25村長の話(2)
ここは長老様の家でもあり、私のご先祖様の家でもある。
「……家と言うよりは屋敷とか、旧時代の城みたいだね」
カルト君は感心したように感想を述べる。
「本当にね、私も初めて見た時はびっくりしちゃったもの」
そう言って苦笑しながら、私はこんこんとドアを叩いた。
こんこんこんこん。
──ばたん!
ひとりでにドアが開く。中にいるおばあちゃんが魔法で開けてくれたみたいだ。
「おぉ……! 」
カルト君からしてもちょっと珍しい魔法なのか、彼は感嘆の声をあげる。まぁそれでも初めてトトを連れて来た時のことを考えると、かなり薄いリアクションだけれど。……あの時のトトったらもう……。
……と、昔の話は置いておいて、どうやら入って来いってことみたいね。
「ドアが開いたってことはおばあちゃんは家にいるみたい。ちょっと入ってみましょう」
私はカルト君を手招きし、奥のおばあちゃんの部屋へと案内する。
「──なんじゃ、お前は」
……。ドアまで開けてくれたのに開口一番にそれかぁ。予想どうりというか、やっぱりおばあちゃんは明らかに迷惑そうな様子だった。
……うん、なるべくスルーする方向で頑張ろう。
「(……この人が、私のおばあちゃんよ)」
小声でカルト君に耳打ちしながら、おばあちゃんに精一杯の笑顔を向ける。……ひきつってなければ良いけど。
「突然すみません、おばあちゃん。お久しぶりです、トリィです。……あの──」
「…………」
ぎろりと射ぬかれる。うぅ、やっぱりこの人怖い。
「……長老と呼べ」
「…………っ」
そして相変わらずの突き放すような態度。
私はしょんぼりと項垂れる。
「はい、長老様……」
「──トリィちゃん……」
私の後ろ側で待機していたカルト君だったが、先程のおばあちゃんの様子が勘に触ったのか、苛立った声をあげて前の方に進んだ。
「何だ? この若者は……」
カルト君に気がついたおばあちゃんは、やはりぎろりと、彼をを見上げた。
それを、真っ直ぐに見つめ返すカルト君。
「……お友達のカルト・ベルノルト君です」
私は取り敢えず彼をおばあちゃんに、紹介する。
ピリピリとした空気が部屋中に流れた。
「……ふむ」
おばあちゃんはカルト君をひとしきりじろじろ見た後──
「あれよりは見る目があるようじゃな」
と、何だか複雑な気持ちになるような事を言ってきた。
「……それで、急に一体何の用なんじゃ? 」
「あ、はっ、はい! 」
……何だかおばあちゃんの態度が軟化した!?
そして、ようやく話を本題に移すことにしたのだった。
――――――――。
「……と言う訳で、彼女も、恐らく彼女の一部であるリリカさんも、奴らに命を狙われていて困っているのです」
……私の話しがグダグダだったのもあり、いつの間にかカルト君が代わりに状況を説明してくれていた。
獣使いという職業柄のせいなのか随分と手慣れていて、正直ちょっと格好良いなと思いながら私は二人の様子を見つめている。
「…………」
最後まで話を聞いた後、おばあちゃんは「はぁ……」と深いため息をついた。
「やっぱりな……」
そして、陰鬱に呟く。
……? やっぱり……?
「どう言うことなんです? 」
カルト君はおばあちゃんを真っ直ぐに見据えて問うた。
……おばあちゃんは暫く黙りこんだ後、
「──私の知っている限りの話はしよう」
と言って何かの古めかしい呪文を唱え、私達に魔法の椅子を出してくれた。




