第19話その2
「よくもまあ、短期間にこんなに改造しまくったものだ!」
ムカデチを一匹真っ二つにしながら、俺は思わず吐き捨てるようにつぶやいた。なんかもう、無限増殖でもしたのかと思うくらい後から後から改造生物が湧いてきて、全然減りゃあしない。
「まったくだぜ!」
「『サンダー・プレヴァレット』!こいつら来たのって一週間くらい前なんでしょ!?よくそんな時間あったわね!?」
「鉱石族は寝ないから、不眠不休でやってたんだろ!」
怒鳴りあうような会話をしながら、俺達は雑魚を蹴散らしていく。
「ふーむ。聖天族はどのような改造を施そうか……?」
その間、バリアリーフはマホをじっと見つめながら改造プランを頭の中で組み立てているようだった。俺達や改造生物の戦いは、特に興味が無いみたいだ。
「メィム!あの白衣眼鏡に『サンダー・プレヴァレット』を撃て!」
「この状況じゃ当たるかわからないわよ!」
「いいから!」
「わ、わかったわ!『サンダー・プレヴァレット』!」
メィムが、俺の指示で光の散弾をバリアリーフに向かって放った。散弾は飛んでいるコウモルやジャンプしたガエルなんかに当たって数を減らすが、いくつかが戦闘員の壁を突破してバリアリーフに向かう。
「あーん?ジョーシュ!」
散弾に気付いたバリアリーフが、大きな声で叫んだ。それを聞いたからか、千手ロボが素早くバリアリーフの前に集合して、壁を作る。
あの千手ロボ、ジョーシュって言うのか。いや、バリアリーフは変に言葉を伸ばす奴だから、もしかしてジョシュか?つまり助手か、千手ロボ。
メィムの散弾は、ジョシュの壁に阻まれた。何体かの腕を吹き飛ばしていたが、六本ある内の一本や二本飛ばしたくらいじゃなぁ。
「おのれぇ。我輩の崇高な思考の時間を邪魔するとは……!ジョシュ!あの人間どもを、八つ裂きにしてしまーいなさい!」
楽しい改造プランを考えているのを邪魔されたからか、バリアリーフは怒りに震えていた。そして、ジョシュ全員に俺達への攻撃命令を下す。
「了解」
ジョシュ達が改造台から離れて、俺達の方へと向かってきた。当のバリアリーフは、マホの改造プランの構築に意識を戻している。
ああ、こっちの想定通りの理想の動きだぜ、バリアリーフちゃん!
「ロキヒノ!メィム!雑魚超越族はいい!あの千手観音を叩き潰せ!」
「セ、センジュカンノン!?」
「要は、あの腕がいっぱい付いてる奴の事でしょ!わかったわ!」
「ああ、あれか!任せろ!」
戦闘員を掻き分け、俺達はジョシュを攻撃する。
「解体解体。ピピピー」
「てめえを解体してやるよ!」
六本の腕からメスを出したジョシュに、俺は一気に斬りかかる。その俺の剣を、ジョシュが腕の二本をクロスさせて受け止めた。
と、思ったんだけど。
「ギギ!」
「にっ!?」
ジョシュの腕は、一撃で寸断されてしまった。あまりにもあっさり斬り落とせたので、俺は危うくコケそうになる。
「ギギギー!」
「せい!」
残りの腕でジョシュは迫ってくるが、その腕も一瞬で斬り落としてやった。
こいつら、弱い?もしかして、科学者だから戦闘はからっきしとか、そんな感じなのか?だから、自分達の手足になるような改造生物を作りまくっていたのか!
「なんだこいつら!?メチャクチャよえぇ!人形女の方が強かったぜ!」
ロキヒノも、ジョシュの一体をバラバラにしていた。ロキヒノの言う通り、これならツーカー達の方が遥かに強かったぜ。
「これなら、なんとか……!」
周りの戦闘員を蹴飛ばしつつ、メィムはジョシュの胸元に散弾を放ち、そいつを吹き飛ばしていた。
『てえぇぇい!』
マホの鞭に打たれ、空に向かったジョシュも次々と破壊されて落ちてくる。
フロアの雑魚戦闘員とジョシュが、俺とロキヒノ・メィムに破壊される。雑魚の数が多いのでなかなか先へ行けないが、少しずつラインを押し上げていく。
そんな状況でも、バリアリーフは微動だにしない。きっと、頭の中では色々高速に思考してるんだろうが、敵を見ないのは迂闊だぜ?
今だ、ヒナギ!リゥム!
「マジカルショット!」
「マジカルアロー!」
階段の出口の上に残っていた天井に上ったヒナギとリゥムが、遠距離から狙撃する。その二人に狙わせた物は……。
「え?」
「うぅ……?」
ヒナギの放った銃弾とリゥムの矢が、『シャイン・ポケッツ・ドラゴン』の親子を拘束している拘束具を打ち壊した。
これが、俺がヒナギとリゥムに頼んだ作戦。敵の注意を俺達が引き付けておくので、ヒナギとリゥムが遠くから親子ドラゴンの拘束具を打ち抜く作戦だったのだ。正直、ピンポイント狙撃なので二人にはキツい作戦だと思ったけど、きっちり決めてくれたぜ!
拘束を解かれた子供ドラゴンが、床に落下する。
「マナ……!」
親ドラゴンの方も、改造台の上でろくに動けず震えていた。一体、ここでどれだけの間拘束されて、電撃を受けてきたのか?
「ぬ?」
子供ドラゴンが床に落ちた事で、バリアリーフも事の次第に気付いたらしい。
けど、もう遅いぜ!
「チョクメイ発動!『引っ越キネシス』!」
ヒナギが、左手に持った杖で、勅命カード『引っ越キネシス』を発動させた。それでロックオンするのは、動けない親子ドラゴン。
あの親子ドラゴンが動けない状態なのは予想できたので、拘束具を破壊したら『引っ越キネシス』で親子を即座に階段の方へと引き寄せるように言っておいたんだ。
「やああぁ!」
ヒナギが、親子を二匹まとめて持ち上げた。そして、空中を移動させる。今回、天井と壁が無くなっていたのは好都合だったぜ。
「マホ!道を開けさせてくれ!」
『わかった!任せて!』
親子ドラゴンが移動するのに邪魔になる空中の敵を、マホが一掃した。
「何を……。我輩の魔竜に、何をしているか!ニンゲーン!」
「見りゃわかんだろうが!お前の好きにはさせねえよ!何一つな!」
激昂したバリアリーフに、俺が叫び返す。
俺達が来た以上、これから先はお前達の思い通りになんかさせないさ!ドラゴンも!マホも!何も!
「ニンゲーン!!」
鉱石族のロボットのくせに、バリアリーフから歯軋りが聞こえたような気がした。
「大丈夫ですか!?」
ヒナギとリゥムは階段の天井から降りて、親子ドラゴンを保護した。
「人間……の、方……?どうして……、私達を……?」
「酷い事をされているのを、見過ごすなんてできませんよ」
「はい。無事でよかったです」
ヒナギとリゥムが、親子ドラゴンに笑顔を向ける。
ああ、いい笑顔だ。くー、よく考えたら美少女ばっかじゃねえか、ウチのパーティー。三日目でこれって!三日目でこれって!
バタバタと、虫のようにジョシュや超越鳥が落ちてくる。フロアの方のジョシュも、既に全滅した。あれだけいた雑魚戦闘員もすっかり数が減っていて、指揮するジョシュがいなくなったせいか、逃げ始めている。
無駄に、脳みそを残してるからだ。さすがに、死を回避しようとする本能は残っていたか。生物を改造するんじゃなく、純粋なロボットにしとくんだったな。
「さあ。お前が、ここで改造実験を行っていた鉱石族のジュッカー・フィフティーン!その首領、バリアリーフだな!?」
俺は、少し離れた場所にいるバリアリーフに剣を突きつけて尋ねた。まあ、わざわざ聞くまでもなくあれが首領である事は明白だけど。
「ニンゲーン風情が、偉そーうに!我輩は、鉱石族の中で最上級の神の才能を持つ最高最善の科学者、バリアリーフなるぞ!この身の程知らずどもーが!バリアリーフ樣と呼べぇーい!」
バリアリーフが、高らかに宣言した。当然のように、奴がバリアリーフだったわけなんだけども……。
やべぇ。ツーカーに教えた台詞の元ネタの悪役を、地で行ってやがる。
というか、なんでお前が最善やねん。
「お前こそ、偉そうに言うな!この人間領国でのこれ以上の狼藉は、ギルフォードライ王国第一王子!このロキヒノ・リードギルフが許さねえ!」
剣を振り払い、ロキヒノが堂々と宣言する。
ロキヒノもやべぇ。ロキヒノ、カッコよすぎる……。俺が女だったら、絶対あいつに惚れてるわ。
「ロキヒノ、やっる~」
そんなロキヒノを見て、メィムは小さく笑ってそんな事を言っていた。
あれ?本物の女子のメィムには、案外刺さってない?めちゃくちゃカッコいいと思わねえ、ロキヒノの事?
「この周辺の獣生族を、勝手に改造した事。それに関しては、何も言わねえ。それは、獣生族の管轄だ。だが!人間を四人、勝手に改造した事は許されない!ロキヒノ・リードギルフの名において、お前を倒す!」
「ひょーひょひょひょー!この世界にいる生物は全て、我輩のモルモットにすぎーない!むしろ、我輩の研究の礎になれる事を、感謝するといいーん!」
「ふざけるな!」
バリアリーフの言葉に、ロキヒノがヒートアップする。
これは、駄目だな。あれは、思考回路自体から俺達とは全く違う、交わる事は未来永劫ありえない別次元の生物だ。
「……一応、一つだけ聞いておく。お前が生物を改造していたのは、全ての生物を鉱石族に変えて、この世界を鉱石族が支配する。そういう目的なんだよな?」
行動見りゃ一目瞭然なんだけど、一応聞いてみよう。
「鉱石族が、ではなーい!我輩が、であーる!この世界は、このバリアリーフ樣にひれ伏すべきなのだーよ!」
バリアリーフが、両腕を広げて言い切った。
ああ、そっち?あくまで、鉱石族の手柄じゃなくて、バリアリーフの手柄なのか。世界征服を企む悪の秘密結社は確かだったけど、その動機は完全に個人のワガママかよ。
いいけど。別にいいけど、なんか一気にスケールダウンした感じ。
「勝手な事を言ってんな!てめえの勝手で、改造されてたまるか!」
今のバリアリーフの答えは、ロキヒノを更にヒートアップさせた。
「まあ、どう考えても生かしておいていい相手じゃないわね」
メィムが、拳を握って戦闘体勢を整える。まあ、もはやこいつと言葉を交わす必要は無いだろう。
どうせ、バリアリーフも科学者だから、たいした戦闘力は無いに違いない。
「一気に攻めて、この戦いを終わらせるぞ!」
「おう!」
「ええ!」
『うん!』
上空のマホも、鞭を振り払う。
……いや、空の敵を迎撃するよう言ったのは俺なんだけど、マホももうちょい気を使ってくれないかな?お前、ミニスカートになったからさぁ。空飛んでる時丸見えなんだよ、下着が。メィムみたいに、短パンとか穿けよ。白は駄目だよ、白は。気が散る!
「ぶった斬る!」
ロキヒノが、剣を構えて飛び出した。俺とメィムも、その後に続く。
だが、バリアリーフもジョシュ同様足裏からのジェット噴射で上空へ飛び上がった。
「あいつも飛ぶのか!?マホ!」
『うん!』
マホが、バリアリーフを追いかける。そのバリアリーフは、白衣を掴むとその前をガバッと開いた。
変質者……?て、んなわけもなく。
白衣の裏には、ミサイルポットが設置されていた。……はぁ?ミサイル!?
「ポットミサイル!」
バリアリーフは、白衣の裏のミサイルをマホに向けて発射した。そんな大きいわけではないが、その分数が多いミサイルがマホを襲う。
『ちょ、ここでミサイル!?』
マホは、慌てて鞭で迎撃する。
「なんだ、あの武器!?」
「……おっとミザエル?」
え?そんな風に聞こえた、メィム?まあ、見た事の無い武器だろうから聞き取れないのは仕方ないけど。
鞭に打たれて、ミサイルが次々と爆発する。しかし、数が多い上にターゲットが小さい為、何発かが鞭の防衛網をくぐり抜けてマホに到達してしまう。
『きゃあっ!』
ミサイルが爆発し、マホがフロアに落下してくる。
「マホ!」
俺は慌てて落下地点に走り、落下してきたマホを受け止めた。
『きゃ!』
「大丈夫か、マホ!?」
『あ、うん。大丈夫。ありがとう、彼方くん』
俺は、上空のバリアリーフを見上げた。今、上空からミサイルで爆撃されたら、対抗手段が無いぞ?
『あ、あの。彼方くん……?』
マホの声がして、俺は顔を戻す。マホは、なぜか顔が真っ赤だ。
あ、俺マホを抱いたままだった。しかもこの体勢、俗に言うお姫様抱っこってヤツじゃねえか。こんなん、真穂にもした事無いぞ。
俺は、慌ててマホを降ろした。というか、マホの服がズタズタになってるんだけど。
「お前それ、ホントに大丈夫なのか?」
『うん。服がボロボロになっただけ。小さいヤツだったから、助かったみたい』
「と、とりあえず」
俺は、着ていたパーカーを脱いでマホに差し出した。まあその、服がボロボロになった結果、下着どころか胸が……。
『わたしの場合翼があるからあれだけど、一応借りとく』
マホは、苦笑しながら俺のパーカーを受け取った。そういやマホは翼があるんだから、服は背中に翼を通す穴がないといけないのか。
パーカーより、翼で隠した方が早かったな。
てか、俺が恥ずかしがってるのに、本人のマホは案外平然としてるのはなんでさ?
『……まあ、彼方くんにならね』
小さく、マホの声が聞こえた。
「リゥム!」
俺がマホを受け止めに行ったのと入れ替わるように、メィムがリゥムを呼び寄せていた。上空の敵を攻撃するなら、遠距離攻撃兵器が必要だからな。
リゥムが、走っていって姉と合流する。
「あたしらで、あれを打ち落とすわよ!」
「うん!」
二人は、同時に上空を見上げた。
「『サンダー・プレヴァレット』!」
「マジカルアロー!」
二人は、同時に攻撃を放つ。けど、バリアリーフはリゥムの矢だけを移動してかわす。
「!?あたしのプレヴァレットだけ効いてない!?」
まさか、あいつロボットだから雷撃系の技に対するコーティングでもしているのか?雷系は、機械の大敵だからな。
ただ、ジョシュにはサンダー魔法効いてたから、自分一人の特権能力か!?
『うわ~。自分だけ優遇するなんてセコ……』
マホも、その事に気付いたらしい。
「なら、連射を……!」
「ニンゲーンどもぉ!いつまでも、お調子に乗るでないーわ!」
バリアリーフが、叫んだ。あいつ、たまにオネェ口調になるのはなんだ?癖か?
「所詮は、塵芥のニンゲーンども!この我輩の真の力で、全員踏み潰してくれるーわ!」
「?真の力?」
「起動せよ、我がパーツ!」
「パーツ?」
バリアリーフの体から、突然光が放たれた。その光は、無数に枝分かれしてフロアへと伸びていく。
「うおっ!?なんだ!?」
「避けて、リゥム!」
「て言うか、これ私達には何も……!?」
ロキヒノ達は慌てて光を避けるが、そもそもそれはこっちを攻撃する為の光じゃなかったみたいだ。リゥムが少し触れていたが、彼女には何も影響を及ぼしていないらしい。
光は、フロアに転がるジョシュの残骸へと降り注いでいた。
「あれは、まさか……」
光に持ち上げられるように、ジョシュの残骸がバリアリーフに向かって飛んでいく。これはもしかして、ジョシュの残骸を自分に集める為の牽引ビーム!?
バリアリーフが、更に上空へ飛んでいく。その周りに集まった残骸が組合わさって、形を変えていく。ある物は腕のような物体、ある物は脚部。
間違いない!
「グレート合体!」
まさか、まさかグレート合体を現実にこの目で見れるなんて!異世界最高!
そうか!もしもの時にこのグレート合体で集合する為に、天井や壁を撤去したのか!なら屋上に設備を作れとも思うけど、それは10階という「10」の数字が影響してるんじゃないかなって思う。
「ベストビルドマッチ!」
それが、合体の掛け声か!
バリアリーフを中心に、各部分が次々と合体していく。バリアリーフ自身は胸部にコアのように収納されて、その両側に腕部が合体!ナックルが飛び出してきて、拳を握る!
牽引ビームに導かれて、脚部も合体!頭部が胸部から出てきたけど、単眼のモノアイ顔なのはさすが悪役ロボ!背中にはスクランダー的なジェットウイングを背負い、そして極めつけは胸になぜか装備されたライオンの顔!!
わかってる!わかってるじゃねえか、バリアリーフ!!
『うわぁ……。彼方くんが好きそうなヤツ来たぁ……』
マホは、呆れ顔だ。このロマン、わかんないかなー?
「な、なんなのよあれ?」
「大きく、なっちゃった?」
「な、なんかカッコいいぞ?」
唖然呆然のウィステリア姉妹と違い、わかってくれるかロキヒノ!やっぱり、合体ロボットは男のロマンだよな!
「巨大合体!グレート・バリアリーフ!!」
合体完了した巨大ロボが、大見得を切ってポーズを取った。
グレート合体・ベストビルドマッチによってここに誕生した、最強ロボットグレート・バリアリーフ!見参!




