プロローグ(2)
人々はそこに1OO人ほどの研究者を送る。そして「強化人間」制作の実験が行われていたことを知り、また数多くの新しい技術も獲得した。
その中の一つにメモリーボックスと思われる物があった。研究者たちは始め技術に関する物だと考えていたが、その物の内容は、酷く辛い物だった。
無惨にも崩れゆく天に向かってそびえ立っていた超高層建築物。その瓦礫に為すすべもなく呑み込まれる人々。おびただしいほどの血飛沫。絶え間なく聞こえる悲痛な叫び声。一瞬で焼け野原と化す大地。
それは、言葉が通じなくとも伝わるメッセージだった。
技術が最終的にたどり着くところとは、災厄であるということ。
研究者たちは迷わず各国の首相にあの映像を公表した。事態を重く見た首相たちは、すぐに研究者を撤収させる。
しかし、発見当時から開発が進められていた「強化人間」作製は成功しており、すでに100人を越えていた。
完成した「強化人間」と普通の人間を比較すると、身体能力だけの向上ではなく全てにおいて向上が確認された。実験用マウスにおいての強化人間化の結果より、寿命が倍以上延びることが判明。また、脳においても向上していた。さらに、強化人間の特徴といえる高次元空間想像能力があると分かった。
始め「強化人間」について研究者たちは、軍用に作られた人間だと考えていた。しかし寿命の長さや身体的、精神的成長の遅さから判断し「強化人間」は新人類作製と考えなおされた。
そんな「強化人間」に首相たちはすべて無かったことにし、自由を与える。他の技術は環境問題によって衰退していた社会を復興させるもの意外は破棄。そして5世紀に渡って調査されたその島は、再び長い眠りにつくことになった。
「強化人間」それは、時が過ぎるごとに忘れ去られ伝説のものとなりやがて「未来人」と呼ばれるようになった……。