第52話その2
『ぐはっ!』
ラビッツの猛攻を受けたダブル・ジョーカーが、家々をなぎ倒しながら地面に倒れる。
四色カラーになったラビッツは、そのパワー・スピード・攻撃の威力・防御力全てがダブル・ジョーカーを上回っているようだった。言うなれば、今までレベル4だったのが条件を満たした事で、レベル8に上がったようなものだろうか。
『カラフルな上に強いとは、なかなかだなラビッツよ』
『体の色に関しては、元から黒と緑のツートンカラーの元王に何かを言われる筋合いはありませんな』
『はは、確かにな!』
立ち上がったダブル・ジョーカーが、ラビッツに殴りかかる。しかし、ラビッツは素早く姿を消してそのパンチをかわす。
ラビッツは、ダブル・ジョーカーの背後に回っていた。でも、ダブル・ジョーカーもそれを察知している。すぐに振り返り、口から息吹を吐いてラビッツを攻撃する。
ダブル・ジョーカーの息吹が、周りの家屋を破壊した。が、ラビッツはいない。
『!消え……!?』
『『グラビティ・プレッシャー』!』
ラビッツは、ダブル・ジョーカーの頭上にいた。そして、重力波をダブル・ジョーカーに放つ。
『ぐおっ!?この、重力は!?』
ダブル・ジョーカーは、地面に膝を突いた。さっきまでの十倍の重力に慣れていたはずのダブル・ジョーカーも、今回の重力には膝を突いて身動きが取れなくなっていた。つまり、重力が増した?
『今の状態の我が放つ『グラビティ・プレッシャー』は、重力二十倍。いかに元王といえど、これには耐えられますまい?』
ラビッツの重力波は、一気に倍の二十倍重力にアップしていたらしい。
二十倍の重力って、体重50キロの奴が1000キロ、要は1トンになるって事だろう?んなもん、普通動く動けないの前に潰れるわ!
『そして、『デス・サンダーボルト』!』
『ぐおぉぉぉ!』
重力を与えながら、ラビッツは電撃波も放った。今までは、体の色を変える事で一色に一つしか使えなかった力が、四色カラーになった事で同時に使えるようになったらしい。
うーん、さすがはビッグワン!じゃなかった、ビッグラビッツワン!
以前の電撃は、所詮ダブル・ジョーカーの薄皮を剥く程度の威力だったけど、今回のはダブル・ジョーカーの全身の肉を裂くまでのダメージを与えていた。
『ハハハ!どうですかな、我が王の力は!闇の力、思い知りましたか!?』
ラビッツが、勝ち誇った笑い声を上げる。確かに、ダークネスの力を使って以来、ラビッツはダブル・ジョーカーを圧倒している。
ただ、それはお前の力か?
『つまらぬな』
ダブル・ジョーカーが、ポツリと言った。
『ハハハ……なんですと?』
ダブル・ジョーカーの言葉に、ラビッツの笑いが止まる。
『つまらぬ、と言った』
『つ、つまらないですと!?何が、つまらないと言うのですか!?』
『ふん。親から新しいオモチャを買ってもらって大はしゃぎか?だが、それは所詮貴様が強いのではなく、ダークネスが強いだけではないか。それでは、ナンバーワンはダークネスであって、貴様では無いな。ビッグラビッツワンではなく、マリオネットラビッツツーとでも名乗るがよかろう』
ダブル・ジョーカーは、そう言ってラビッツを睨み付けた。
所詮ラビッツは、ダークネスの力を借りているだけで自分自身が強いわけではない。それでナンバーワンを名乗るのは、あまりにもおこがましい考えだ。
まあ、俺も似たような物なんだけどさ。ナンバーワンを名乗るとかは、やめておこう。
『所詮は借り物の力。まさに、道化よな。そんな貴様には、その四色カラーは実に似合っているぞ?』
『ど、道化ですと!?』
『そういえば、貴様のマスターもピエロだったな。いや、本当にお似合いだ』
ダブル・ジョーカーは、鼻で笑ってみせた。
『き、き、貴様ー!』
ラビッツが、激昂した声を上げた。
状況を見る限り、全身血みどろでろくに動けないダブル・ジョーカーが窮地に立たされているようにしか見えないのに、精神的には完全にダブル・ジョーカーが優勢だ。というか、ラビッツって煽り耐性低い?
『潰れろ!ガエルのように、ひしゃげて潰れてしまえ!!』
ラビッツが、重力波を更に放つ。まさか、二十倍からもっと増やせる?
けど、ダブル・ジョーカーは突いていた膝を地面から上げた。二本の足で地面に立ち、仁王立ちをしてラビッツを見据える。
『我を潰すには、百倍の重力でも持ってくるのだな』
そう言って、ダブル・ジョーカーは一歩一歩歩き出した。
『バカな!二十倍の重力で、歩けるなど……!?』
『ふん。むしろ、修行にはちょうどよい。貴様のおかげで、我もまだまだ強くなる伸び代がある事がわかったぞ。さあ!もっと重力を増やせ!』
ダブル・ジョーカーは、ついに走り出した。これなら、空に飛び上がれようになるのも時間の問題だろう。
『おのれ!『デス・サンダーボルト』!』
慌てたラビッツは、もう一度電撃を放った。
『その芸も、飽きた!』
ダブル・ジョーカーは、右手に小さな光の玉を発生させた。あれは、多分必殺技ほどエネルギーを集中させていない簡易的な技だな。
光の玉を、地面に叩き付けるダブル・ジョーカー。その爆発で、砂と瓦礫が舞い上がる。
ラビッツの電撃波は、舞い上がった砂と瓦礫に直撃し、それを粉砕して消滅した。ラビッツが散々ダブル・ジョーカーを吹き飛ばして家屋をなぎ倒させたので、盾になる瓦礫はたくさん落ちている。ラビッツの、自業自得だな。
電撃波をかわしたダブル・ジョーカーは、そのまま翼を広げて飛び上がった。ついに、ダブル・ジョーカーは重力に縛られる人々から解放されたのだ!立てよ、国民!
『『マグネット・リフレクション』!』
迫るダブル・ジョーカーに、ラビッツはまた反発磁力波を放った。四色カラーになって磁力波もパワーアップしたのか、反発の勢いが増している。
『……『エクストリーム・ジョーカー・フルバースト』!』
吹き飛んで行くダブル・ジョーカーが、『エクストリーム・ジョーカー・フルバースト』をラビッツに向けて撃ち放った。その攻撃は予想していなかったのか、『エクストリーム・ジョーカー・フルバースト』はラビッツに直撃した。
『何!?ぐわっ!』
ダブル・ジョーカーとラビッツは、互いの技を受けて反対方向へと飛ばされていった。
『ぬおっ!』
飛んでいったダブル・ジョーカーは、その先にあった壁にぶち当たって止まった。その激突した壁は……。
『フィリップ!?』
王城正面の壁だった。
「今飛んできたのは、カナタさんのサモンドスレイヴさん!?」
ダブル・ジョーカーの姿には、トモヨちゃんも気付いたらしい。
『おい、フィリップ!何があった!?お前が吹き飛ばされてくるなんて、どんな相手だ!?』
魔物を蹴散らしながら、アクセル・スピーダーは質問する。
あれだけ強いダブル・ジョーカーが血まみれで飛ばされてくれば、アクセル・スピーダーは驚くよな。
ダブル・ジョーカーはめり込んだ壁から抜け出すと、アクセル・スピーダーの隣にまで飛んでいった。
『顔見知りだ』
『?顔見知りだと?』
『おのれぇ、ダブル・ジョーカー!』
全身のあちこちを黒焦げにしたラビッツが、二人の前に現れる。
まあ、腐っても魔竜四天王ってヤツ?『エクストリーム・ジョーカー・フルバースト』の直撃を受けて黒焦げ程度で済んでいるなんて。
『お前……、ラビッツか!?』
『ん?ああ、本当にいたのですねぇストッパー。しかも、人間の味方をして戦っているとは魔竜の誇りはどこへ行ったのやら……』
驚くアクセル・スピーダーに、ラビッツは呆れた様子で返した。
『ふん。ダークネスの軍門に下るよりは遥かにマシだと思うが?』
『なっ!?ダークネスの軍門に下った!?ラビッツ、それは本当か!?』
アクセル・スピーダーが、慌ててラビッツに尋ねる。それに対して、ラビッツは少し顔を上げてドヤ顔でニヤついた。
『そうです。今の我は、ダークネス八武衆の一柱!ビッグラビッツワンだ!』
アクセル・スピーダーに対しても、ラビッツは宣言した。
あれだけダブル・ジョーカーにバカにされても、その異名は使うのか、ビッグラビッツワンさんよ……。
『お前が、ダークネスの配下に?……つまり、ダークネスのサモンドスレイヴという事か?』
『そういう事ですな』
『……天才と呼ばれたお前も、堕ちたものだな』
アクセル・スピーダーが、悲しそうにつぶやいた。ダブル・ジョーカーと違って、完全な敵としての再会に、アクセル・スピーダーも悲しいみたいだ。
あと、ダークネス側についた事に若干哀れんでいる?
『堕ちた?むしろ、我は神の使徒としてランクアップしたのですよ!見なさい!元王もあなたをも超える、我の姿を!』
アクセル・スピーダーの哀れみを、ラビッツは一笑に伏した。
あー、ダブル・ジョーカーは緑と黒の二色。アクセル・スピーダーは、赤青黄色の三色。ラビッツは、それを超える黒白オレンジ紫の四色カラー。確かに、超えてるわ。
いや、ドラゴンって体の色が多い方が強いの?
『いや、別に色が多いから強いわけではなかろう……』
『色の多さで勝てるなら苦労はしねえぞ?』
さすがに、ダブル・ジョーカーもアクセル・スピーダーもツッコミを入れていた。
『フン!その力を、今ここで見せてあげましょう!』
ラビッツが、両手を前に出した。その手の前に、マーブル模様の光の玉が発生する。これは、もしかして四つの力を一つに合わせた必殺技では!?
『なんだ、あの技は!?』
『恐らくは、ダークネスからもらった力を一つにした、必殺技だろうよ』
『なるほど。つまり、ダークネスの技だって事だな』
アクセル・スピーダーまで、鼻で笑っていた。やっぱ、それを聞いたら、あの力は借り物の力って思っちゃうよな。
『ストッパーよ。王城のガードを頼むぞ?』
ダブル・ジョーカーも、両手の間に光の玉を作り出す。ダブル・ジョーカーの必殺技である、『チャージ・ブレイク・サイクロン』だ!
『受けるがいい!『マーブル・グロスボンバー』!』
『『チャージ・ブレイク・サイクロン』!』
二人の必殺技が、王城前で激突した。その衝撃に、近くを飛んでいた魔物が巻き込まれて消滅している。
「!パーナさん!王城を守って!」
『任せて、トモヨちゃん!『サクラ・ウォール』!!』
トモヨちゃんのサモンドスレイヴ、『サクラン・ミストレス』が王城を覆うほどの桜の花びらを発生させて、壁を作り出した。
激突した必殺技は、ダブル・ジョーカーとラビッツの間で止まっていた。互いに相手を凌駕しようと、せめぎあっている。
『ほう、我と互角か!貴様にしてはなかなかだ、ラビッツ!』
『おのれ、ここまでして互角だと……!』
余裕のダブル・ジョーカーに比べて、ラビッツは悔しそうだった。ダークネスの力を使ってまでも互角にしかならないとか、その前はどれだけ差があったのか、ダブル・ジョーカーとラビッツ。
『ぬぅ!』
『おのれぇ!』
『今が互角という事は、簡単に均衡を破れるという事だな?』
アクセル・スピーダーが、アクセルレバーを引き抜いて言った。既に、アクセルレバーの先には風が渦巻いている。
『!おのれ、ストッパー!』
『『マキシマム・アクセル・グランドツアー』!』
アクセル・スピーダーが、必殺技を放った。風の玉がダブル・ジョーカーの光の玉の後押しをして、ラビッツの必殺技をぶち破る。
『ぬおー!』
二つの必殺技が一つになって、ラビッツを直撃した。王城前で、激しい爆発が起こる。
『まあ、ダークネスの力がどうだと言った所で、俺とフィリップの力をまともに受ければ一溜まりもないだろう!』
『ラビッツの不幸は、自らとダークネスの力を過信した事だな』
ダブル・ジョーカーとアクセル・スピーダーが、互いに笑い合う。
『いいや!ストッパーがいた事を読み違えただけよ!』
爆煙を弾き飛ばして、ラビッツが姿を現した。確かに、ここにアクセル・スピーダーがいた事、そのアクセル・スピーダーがダブル・ジョーカーに加勢するのは、ラビッツの想定外の要因だろう。ただ、アクセル・スピーダーのいる場所にダブル・ジョーカーを吹っ飛ばしたのはラビッツなんだけどな。
そして、現れたラビッツは最初に現れた時の黒一色の姿に戻っていた。
『ふむ、例の四色は時間切れか。まあ、でなければ最初から四色の状態で姿を現していたであろうからな。想定通りだ』
あのラビッツの四色フルパワーは、使用に時間制限があるらしい。そりゃ、制約が何も無いなら最初から四色で来るわな。様子見する意味無いし。
『おのれ……』
ラビッツは、歯軋りをして自分の体を見つめた。あの黒い体色が、ラビッツの基本体色らしい。つまり、重力操作が基本的な能力か。
ふ、とラビッツは視線を動かした。その視線の先には、王城のセンターステージ。今は桜の花びらの壁が作られていて見えないけど、その向こうにはユギカザさん達がいる。
『こうなれば、せめて人間の王だけでも……』
ラビッツが、小さくつぶやく。
ダークネス汁の入った瓶はもう無いみたいなので、ラビッツもダブル・ジョーカーを倒す事は諦めたらしい。それならば、元々の使命の人間の抹殺を優先しようというのだろう。
とはいえ、そんな事ダブル・ジョーカーとアクセル・スピーダーがさせるわけないじゃん。その二人を、突破できると思ってんの?
その時、上空から光の柱が下がってきた。光の柱が、ラビッツだけを包み込む。
『!』
『ラビッツ!?』
『これは……!』




