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異世界探して右往左往しても見つけたい!  作者: キングスロード田中
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第63話

  俺さ、一つ思うんだけど……。


「はい、何でしょう?」

『いつもの謎空間はどうしたの?ここ、わたしの借りた部屋なんだけど?』


  とりあえずは、どうでもいい。肝心なのは、そこじゃない。


『よくはないでしょ……』

「結局本編のわたし達は覚えていないと思うので、いいんじゃないでしょうか?」

『そんな物……?それで、何を考えたの?』


  今、マホとトモヨちゃんが目の前でめっちゃイチャイチャしてるわけじゃん?


『ん?そうだね?』

「はい。マホさんはいい匂いがします」

『トモヨちゃんこそだよ~』


  キマシタワー建築の為にも、俺は別の家に移った方がいいと思うんだよ。男は、やっぱり挟まっちゃ駄目だろう。映像に関しては、V2ホッパー辺りで観察しとくから。


『キマシタワー?』

「ああ、ヒナギさん……いえナギサさんという人が出ていたアニメのあれですか」

『ああ、昔の百合アニメだね。あれ?彼方くんって百合男子だったっけ?』


  マホ子とトモ子が悪いんだよ。人の心の中の何かを刺激するから。


『誰、それ……?』

「別人になっているんですけど……」


  そういう事で、あとは若い二人でよろしくやってくれ!じゃ!


『あ、ちょっと!?行っちゃった……?』

「このままだと本編との整合性が取れないので連れ戻しましょう!ここにベッドもありますし!ベッドもありますし!!」

『うん、ベッドもあるしね!待て~!』

「観念して下さ~い!」


 ──・──・──・──・──・──・──


  朝。


  昨日、あれだけ走り回って戦っていたから筋肉痛でもあるかと思ったけど、案外何とも無いな。この、ふわふわのベッドのおかげかな?


  俺はベッドに上体を起こして、うーんと伸びをする。

  うん、今日も体が軽い感じ。今日も一日、頑張っていきまっしょい!


「ん?」


  下ろした手が、何かに触れた。布団じゃないし、暖かくて柔らかい。


「……は?」


  手の先、つまりベッドにトモヨちゃんが眠っていた。持ち込んだと思われる枕で横になって、例のパジャマ姿のトモヨちゃんが寝ている。


「!?」


  俺は、慌てて自分の格好を確認した。

  当たり前だけど、寝る前のスウェットのままだ。何かをした様子も記憶も無いし、何かをされた様子も無い。

  次に、トモヨちゃんのパジャマをめくった。ちゃんと、パンツは穿いている。


「ほっ……」


  とりあえず、記憶が無い内にトモヨちゃんとしてしまったわけではないようで、ちょっと安心した。


(『ずいぶんナチュラルにパジャマをめくったな?少し、驚いたぞ?』)


  ダブル・ジョーカーが、驚いた声を出していた。まあ、俺も何の躊躇も無くめくったなと自分自身驚いたけど。


(昨日、散々見せられた物に比べりゃな。……おはよう、ダブル・ジョーカー。いつトモヨちゃんが来たか見てたりしなかったか?)

(『おはよう、マスター。君が完全に寝入ってからこっそりと入ってきて、音も立てずに潜り込んでいたぞ?』)

(知ってたなら起こしてくれよ?)

(『彼女が、君に危害を加える気配が無かったしな。ただ、一緒に寝たかっただけであろう?かわいい物ではないか』)


  まあ、トモヨちゃんも寝込みを襲いに来たわけじゃないのならいいかな。ただ、この子いつまでそれだけで満足するんだろう……。


(『逆に襲われる事も、覚悟しておくのだな』)

(さすがに、それは踏み留まってくれるはず……)

「ん……」


  ダブル・ジョーカーと話している間に、トモヨちゃんが目を覚ました。


「あ。おはようございます、カナタさん♪」


  朝から、眩しい笑顔だ。寝起きまでいいのか、この子は。きっと、いいお嫁さんになるだろうよ。……誰のとは言わん。


「おはよう、トモヨちゃん。どうしてここに……、なんて聞くまでもないよね?」

「添い寝くらいなら、いいでしょう?わたし、頑張って手を出すのを我慢したんですから、褒めて下さいよ」


  それは、本当に褒めるべき事なのだろうか?と疑問には思ったけれども、にこにこ笑顔で褒められるのを待っているトモヨちゃんはあまりにもかわいらし過ぎて、ツッコミを入れられなかった。

  結局、甘いな俺は。


「俺の意思を尊重してくれて、ありがとうトモヨちゃん」


  俺は、トモヨちゃんの頭をそっと撫でてあげた。


「はい……♡」


  顔を真っ赤にして、嬉しそうなトモヨちゃん。

  ああ!かわいい!!


(『君が彼女にほだされるのも、そう遠くないな』)

(最後の一線は、理性を総動員してでも止める!)

(『……フラグか』)

(ちげえ!)


  つまらねえフラグは、叩き折るぜ!


「ところで……」


  俺は、トモヨちゃんに顔を向けた。


「トモヨちゃん寝てたけど、例の夢は見た?」

「カナタさんの夢ですか?見ましたよ?」


  トモヨちゃんは、普通にうなずく。やっぱり、夢は継続しているか。


「そうなると、バトル・ファイオーの様子も?」

「はい。バトル・ファイオーに関しては、なぜか二画面になってカナタさんの様子と、カナタさんが頭の中で見ている映像が両方見えました。……まさか、ダークネス八武衆の残りの二人がマホさんの昔の恋人とダブル・ジョーカーさんの部下の方だったとは……」


  トモヨちゃんが、うつむいて答えた。

  その夢、まさかV2ホッパーの脳内映像まで見れるようになっているなんてな。


「それも、知っちゃったか」

「はい、ごめんなさい」


  なぜか、申し訳なさそうに謝っているトモヨちゃん。……もしかして、俺の中にいるダブル・ジョーカーに向けて謝っている?


(『我は気にしていない。と、王女に伝えてくれぬか、マスター?』)


  ダブル・ジョーカーも、それに気づいたらしい。


「トモヨちゃん。ダブル・ジョーカーは、別に気にしてないってさ。マホは……、あいつが自分から言い出すまでは知らない振りしといてあげてくれないかな?」

「……はい。わかりました」


  顔を上げて、トモヨちゃんは微笑んだ。


「ただ、自分で自分を見ているのは何だか変な気分でした。裸でカナタさんに迫る自分の姿は、我ながらよくやるなぁと思いました」


  ああ、トモヨちゃんもこうやって俺と関わりを持った以上、夢の中の登場人物として出てくるわな。

  自分で自分の裸を見ていたのか、この子は……。


「それを見ていて、わたしは反省しました」


  ため息をついて、トモヨちゃんが見つめてくる。

  もしかして、客観的に見る事でやり過ぎだったと遅まきながら気づいたとか!?


「なんて、生ぬるい事をしているんだろう、わたしは!と」


  拳を握って、力説するトモヨちゃん。

  うん、期待した俺がバカだった。


「やっぱり、もっともっと積極的に行くべきでした!だいたい、最初にバスタオルを巻いていくなんて、何を日和っていたのでしょう!?」


  トモヨちゃんが、俺の目を見つめてきた。

  あれ以上、どう積極的になろうと言うのか、君は!?


「わたし、もっと頑張って羞恥心を無くしますね!」

「無くしちゃ駄目!」


  慎みは持って!恥じらって!恥じらいの無い裸は、それはそれで見てても色々な所に響かないから!

  ……何を考えているんだ、俺ー!?


「……今、何時くらいなんだろう?」


  俺は、部屋を見回してつぶやいた。窓から射し込む光で朝なのはわかるんだけど、この部屋には時計が無いからいまいち時間がわからない。時計が無いと時間の感覚が狂うのは、現代人の駄目な所だよな。


「えっと……、時間は午前七時だそうです」


  トモヨちゃんが、頭に手をやってつぶやいていた。


「パーナさん?」

「はい」


  パーナさん、時計持ってるんだろうか?

  その時、ノックの音が聞こえてきた。


「失礼します」


  そう言って、メイドさんが一人部屋に入ってきた。


「おはようございます、カナタ・トオノ様。ボク……じゃない。私は……あれ?」


  メイドさんは、礼をして顔を上げた後、そこで動きを止めていた。


「トモヨちゃ……様もこちらにいらっしゃいましたか?」


  なんか、やけに噛んでるなこのメイドさん。


「おはようございます。はい、婚約者ですから」


  トモヨちゃんは、特に焦った様子も無く挨拶を返していた。

  いや、俺のベッドにトモヨちゃんがいる所を他人に見られて、こっちはドッキドキなんだけど。


「でした。ちょっとお待ちを」


  メイドさんは、一礼をしてまた出ていった。

  て言うか、全然動じてないなメイドさん。


「今のメイドさんは?」

「この家でわたし達のお世話をしていただけるメイドさん達ですよ。こちらには、元々わたしにずっと付いていてくれた方達六人が派遣されているはずです。一応、一人ずつわたし達みんなに付いてくれる予定です」

「俺や、マホ達にも?」

「はい」


  まさか、俺達にまでお付きのメイドが作られるなんてな。ただ、メイドさんに何をしてもらうんだ?


「お付きだからって、メイドさんに手を出しては駄目ですよ、カナタさん?手を出すんでしたら、是非わたしに」

「しないって……」


  メイドさんは、目で見て楽しむ物だ!お触りは厳禁!


「おはようございます、トモヨ様。カナタ・トオノ様」


  またノックがして、さっきのメイドさんともう一人、眼鏡のメイドさんが入ってきた。

  あのメイドさんは確か、婚約パーティーの前にトモヨちゃんと俺に着替えるように言ってきたメイドさんだな。よく見ると、最初の若くてにこにこ笑っているメイドさんもその時一緒にいた人だわ。


「あ……、おはようございます」

「はい。おはようございます」

「本日より、こちらのお屋敷並びにトモヨ様の専属メイドとなりました、アン・シンセンと申します」

「同じく、カナタ・トオノ様の専属メイドになりました、セルリ・シトロンです。よろしくお願いします」


  二人のメイドさんが、同時に挨拶をしてきた。

  眼鏡で巨乳のメイドさんが、アンさん。背が低くて貧乳さんのピンク髪のメイドさんが、セルリさんと言うらしい。

  現実にピンクの髪の女の子って、いるんだ……。


「あ、改めまして、カナタ・トオノです」


  俺は、ベッドから降りて立って挨拶した。

  巨乳!メイド服!大人の女性!このアンさんは、俺的にはちょっとドキドキする相手なんですけど!


「パーティー前にお会いして以来ですね。これから、よろしくお願いいたします」


  アンさんは、優しく微笑んで言葉を返してくる。

  ヤッバ……!ミチヨさん並みに、直球ど真ん中ストーレートなタイプの人がやって来たんですけど!?


「カナタさん。アンさんは、わたしの専属メイドさんですからね?」


  ベッドから降りてきたトモヨちゃんが、ケツをつねってきた。

  あ、アンさんに目を奪われてたのに気づかれたか。


「あと、アンさんは人妻ですからね?……今日からは、こちらの方でお願いしますね?あと、セルリさんはいつもの調子でやって下さい。何度か、噛んでいますよ?」


  トモヨちゃんが、こそっと教えてきた。

  そうかぁ、アンさん人妻かぁ……。人妻なメイドさん、それはそれでいいじゃん!


(『君も案外業が深いな』)

(妄想くらいは好きにさせて!?)

「え、でも……」


  セルリさんは、トモヨちゃんの言葉にも躊躇しているみたいだった。


「いつも通りでないと、こちらも調子が狂います。カナタさんも、堅苦しいよりはフレンドリーな方が接しやすいと思いますから。ね、カナタさん?」


  いきなり、トモヨちゃんが話をこっちに振ってきた。

  セルリさんの普段を知らないから何とも言えないんだけど、堅苦しいかフレンドリーかのどっちがいいかと聞かれれば、そりゃまあフレンドリーな方がいいかな。


「まあ、よくわからないけど気楽に行きましょう。俺、様とか付けられるような大層な人間じゃないから」

「……いいのでしょうか、アンさん?」


  不安げなセルリさんに、アンさんが柔らかな微笑みを向けた。

  大人な余裕の微笑みー!いい、実にいいよ!


「トモヨ様もトオノ様もいいとおっしゃっているので、構わないでしょう。ここは、王城ではないですし」


  アンさんが言うと、セルリさんは嬉しそうに笑った。


「はい!……えっと、改めて!今日からボクがカナタに~さんのお世話をさせてもらう事になったんで、よろしくお願いしますっす!」


  なぜか敬礼をして、セルリさんが言ってきた。

  ああ、ボクっ娘かぁ。そして「に~さん」か。彼女、自由奔放系かな?そりゃ、堅苦しい場では噛みまくるわな。


「に~さん?セルリさん、いくつ?」

「十八っす!高校卒業したばっかっす!」

「ちなみに、クラスメートでした」

「トモヨちゃんには、宿題でいつもお世話になってたっす」


  ああ、飛び級のトモヨちゃんとクラスが一緒だったのか。クラスメートというよりは、友達だったのかな?それじゃあ、様を付けるのついつい忘れるわな。

  ただ、小学生に宿題の面倒を見てもらう高校生って……。


「そうなんだ。改めてよろしくね、セルリさん」

「よろしくっす!」

「食堂は一階二階とありますが、朝食はどちらにいたしますか?」

「一階でお願いします。食事は、毎回一階で食べる事になると思いますので」


  せっかくみんなで生活するのに、食事すら別じゃ寂しいしね。


「わかりました。それでは、そちらに用意しておきます。早めに来ていただける事を、お待ちしております」

「では!」


  アンさんとセルリさんが、一礼して部屋から出て行った。

 メイドさんのいる生活かぁ……。なんだか、これから華やかになりそうだ。ワクワクを思い出すぜ!



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