第52話
オッサンの陰謀が暴かれた!と思ったら、なんとトモヨちゃんがサモンドスレイヴを召喚してきたよ!あの子も、召喚士だったのだ!
あの子の隠されていた真の力こそ、このサモンドスレイヴ召喚能力だったらしい。
あの『サクラン・ミストレス』って見た目には女の人に見えるけど、桜の木の精霊だって話だから性別とかは無いのかな?
『一応、女性でいいと思うぞ?樹木の精霊とはいえ、性別もあるし寿命もある。死があるからこそ、サモンドスレイヴになる事もできるしな』
お、ダブル・ジョーカーだ。
そりゃ、そうだよな。見た目女性の中身男なんてのは、ちょっと遠慮願いたいし。
『おや?君は、確かその辺への理解もあるのではなかったか?』
ん?いや、単体でならいいけど、トモヨちゃんに憑いてるって考えると……。
『我々を幽霊みたいに言うでない!まあ、我々には彼女らがどういう形態で繋がっているのかは不明なのだから、そこを話しても仕方なかろう。話は王女に聞くといい』
こういう時に限って、来ないんだよなトモヨちゃん。
『ふむ。それでは、敵の武器を破壊して戦力を激減させたつもりだったのに、実は敵の真の力を呼び起こしただけだったどこかの救世主の話でもするかね?』
なぁに、それぇ?そんな間抜け、聞いた事なーい。
……そう言えば、カスミってのはどういうドラゴン?ダブル・ジョーカーとは、どういう関係?
『サラダバー』
あ!……ダブル・ジョーカーが、逃げたよ。
──・──・──・──・──・──・──
俺がサトシと戦っている頃、マホはミイナと高速の空中戦を展開していた。
『はぁ!』
ミイナが、黒い羽根を射出した。当然マホはそれを避けるので、目標を失った羽根は地面に落ちていってそこで爆発する。
『ミイナ!』
爆弾羽根を避けつつ、マホはミイナに接近を試みる。二人の戦いは「組み伏せてキスをした方が勝ち」という、バトル・ファイオーとはかけ離れた勝負なので、まずは接近しないとお話にならないのだ。
ミイナは、接近してくるマホに爆弾羽根を放って簡単には接近させない。
この間襲われた時に知ったけど、マホって以外に腕力あるんだよな。近付いたら抵抗できないから、ミイナも接近させないようにしてるのかな?
『この!』
マホは、鞭で爆弾羽根を打ち払うが、その一撃で羽根が爆発して鞭も千切れてしまう。その為、結局近付けずに距離を開ける。
二人の戦いは、それを繰り返していた。
『ああ、もう!爆弾邪魔!よけいな事すんな、ダークネス!!』
『私は、嬉しいですよ?直接的な腕力では私はお姉さまには敵いませんから、ダークネスさまから戴いた力のおかげで、こうやって互角に持ち込めるというのは』
『互角っつうか、こっちの方がちょっち不利だけどね……』
マホが、少し苦笑いする。
そこそこの射程距離がある鞭でも、飛び道具相手ではどうしても遠距離戦は不利だった。おまけに爆弾羽根では、落とそうとしても鞭の方が破壊されてしまう。
うーん、何か遠距離から攻撃できる魔法を渡しておけばよかったかな?
『……とは言っても、いつまでもこんな追いかけっこをしていても仕方ないですね。一応、こちらにもこの国の王を抹殺する使命はありますし』
お、ミイナも一応ユギカザさんを殺す使命を帯びてここに来た事はちゃんと覚えていたらしい。覚えていても、自分の事情を優先しているだけだな。
案外、ダークネスってろくな部下がいないのでは?
『王を抹殺?王妃様じゃなくて?』
マホは、ミイナの言葉にキョトンとしていた。
まあ、前哨戦の敗北条件を知らなければ、狙われるのはミチヨさんの方だと思ってしまうよな。やっぱり、こっち側の戦力を底上げしているのがミチヨさんだから。
『?何を言っているのです?王が殺される事が前哨戦の敗北条件じゃないですか?お姉さまも、散々狙われたでしょう?』
ミイナが、不思議そうに聞き返した。
そういえば、マホは前回大会に聖天族の女王として参加してたんだから、その条件も把握していたはずだろうに。あいつ、いちいちどっか抜けてるんだよな。
マホは、ポンと両手を打った。
『ああ、そうだったそうだった。忘れてたわ』
『お姉さまは、相変わらず適当ですね。あまりにも変わらなくて、逆に安心します』
『いや~。まあ、たいした事じゃないしさ!』
誤魔化すように、愛想笑いをするマホ。
いや、そこの所は結構重要だぞ!?その情報知ってたら、きちんと最初から護衛を着けれたんだぞ!?結果的には、うまくいったけどよ。
『そんなお姉さままで汚すなんて、人間は……!』
ミイナが、吐き捨てるように言った。
待った待った!俺は、マホを汚してなんかいないぞ!?マホからはともかく、こっちからは手は出してねえ!……キスした事に変わりないだろ!と言われれば、それは否定できないけどさ。
『あのね、ミイナ。わたしは、彼方くんには汚されてないから!むしろ、手も出せないヘタレ野郎だから!』
マホよ、それは擁護なのか?どう聞いても、俺をバカにしているようにしか聞こえないんだけど、一応擁護してくれているんだよな!?
『……そうですか。その男の名前は、カナタと言うのですか』
ミイナが、怒りの眼差しを向けてつぶやいた。それを聞いて、マホがあっと口を押さえる。
ああ、ミイナに名前を知られちゃったじゃん。あの調子じゃ、これから俺を狙ってくるんじゃないか、ミイナ?
『あちゃあ……。まあ、そうよ。わたしが初めて愛したただ一人の男の子よ。……そして多分、生涯で最初で最後のね』
観念したのか、ため息混じりにマホが答える。
そういう風に生涯ただ一人、とか言われるのは正直嬉しいんだけど、それってミイナの怒りに火を点けない?というか、火に油じゃない?
『……なるほど。では、そいつから殺せばいいのですね?』
ほらー!やっぱり、俺をターゲットに定めてるよー!
『させないわよ?彼方くんは、わたしが守るわ。たとえ、その為に何かを犠牲にするとしても、ね?』
マホは、決意を込めた目でミイナに宣言した。
その決意の目からは、俺を守る為ならかつて愛したミイナも倒すし、何なら自分自身も犠牲にする覚悟が見える。
俺だって、マホを犠牲なんてさせない。だから、ここは生き延びてくれ!
『お姉さま……。なら!ここでお姉さまを負かして、私が連れていくのみ!』
『いいえ!わたしと一緒に来てもらうわよ!』
『嫌です!』
ミイナが、爆弾羽根をまた撃ち出してきた。マホは、それを移動して避ける。
『『レストレイント・チェーン』!』
そんなマホに向けて、ミイナが右手を伸ばす。と同時に、ミイナの手首の手錠に繋がっていた鎖の切れ端が、突然増殖してマホに伸びていった。
『え!?』
鎖の増殖は知らなかったのか、マホは翼ごと鎖に巻かれて縛られてしまう。
『ちょ、何よこれ!?』
『ダークネスさまから戴いた、もう一つの力『レストレイント・チェーン』です!無限に伸びて、相手を縛り上げる無限の拘束具ですわ!』
鎖を掴んで、ミイナが叫んだ。
あの鎖は、どこまでも伸びていって敵を拘束する、『レストレイント・チェーン』という武器らしい。そして、それをミイナに与えたのがまたダークネスだと言う。
『くっ!また、ダークネス!』
『お姉さま!ちょっとだけ、お仕置きです!『ボム・フェザー』!』
身動きが取れなくなったマホに、大量の爆弾羽根を撃つミイナ。
まずい!あの状態じゃ、マホは翼でガードする事すらできない!そこに、あれだけの爆弾羽根を撃ち込まれたら……!
大量の爆弾羽根が、マホを中心にして大爆発を起こした。
マホー!
『……痛くしてごめんなさい、お姉さま。ちゃんと、帰ったら治療していただきますから』
爆発で千切れた鎖を手元に戻しながら、ミイナがつぶやく。
帰ったら、か。そこは、つまりダークネスの本拠地だという事か?そこがどこかわかれば攻め込めるんだけど、その為にマホを潜入させるわけにはいかないから、今は気にしないでおこう。
大爆発の爆煙が、爆発の激しさを物語っていた。
だが、その爆煙を割ってマホが飛び出してきた。マホは、あれだけの爆発の爆心地にいたにも関わらず、特にダメージを負っている様子が無い。見えるダメージは、それより前に受けた翼へのダメージだけだ。
『!?お姉さま!?くっ!『ボム・フェザー』!』
ミイナは、慌てて爆弾羽根を放つ。しかし、
『無駄よ!『クイーンズ・フェザー・ウィンド』!』
マホは、鞭を前に出して魔法を発動した。マンション塔での戦いの時に渡した、名の下にカードの『クイーンズ・フェザー・ウィンド』だ。いつの間にか、というか今の一瞬で入れ替えていたのか。
マホが翼を羽ばたかせると、大きな竜巻が発生して爆弾羽根を巻き上げた。そのまま、爆弾羽根は他の爆弾羽根にぶつかり、竜巻の中で爆発する。
『なっ!?』
『うりゃあ!』
マホは、一気に飛び込むとミイナの両腕を押さえ込んだ。そして、物凄い勢いでミイナに頭突きを食らわせる。
『く、あっ!』
今の頭突きに、ミイナはかなり脳に衝撃を受けたらしい。明らかに、目の前に火花が散って視界を奪われている。
そのままマホは、急降下してミイナを地面に押し倒した。
『あぐ!』
マホは、完全にミイナにマウントを取った!
うぅ……。女の子が女の子にマウントポジション取っている様子は、なんかこう……なんかね。なんか、エロいよね!
『くっ……。どうして、今の爆発を切り抜けられたんですか?腕も翼も、チェーンで縛っていたのに?』
取り押さえられたミイナは、マホに尋ねていた。さすがに、あの状態のマホが反撃できるとは思えないらしい。
実際、マホは何をやったんだ?
『ふふ。わたしのこの腰巻きは、ただの腰巻きじゃないのよ?これは、『砦をまもるよカーテン』って魔法が変化した物。これは、一定確率で全てのダメージを無効にしてしまう魔法みたい。それで、あなたの爆弾の威力はわたしには届かなかったのよ!』
マホが、ドヤ顔で説明する。
ああ!そういやあの腰巻きは、そんな効果のカードでできた腰巻きだったな。それがたまたまさっきの爆発に反応して発動、マホを爆発から守ったのか。
正直、下からスカート覗かれるのをガードする役割しか覚えてなかったわ。
『彼方くんが、わたしを守ってくれたんだよ』
『……!その、男が……』
『さあ、わたしの勝ちよ。……わたしの所に戻りなさい』
マホが、ゆっくりとミイナに顔を近付けた。このままキスをすれば、勝負はマホの勝ちになってミイナはマホの言う事を聞く事になる。
『……お姉さま』
この至近距離では、爆弾羽根を使ったら自分もダメージがを受ける。それがわかっているからか、ミイナは暴れようとしなかった。
その時、彼女達の上空が光った。
『!いけない!お姉さま逃げて!』
『へ?』
突然、ミイナが叫び声を上げた。その声に、マホはつい押さえ付ける力を緩めてしまったようだ。
『んぎ!』
『きゃ!』
マホは、ミイナのタックルを受けて突き飛ばされた。
『!ミ、ミイナ!?』
マホの前には、光の柱が立っていた。




