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ドラテン  作者: 夏目彩生
26/28

26村長の話(3)

「まずは半妖についてじゃ……」


 そう言っておばあちゃんは机に肘をついた。

 半妖と言うのは、要するに私の事だろう。

 おばあちゃんだから古い言い方をするのは仕方ないのだ。


「あまり知られている事ではないが、半妖には二種類いる。

 まず母方がモンスター(あやかし)で、父方が人のタイプ、──逆に父方がモンスター(あやかし)で、母方が人のタイプ。

 それぞれⅠ型とⅡ型と呼ばれる」

「……」


 こくりと頷く。……おばあちゃんの話だと私はⅡ型となる。


「我々が特に禁じておるのがⅡ型じゃ。何故かわかるか? 」


 と私にギロリと視線を向けるおばあちゃん。


「……母体がもたないから」


 私は何を今さら言っているのだろう? とばかりに答える。

 しかしおばあちゃんは首を横に振った。


「……それだけなら子まで殺す理由にならないじゃろうが、馬鹿娘が」


「あっ……」


 呆れたようなおばあちゃんの目線に、私は少し赤面する。そうだ。そうじゃない。

 私自身保護されていたから思い至らない……というか、怖すぎて考えないようにしていたけれど、本来ならこの村ではⅡ型の人は殺されてしまう掟だ。たとえその子が赤ちゃんだとしても。

 これって全国的にもそうだったのかな?(これも怖すぎて)今まで調べたことはなかったけれど……。


 じゃあどうして?と私はおばあちゃんの顔をちょっと涙目で見つめ返した。


「まったく。……お前の言ったそれは理由の一つに過ぎないのじゃよ。Ⅰ型とⅡ型では根本的に違うことがある」


「それって……? 」


「…………力じゃよ」


 さも恐ろしいとばかりに、おばあちゃんは自身を抱きしめながら言った。


「細かく違いを説明するとまず目が違う。Ⅰ型は人間側の目の色になるがⅡ型はモンスター(あやかし)側を受け継ぐ。

 そして当然と言えば当然だがⅠ型は母方が死ぬことは無い。もっとも交わると力を失うのはどちらも違わないが……。

 そしてやはり一番の違いはその力、能力なのじゃよ。Ⅰ型は全く力を失った母方からの能力をそのまま受け継ぐ。失った母方の能力はほぼそのままに、体の作りは人間寄りに産まれるので、寧ろ人としてもモンスター(あやかし)としても無能に生を受ける。いわば出来損ないに過ぎん。たとえ父方がどれ程の魔法使いでもな。

 しかしⅡ型は……何故かはわからないがむしろ全盛期の両親よりも能力があがって産まれるのじゃよ」

「──! 」


 初耳な事ばっかりだ。両親より……? だって、だってパパは……。


 おばあちゃんは更に説明を続ける。


「そして大抵のⅡ型は気性が荒く人々を殺める者とされてきた……。だからこの村だけでなく、世界中でⅡ型の子は赤子の頃に処刑されるようになっていたのじゃよ。

 ……しかしお前には事情があったでな…………」


 その『事情』というのはママの事だろうか? 気にはなったが話の腰を折りかねないので私は口をつぐんだ。


 おばあちゃんは一瞬だけ何かを思い出すように遠い目をする。


「しかし私は楽観しておった……。

 お前は気性が荒いどころか寧ろぬけておる位だし、魔法も愚図だったと聞いていた……。

 お前の母親は魔法使いの端くれだったものの、身体が弱かったでな。もしかしたら身体を補うために自身に魔力を使いきり、お前にまわらなかったか、もしくは……神様がお前だけは、Ⅰ型に近い者にしてくれたのだと思っていたよ……」

 

 大体の話は終わったようで、おばあちゃんは深くため息をはいた。


「それでその彼女の魔法については……何か対処法をご存知ないですか? 」


 カルト君は食い入る様におばあちゃんに尋ねる。

 それで私もはっとする。確かに今の話も貴重だったけれど、問題の解決のヒントになるような事は一つも無いと気がついたからだ。


「…………」


 おばあちゃんは黙って首を横に振る。


「その魔法については聞いたことが無いわけではないのだが、あくまで伝説上のものとしてじゃ……。

 まぁいくらお前がⅡ型だと言っても神や悪魔で無い限りは使いこなせるものではないだろうな。なんであれ、暴走したということだろう。もっとも──簡単に解決する方法ならある」

「……っ」


 おばあちゃんの言葉を聞いて何故かカルト君は目を反らし黙ってしまったので、私が続きを促す。


「それって、なんです? 」


 おばあちゃんはにやりと意地悪く笑う。


「魔法の主……すなわちお前が消滅すれば良い。

 主が亡くなると同時に解けるようになっている魔法もままある。そうでなくともこれだけの膨大な魔力を要する魔法なのだからな。少なくとも魔力の供給は必須だろうて。それさえ失くなれば魔法も自ずと消え去るという訳じゃ」


 そして、なんとも救い用の無いことを言ってきたのだった。

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