第2章:夢か真かⅢ
ゼロは自宅に帰り着くと、犬型ロボットを手に取り話しかける。しかし、ロボットはうんともすんとも言わない。ゼロは、バックから買ってきたパーツを取り出し、ロボットの外装を外す。
「ユオン、少し触らせてもらうぞ」
銀色の服を脱いだユオンは、かなりごちゃごちゃした内部をさらけ出す。ゼロは絶縁体で作られた手袋をはめると、ユオンの本体から真っ黒に焼け焦げた球体を取り出し、新しい物に付け替える。しっかりと取り付けられていることを確認すると、導線を取り出し、古くなった物と次々に取り替えてゆく。この間ゼロは夕食を一口も口にしていない。また、かなり時間もたっていてさっきからゼロに睡魔が襲い掛かっている。
やっとのことで全ての取り替えが終わったのだが、ベットに行く気力もなくゼロは、そのまま寝てしまった。
真っ暗で、何の音も聞こえない世界に一人の幼い少年がぽつんと座っている。
彼の周りにはおもちゃが散乱していて、彼のいる所だけ仄かな光が照らしていた。
彼はおもちゃで遊ぶこともなくただ下を向きじっとしている。時々彼は顔を上げ漆黒の世界を遠い目で見ては顔を下げていた。
突然、彼が見ていた方向に微かな光が現れた。彼は立ち上がると一生懸命その光に向かって走る。しかし、ちっとも光に近づくことはできない。それでも彼は走り続けた。呼吸が乱れ始めついに彼の足は止まってしまった。だが、まだ彼の目の先には光がある。必死になって、届きそうもない光に手を伸ばす。
すると、急に光は目を開けていられないほど強く光り彼に近づいてきた。
光は手に触れるほど近づくと次第に暗くなり消えてしまった。彼は恐る恐る目を開く。そこには、彼の手をしっかりと握っている少女がいた。
彼女は微笑み、やさしく、そしてそっと彼に声を掛ける。
「一緒に遊ぼう」
ユオンは、目覚ましが鳴っているのに起きないゼロを大きく揺さ振っている。
「んっ…………」
ゼロは、はっと目を覚まし立ち上がる。
「ユオン今何時だ!」
ユオンは呆れた様子でゼロの心に語りかける。
『大丈夫だ。いつも起きている時間だ。それよりもゼロ! いつまで私をこのままにしておくつもりだ。大体急に起きたら体に悪いといつも言っているだろう。試験は合格したのか?』
「合格した。そうそう、今日はお前にも付いてきてもらう。紹介したい人がいる。」
気づけば朝が苦手なはずのゼロがせっせと出掛ける準備をしている。リビングから出て見えなくなったゼロにユオンは強めに語る。
『ほぉー。女か? ぜひともそれは一度拝見したい。……ああ』
自由に動かない体に苛立ちユオンはその場で飛び跳ねる。
『わぁーい。わぁーい。ジャンプするだけで体のあちこちがきしむよー』
シャワーを済ませ、身だしなみを整えたゼロがリビングに戻ってきた。
「そう言うな。今できることは全てやっている」
いちいち話方を変えるなとゼロは悪態をつきながらユオンに外装をつける。
『お前にも女ができたのか。ならばもう女のふりをしなくてもよくなるんだな』
「いつお前に女のふりをしてくれと頼んだ? 性別さえないくせに、まあいいもうすぐ約束の時間だ。車に乗れ」
『はいよ』
ゼロは車を走らせ、シェイルを迎えに行く。待ち合わせ場所にはすでにシェイルが待ていた。ユオンが後部座席から顔を出し、シェイルを観察する。
『ほぉー。かなりの別嬪さんやないか!』
ユオンに黙っておけと告げゼロは車から降り、シェイルを迎えた。