03再会(1)
「それじゃあ行って来るね」
「気を付けるんだよー! 」
夜になったので、空を散歩する事にした。
いつものように近くの林まで歩いていき人気のないのを確認した後、「バサリッ!」と思いっきり羽根を広げる。
「ふぅ、やっぱり羽根をのばすと気持ちいいなぁ」
私は伸びをしながら、なんだか今日は学校でいろいろとあって精神的にちょっと疲れてしまったから、いつもより散歩する時間を延ばそうかな、なんて考えていた。
……魔法学での失態や(まぁそれは悲しいことに慣れてしまっているけど)放課後の部室でトトに変な事口走っちゃったこと…、早く忘れてしまいたいなぁ。
…まぁあんまり遅くになるとまたパパが心配しちゃうから、ちょっとだけだけど。
――前述した通りパパとママの結婚すら禁止されていたくらいだから、私の存在がバレるなんてあってはならない事なのだ。だからトトとか一部を除いて私の正体は極秘事項。
それでも今は羽を縮めて隠せるようになったからまだいい、小さい頃は部屋に隔離されて一歩も外に出られない日が続いたりもした。
「――なんにしたって、もしこんなの誰かに見られたら、大変なんだから…」
ふと、柄にもなく不安になって、私はそんな事をひとりごちる。
そしてその不安は虫の知らせだったのか、――突然に下の林の方から、「ガサリ」と葉音が聞こえた。
「――!?」
まずい!! 誰かに見られた?
……。
もう完全に音は止んだけれど、誰かるのかな…? とにかくまだ顔は見られていないはず!逃げなきゃ!!
…そのまま下に降りたら「その誰か」と鉢合わせしちゃうかも――。
…よし! 一度下から見えなくなるまで上昇して、その後少し離れた所にある森の方に降りよう!!
そう考えて私は羽根を目一杯に広げた、その時だった――。
――バッキューン!――
――けたたましい音とともに、私の羽根をナニかが掠める!! それは――……。
「なっ…!! け……んじゅう!? 」
そんな馬鹿な! この町では銃の使用は認められていないはず! 私は一瞬、ひどく混乱する。
――けれど同時に、頭のどこか冷静な部分で、相手の正体を察した!!
…この人は、おそらくモンスター狩りの人なんだ! それも違法の、もしかしたら異国からの密猟者なのかもしれない。私はモンスターと間違えられて、いや或いは間違えられていないのかもしれないけれど…それでその人は私を狩るために撃ったんだ! うん! パパもヒトガタのモンスターは狙われやすいと言っていたし、絶対に間違いないわ! けど…。
「キャー!落ちるー! あと痛いー! 」
時すでに遅し。いくら正体がわかったところで、私はもうなすすべもなく、ただただ落っこちて行くしかなかったのだった。
「―――。」
落ちてゆく。
…あぁ、こんな高さから落ちたら、きっともうダメなんだろうな。
パパにあれほど言われていたのに、自分の馬鹿さ加減が嫌になる。
きっと次に生まれてくる時も、パパの娘になるから…。ゴメンね、パパ。皆。
…さよなら!
………。
「危ない!! 」
――――。
――トスンと音がした。衝撃は、殆ど無かった。
どんどんと地面すれすれになっていくなか、私はもう目を閉じて祈るくらいしか出来なかった。なので一瞬の間、私は運良くクッションの様な物の上に落ちたのだろうと思っていた。林の中にそんなのあるはず無いのに、私ってば間抜け。
けど直ぐに違うと気付く。
人。
そう、今私は人に抱き抱えられている。いわゆるお姫様抱っこのような格好で。
「…………っ」
ずいぶん走ってきたのか、激しい息づかいと鼓動が聞こえる。
この人は……。
私は閉じていた目を開いた。
「……………カルト…さん? 」
彼を見つめる。彼…カルトさん、は少しだけ困った風に、にこりと笑った。