第3章:新たな一日の始まり
長かった休日も終わり、今日から本格的な講義が始まる。
ゼロはユオンを家に残し、いつもと変わらない時間に家を出た。列車に乗るとゼロはシェイルにメールを送る。そして、シュンブクル駅でシェイルがゼロと同じ車両に乗り込んだ。シェイルはゼロを見つけて、隣の席に座る。
「ゼロ、おはよう」
「おはよう」
二人は目を合せ挨拶をした。
「いよいよだね」
「ああ、そうだな」
そう言うとゼロは外を見つめた。
「何を見ているの?」
ゼロは視点をシェイルに戻す。
「ん? 外を眺めているだけだ」
シェイルの手を握り、再び外を眺め始めた。風景が次第に変わり軍用施設がちらほらと現れる。列車は軍教育センターの最寄り駅に着き、二人は降ると歩きだした。
センター内に入るとそれぞれの集合場所に分かれた。ゼロはこの前と同じ場所である第一講義室に向かった。席は決まっていないようなので適当に座る。少し待った後、時間通りにグヴェー教官が入ってきた。同時にゼロは立ち上がり、ほかの候補生も息をぴったりと合わせ立ち上がる。敬礼をして、グヴェーの指示で候補生たちは席に着く。
「よし。よく聞け、今日からお前たちはパートナーを決め早速、講義を受けてもらう。そこで、今からパートナーと行動してもらう。パートナーが決まっていない者はいるか? いるならば挙手しろ」
すると、数十人が手を上げた。
「まあ、こんなものだろう。決まっている者はAー63室に移動しろ。決まっていない者はC-5室に移動だ。以上。さっさと動けよ」
了解と候補生たちは返事し、出て行った。
A-63室に入ると、すでに席に二人一組で座っている者とパートナーを待っているものが前の方で集まっていた。その中からゼロはシェイルを見つけ出し、声を掛ける。
「シェイル」
「あっ、ゼロ」
二人は端末を持った教官らしき女性に登録してもらう。
「ストラウド・ゼロ。バイロス・シェイルだね。登録完了っと。そこら辺に座ってて」
二人は座って話しながら待っていると、後ろから声を掛けられた。
「シェイル、久しぶり」
振り向くとそこには背の高い女性が座っていた。
「ユミル!」
ユミルはゼロをじっと見る。
「この人は? シェイルのパートナー?」
シェイルは大きく頷いた。
「へえ~、こんなかっこいい男どこで見つけたのよぅ~」
「えっと。合格発表の帰りに寄ったカフェでユミルも会ってたんだよ」
「えっ、本当? 気が付かなかった」
シェイルはユミルの隣を見るが、そこには座っていない。
「ユミルのパートナーは?」
「トイレに行ってる。来たら紹介するね。で、紹介してよシェイルのパートナー」
「うん。彼はストラウド・ゼロ」
ゼロは、何も言わず軽く頭を下げた。どしどすと足音が聞こえてきそうな、大きくがっしりとした体付きの男がやって来た。
「何だ。まだ始まっていないのか。ユミル、そのお二人さんは友人か?」
「シェイル、この人がディオネさん」
シェイルは首を傾げながらディオネを見上げる。
「あれ。ユミルってタイプ変わった?」
「そっ、そうかな?」
「そうだよ。だっていつもスラリとした男が一番いいとか言ってたよ」
シェイル以外の三人は瞬時に固まった。ここで話す内容じゃないだろう、とゼロはシェイルを見た。ユミルさえ無反応だったのでシェイルは、私へんなこと言ったというような目でゼロを見つめてきた。
「あっ、そろそろ始まるみたいですよ」
ゼロは何とかユミルとディオネの意識を戻すことに成功した。