24村長の話
村のルールというか、これはきっと世界中のルールなのだけれど……。
モンスターと人間の間に生まれた子供は、必ず赤ちゃんのうちに処刑されてしまう。
悲しいけれどそういう風に決まっているのだ。
──だけど私のお母さんは、この村で代々続く村長の娘だった。
そう、村長の娘……。だからこそ、私は村ぐるみで身を隠させてもらえていて、特別扱いされていたのだ。
「村長の……!?」
カルト君の眉がピクリと動く。うん、当然よね。今まいつかで話したこと無かったもの。
もしこの話が外に漏れたら、私やパパだけでなくこの村そのものが大変なことになってしまう。
なのでこれは私の秘密と言うよりもこの村の秘密で、だからこそカルト君にも今まで話せないでいた。
……だけどカルト君が体を張って私達を守ってくれると宣言してくれた以上、私は私で自分を守るためならばどんな手でも使って、私なりにベストを尽くさなくていけないと思う。
それにもう彼に対してどんな隠し事だってしたくはなかった。
そうじゃなきゃ彼の隣にいる資格すらない。そんな風にすら思えたから。
私は話を続けた。
「──私のおばあちゃんはこの村で一番の権力者でもあるの。……だからこそ世界中で禁忌とされる私も特別扱いされ、図書館で身を隠させて貰えてた。だから、今回の事でも力になってくれる可能性は、ある……と思う」
少しの沈黙の後、彼はふっと息をはいた。
「……そっか。考えてみれば理由がないわけなんて、無いもんな。あのころの僕は小さかったから、そこまで考えが及ばなかったけど──」
「間抜けだったなぁ」と彼は困ったように頬を掻いた。
「わかった。じゃあ──行こうか」
そう言ってカルト君は木から降りる。私はこくりと頷いた。
おばあちゃんの家に行く途中、私はカルト君に色々と説明を補足する。
おばあちゃんと言っても私のママの育ての親であって、その人とは血が繋がっていないこと。
その人は魔法の力でとても長生きをしていて、この村が出来た時から生きていたこと。
また魔法や古代のモンスターなどについての知識が豊富なひとなので、その辺りも力になってくれるか、ややもすれば解決法なども知っているかもしれないこと。
「なるほどね……」
それらの話を聞きながら、カルト君は逐一頷いていた。
「私のご先祖様ってね、……えーと、確かメクシード・シーバーって言って、この村をつくった魔法使いだったんだって。
それでその人は、そのメクシードさんの命で私のママやお爺ちゃんを代々手厚く面倒みてきてくれてて。……まぁ最も──」
最もそれは私のママまでの話だ。ママがパパというモンスターと結ばれてしまったことで、やっぱり色々と問題があったらしいのだ。
その為私は経済的な援助や、図書館施設人が出入りしないところで遊ばせてもらえるなどはして頂いているものの、おばあちゃん自身とは数える程しか会った事はなかった。
それにパパも私が小学生の頃まで封印されていたし、今でも毛虫のように嫌われてしまっている始末だ。
「……」
……自分で提案しといてあれだけど、私は少し不安になってきていた。
助けてくれる可能性はある……とはいったものの、それは果たしてどのくらいの可能性なのだろう?
五分五分? それとも二割程度? ……さすがに「村に迷惑ごとを持ち込んでー」と怒って、追い出されることはないと思うけども──。
「……トリィちゃん」
「……え? 」
「行こう。僕が一緒だから大丈夫だ」
言ってカルト君は笑顔で手を差し出してくれた。
…………。
……やっぱり私はどうしても考えが顔に出やすいみたい。それにカルト君もとても察しが良いから、私はいつもこういう時然り気無く彼に助けられていたんだと思い出す。私はまたちょっとカルト君に惚れ直したのだった。
「……うん、有難う」
そうして私は彼の手を握り一緒に歩き出す。……何気に手を繋いで歩くのなんて初めてだったので、お互い気恥ずかしくて若干俯きながら進んで行く。
そうして会話のないまま──私達はおばあちゃんの家の前に到着した。




