30次の日の朝
そんな言い合いをした次の日の朝、私たちはトトの家でまるで何事もなかったように朝食を食べている。
トトは朝が弱く、起きてから30分間は喋らないので食卓は非常に静か。カチャカチャという食器の音だけが響いた。
……正直、ちょっと気まずい。私はそっとリリカのことを覗き込む。
「何ですの?」
「いや……」
昨日、勝負だと言っていた割にリリカの服は素朴なものだった。
ベージュ色の毛糸のセーター。黒い肌触りの良さそうなズボン。髪の毛はバレッタでまとめてある。
これは、ひょっとすると……。
「もしかして、リリカって派手な格好嫌いだった?」
「……」
図星のようである。そうか、だとしたらこんなドレス姿で描いてしまってかわいそうなことをしてたかな?
最も歴史上の姫、リリカ姫は派手なドレス以外つけている写真や絵は残っていないので、当時の私の想像力と画力では仕方なかったわけだが。
「……まぁりっちゃんは何着ても可愛いじゃない」
起きてからきっかり30分、トトは気だるげに口を開いた。
「トト、同感ではあるけどパジャマは着替えた方がいいわよ。……あとりっちゃんって何よ?」
「りっちゃん……?」
「ん、そんなんリリカちゃんのことに決まってんじゃん」
「あぁ」
確かにリリカでりっちゃん。あだ名としても妥当な感じである。
「りっちゃんですか……」
「そう。嫌だったらそうは呼ばないけど。なんか違うので」
「いえ……」
リリカもなんか嬉しそうではあるしこれはよしである。けど……。
「トト。食べ終わったらちゃんと着替えるのよ」
パジャマパーティーでもあるまいに、親睦を深める会話はまず着替えてからの方がいいと思うのだ。(本当は朝食時もね)
「ちぇ、トリーが家に来るといっつもそれなんだから」
「当たり前のことです」
全く。いくらうちの学校が私服OKだからってこればかりは理解できない。
いくらルームウェアに近いパジャマになったからと言って見る人が見れば普通に寝巻きだって分かっちゃうんだから。
執事やメイドさんたちはもう諦めたようでもはや何も言わないが、せめて親友の私だけは言ってやらないとと思うのだ。
「私もその通りだと思います」
「あ!りっちゃんまで」
リリカもそこら辺の常識はわきまえていたようで同意してくれた。助かった。
*
「ところでさ」
「うん」「えぇ」
登校中軽口を叩きあう。と言っても外のお家と学校は目と鼻の先なので大した話もできない、はずだけど……。
「2人ともカルト君のこと好きなの?」
「!」
これには驚く。トトは昔から変に勘が良かったりするのだ。
「あっ、あの……」
「そうです」
……うぅ。私がテンパってるうちに先に即答されてしまった。
「……私もよ。カルト君も私のこと好きなの」
こちらも負けじとはっきりと言う。
「おおっ」
トトはいかにも興味津々ですとばかりに手をパチンと叩いた。
「ってことはりっちゃんの方は片思いなの?」
「そういうことになりますわね……けどそれも今の間だけです」
「おーっ。てことは、アタックしますか」
「アタックしますわ」
ケラケラとさも楽しいとばかりに笑うトト。
「何がおかしいのよ。他人事だと思って」
「……いや、そうでもないけど」
トトはクスクスと笑いながら、
「今日から楽しくなりそうだと思って」
とウインクした。
……っていうか今すっごい不穏なこと言われなかった?




