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ドラテン  作者: 夏目彩生
17/21

17説明(1)

 次の日、(と言っても一時間も寝られる時間はなかったけれど……)私はリリカとパパの目を盗んで部屋を抜け出し、外へ出る。……ちなみに真夜中にこっそりトイレで軽くメイクして、髪も結っておいたので身だしなみはバッチリだ。


 カルト君は家の近くにある電柱の前で待っていてくれた。

 なんでもどうしても今から連れて行きたい所があるんだとか。……昨日の様子だと多分何かがわかったから私に教えてくれようとしていると思ったんだけど。

 ……実際のところ、どうなのかな?


「あふ……」

「ごめん、ちょっと早すぎたかな? 」


 カルト君は心配そうに聞いてくる。


「や、そのっ……ごめんなさい。そんなことはないんだけど……! 」


 ……いけないいけない、いくら眠くたってよりにもよってカルト君の前でアクビをするだなんて! それにカルト君だってほとんど寝てない筈なのに……。

 私は「大丈夫よ! 」となるべくキリリとした表情をつくった。


「……ごめんね、放課後だとちょっと……あそこ、電気が無いから」

「……? 」


 ……カルト君は不思議なことを言う。この村で電気の無い所なんて、森か林くらいしか思いつかないけれど。そんなとこに行って二人きりでどう……──。


「……っ」


 ……一瞬、言語化もしづらいような事が頭をよぎり、慌てて頭をブンブンと振る。……私ってば、今日はデートに誘われてるわけでもないのよ! 変なこと考えて! 馬鹿!

 ……というか今のおもいっきり怪しげな挙動、カルト君におかしく思われちゃってないかな? ……思いっきり一人で頭振っちゃって、もはや奇行に近かった気もするけど。 

 ……見られちゃったかなぁ、と私は彼をちらっと横目で盗み見て──

 ……あれ?


「……カルト君。この袋はなに? 」


 私はカルト君が右手で持っている縦横30センチ程の麻袋を指さして問う。朝から何か持っていたのは気付いていたが、こうしてあらためて彼が歩いている状態で見ると、袋の大きさの割には随分重たそうで、結構な存在感に感じた。


「……着いたら解るよ」

「……」


 ……急に表情を曇らせて言うものだから、私は少し驚く。

 ……カルト君は歩みをピタリと止めた。そして上半身だけ振り向き、真っ直ぐに私を見据える。


「……トリィちゃん」

「ん? なに? 」

「先に謝っておくよ……、──ごめん」

「────」


 そう言ってまたカルト君はすたすたと歩きはじめた。

 何故だか彼の背中からは少しのもの悲しさと、どこか頑なな印象を受ける。


「…………」


 本当に、いったい、どうしたんだろう――?



 ────。


「何……これ? 」


 連れられてやって来た場所は、例の図書館の頂上だった。

 私の絵が飾ってあるところ……ところがその中のうちの、()()()()が……。


「絵の人物が……消えている? 」


 ……そう。絵は見事に背景といくつかのモンスターを残し、獣使い、大魔道師二名、リリカ姫が……綺麗に消えていたのだ。


「嘘……、こんな事って……!? 」

「……僕も理由まではわからなかった」


 けど、とカルト君は言った。……それで私も、彼が何が言いたいかおおよその見当がついてしまう。


「……絵の人物が実体化して、でてきてしまったっていうの……? 」

「……」


 こくりと、カルト君は頷いた。

 カルト君はぎゅっと右手を握りしめて、話を続ける。


「──おそらくこれはトリィちゃんの力じゃないかと、僕は思う」

「えっ……」


 確かに私の書いた絵からうきあがってきたのだから、カルト君がそう考えるのもおかしくないかもしれない。でも……。


「カルト君、私にそんな力ない。……だってこの前まで初級の魔法だって使えなかったのだもの」


 カルト君の考えは、申し訳ないがまるで検討違いなのだ。

 ……魔法が使えないなんてカルト君にも知られたくなかったし、心配もかけかねないからなるべく黙っていたかったけれど、私は恥を忍んで白状する。

 

 ──しかしカルト君は、私の話に対して予想外の反応を示した。


「……それはいつから? 」

「え? 」

「──いつから魔法が使えるようになった……? 」

「そ、その……」


 カルト君はあまりにも真剣な顔をして、私に詰め寄る。

 ……同じ真剣な顔でも二日前、告白された時とはまた違う、正直、少し怖い。

 ……私は質問の意味なんて全くわからなかったけど、彼の剣幕に圧倒されてただただ素直に答えた。

 

「……きのう。

 昨日……屋上に居たときに初めて出来たの。……多分リリカが手伝ってくれたからだろうけど……」

「────」


 ……カルト君は顎に手をあて少々考えこんだが、やがて府に落ちたと云った風に私に告げた。

 

「やっぱり……これで辻褄があう。

 ……トリィちゃん、これは小さい頃トリィちゃんが魔法で、それも超高密度な魔力で作りだしたもの達なんだ。

 ……それが精霊に近いモノなのか、限りなく人間近いナニかか、もしくは──。

 ……まだ、わからないけども。

 ──そしておそらくは、リリカ・ガーディナさんも……」

「…………! 」


 ……カルト君は、何を言っているんだろう──。

 彼のその余りにもな話に私はただただ立ち尽くすしかなかった。

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