第15話
敵は、鉱石族のマッドサイエンティスト、ジュッカー・フィフティーン。
彼らの作った人間と鉱石族の合の子のような存在、不死身の改造人間が俺達に迫る。悪の組織、ジュッカー・フィフティーンの野望を砕く為、俺達の戦いが始まる。
負けられない戦いが、ここにある!
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全員が、戦闘体勢を取る。
ロキヒノは炎の剣、マホは鞭、メィムは素手だけど魔札道具が手甲で元々ステゴロスタイル。ヒナギは、俺の渡した『アゴ・ストーム・セイバー』。そうして見ると、なんとなく警棒持ちのリゥムが貧弱に見えるな。
ヒナギのおかげで俺の魔法武器を他人に使わせられる事がわかったから、何か用意してみるか。次のカードは何だったかな?
「ふむ……」
デッキからカードを引くと、出てきたのは召し物カード『イージスの盾』だった。イージスの「盾」という名前なのに、イラストがなぜか弓になっていて、「イラスト間違えてるんじゃないか?」とプレイヤーの間で変に話題になったカードだ。
「召し物発動!『イージスの盾』!」
魔法を発動させると、弓の中央部分が手甲のような形になっていて、その手甲にリムが折り畳まれて装着されているという、変わった形の弓が発生した。
「リゥム。この武器を使ってみてくれ」
「え?私?」
俺は、リゥムに『イージスの盾』を渡した。
「?どう使うの、これ?」
「真ん中の手甲を左腕に装着してみ」
「う、うん」
リゥムが、『イージスの盾』を左腕に着けた。すると、手甲自体がキュッと締まって固定されて、リムが上下に展開。光の弦が自動的に張られて、弓としての形になった。
なんか、大人のプレイヤーが「ライディーン弓」と言ってたんで検索した事があったけど、形はまるっきりその昔のロボットアニメの弓だな。
「うわ、何よこれ?」
「この形は弓ですか?」
「トオノくん、これって?」
「リゥムの警棒だと攻撃力が低い気がしたんで、とりあえず。それなら、遠距離攻撃もできるしさ」
「でも、肝心の矢が無いよ?」
「きっと、弦を引けば勝手に魔力で作られるよ。多分」
ローリングバルカンの弾丸もそうだったから、恐らくだけどな。
「そ、そうなのかな……?」
リゥムは、恐る恐る弦を引いてみた。それに合わせるように、弦と手甲のレスト(矢を乗せる台の部分)の間に光の矢が発生した。やっぱり、矢は魔力で形成されたな。
レストがあるって事は、あれはアーチェリー型か。
「うわ。ホントに出た!」
「よし。それで、リゥムも攻撃できるはずだ」
俺がリゥムにそう言って笑うと、リゥムは顔を赤くしていた。
えー、ヒナギだけじゃなくリゥムにも笑われんのかよ?今度、鏡見て笑顔の練習しなきゃ駄目だろうか?
「へー、変わった武器を使いますね?何よりカナタさん、魔札道具を使わずに魔法を使いましたね、今?」
ツーカーが、俺を探るような目で睨んできた。
しまった、パスケースを『迫真の発光』に使ってたから、魔札道具をカモフラージュをするの忘れてた。
「あれ?カナタ、魔札道具使ってなかったのか!?」
ツーカーの言葉には、ロキヒノも驚いていた。そういや、ロキヒノには魔法の複数使用の事は話したけど、魔札道具が必要無い事は話していなかったんだっけ。
「まあな」
仕方ないので、うなずいておこう。
「そ、そうなのか?なんか、カナタって色々変わってるな……」
「へー。面白いなぁ、カナタさん。これは、ますます欲しくなったや」
ツーカーが、少し体を沈めた。
「!来るぞ!」
俺が叫んだ瞬間、ツーカーが床を蹴って一気に距離を詰めてきた。部屋の端から端を、跳んで移動してきたようなものだ。
向こうの世界にいた頃だったら、ビックリして動けなかっただろう。けど、今の俺は違う。
「ははぁ!」
「ぬりゃあ!」
殴り掛かってきたツーカーの右の拳を、俺は槍で打ち払った。ツーカーは素早く左の拳に攻撃を変えて打ち出してくるが、それも槍の柄尻で弾いて、その勢いでツーカーの突進を受け流した。
俺とツーカーが、すれ違う。
それが、戦闘開始のゴング。
マホ・メィム・リゥム・ヒナギの四人が、部屋の左サイドに移動する。それを追うように、マーシーとオッサンが迫っていく。
「さあさあ、お嬢ちゃん達ー!ずんと楽しい事して遊ぶずんー!」
舌をベロベロ出しながら、オッサンがマホ達に近付いていく。うーん、酷い顔だ。
『黙りなさい!その見苦しい棒、ぶっ千切ってやるわ!』
「二度としゃべれないように、叩き壊してやる!」
「近寄らないで!」
「消えて下さい!」
「てめえも一緒に死ねや、ジェイ!」
「あれー!?ずんには味方が誰もいないずんー?」
なぜか、マーシーにまで罵られているオッサンだった。
そんな女子陣に対応してか、ロキヒノは逆に右サイドに走っていく。そして、殴りかかってきたブルンの手刀を炎の剣で受け止める。
「くっ!さすが、超越族と言うだけはあるパワーだ!」
「私達の体に炎は効かないから、私達を燃やす事はできないわよ?炎の剣なんか、私達には無意味」
「みてえだな!」
ロキヒノが、剣を振り払った。それに押されたのか、ブルンは数メートル飛んで二人の距離が開く。
「!……意外。あなたも結構パワーがあるじゃない」
「はっ!この二十一年間鍛えに鍛えたこのパワー、そんじょそこらの奴には負けねえよ!この人間領国第一王子、ロキヒノ・リードギルフ!タイマンパワー勝負なら、ステゴロ格闘選手権で鉱石族の奴も倒してきたんだぜ!」
ロキヒノが、胸を張って堂々と宣言する。
ステゴロ格闘選手権……。全種族が参加する自由格闘の格闘大会みたいな奴だろうか。ただ、大会の名前に「ステゴロ」って、あんまりいいイメージないぞ?
「ああ。どこかで見たような気がしていたけど、あなた王子様だったのね。ずっと気になっていたから、スッキリしたわ」
今まで会った人間は、みんなロキヒノには一目で気付いてたのに。
「フフ。男どもに棒があるように、私には穴があるのよ。試してみない?」
ブルンが、妖しい表情でロキヒノを誘う。
まあ、そうだろうな。動くダッチワ○フだし。
「願い下げだ!」
「フフ、じゃあいいわ。ボコボコにして動けなくしてから無理やりしてあげる」
「俺が、粉々にしてやるよ!」
再び、ロキヒノとブルンが激突する。
「ヘヘェ!」
体を反転させて、また殴り掛かってくるツーカー。今度は、両手で何度もパンチを繰り出して、ラッシュを掛けてくる。
それに対して、俺も槍を素早く突き出してパンチに反撃する。こっちの槍は一本しかないから、その分スピードアップ!
ガガガガ!と、槍とパンチが激突して弾け合う。
「驚いた。このスピードにも着いてくるんですか?」
ツーカーの方もスピードを上げていたみたいだけど、俺は余裕で着いていっていた。ダブル・ジョーカーの強化は、戦いをすればするほど馴染んでいっている気がする。それどころか、更なる高みへ昇れそうだ。
「!?」
俺の槍が、ツーカーの手数を上回って、ツーカーの頬に傷をつけた。
「くっ!僕より速い!?」
ツーカーが、慌てて距離を開けた。ツーカーの頬からは、赤い液体が流れている。
「その赤いのは何さ?血か?潤滑油か?」
「……駆動並びに命令伝達の為のオイル、ですよ。赤いのは、単なる趣味だそうです」
元が生物だから、オイルに赤い色を付けたって事か。さすがは、マッドサイエンティストだな。底意地悪そうじゃないか、ジュッカー・フィフティーンとやら。
「ふん。趣味悪そうだな、君の創造主様とやらはさ」
「……創造主様の悪口は許しませんよ?」
お、珍しい。ツーカーが、ムッとした顔をしている。ジュッカー・フィフティーンの事をディスられると気分を害するんだ。仲間のはずのオッサンをディスられた時には、特に反応しなかったのに。
まあ、オッサンを主にディスってるのはマーシーだけどな。
「そう思うんなら、もっとパワーを発揮してくれないかな?今俺ちょっとノッテてさ。もっともっと戦いたい気分なんだよね」
もっともっと馴染ませたいんだよな、俺の力。その為には、ツーカーはもってこいの相手なんだよ。
「俺の為のモルモットになってくれよ、超越君♪」
これくらい挑発すれば、ツーカーも本気出すだろう。
「……フフ。いいですよ。それじゃあ、僕も本当の本気を出しましょう」
ちょっと顔を歪ませながら、ツーカーが笑った。ムカつきを抑えきれないけど、余裕な様子は取り繕いたいのかな?
なんにしても、釣り針に食いついてくれたのはありがたい。今回みたいにダブル・ジョーカーに頼れない場面が、今後もあるかもしれないからな。自分の力を上げておくのは、今後の為になるだろう。
それはそれとして、イキるのって案外気持ちいいかも。あれな主人公達が力を持った途端イキりだすのがわかった気がする。
「手加減はするつもりですけど、もし死んでしまったらごめんなさいね?」
そう言いながら、ツーカーは首元のスロットのシャッターを開いた。ん?あれは、もしかしてカードスロットか?
更にツーカーは、胸にもあったシャッターを開いて、中から一枚のカードを取り出した。
「カード?まさか、君らは自分自身が魔札道具を兼ねているのかい?」
「そうですよ。さあ、見てもらいましょうか」
ツーカーは、カードをスロットに宛がった。カードの枠の色を見る限り、あのカードは勅命カードだな。
「チョクメイ発動。『変身―メタモルフォーゼ―』!」
ツーカーは、魔法を発動した。
聞こえたカードの名前は、『変身―メタモルフォーゼ―』。魔フォーでは、フィールド上のサモンドスレイヴ一体を手札のサモンドスレイヴ一体と入れ替える勅命カードだ。コストの高いサモンドスレイヴをコスト関係無しに出す事ができるので、ゲームでは重宝するカードだった。
それを、ここで使うとなると……。そもそも、このカード名だったら恐らく。
「変身!」
言ったぁ!改造人間の必殺台詞、「変身」!!




