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序章
長編処女作です。よろしくお願いします。
ステージの一角をスポットライトが照射した。ギターを下げたシンガーがコードストロークを始めると同時に、目の前のマイクに歌声を吹き込む。その瞬間、会場には大きな歓声が響いた。その直後、他の楽器隊も演奏を開始し、ステージ全体に光が降り注ぐ。
この空間には大きな境が存在する。光を放つもの、その光を見つめるもの。それらの境目をはっきりと感じられる。
何かに似ている。そう感じた。いつも遠くで見つめていたもの。行きたいけれど、行くことが叶わない場所。そして眩い。嫌悪の対象にもした。それでも行ってみたかった。憧れだった。
空間のボルテージは最大に達した。Bメロが終わりサビに移行したのだ。オーディオエンスの喚声がいっきに上がる。誰もがステージに注目している。
眩しい。けれど、不思議と嫌悪感は抱かなかった。いつもの胸の中で疼く黒い塊は存在感を薄め、この胸がまるで磁石の様にステージに惹きつけられる。
ああ、そうか。オレはあの上に立ちたいんだ。
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