貴方が伝えたいことは何ですかー400文字以内で描くー
400文字で描く中学生時代の出来事。
名前は架空の人物ですが、ノンフィクションに近いフィクションです。
新学期に入ると、担任の先生が感情を押し殺すように言った。
「みんな、落ち着いて聞いてほしい。昨晩、国語の中村先生が亡くなりました」
クラスに動揺が走る。突然だった。
中村先生の授業は正直あまり楽しくはなかったけれど、真面目な先生だった。授業中に珍しく「私の本が出版された」と少し照れながら話していたことを覚えている。
中村先生の本を買って読んだら、青春小説だった。失礼ながら、中年のおじさんなのに熱い心を持っていたことに驚いた。
──人は死んでも、自分が手に入れたものは何も残らないんだって。
──でも、人に伝えたことは残り続けるよ。
後になって、中村先生は既に末期ガンだったことを知った。教頭から何度も教師を辞めるように言われたけれど、頑として首を縦に振らなかったらしい。
先生が命をかけて、私たちに伝えたかったことは何ですか?
私には中村先生の生きざまが心に残って離れません。