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9 Aさん、ステータスをみる

「王国ホテルから、当ギルドに仮申請書が提出された」

 冒険者ギルド“ルングラード”支部に集められた、カッパーチョークの皆さん。

 この荘園にいる支部長も、ヒエラルキーとしては“シルバーチョーク”ほどの冒険者である。

 地域によっては、銀の首輪チョークが平均という地も少なくはないが、この王国での平均とは、銅=カッパーチョークの事なのだ。


「ここ数年では珍しいな、ホテルを介して申請されるとは」

 ――俺は、冒険者になる!――なんて言い出す連中は、その足でギルドの門を叩き、現実を知って早期引退するものである。

 これしか仕事がなかった時期と比較すれば、今世の治世は職の方があふれている状況だ。

 雇用主は“人手不足”と嘆き、雇用される側は“仕事がない”と嘆くのだ。

 後者の場合は、自身のステ面を過大に評価したうえで、()()()()仕事がないと言って、嘆いているだけに過ぎない。

 が、王国ホテルのコンシェルジュから申し込まれた、仮契約申請は彼の人物鑑定結果を添えてあるものだ。

「この評価が正しければ...」


「いきなりシルバーチョークも?!」


「いや、馬鹿な!!!」

 集められたカッパーの方々が難色を示す。

 王国ホテルのコンシェルジュに、評価されるようなステ―タスはそうはいない。

 例えば、今、この場にある冒険者とて高評価は難しいだろう。



 まず、私は“教会”に足を運んだ。

 なんとかクエストとかいうトカゲのでかいのを倒すゲームでは、冒険のために()()さまから、路銀と武器とか防具とかくれるイベントがあった。私の場合はそれがデルタだ。

 Dから貰った支度金で装備を買いあさり、まず世界を体感する。

 おそらく情報収集なら、こういうのが一番手っ取り早い。

 信用を積んで、多くの情報を私に集めるようにすれば――顔がほころぶ。


「いらっしゃいませ」

 本日は何をお求めですか――受付のお姉さんが訪ねてきた。


 あれ、何しに来たんだっけ。

 ロールプレイングゲームの醍醐味といえば、王宮と教会だ。

 が、私のような身分の者が行って再び捕まらないで済む場所としてならば、教会しかない。

「すみません、ステータスの確認を...お願いします」



 ステータスは、本来、個人情報に配慮され、本人以外は、特定の人物しか見ることができない。

 特定とは、人物鑑定士や、ホテルのコンシェルジュ、教会の司祭とかそういうのだ。

 受付のお姉さん――「お金取りますよ?」と、訝しげられた。

 さいしょは私も“いいですよ”と、答えてみたが――「すみません、永続的に確認できるようなスキルとかありませんか?」とのやり取りも煙たがれた。


「ステータスは、生まれ持ったスキルのひとつですし...おそらく今、詠唱となえても発動しないという話であるならば、教会の()()を受けてみたら如何でしょうか?」


「それは?」

 次に、私が訝しむ。

 なんとなく言っていることは理解できるけど。

「まずは実践、あるのみですよ」

 教会のヒエラルキーで下っ端の修道女さんが私の手を引いてくれた。


 女性エスコートとなると、あれか?! 沐浴のあとに絹の衣で身を包み、神の()()とかなんとかを受ける、それだろうかと――私は洗礼用の取水所で服を脱ぎ始める。

 教会に痴女現るだ。

 慌てて、修道女さんが私を止めてくれた。

 トランクスを脱ごうとしたところだが、重力に引かれるおっぱいを出す前に止めてほしかった。


 修道女さん曰く――かわいらしい乳首だったので()()見惚れてましたとか。


「まさか、脱がれるとは思いませんでした」


「私も、沐浴させられるのかと」

 互いに行き違いがあったようだ。

 耳元で、修道女さん――「お姿に似合わず、下の方は薄いのですね」――だ。


 見られてるじゃん。

 結構、見ててとめたんかーい!

「あ、いえ...」

 なんていえば、いいんだ?


「洗礼は、この聖水を」


「飲めばいい」


「ちょっと早まらないでください。その前にせっかちですね!」

 おでこを叩かれた。

 修道女さんの濡れた手が叩かれた、額を再強襲する。

 何か光ったような気がした。


 あ、私の体が光ったのだ。

「これで“ステータス”と詠唱となえてみてください」


「スタータス!」

 私の言葉に呼応して、目の前にさしずめ、()()()()のようなウェアラブル危機を通したホログラム映像が出現した。

 その映像が私だけにしか見えていないことに気が付くまでしばらく時間がかかった。


----------------------------

種族:ヒューマン 部族:なし 性別:女性

誕生日:4月20日(地球時間/9月9日~10日頃)

加護精霊

 ヨルムンガンド

職業:傭兵(レベル75) 二つ名:死神

ユニークスキル

 魔眼/キュベレイ

【スキル】

 取得なし

【取得可能スキルポイント】

 99999999 pt.

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 な、なにコレ?!

「どうですか、ちゃんと見えてますか?」

 この一言で、私の見ていたものが、外の人たちに見えていないことを知る。


----------------------------

【装備一覧】

 ナイフ・ダガー(武器レベル57)/品質レア 業物わざもの認定 売値:金貨20枚

 ナイフ・ダガー(武器レベル55)/品質レア 業物わざもの認定 売値:金貨17枚

 ナイフ・ダガー(武器レベル58)/品質レア 業物わざもの認定 売値:金貨26枚

 ナイフ・ダガー(武器レベル51)/品質レア 業物わざもの認定 売値:金貨14枚


 9ミリ(45口径)ベレッタ・マシンピストル(武器レベル77)

 /品質レジェンド 売値:金貨220枚

 5.56ミリVHS-2/アサルトライフル(武器レベル63)

 /品質レジェンド 売値:金貨600枚 


 防弾チョッキ(防具レベル50)/品質レア 未鑑定 売値;不明


 折り畳み式ショートボウ(武器レベル80)/品質エピック 未鑑定 売値:不明

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 若気の至り。

 もしやと思って覗いたら、冷や汗しか出ない。

 ドワーフ村のババ様から冒険者必須アイテム“〇次元ポケット”で物騒な装備品を放り込んでいるのにステータスでしっかり装備していることになってる。おそらく、この世界の人に銃火器の一端も理解できないだろう。

 だからこの場合は、ダガーナイフの方に目が行くはずだ。

 これらの表記から察するに、上限は100とみる。


 そこから導かれるのは――こいつ、とんでもない化け物だ?! 認定に違いない。


 ああ、これをコンシェルジュの人も見たわけかあ。

「すみません...つかぬことをお伺いします」


「はい」


「スキルポイントって何でしょう?」

 しばらく考え込まれた。

 洗礼前から残念な子だと思われているから...たぶん、安心だろう。


 え? 何が...


「読んで字の如くですよ。スキルポイントを消費してステータスに彩りを持たせるのです。例えば、木工師であれば、木を加工するためのスキル。革細工師であれば毛皮知識とか、生物学なども必要かもしれません...あとは」


「戦士であれば?」


「得意武器ごとの操作スキルと、肉体強化スキルなどでしょうか? 私は修道女なので聖属性魔法に精通しています。魔法ともなると、知識系スキルが一番不必要になるので、取得と成長が大変なんですよね...」


「成長も?!」


「は、はい」

 勉強になるなあ。

 で、私のスキルはっと――もう一度ステータスを見る。

 うーん、何にもないんですけど。

 滝のように汗をかいている。


 もうパンツまでびしょぬれな予感。



「し、修道女シスター!! 討伐依頼です!!」

 唐突な訪問。

 冒険者ギルドからの要請のようだ。

 修道女と私の視線が交差する――「実戦してみます?」

 こりゃ、巻き込まれたクチかな?

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