第1章:夜明けⅡ
ユーバ・共和国軍教育センター第一講義室。
講義室の一番前にある大きなスクリーンの前にさまざまな勲章を付けた男が勇ましく立っている。
その男は、席に座っているゼロたちに向かって話し始めた。
「長期にわたったテスト、合格おめでとう。私はここ、軍教育センターの総合責任者ナビク・リギュラインだ」
耳障りな嗄れ声でナビクは、話しを続ける。
「晴れて君たちは、本日より共和国軍の戦闘機パイロットになる権利を得た。
これから約五年間優れた戦闘機乗りとして活躍できるようにしっかりと努力するように。
では、これで私からの話しは終わりだ。最近忙しくてな、まだ、話したいことが山ほどあるがまた今度にしよう。では、グヴェー教官、後は頼みましたよ」
ナビクが話しを終えると座っていたパイロット候補生たちは瞬時に立ち上がる。候補生からの敬礼を受け満足したナビクは、やたらとでかい勲章をジャラジャラと高らかに鳴らしながら講義室を退出した。
それと同時に候補生たちの緊張が和らぐ、しかしすぐ候補生たちに次の波が押し寄せた。ナビクにグヴェー教官と呼ばれたスキンヘッドで厳つい顔をした男が面倒臭相に候補生に話し始めたのだ。
「チッ。……早速だが明日からのことについての話だ。明日から一週間、アシスタントとなる人材を自分たちで決め、2人1組のペアを作れ。
アシスタントとは、貴様らのアシスト、つまり戦闘中での機体の調整や、バックアップ、情報処理を担う役だ。男と女のペアが一般的だが別に男同士、女同士でもかまわない。
一つ言っておくが、気の合わないような奴とは組んだりするなよ。おっと、単独、ペア無しに志願変更する奴は話しが終わった後、この場に残るように。私からは以上。何か質問は?」
グヴェーはそう言って候補生たちに睨みを利かせる。
「よし、話は終わりだ、アシスタントが必要な奴はさっさと下がれ。俺に用がある奴は前に来い」
鋭い口調で候補生たちを動かす。候補生は息をつく間もなくそそくさと動き始めた。
取りあえず講義室を出たゼロは、試験期間中に行きつけの店となった教育センター唯一のカフェに足を向けた。
今では立派な習慣となった、コーヒーを飲みながら何か考え事をするということ。今日はいつもより、大切な時間の一つとなった。
ゼロは、長時間に渡る緊張を解し、明日からのアシスタント探しについて考えていた。
友人が多い者であれば比較的簡単に見つけることができるのであろうが、ゼロには友人と呼べる者が一人としていない。
ふと、ゼロの頭にアレンが現れたが、あんな奴とはこっちから願い下げだとすぐに思い別の案を練る。しかし、すっかり冷めてしまったコーヒーを目の前に腕を組み考えても一向に良いアイディアが生まれない。ゼロは、ため息を漏らすしかなかった。