08 雨の朝
08
朝起きると雨が降っていた。
尋常じゃないぐらい。
もうすぐ家の中にも水が侵入してきそうだ。
お母さんは朝早くから冷蔵庫の食材全部使って在庫一掃よと言っていた。
『もしもし? 塩田。おはよう~ 雨がスゴくて学校行けないから電話した~』
『うー? スイ? 雨?』
『塩田のとこマンションだから解んないかもしんないけど、うちはもうすぐ床上浸水だよ』
『・・・はぁ!?』
『うちはまだイイ方、TVであちこちスゴいことになってるよ』
電話の向こうでガタガタ物音がして
『うわッ! ナンだこれ!?』
『うん、だからさ、うちは前倒しで方舟に移動する事にしたの。なんで電話したんだ。繋がってよかったよ、塩田朝ダメだからサー』
『あぁ、わかった。それで農業都市でイイのか?』
『うん、そう。土の農業都市。お兄ちゃんもやっぱり一緒に行く事にしたの』
『そうか、慶さんもか』
『うん、お兄ちゃん一昨日から大学から帰ってきてなくて、なんか友達と検証実験してるって』
『検証実験って』
『もう方舟に移動した人がいてね、そこからLINEはつながるって言ってた』
『無茶するなぁ』
『あのね、手荷物扱いでペット連れていけるって。だから"こたつ"連れていけるよ。うちもしろとクロ連れてく』
『そっか、サンキューな教えてくれて』
『うん。あとねキャラクターメイキングをしなかった人も連れて行けるって』
『本当か?』
『うん、ただ連れていった人に隷属化されるんだって』
『手荷物ってそういうことか』
『でも、どうしても助けたかったらしょうがないのかな』
『死ぬよりましか、死んだ方がましかは相手次第だろ』
『あのさ、御園さんに教えてあげて?』
『なんで?』
『わたしクラスの人の連絡先知らないもん』
『あー、わかった。LINEしとく』
『うん、お願い。じゃあ方舟で会おうね』
そう言ってわたしは電話を切った。