第8話その2
「……そいつはどうかな?」
俺は、しっかりと言い放った。
この台詞は、魔フォーのカードゲームを題材としたアニメで、主人公が反撃の際に相手に言い放つ決め台詞だった。この台詞と共に劣勢からの反撃に転じる主人公が、超カッコいいんだよ!
「なんじゃと?」
「悪いが、のんびりしてられるほどこっちにも余裕は無いんでな。一気に決めさせてもらうぜ?来い、ダブル・ジョーカー!」
「何?」
俺が呼ぶと、ダブル・ジョーカーはすぐに降下してくる。
『様子見はもういいのか?』
「今は、急いでるんでな」
『なるほど。あの王子か』
「な!?ま、魔竜だと!?……それにこの魔力の流れ、貴様がその魔竜を召喚しておるのか、人間!?」
いきなりのドラゴンの登場には、さすがにGも驚いてくれたようだ。サプラーイズ。
「へー。さすがは魔王族だ、そんな事もわかるのか?ああ、こいつは俺の相棒だ」
「バカな……。たかが人間が魔竜を召喚し、使役しているだと?ハッ!しかも、貴様は盾を出しながら召喚行為を行っている?二つの魔法効果を同時に使うなど……、まさか貴様も魔王族なのか!?」
驚愕しているGに対して、俺は不敵に笑って見せる。さっきまで散々笑われてたからな。少しくらいは、意趣返ししとかなきゃ。
「残念だけど、俺はただの人間だ。そして、二つ同時に使うってのも的外れだぜ」
「なんじゃと?だが、貴様は……何!?」
俺は、右手に持ったカードを、Gに向かって見せ付けた。だから、二つ「だけ」じゃないという事だ。
「行くぞ、ダブル・ジョーカー!」
『応!』
「勅命発動!『ダブル・ジョーカー・サイクロン』!!」
俺は、カードを発動する。
発動したカードは、勅命カードの『ダブル・ジョーカー・サイクロン』。ダブル・ジョーカーがいる時だけ使える専用カードで、相手の場の勅命や召し物・名の下にカードを全部まとめて破壊する全体破壊カードである。
ダブル・ジョーカーが翼を羽ばたかせ、大きな竜巻を作り出した。その竜巻が、Gを捉える。
「ぬお!こ、これは……!?」
次の瞬間、Gの杖から二枚のカードが突然排除され、遥か後方に吹っ飛んでいった。なるほど、カードを魔札道具に装填してあると破壊された時、強制的に排出されるのか。
「ワ、ワシの魔法が!!」
Gが、飛んでいったカードを目で追った。だが、そんな隙を見逃すほど俺達はのんびりしてないぜ?
「ダブル・ジョーカー!」
『承知!』
ダブル・ジョーカーが、右手でGを捕まえた。
『フン!』
「ぐぎゃあ!」
ダブル・ジョーカーが、Gの魔札道具を握り潰した。まあ、Gを握ったままなので、必然的にGの全身の骨もボキボキ折れる事になるが。
大元のカードも破壊したし、魔札道具も壊したからゾンビも死体に戻っただろう。ロキヒノの実力なら、生き残ってくれてると思うけど。
『この魔王族、どうする?』
「ん?ダブル・ジョーカーの好きにしていいよ?生かしておいたところで、何もいい事は無いと思うけどね」
『うむ、そうだな』
ダブル・ジョーカーが、左腕を振りかぶった。
「ま、待ってくれ!」
「ん?」
「ワ、ワシはもう魔法を使えぬ!頼む!命までは勘弁してくれ!」
Gが、懇願してきた。俗に言う、命乞いってヤツか。日本では、滅多に遭遇しない状況だからなぁ、命乞い。珍しい。
「命までは、つったってねぇ。散々イキり倒して来たんだから、当然負けた時の覚悟はできてたんだろ?それに、どうせロキヒノに引き渡せば首を落とされるだろうから一緒だぜ?」
「さ、先ほどまでの言葉は謝罪する!じゃから、逃がしてくれれば……」
「いや、お前に恩情をかける理由は無いし」
「そこを、なんと……が!?」
「あ」
ダブル・ジョーカーが、左手でGの頭をトマトを潰すように握り潰した。
『フン。往生際の悪い奴だ』
頭の無くなったGの体を、ダブル・ジョーカーはゴミのように捨てた。そうやって地面に転がっている様子は、ますますゴキっぽい。
「魔王族だけど、あいつ頭無くなっても動き出すとかは無いよな?」
『さすがの魔王族も、頭を潰されては死ぬ。頭を潰されてもなお生き続けられるのは、頭の部分にコアの無い鉱石族くらいだ』
「ああ。あいつらは、命の核があってそれを潰さないと動き続けるんだっけ?」
『そうだ』
魔フォーの設定からそうだったが、それはここでも同じらしい。
「おーい、カナター!」
ロキヒノの呼ぶ声が近付いてきた。よかった、ロキヒノは無事だったようだ。
「ああ、こっちだー」
「ここにいたか、カナタ。って、ドラゴン!?カナタ、後ろにドラゴンがいるぞ!?まさか、さっきの奴の出した新手か!?」
やって来たロキヒノは、ダブル・ジョーカーを見て剣を構える。
ああ、うん。やっている事は理解できるけど、もう少し物事を俯瞰で見る事を覚えような?こんなデカいドラゴン、俺が気付かないわけないだろ?
「ああ、落ち着いて落ち着いて。このドラゴンは、敵じゃない。俺が召喚した、俺の大事な相棒なんだ」
「は?……カナタが召喚した?カナタ、お前召喚士だったのか!?」
俺の言葉に、ロキヒノもメィム達と同じリアクションをする。王子がこんだけ驚くって事は、本当に珍しいんだな、サモンドスレイヴを召喚できる人間。
「まあ、召喚士……なのかな?」
「それで、さっきの魔王族はどうしたんだ?」
「そいつなら、そこに」
俺は、地面に転がっているGを指差した。
「ん?あ、あれがそうか。ゴミかと思ったぜ。ん。今回はちゃんとトドメを刺したんだな」
「まあ、好き勝手言ってくれてたしな。戻れ、ダブル・ジョーカー」
『了解した』
俺は、ダブル・ジョーカーをカードに戻した。そして、戻ってきた『ダブル・ジョーカー・サイクロン』と『プレート・シールド』。あと消滅していた『ローリングバルカン・キャノン』も帰ってきたのでそれらをデッキケースに戻し、そのデッキの一番上にダブル・ジョーカー本体のカードを置く。
……積み込みだな、これ。
「山賊の方は?」
「お前がこいつを倒してくれたからかな?全部死体に戻ったぜ。山賊に生き残ったのはいなかった。まあ、ほとんどの奴のトドメを刺したのが仲間のはずのこいつだってのは、笑えない話だがな」
「だな。あ、そうだ」
俺は、Gの体を仰向けにしてコートのポケットとかを漁り出した。
「?何をしてるんだ?」
「んー。ん、カードを持っていたら、貰っておこうと思ってさ」
俺は、Gのコートの内ポケットから見つけた四枚のカードを見せて答えた。死体に持たせていても意味が無いから、有効活用しないとな。
「ああ、なるほど。……火事場泥棒みたいだな」
その言葉、この世界にもあるのかよ。
「置いといてももったいないだろ?そもそも、敵の装備を奪ってパワーアップするなんて、よくある話じゃないか。王道だよ、王道」
「そ、そうなのか?あと、オウドウってなんだ?」
「そうだ。あと、こいつのカードが二枚向こうの方に飛んでいったから、探してみてくれないか?」
「ああ、わかった」
俺の指示に、案外素直に応じるロキヒノ。一般庶民に顎で使われてるけど、それでいいのか王子様?
飛んでいった二枚は、ロキヒノが見つけた。死体の方は持っていたのは四枚だけだったので、Gの手持ちは計六枚だった。
まあ、俺みたいにリュックの中に数百枚常備しているなんて奴はいないわな。そんな持っていても、一度には使えないし。
「どんな魔法持ってたんだ、あいつ?」
火事場泥棒とか言ってたけど、ロキヒノも気にはなってるんだな。なので、俺達はカードを確認する。
「三枚は、さっき使ってたヤツだな。『ネクロマンサー・フォウ・アダルト』、『カマイタチング』、『ブラック・サンダー』。あとは、ナモトの『ソロ・シート』。さっき、一人分の防御魔法と言ってたヤツかな?同じくナモトの『コップ一杯の水を』。……どういう効果だ?」
「知らないのか?『コップ一杯の水を』なら、水を出す魔法だぞ。一回に出せる量はしれてるんで、飲み水に使う程度だが」
ロキヒノが、実際の魔法効果を説明してくれた。つまりこの魔法は、戦闘用の魔法じゃなくて生活用の魔法か。
「最後が、勅命カードの『バーナー・シュート』。……炎を吹き出す、みたいな魔法かな?」
魔フォーのカードとしての効果はわかるが、実際の魔法効果がどんな物なのかはわからないな。この辺は、使ってみないと。
「確かに、そんな感じだな。そのカード、俺がもらってもいいか?」
最後の『バーナー・シュート』は、ロキヒノも魔法の中身を知らないようだった。
「まあ、別にいいけど。炎系のカードが好きなのか?」
「好きつうか、俺の魂が炎タイプらしいからな」
俺が差し出したカードを受け取りながら、ロキヒノが答える。
魂が炎タイプ?
(『この世界では、人間に限らず全ての生命体がそれぞれ固有の属性を持っているのだ。今王子が言ったような、「炎」タイプなどな』)
(それはもしかして、サモンドスレイヴにある属性みたいなヤツか?)
(『まさにそうだ』)
魔フォーのサモンドスレイヴカードは、それぞれ固有に属性というパラメーターを持っていた。その種類は、全部で八種類。「炎」、「水」、「地」、「風」、「氷」、「金」、「光」、「闇」。この属性を指定して発動するようなカードも、中にはある。
ちなみに、『ダブル・ジョーカー・ドラゴン』の属性は、「闇」。『ハーレム・クイーン・マホ』の属性は、反対の「光」だ。そういう感じで、生命体全員に属性があるらしい。
(『なお、属性が違っても魔法を使えないという事は無い。タイプが一致すれば、威力が増すというような事はあるがね』)
(なるほど。生活用はともかく、戦闘用ならタイプを一致させた方が有利に働くという事になるんだな)
(『そういう事だ』)
「んじゃあ、ちぃと使ってみるぜ!チョクメイ発動、『バーナー・シュート』!」
ロキヒノは、早速『バーナー・シュート』を試してみた。
魔法の発動と同時に、ロキヒノの剣先から炎が噴き出した。
「おお!これが!」
ロキヒノは、少し離れて剣先をGに向けた。剣先から放たれた炎が、数メートル離れたGの死体に到達し、それを火葬する。
あの『バーナー・シュート』は、要は火炎放射器になる魔法だった。
「こいつは使えるぜ!」
火炎放射器をゲットして、ロキヒノは嬉しそうだった。
ロキヒノ、勅命カード『バーナー・シュート』ゲット!テッテレー♪




