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敵はサッカー部  作者: ハラ・エロ
2章 サビの直前が一番盛り上がる
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2章9話

 目が覚めた。ベッドの上に置いてあるスマホを開く。スマホのデジタル時計は、十二時直前を示していた。いつもはあと二時間ほど早く起きるのだが、昨日はかなり疲れていたらしい。そりゃそうだよな。

 

 オレは溜め込まれていた通知を確認していく。一番古いものだと昨夜二十一時頃のものもあった。どうやらお風呂から上がった後にすぐに寝てしまったらしい。脳内反省顔を開催した記憶まではあるが……。

 

 今までほとんど使ってこなかったSNSアプリを開くと百件近くもの通知が溜まっていた。昨日連絡先を交換した男子たちからだ。

 

「カラオケなう。河原、電話しようぜ」

 

「反応しろー」

 

「前に無視したのは悪かったって笑笑」

 

「おーい、起きてるかー」

 

 二次会の最中にオレに連絡をしてきたのか。時間は家に帰ってすぐくらいだ。そういえば家に帰ってからスマホをいじっていない気がする。

 

「悪い、寝てしまった」

 

 オレはみんなにそう返信した。

 

 それから他のチャットの通知も見ていく。

 

「今日、色々貶してすまなかったな笑」

 

 これは七浦さんだ。

 

「今日はごめん(謝るスタンプ)」

 

 石倉からもきていた。

 

 二人にも返信しておく。

 

「ヘーキ楽しかった」

 

 我ながら当たり障りのない返事だ。うん。

 

 あとはクラスグループに昨夜の写真が貼られていた。当然オレも写り込んでいる。なんならソロの写真もあるな。こう改めて自分の写った写真を見ると恥ずかしい。これがクラスで共有されていると思うと尚更だ。あとはオレが話しているところを映した動画もあった。辛くなるからこれは見ないでおこう。

 

 その他にもクラスメイトからいくつかメッセージが来ていたので返しておく。サーヤのものはなかった。昨日、別れ際に言いたいことは言ったからだろうか。楽観的に考えるとそういうことだな。悲観的に考えるとしたら、オレにメッセージを送る暇がなかった、気がなかった……。考えることはやめよう。

 

 チャット画面をスクロールしているとクラスメイトではない人からの通知が来ていたことに気づく。

 

「何巻まであった?」

 

 石塚からだ。そういえばライトノベルの話をしていたっけ。オレは本棚に移動して例の本を探す。石塚と話したのも昨日なのだが、昨夜の会の記憶が濃すぎるためにそれが数日も前のことのように思えてしまう。

 

 探していた本が見つかった。

 

「六巻まであった。これから読むわ」

 

 本を開いた。読んだことがある気もするし、読んだことがないようにも思えてくる。一巻から読み直そう。

 

 オレは本を読む前にダイニングに行き朝飯兼昼飯をとる。親と妹はショッピングに出掛けたようだ。歯磨きなどを済ませて部屋に戻ると数件返信が返ってきていたので返信をした。

 

 それから夕方まで本を読んで過ごす。読書に慣れていないうちは一冊を読むのに一日を要する。気がつけば七時を過ぎていた。

 

 突然、家の電話が鳴る。慌てて受話器を取ると父親からだった。

 

「携帯何で出ないんだ? まあいいや、今から家に向かう。外に食いにいくぞ。支度をしておけ」

 

 買い物が長引き、家で作る時間がなくなったのだろう。偶にそういうことがある。いつもならスマホをよく弄っているので応答するのだが、今日は本を読んで過ごしていたため長らくスマホを確認していなかった。

 

 オレは部屋着のままだったので外行き用の服装に着替えた。オレは部屋着で外出することに抵抗がないのだが、家族がうるさいのだ。特に妹。

 

 次にスマホを確認する。確かに親や妹から何件か通知が来ていた。クラスメイトからも来ている。石塚からも来ていた。

 

「そこまであるなら続巻も買っちゃいなよ 笑」

 

 いや、まあ、面白かったらいいけど、てか、続きって何巻まであるんだろう。検索してみる。十四巻まで存在していた。さらに短編集は三巻もある。

 

「いや、十四巻も多いわ」

 

 昨日、二千円も飛んだしなあ。楽しかったからいいのだけれども。オレはバイトをしていないのであまり金を持っていない。頻繁に遊びに出かけている人たちはよく財源が底を突かないものだな。

 

「中古でもいいからさ〜」

 

 石塚から返信が来た。

 

「中古じゃ作者の利益にならないだろ!」

 

 オレは返信をする。アーティストを目指す身、印税についてはシビアなのだ。

 

「真面目だね笑。僕はよく古本屋で買うよ。シリーズ物だと全部集めるのにお金かかっちゃうからさ。新巻は新品で買うけど」

 

 まあ、大量に買うとなると学生には新品に手を出しにくいよな。サブスクリプションがなかったらオレも中古ショップでCDを買っていただろう。

 

「まあ、たくさん買うとしたらきついかもな」

 

「でしょでしょ。ねえねえ、明日一緒に本を見に行かない?」

 

 石塚に遊びに誘われた。友達に買い物へ誘われるというのは初めてではないだろうか。なんかオレの友達運が最近高過ぎじゃあないのか?

 

「いつ?」

 

 ネットでの会話は顔を見合わせないとして度々批判されるが、自分の感情を悟られないということは時に有利に働くのである。今のオレの顔はニヤついていて、とても他人に見せられたものではないだろう。あ、それはいつもか!

 

「明日とか空いてる?」

 

 明日は暇だ。寧ろ暇でない日が殆どない。

 

「大丈夫。どこへいくの?」

 

「学校のある市のショッピングモールとかどうかな? 駅からバス出てるし」

 

「なるほど、そうしよう。何時?」

 

「僕は何時でも」

 

 オレはいったい何時ごろに指定するのがいいのかわからない。昼をこさないほうがいいのか、昼飯を食べ終えたあとに集合したほうがいいのかもわからん。

 

「石塚が決めてくれ。オレはいつでも大丈夫だ」

 

 石塚に決めてもらったほうがいいだろう。

 

「じゃあ、十時に駅集合で」

 

 早いな。オレがいつも起きる時間だぞそれ。まあ、仕方ないけど。

 

「了解」

 

 とにかく、明日は友達と出かけることに決まった。ワクワクするな。遠足の前夜みたいだ。何を着ていけばいいのだろうか。持ち物は……。遠足と違い、持ち物服装指定など勿論ない。お小遣いは幾らまでだろうか。オレは財布に一万円を詰め込んだ。

 

 程なくしてスマホが鳴る。先ほどマナーモードを解除しておいたのだ。妹からだった。家の前に着いたらしい。オレはスマホと読みかけの本を持って家を出た。

 

「あら、珍しいね、あんたが本を持ってるなんて」

 

 車に乗り込むと母がオレの持っている本を見てそういった。

 

「友達にオススメされて読んでるんだよ。本自体はオレが元から持ってたやつだけど」

 

「え、勇太、友達いたの?」

 

 妹が驚いた顔で聞いてくる。

 

「え、まあ、同好会のメンバーで……」

 

 同好会については家族に話してある。

 

「てか、その本表紙がキモいんだけど」

 

 ライトノベルの表紙はアニメ調のイラストになっていることが多い。この本も例外ではなくヒロインのイラストになっていた。

 

「別に中身は変なやつじゃないぞ。読んでみるか?」

 

 オレは妹に本を差し出す。

 

「いい」

 

 拒絶された。

 

「あ、そういえば、その友達と明日出かけることになった」

 

 オレは家族に明日のことを伝えておく。当然みんな驚く。

 

「「「え、どうしたん?」」」

 

 そんなハモらなくてもいいだろう……。

 

「まあ、誘われて」

 

「すごいじゃん。高校入ってからも友達の話題はあんま聞かないから心配してたんだぞー」

 

 そりゃどうも。

 

 オレは昼飯がいらないことを告げた。

 

 近くのファミレスに着き、店内に入る。満席ではなかったようで、待たずして席に座れた。注文を決め、店員に伝えるとオレはスマホを開いた。妹は両親に学校の話をしている。

 

 妹は現在中学一年生で、女子サッカー部に所属している。友達も多く、休日は部活か友達と出掛けることが多い。オレとは真反対の性格だ。

 

 オレは妹の学校の話を聞くことがあまり好きではないのでいつもこうやってスマホを弄るのだ。劣等感が起因しているのかもしれない。

 

 あれ、珍しくメールが届いているな。開くとメールの差出人は南だった。というか、南以外に教えていない。

 

「河原君へ。休日にいきなりメールごめんなさい。月曜日に行う予定の同好会のこれからについての会議だけれど、事前にスタジオなどの情報が欲しいからその点について調べてもらえないかしら。私も調べるつもりだけれど、人手は多いほうがいいわ」

 

 なるほど、同好会には部室が与えられないため、練習場所は自分たちで確保しなければならないのだ。もう来週から練習を始める気なのだろう。

 

「了解。明日、石塚と出かけるからその時に一緒に調べるわ。そうだ、お前もくるか?」

 

 人数が多いことに越したことはないだろう。石塚との共通の友達なわけだし。あいつも本読んでたし。ライトノベルを読むかどうかは知らないけれども。

 

「あら、あなたが休日に友人とお出かけなんて意外ね。ありがたいけど遠慮させていただくわ。何をするのかは知らないけれど邪魔になりそうだから」

 

「いや、大丈夫だ、本屋に行くことしか決まってないし。それに同じ同好会のメンバーだろ」

 

「わかったわ。そこまで言うのなら。でも、石塚君は同意してくれたのかしら?」

 

 オレは石塚に事情を説明した。

 

「うん。全然大丈夫だよ! 三人集まるなら秋山さんも呼んだほうがいいのかな?」

 

 石塚から許可を得られた。そして、確かに一人だけ呼ばれないのはかわいそうだ。ハブられる気持ちはオレが痛いほど知っている。

 

「確かにな、秋山の連絡先知ってるか?」

 

 同様に南にも聞く。しかし、二人とも秋山の連絡先は持っていないようだ。

 

「やはり私は遠慮しておくわ。秋山さんに悪いし」

 

 残念だけれどもそうするしかないようだ。

 

 料理が運ばれてきたので食す。食べながら、明日の件について考えていた。ふとある可能性に気づく。

 

 佐藤のチャットを開き、秋山の連絡先を知っていないか尋ねた。事情も書き添えておく。食事を終え、再度チャットを確認すると連絡先が共有されていた。本人からの許可も取れているらしい。オレは追加して挨拶と事情説明を送った。程なくして返信が返ってくる。

 

「大丈夫」

 

 それだけだった。オレは秋山の参加を二人に知らせた。そしてめでたく、同好会メンバーでの初外出が決定したのだ。

 

 別にみんなで行く必要はない。しかし、オレはみんなで出かけることを求めていた。何故だかは自分ではわからない。でも、昨日のクラスメイトとの交流により、人と関わることを恐れなくなり、また、それを求めるようになったのかもしれない。今までしてこなかった交流をこれからは積極的にしていこうと無意識に思っているのかもしれない。それは変化であり、進歩であり、同時に……。

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