1章5話
佐藤という高校で初めて(サーヤも友達と言ってくれたが彼女は誰にでもそう言いそうなのでノーカン)を手に入れて高校生活初週を終えた。
放課後、佐藤と共に部室に赴くもまたもや鍵がかかっていた。
「来週からは新入生の部活動解禁もされるんだし、やっているんじゃないかな」
佐藤はそういったけれど、オレにはやっている、やっていない以外の、別の疑念が生じていた。
*****
週末は高校生活初週の疲れを癒すために二日間寝て過ごした。佐藤に入れてもらったSNSのグループチャットでは親睦会を開く話が持ち上がり近日中に開催されることが決定した。果たしてオレは誘われるのだろうか。グループに入っている人は一応全員呼ばれるのかな? 中学はグループに入っていなかったし、打ち上げなどにも呼ばれたことがなかったのでシステムがよくわからない。
無事友達もでき(一人)、新しい生活にも期待が持てるようになってきたのでなんだか楽しい気分になってきた。このまま部活にも入部し、お友達の佐藤と共に軽音に入って青春を満喫するのだ。そうだな、彼女も、できるなら欲しいかなあ。
そんな期待満々で迎えた月曜日。オレはそれまでの期待が幻想に過ぎなかったことを悟る。
月曜の五、六限は新入生が体育館に集まり、各部活動の紹介を聞く時間となっていた。部活動は強制ではなく、生徒の四分の一は部活動に所属していないらしい。
オレは野球部から始まった部活動紹介を何となく流し見しながらお目当ての軽音楽部の登場を待っていた。
紹介の順番は、運動部、文化部、音楽部の順であったため、軽音楽部が紹介される頃には六限の後半頃だ。
六限ももうすぐ終わろうとするぐらいになってやっと軽音楽部の紹介が始まる。待ちわびたぜ。オレは体育館の床に長時間座ったことで痛めた腰をさすりながら顔を上げる。
しかし、オレはステージに上がった人物を見て驚愕した。そこに立っていたのはオレの思い描いていた人物ではなかったのだ。見るからに不良であることが見て取れるほど着崩した制服、ダラけた態度。先週一週間、一度も部活動を行っていなかったことから怠慢な生徒ではないかとは思っていたのだがここまでとは思わなかった。
とはいえ、見た目で判断することは失礼だし、こう見えて実はしっかりしていたり、演奏が上手かったり、良い曲を書いたりするのかもしれない。
オレは僅かな希望にかけた。しかし、どうやらそれは叶わないらしい。
「うぃーっす。軽音っす。えっと、楽器弾いたりしてます。なんか、ガッチっていうより、遊びって感じでやってるんで初心者大歓迎です。よろっすー」
遊び、だと……。確かに高校の軽音で初心者NGは流石に無理があるので構わないが、遊びか……。彼らの態度からするに本当に遊んでそうだ。ともすれば、楽器ではなく街中で遊ぶの方ではないかとすら思わせるほどである。現にここには楽器の類はもちろんのこと、他のメンバーすらいなかった。部長とみられるチャラ男ただ一人がそこに立っている。
オレはこの高校の軽音楽部はお遊びサークルであると確信した。どうしよう。大丈夫かな。入部はおろか見学さえも躊躇われる。そもそもあの先輩のような性格は苦手だ。一緒にいるだけで緊張し、ストレスが溜まる。しまった、バンドがやりたいと思いすぎて部活内の人間関係を考えることを忘れていた。
しかし、こんなところで夢を捨てたくはない。もしかしたら案外いい人だったりするかもしれないし、自由放任型で一年生でも自由に活動できるかもしれない。佐藤も一緒に見学してくれるようだし、行ってみることにした。