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異世界探して右往左往しても見つけたい!  作者: キングスロード田中
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第54話その2

「はは……。さすが、カナタはすげーよ。ダークネスに宣戦布告かましてたぜ」


  ロキヒノが、空を振り仰いで笑っていた。ロキヒノと桃浦は、結局途中の魔物連中に道を阻まれて、王城までは辿り着けずに試合終了を迎えていた。

  特に二人とも目立った怪我も無さそうだったので、それは幸いだ。


『くはー!いきなりラスボスに喧嘩売りに行くとか、さすがは俺様のマスターだぜ!』


  桃浦は、俺とダークネスのやり取りに興奮しているようだった。

  はい、ご満足いただけたなら嬉しいです。


「……さて、王都は酷い事になっちまったが、とりあえずは生き残った。桃浦、王城に戻ろうぜ?」

『お?ああ、そうだな』


  二人も、王城に向かった。



 “「バトル・ファイオー前哨戦第一回戦、人間は生き残った!厳しい戦いだったが、見事戦い抜いてくれた者達よ、ありがとう!まずは、戦った者達に感謝を!そして、犠牲になった者達に哀悼を!」”


  ユギカザさんが、王都全土へ向けてマイクで放送していた。


「……ふぅ、よかった」


  ミチヨさんは、一息ついてマイクのスイッチを切っていた。正確な時間はわからないけど、二時間近くのライヴ、お疲れさまでした。


  そのミチヨさんの視線の先には、トモヨちゃんと『サクラン・ミストレス』の姿。


「ありがとうございました、パーナさん。おかげで、助かりました」


  トモヨちゃんが、『サクラン・ミストレス』に丁寧に頭を下げて礼を言っていた。立場的にはマスターであるトモヨちゃんの方が上なんだけど、彼女はどんな相手にも丁寧な対応をするよな。


『ううん。お役に立てて、よかったよ!』


  礼を言われた『サクラン・ミストレス』は、両手を振って笑っていた。


  なんか桜の木の精霊だって事でもっとクールな感じをイメージしてたけど、案外普通の女の子みたいな対応だな、『サクラン・ミストレス』。


『それにしても……。凄い人だね、トモヨちゃんの彼氏。まさか、ダークネスと直接話して喧嘩まで売っちゃうとか。なんか、トモヨちゃんに聞かされてたのとは、ちょっと違う感じがする』


  苦笑しながら、『サクラン・ミストレス』がトモヨちゃんに向かって言った。

  ふむ、『サクラン・ミストレス』は俺の事をトモヨちゃんから聞いたんだ?……一体、俺の事をなんて話しているのか、ちょっと気になるぜ。


「やぁ~ん!彼氏だなんて~。実際、そうなんですけどぉ~」


  トモヨちゃんは、「彼氏」という言葉に反応して、体をくねくねさせていた。本当に、なんというか変わった子だよ、トモヨちゃん。

  そして、そんなトモヨちゃんを見て苦笑する『サクラン・ミストレス』。


「前から素敵な人だったんですけど、ここに来てからはワイルドさまで加わって、もうすっかり完璧超人になってますよ。ああ、あの人がわたしのだ・ん・な・さ・ま」


  トモヨちゃん、完全にトリップしてない?ちょっと、ヤバい子みたいになってるよ。


  そして、彼女の言う「前」っていつの事なのかな?ここに来てからってのは、王都に来てからって事?……落ち着いたら、トモヨちゃんに聞かないとな。


『あ、うん。……まあ、トモヨちゃんが幸せならそれでいいけど』


  なんか、『サクラン・ミストレス』は言葉を交わす事を諦めた? まあ、今のトモヨちゃん相手じゃ仕方ないよね。是非もなし!


「よくやってくれたな、ミチヨ。ご苦労」


  マイクを切って、ユギカザさんがミチヨさんに労いの声をかけていた。


「あなたこそ。守ってくれて、ありがとうございます」

「当然の事をしたまで。……だが、これからが大変だぞ」


  ユギカザさんは、荒廃した王都に視線を向けた。これから、この戦いの後始末をしなければならないのだ。


「そうですね。一時的な休戦状態とはいえ、復興はしないとですね」

「ああ。……次も選ばれない事を祈るのみだな」


  抽選で選ばれると、また攻めてくるんだよな。操作はしてないっぽい事を言ってたけど、どこまで信用できるんだか、ダークネスの野郎。


「とにかく、今は生き残った事を喜ぶとしよう。そして、色々と確認しなければならない事もあるし、その辺も片付けていかないとな」

「ですね……」


  ユギカザさんとミチヨさんは、二人してトモヨちゃんと『サクラン・ミストレス』の方に顔を向けた。


  両親であるこの二人も知らなかった、トモヨちゃんのサモンドスレイヴの存在。彼女の隠された、その真意。

 あの子に関しては、これからが始まりだ。


『……ご両親に見られてるよ、トモヨちゃん』


  こそっと、『サクラン・ミストレス』がトモヨちゃんに耳打ちした。


「まあ、聞きたい事が色々あるでしょうしね。……多分、カナタさんはもっとたくさん聞きたい事があるのでしょうけど」


  トモヨちゃんも、小声で『サクラン・ミストレス』に答える。

  まったく、その通りだよ!君に聞きたい事は、本当にたくさんあるんだよ!後で、そこの所を洗いざらい吐いてもらうからね!


『全部話すの?』

「まあ、パーナさんの事は別に隠す事ではないので。カナタさんに関しては……。カナタさんに拷問してもらえるなら、しゃべります♪」


  トモヨちゃんは、楽しそうにそんな事を言っていた。


  なんで、拷問される事をそんな楽しそうに言うのさ、君は?って言うか、拷問なんかしないよ俺!?トモヨちゃんの中の俺のイメージ、どうなってんの!?


『あんまりいじめちゃ駄目だよ、トモヨちゃん……』


  乾いた笑いを浮かべる、『サクラン・ミストレス』さん。


  ね、どう考えてもいじめられるの俺だよね?俺、あの子には勝った事無いと思うんだよ?



『離れていたから知らなかったが、君もダークネス八武衆の一人と戦っていたのだな、マスター?』


  ダブル・ジョーカーが、声をかけてきた。


「ああ。さすがに、サモンドスレイヴが相手じゃ普通の兵士さん達に任せるわけにもいかないからな。ここは、俺が何とかしないとってさ。……お前も、大変だったなダブル・ジョーカー。かつての仲間とやり合う事になっちゃって」

『ん?我の戦った相手を知っているのか?』

「スケールのV2ホッパーで、状況は確認していた。なんか、色と色の競演!みたいな変な状況になっていたけど」

『ふむ、そうか。見ていたか。……まさか、あんな意味不明な四色カラーでラビッツが現れるとは、夢にも思わなかったさ』


  さすがのダブル・ジョーカーにも、ラビッツの四色カラーだけは予想外の驚きだったようだ。


「ボーダードラゴンの次に信号機ドラゴンが現れて驚いてたら、それを超える四色カラーだもんな。……魔竜族って、色の多彩さで競ってるのか?」

『そんなわけなかろう。……ダークネスに宣戦布告したのは、スカッとしたぞマスター』


  ダブル・ジョーカーが、ニヤリと笑った。とりあえず、ダブル・ジョーカーにはあれは好評だったみたいだ。


「誰にも相談せずにやったんだけど、問題無かったか?」

『少なくとも、我々君のサモンドスレイヴ一同は「よくやった」と称えるぞ?まあ、君の命に世界を乗せられるとは思わなかったが』

「あれなぁ……。あれも、ダークネスの嫌がらせの一環かね?」

『あやつの楽しい事は、他人にとっては嫌な事だからな。まあ、決まってしまった以上は仕方ないさ。君は、我々が全力で守る。世界を守り、サクッとダークネスを滅ぼそうではないか!』

「サクッとね……。まあ、サクッと片付けるか!」


  ダブル・ジョーカーの言う通り、決まってしまった以上もう変える事はできそうにない。なら、そのルールに乗っ取ってサトシをぶっ倒し、ダークネスを目の前に引きずり出して完膚なきまで叩き潰すのみ!


「もちろん、終わるまで付き合ってもらうぜ、ダブル・ジョーカー?」

『無論だ。我々は、相棒だからな』

「ああ。頼むぜ、相棒!」

『彼方く~ん!』


  ダブル・ジョーカーと話していると、マホが飛んできた。


「ああ、マホ。……お前、大丈夫なのかその翼」


  マホが降りてきたので、俺は尋ねてみた。マホの翼は、ミイナの爆弾羽根の攻撃を受けて血まみれだし、羽根もボロボロになっている。そんなんで、よくここまで自力で飛んで来れたものだ。


『え?まあ、じんじんはするんだけど、慣れてきたかな』


  あははと苦笑いをする、マホ。

  これは、かなり痛そうだな。トモヨちゃんの治療、マホにも通じるかな?


『それより、ダークネスにめっちゃ喧嘩売ってたみたいだね?いや~、あの事なかれ主義者だった彼方くんがすっかり男らしくなって、お姉さん嬉しいよ~』


  マホが、涙を拭う真似をしながらそんな事を言った。

  いや、誰がお姉さんだ?事なかれ主義者だったのは、否定しないけどさ。


「誰がお姉さんだ……」

『だって、わたしの方が長く生きてるんだから、わたしがお姉さんでしょ?』

『うむ。そうだな、お婆さん』

『誰がお婆さんだぁ!!』


  ダブル・ジョーカーの言葉に、全力でツッコミを入れるマホ。


『……そういや、あの黒いドラゴンはどうしたの?倒した?』

『いや。倒す前に強制送還されていったわ。まあ、倒す寸前だったのだがな。……お主こそ、例の天使はどうしたのだ?ダークネス八武衆の一人であったろう?』

『うわ!ちょっと、その辺は言わないで!』


  マホは、なぜか俺の方を見ながらダブル・ジョーカーに口止めを迫っていた。


  ミイナの事は、俺には教えたくない事なのかな?なんでだろう?昔の恋人の事で、何か俺が気にするとか思ったのだろうか?


「……俺は、お前の戦いも見ていたから知っているぞ、マホ。昔の、色々あった天使と戦わされた事は、な」


  俺が言うと、マホはキョトンとした。


『え?見てたの?どうやって?彼方くん、側にはいなかったよね?』

「詳しくはあとで説明するけど、スケールの監視衛星を通じて。色々、大変だったな?」

『スケールの監視衛星?ふ~ん。……まあ、そうなんだけどね』


  俺が見ていた事を知っても、マホは言葉を濁した。

  そこの辺は、俺が触れていい場所じゃないのかもしれないな。


「とりあえず、王城に戻ろうぜ?他の連中も、王城に戻ってくるだろうし」


  なので、俺は話題を変える事にした。


『そうだな。ではマスター、背中に乗るといい。我が送ろう』

「いいのか?お前も、結構血みどろだけど?」

『問題無い。ただのかすり傷だ』

「そうか。……じゃあ、頼もうかな」


  せっかくなので、俺はダブル・ジョーカーの好意に甘える事にした。今日は、あちこち走り回ってめっちゃ疲れたからな。

  そうやって背中に乗ると、なぜかマホまで乗ってきた。


『お主は自分で飛べばよかろう、クイーンよ?』

『いいじゃない。わたしの翼見てみて?ボロボロでしょ?だから、ちょっとは休ませてよ。女の子には、優しくしなさいって』


  何だかんだ言っても、やっぱりあの傷は辛いのかな。


『……ふむ。仕方ない。老人には優しくしよう』

『あんた、わたしより年上でしょうがぁ!』


  ダブル・ジョーカーのボケに、全力ツッコミのマホ。まだまだ元気じゃん。


  そうして、俺達は王城へと帰還した。



 ───とある場所。


  ダークネスが、しゃべっていた。


 “「人間世界の救世主、カナタ君か」”


  ダークネスがそう言うと、その少女は顔を空に向けた。


「……彼方くん?」


  少女は、不思議そうにつぶやいた。


  それから、少女は小さく笑って首を横に振る。


「いやいやいやいや。……未練だな、わたし」


  ため息をついて、少女は空を見上げるのをやめた。───




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