プロローグ
逃げなければ!
『奴』から逃げ切らなければ!
ああ、ここは確か学校の裏山で…
とりあえず森の中に逃げないと…
「っぁあ!?」
…首のあたりに虫がいる感覚で飛び起きた。
夢だったようだ。
最悪な目覚めだと思う。
……よし、虫はいないな、気のせいか。
ところで、まだ夢の中なのだろうか?
◆◆◆◆
さて、数分経ったが、夢…という感じはしない。
が、明らかに現実では無いはずだ。
あり得ないだろう。自宅で寝て、起きたら森の中とか。
…でも、もしこれが夢なら異常だ。
石を見れば極僅かな傷すら見えるし、自分の肌にも細かなシワがしっかりとある。
それに、思考がこう、まとまってるというか…
なにより本能が、ここは現実だと、緊張感を持てと、言っている気がする。
「あー、そう、とりあえず、水を、探そう。」
なんでこんな場所にいるのか、ここがどこなのか、色々わからない事だらけだが、ひとまず生き残るためにやるべき事がある。
多分こういう時は、川を探せば良いはずだ。
…とは言っても、どうやって探せばいいのだろうか?
ううむ、こんなことなら母親が持ってたサバイバル関連の本を借りておけばよかった…
◆◆◆◆
体感で数時間ほど歩いてみた。
うっそうと、というほどでは無いが、非常に木が多い。
それも、幹が太いのだ。直径一メートルはあるように見える。
木同士の距離感も一メートル程度か…この森の栄養価は足りるのだろうか?
幸い、上を見上げた限りこの木は葉が少ないようで、暑苦しくは無い。
草や苔は多いから最悪これを食べるが…毒とか大丈夫だろうか?
苔に毒…あるのか?あまり聞かない気がする。
あ、あと、水分のために、独り言は極力無くしている。
◆◆◆◆
「やっと…あった…」
川だ。
腹を壊すとか考えてられない。
飲まなくては…歩き始めた時はおそらく朝だったが、もう暗くなり始めている。
よくまあ、こんなに歩き続ける事ができたものだ。
なんか、この森で目覚めてから、疲れは感じていない気がする。
喉が渇いてふらつくだけだ。問題ない。たぶん…
「はぁ…どうしたもんかなあ、これから…ここまできたら現実と認めるしかないし、それにしたって今夜はどうするか…」
眠気は、ない。空腹感も、無いようだ。
これだけ歩いて空腹感が無いとか、人間やめてるんじゃなかろうか?
「…一応隠れられる場所は作って…眠気が来るか試してみるか。」
そういえば、これだけ歩いてきたにもかかわらず、動物や昆虫を見かけていない。
熊とか鹿、猪エトセトラ、大体襲われたら勝てないだろう。
てかさ、こんなわけわからん神隠し、どうせならテンプレにしてくれませんかね?
実は異世界転生してましたー!とか、貴方には特別な能力を〜とか、あってもいいと思うんだ。
…まあ、無い物ねだりしても仕方ない。とりあえず自称基地を作ろう。
◆◆◆◆
その夜、面倒になり、ただ開けた場所で寝ていた彼は、轟音に起こされる。
それは、飛行機のような。
それは、竜巻のような。
それは、鳥の羽ばたきのような。
ああ、本能が感じる。
圧倒的な死のオーラを。
ただ、その者の気まぐれで、積み上げてきた全てが崩れ去る事実を。
逃げる事など出来ない。
隠れる場所など無い。
最善策は、ただここで、小さく蹲る事。
…どれだけ経っただろうか。
気がつけば厄災は去り、彼はただ、泣きながら助けを求めていた。
難しい…
こう、描写というか、風景や状況を文に起こすのが思ってたより難しいです。当然か。
ともかく、次回からステとか出てきます。
予定では。