第57話
トモヨちゃんのサモンドスレイヴ、『サクラン・ミストレス』のパーナさんはホンマもんの回復魔法の使い手だった!
しまった!どんな風に回復してたか、見るの忘れた!
『我は見ていたが、本当に細胞がうにうにとアメーバのように増殖して回復していったぞ?あれは、なかなか必見だ』
なんか、イメージよくないな。
『あの、もう少し言い方は無かったでしょうか?アメーバは、さすがに……』
あ、パーナさん?登場して即ここに来るなんて、最強最速トラマン並みに素早い動きじゃないですか!
『MAX!MAX!MAX!』
『トラマン……?その、ちょっとあまり良くない言葉が聞こえたのでつい……』
ダブル・ジョーカーくん?
『すまぬ』
『あ、いえ。えっと、謝っていただけたのでもう大丈夫です』
すみません。それはそれとして、パーナさん何を持ってるんですか?
『え?これは、見ての通りおにぎりですよ?』
マジで、おにぎりなんですか?だって、ずいぶん大きい……。
『自身の顔より大きいではないか』
『私、おにぎりというかお米様が大好きなんです!三度のメシより、お米様が好きで好きで!もう、ご飯をおかずにご飯を食べれば何杯だっていけるんです!』
えぇ、お米ガチ勢……?
『まさに、そうです!わかりますか、トオノさん!お米様のいい所は、まずはその白さ!』
なんか、凄い早口で語り出したんですけど……。
『……それでですね!聞いてますか、トオノさん!?』
は、はい。……ダレカタスケテー。
『頑張れマスター。今の我は米を食べないので、サラダバー』
また逃げやがった、ダブル・ジョーカーの奴!
『ちゃんと聞いて下さい、トオノさん!』
──・──・──・──・──・──・──
「トモヨのサモンドスレイヴだって!?」
ロキヒノが、驚愕していた。
まあ、両親すら知らなかったんだから、ロキヒノがパーナさんの事を知らなくても無理はないか。
「おま……!召喚士になってたのか、トモヨ!?」
「はい」
「い、いつの間に……?」
「お兄様が生まれた時には既に」
「な!?俺が生まれた時だと!?じゃあ、二十一年前からだっていう……。お前生まれてないじゃねえか!」
ワンクッション置いてから、ロキヒノがトモヨちゃんにツッコミを入れる。いや、あれはノリツッコミだったのか?
「あはは、そうでした。五年前からですよ」
「それでも、五年も前からかよ……」
「初めまして、トモヨのサモンドスレイヴさん。トモヨの二番目の兄のノオトと言います」
ロキヒノがトモヨちゃんに遊ばれている横で、ノオトくんがパーナさんに挨拶をしていた。相手がサモンドスレイヴでも、ノオトくんは丁寧な対応だ。
『はい、初めまして。パーナ、とお呼び下さい』
「お兄様は、パーナ様と呼んで下さいね?今まで、数々のお兄様の怪我を治療してきたのは、わたしの中にいたパーナさんなのですから」
トモヨちゃんが、なぜかロキヒノにだけ注文を出す。
「え、そうなのか?」
「はい。お兄様は、感謝してもしきれない恩人ですよ?」
「……ありがとう、パーナ様」
なぜか膝を突いて、ロキヒノがパーナさんに礼を言う。恩義を感じているのか、律儀に「様」を付けて呼んでいる。
『はわわ~。さ、様なんて畏れ多いです~。どうか、パーナとお呼び下さい~』
そんなロキヒノに、パーナさんの方が恐縮していた。
『それじゃあ、私は一旦戻りますね』
治療が終わったので、パーナさんはカードというかトモヨちゃんの中に戻る事になった。
「はい。ありがとうございました、パーナさん」
『治してくれてありがとうね、パーナちゃん』
「また」
「パーナさん、お疲れ様~」
「また何かあればよろしくお願いします、パーナさん」
「これからも、トモヨや私達をよろしくねパーナちゃん」
「これからもよろしくお願いします、パーナ様」
敬礼をしてパーナさんを見送る、変なロキヒノ。パーナさんにああ言われてもそれって、今までどれだけパーナさんに助けられてきたんだよ、お前……。
ロキヒノとノオトくんも来たので、まずは昼食を食べる事になった。
そもそも、朝から勇者との力比べをやらされて、そのまま前哨戦に突入して王都内を散々走り回らされたからな。正直、俺も腹減った。
「そういや、カナタ?お前がダークネスと話してた「さとし」ってのは何なんだ?そいつを倒すとダークネスと直接戦う事になるとか言ってたが?」
食事の最中、ロキヒノが聞いてきた。
ああ、ロキヒノはダークネス八武衆とは戦っていないから、その辺の事は知らないか。
「王都に攻め込んできたダークネス八武衆という、ダークネスのサモンドスレイヴの一体だよ。闇のサトシとか名乗っていたから、闇タイプのサモンドスレイヴだな。一応、種族は人間らしいけど、本人も疑問形だった」
「ダークネスのサモンドスレイヴ!?そんなのが、攻めて来てたのか!?」
「八武衆ですか……。八人いるという事ですか?」
ミチヨさんも、興味があるのか口を挟んできた。
「はい。今回王都には四人来ていて、残り半分は鉱石領国に行っていると言っていたので計八人だと思います」
「サモンドスレイヴが八人ですか……」
「やっぱ、強かったか?」
「ああ、結構な。武器破壊をして追い詰めたんだけど、倒しきれなかったし。しかも、真の力は隠してるらしかったし」
「へー。カナタが苦戦するって、よっぽどだな!」
そこで、目をキラキラさせて、期待に胸を膨らませるなよロキヒノ。強敵相手にときめくのは、スポーツの試合かなんかにしてくれ。実戦は、負けたら最悪死ぬからな?
「残りの三人ってのも強いのか!?」
こいつ、サトシは俺が倒す必要があるから、他のメンバーを標的にするつもりだな?
「俺はサトシとしか戦ってないから知らん。まあ、わざわざ八武衆とか名乗ってるんだから強いんだろうよ。」
本当は知っているけど、他の八武衆メンバーの言及は避ける事にした。どいつもこいつも知り合いの因縁の相手とか、軽々しく口にしていい事でもないしな。
つーか、八武衆まで俺を狙ったメンバーなのか?
(『我は別に構わぬぞ?まあ、クイーンの事はあれだが……。もう一体も誰かと因縁がある相手なのか?』)
(もう一体の風の奴は、メィムとリゥムの父親を殺してヒナギの母親に重傷を負わせた犯人だったらしい)
まさかの、俺の関係者だらけというな。サトシは、ここで因縁出来ただけだけど。
(『それはまた……。直接にしろ間接にしろ、何かの事件に関係してしまうのが、さすがは主人公体質だな』)
(いや、主人公体質なのは異世界転生した真穂だろ?俺なんて、お前とマホに連れて来られただけのモブじゃん?)
(『モブは、ハーレムなぞ築かぬぞ?』)
(ぬぅ……)
でも、俺は主役じゃなくね?
「うーむ、それもそうか」
「とりあえず、風の八武衆は厄介だったわね。こっちの攻撃が、魔法も物理もことごとく効かなかったもの」
ため息混じりに、メィムが言った。あ、自分で言及するのか?
「確かに、大変だったね~」
「まさか、トオノさんの拳銃の攻撃までひん曲げられるとは思いませんでした」
リゥムとヒナギも、メィムの意見に同意する。
「お!お前らも、八武衆と戦ったのか!?どんな奴だったんだ?」
「『カゼタチイヌ』っていう、竜巻を巻き起こすイタチよ。その竜巻で魔法も吹き飛ばすし、物理攻撃に行ってもこっちが吹き飛ばされるから、ロキヒノじゃあ打つ手無しになるだけだと思うわ」
少しだけ笑いながら、メィムがロキヒノに答える。まあ、ロキヒノの戦い方じゃ攻め手が無いわな。
「マジかー」
「『カゼタチイヌ』?『カゼタチイヌ』と言えば、確かナード町でクラの惨劇の犯人だと言われている?」
ミチヨさんが、メィムに尋ねてきた。
クラの惨劇の事を知っているのか、ミチヨさん?それだけ、有名な事件だったって事なのかな。
「!?知っているんですか、ミチヨさん?」
「まあ、近年まれに見る大惨事だったものだったから。ユギカザさんが、慌てて視察に駆け付けたくらいだったし。……ハークロさんは行かなかったようだけど」
ああ、ナード町もあのオッサンの担当区域か。あいつじゃ、何が起こっても我関せず、だろうな。
「まったくです。誰があいつを領主にしたのか、小一時間問い詰めたいくらい、何もしてくれませんでしたよ」
「あ……。メィムちゃん、もしかしてクラの惨劇の関係者……?」
「はい。あたしとリゥムのお父さんがそこで死んで、ヒナギのお母さんが重傷を負わされましたから」
特に表情を変える事もなく、普通にメィムは自然と語った。それを聞いて、マホやミチヨさん、ロキヒノやノオトくんが驚いていた。
そして、普段何でもお見通し的に動じないトモヨちゃんも、ビックリしている。さすがのあの子も、この事は知らなかったか。
『そうだったの!?メィムちゃん、リゥムちゃん、ヒナギちゃん?』
「まあ、二年も前なんだけどね」
「私達は、『カゼタチイヌ』を探す為に懸賞金稼ぎになったんだよ?」
「あちこち情報を集める為には、色々な場所へ行かないといけませんでしたし」
お、新情報。三人は、『カゼタチイヌ』を倒す為に懸賞金稼ぎになってたのか。まあ、テレビやネットのある向こうの世界と違って、こっちじゃ情報を集める為には足で探すしかないからな。それで、年頃の若い娘が三人で懸賞金稼ぎなんて職に身をやつしていたのか。
(『君も若いぞ?』)
(それは、言葉のアヤのような物でね)
「そうなの。ごめんなさい、何もできなくて……」
ミチヨさんが、申し訳なさそうに三人に頭を下げた。王国を預かる者として、国民を守れなかった事を謝っているらしい。
「い、いえ。ミチヨさんが謝る必要は……」
「そ、そうですよ!ミチヨさんが悪いわけじゃないですから!」
「わたし達が、不運だっただけですよ」
三人は、そう言って両手を振った。まあ、ミチヨさん達に怒りの矛先を向けるのは、さすがに違うからな。そこは、犯人のラントボルに向けるべき。
そういや、こいつら本人にはちゃんと「ミチヨさん」と呼ぶんだな?ミチヨさんもトモヨちゃんと同じで、王妃様とか呼ぶとすぐシュバって来て訂正するからな。
「……ありがとう、みんな」
「はい。……とにかく、『カゼタチイヌ』はあたしらが倒しますから」
「そういう事だから、ロキヒノくん?そっちは、手を出さないでね?」
リゥムが、笑顔でロキヒノに釘を刺した。どうせ、ロキヒノ一人では太刀打ちできないとは思うけどな。
「そうかぁ……。んじゃ、残り二人を狙うか」
『残り二人も、ロキヒノくんには無理だと思うよ?』
今度は、マホがロキヒノに言った。
あれ?まさか、自分の事を話すつもりか?
「え?そうなのか?」
『ええ。残り二人の八武衆は、聖天族と魔竜族だったから。両方空飛べるから、ロキヒノくんが相手したら飛ばれて一方的にボコられるだけだと思うよ』
「げ、マジか?」
「マホ、戦ったの?」
『うん。魔竜族の相手はダブル・ジョーカーがしてたけど』
メィムの問いに、マホはあっさりとうなずく。
「それで、マホちゃんもダブル・ジョーカーさんもボロボロだったんだ……」
「……もしかして、お知り合いですか?」
マホを見つめながら、ヒナギが尋ねる。いい勘してる。
『まさか』
マホは、肩をすくめた。
まあ、それは言わないよな。
「空飛んでんのかー。それは、確かに厳しいなぁ」
飛行できる相手では、さすがのロキヒノも積極的に突撃する気にはならないようだ。
「まあ、八人いるんだから残りの四人に期待するんだな。多分、タイプとしては「水」と「氷」と「炎」と「金」のタイプになると思うけど」
前半四人が「闇」と「光」と「地」と「風」だから、順当に考えれば残りの四人は残っている四タイプのサモンドスレイヴだろう。そういう一タイプに一人ずつ!とか、どうでもいい事に拘りそうだもんな、ダークネス。
「なるほど!俺は炎タイプだから、金タイプを狙うか……。さすがに水は……」
何やら、ブツブツつぶやき始めるロキヒノ。
つか、どうせお前相手が何タイプだろうとまずは突っ込んでいくだけだろうに。




