・バリアリーフの立っていた部分だけでなく、床全体が崩壊を始める。
「ぜ、全員塔から退避ー!」
さすがにこれは、逃げる以外にない。
「マホは、ヒナギとドラゴンを!」
『うん!』
俺は、マホにヒナギを回収するよう指示を出した。さすがに、あの親子ドラゴンを連れて階段を下りるのはスペース的に無理があるからな。あの親子ドラゴン(&ヒナギ)は、マホが空を飛んで移動させるしかない。
マホは、俺のパーカーを胸に巻き付けると翼を広げてヒナギの所に飛んでいった。
「きゃ!」
リゥムが、逃げ遅れたのか崩壊する床に巻き込まれて落ちた。
「!リゥム!」
「お姉ちゃん!」
まずい!この高さから落ちたら、一巻の終わりだぞ。
そう思った瞬間、俺は床を蹴って飛び下りていた。頭で考えるより先に、体が反応してしまったみたいだ。
「!?カナタ!?」
「リゥム!」
「!?トオノくん!?」
俺は空中でリゥムの腕を掴み、自分に引き寄せた。そして、素早く周りを見回す。周りには、崩壊して俺達と一緒に落下している床や天井の残骸達。
「南無三!」
俺は、側にあった残骸を蹴って方向を変えた。そのまま、次の残骸を蹴って更に落下する方向を変えていく。
残骸破片、八艘飛びだぁ!
「トオノくん!!」
リゥムは、俺に強く抱きついて目を閉じていた。
それだけを見れば、今はまさに「リゥムの巨乳の感触ぱふぱふー」とかラッキーなスケベを考えられるシチュエーションなのかもしれない。
けど、今そんな事考えてる場合じゃねえ!
「神様~!」
「神なんかいねえ!祈るなら俺に祈れ!」
「!トオノくん……」
残骸を蹴って蹴ってして、俺はリゥムを抱いたまままだ崩壊していない階の廊下に飛び込んだ。ゴロゴローと、廊下を転がる。
こ、怖かったー!一歩間違ったら、十階から地面にフリーフォールだったぞ。
「だ、大丈夫かリゥム!」
俺はリゥムを離すと、彼女の様子を確認した。リゥムは、顔は真っ赤だけど特に怪我した様子もなく、ちゃんと目の前に存在している。なんとか、助ける事ができたみたいだ。
「あ、あの……。あ、ありがとうトオノく……」
リゥムが、うつむいてボソボソと何かをつぶやいていた。ちょっとだけ聞こえた言葉から、礼を言っているのはわかった。
けど、今はそんな事してる場合じゃないって!
「とにかく、話は後だ!塔を脱出するぞ!」
俺は、リゥムの手を握って走り出した。塔の崩壊は、まだ続いていてここにいる事も危ない状況だ。
「う、うん!」
リゥムも、俺に合わせて走り出す。
そんなリゥムは、俺が握った手を見つめて小さく微笑んでいた。なんでこの状況で笑っているのかは、知らないけどさ。
俺達が飛び込んだ廊下は、三階の廊下だった。階段を跳ぶように降りて、一気に塔を脱出する。
「少し離れるぞ!」
「うん!」
俺達は、脱出してからも塔から離れる為に走った。
『彼方くん!リゥムちゃん!無事!?』
走っていると、上からマホの声が飛んできた。見上げると、ヒナギをお姫様抱っこしたマホが真上を飛んでいる。側には、親子ドラゴンも一緒だ。
つか、お前がお姫様抱っこすんのか。
「よかったです!お二人とも無事で!」
『ヒナギちゃん!あそこの茂みにドラゴンさん達を下ろして!』
マホが、茂みを指差した。見ると、そこにはイッヌも伏せている。
「はい」
ヒナギは、魔法を操作して親子ドラゴンを茂みの横へと降ろした。そして、マホも下りてきてヒナギを立たせてやる。
「ママ~!」
「ああ、マナ……」
親子ドラゴンは、改めて抱き合って無事を喜びあった。少しは、動けるようにはなったみたいだ。
「どはぁあ!」
「まったくもう~!」
マンション塔から、ロキヒノとメィムが飛び出してきた。よかった、二人も脱出には成功したようだ。
「ロキヒノ、メィムー!」
俺が呼び掛けると、二人はすぐに気付いた。
「!カナタ!やっぱ脱出してたか!」
「リゥム!」
二人も、合流する。ロキヒノは俺の前で止まったが、メィムは俺を通りすぎてリゥムに抱き付いていた。
「よかったぁ!無事だったのね!?」
「う、うん。トオノくんにまた助けてもらっちゃったよ」
「ありがとう、カナタ!」
「ああ、気にすんな」
メィムは、またリゥムを抱擁する。さすがのリゥムも、今度はメィムの抱擁を喜んで受けている。
「ウハハハハ!見ろ!この破壊力!もはや、我輩にあるのは神の才能ではない!神の力その物だ!そうだ!我輩は、神なのだ!」
グレート・バリアリーフが、マンション塔の残った部分をパンチで壊し始めた。
ああ、言うと思ったよ。究極のイキり、我は神だ宣言。
「魔竜の改造は阻止したものの、あれ自体をどうするか……」
「まさか、あんなにでかくなるとは思わなかったな」
「とにかく、奴が塔の破壊に夢中な内に作戦を考えるぞ?」
「おう」
俺達は、額を突き合わせて作戦を考えた。
「奴の事だ。塔の破壊が終われば、次は町に向かうだろう」
「そんな事になったら、大変な事になるわよ!?」
「ああ。人間、というか生物は改造されるか殺されるかの二択だろうな」
「あいつの性格だったら、そのまま王都に攻め込むに決まってるぜ!そうなれば、ウチの国はメチャクチャになる!」
「だろうな。なんとか、ここで倒すべきなんだが……」
俺は、マンション塔を振り返った。全長15メートルの巨大ロボを、生身の人間で倒す。
……無理ゲーじゃね?
「あたしのサンダー魔法は効かないだろうし……」
メィムは、悔しそうに言った。合体前のバリアリーフの時点で、サンダー魔法は効果が無かったからな。巨大化したなら尚更効果が無いだろう事は、容易に想像できる。
「あれだけ大きいと、必殺技も効くかな……?」
リゥムが、弓を撫でながら不安そうにつぶやいていた。
必殺技と言っても、あれはあくまで対人攻撃用の技だからな。あそこまで巨大だと、どれだけ魔力を溜めればいいのかさっぱり見当もつかない。
「なんか、弱点は無いのかよ!?」
「弱点たってなぁ……」
それがわかれば、苦労はしない。
「弱点と言えるかどうかはわかりませんが。一つだけ……」
その時、声がした。その、声は!?




