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02城、買いました

「わ〜すごいですね。博物館ですね。」


あれから数日、『勇者の学校を始める』とマオが言い出してから特に変化の無い日々を送っている。


あのままの勢いで、「育成所なら購入してある。」とか「建設中なのだよ。」などど言い出し、

「さて、これから行くとしようか?」と、言われるのではないかとオロオロしながらも、そんな話は出で来ず、安堵あんどの日々を送るカーニャ。



「コレなんて、とてもきれいですよね、母様の肌の色に良く似ていますぅ〜。」

比較的大きな絵画の前に立ち、祖国の母を思い出してかカーニャは嬉しそうにしている。


―――――ここは立派な博物館。

王都でも有数の貴族の城。

その美術品の保管に使用されていた場所らしく、城内のいたるところに豪華な品が飾ってある。

また、街の人々にも開放されており、その一部が『博物館』として機能している、そんな場所。


きれいに整備され、柱に至る装飾のたぐいまで豪華にほどこされている。

特に古い伝説に関わる絵画や、古武器が多く飾られ、気品漂う感じさえする。



(わー。これ…兎の耳みたいだよね。

 変な形のかぶと。これ、ぴょこんって飾りがついてるよ。

 普通こんなの被って戦ったら、邪魔なだけだね。人間は変な形が好きだよね〜。)


などと、どうやら人間の作った物の形にとても興味があるようだ。

カーニャは嬉々として、飾られた品々を丹念に見て回る。


「相変わらず人間は、繊細な絵を描くね。あっ、でもこの淡い感じの色なんてとても好きだよ。」

本当は飾られた品々にはすべて事細かな詳細の書かれたプレートが添えてあるのだが…、


「あ、あっちの、ぼろぼろの剣も面白そう。」

…カーニャは興味は無いようだ。もっぱら、形や表面だけの評価で満足らしい。



そして、マオに至ってはプレートの説明どころか、飾られた品々すら興味が無い様子で、

カーニャから5.6歩の距離でだらりと両腕を下げ立っている。

時折、くるくると動き回るカーニャが視界に入ってくる風景を眺めるだけで満足らしい。



少なくとも…、この2人の来館者には『物の持つ歴史を学ぶ場所』という館側の努力は意味を成していないようだ。




「ここって、前に連れてきてもらった博物館ですよね。」



そういいながら、振り返ると、

職員らしき人物がマオに頭を下げ立ち去る姿が見えた。

マオは、くるりと振り返ったカーニャの愛らしい姿が目に入った様子で、

その場でゆったりと構えている。


(あれ?マオ様、人間に何か指示でもしていたのかな?)

いぶかしげに思いながら、マオそばに歩み寄る。


「マオ様、何かご用事がありましたか?」

(用事なら私に申し付けてくれればいいのに…。)

一応、従者としてのプライドがあるらしく、カーニャは少しすねて見せた。



「別段、特別なという用件ではないのだよ。」

とだけ答え、マオは近くにあった背もたれの無い椅子に腰掛けた。

そして、自分の隣の椅子をトントンと軽く叩く。



こちらに座りなさい。と言われていることにカーニャは気付き、そのままマオの隣に座った。




「そういえば…、ここって、マオ様のお城に似てますよね。」




「僕の城…?ああ、北の城のことだろうか?

 あれはここよりもっと古い。広さもある。だが、僕はこの手狭な感じも好ましい。」


余り建造物に興味がないのか、マオは近くの時計をちらりと見ながら口数少なく答えたように思える。


「そうですよね。マオ様のお城の方がもっと広いですよね。」

と、座った椅子がカーニャには大きかったのだろう、やはり床に足が届いておらず、ぶらぶらと揺らしながら答えた。

足を揺らすたび、赤い靴の飾りのリボンも揺れている。


(本当は、博物館も十分広いよね。

 でも、人間なんかの建物よりも、魔族の住処の方が広いって言い方が素敵だよね。)

などど、得意げに思うカーニャ。



これだけ聞いていれば、どこぞの王族の話しだろうか?と会話を耳にした人は驚くかもしれない。けれど、驚くべきは、本当に博物館ここの広さを手狭といってしまうマオの感覚。



―――しかし、マオはもともと広さや豪華さなど、余りこだわりの無い性質だった。

もちろん、物の価値も理解できる。魔王の座に居座るほどの知識と相当の目利きも持っている。

実際、配下の魔物たちから、様々な物がうんざりする程、献上品だといって送られてくる。


だが、マオにとってみれば、

『価値のある物は世界のどこかにあればいい』

『広さは足りていればそれでいい』


そんな感覚だからこそ、こだわりが無く、こんな会話が成立してしまうのかもしれない。




「これで、マオ様のお城と同じように、ふわふわ〜のベットとおやつ付のテラスなんてあったらもっといいですけど。」

カーニャは、城での生活を思い出したのか、うっとりと自分の要望をいい述べる。


「ああ、それならば心配はない。むしろカニャさん専用の部屋とキッチンを用意・・した。」


「わー、有難うござい……、」




(用意した…?)




一体何の話だろうか?と小首をかしげカーニャは考え込んだ。

ここは博物館であって、マオの所有物ではない…、はず…。


(えっ…。も、もしかして。マオ様、博物館買っちゃったとか?

 いいや、それは無いよね。いくらなんでも。それは無いよ、うん。

 で、でも、念のために確認しておいた方がいいよね?一応念のため…。)


と、何だかいや予感がして、カーニャは、恐る恐る涼しげに横に座るマオにたずねる。

「よ、用意したって、『どこ』にですか…?」


まさか『ここ』になんて返事は無いよね?っとの問いかけに、

マオは、ふうっ と一つため息をし、そして答えるのも面倒そうに口を開いた。


「何を言う、『ここ』にに決まっているだろうに?

 ここは既に僕の所有物なのだ。改築、増築し放題じゃないか。」


「………。」

(ああ…。やっぱり買っちゃってたよ。この人買っちゃってた…。)



まあ、いいや。どうせ、

『欲しい宝が飾ってあったから。』とか、

『博物館を管理してみたくなってだな。』

とかの理由に決まっている。



「それで、博物館を買ってどうするんですか?」

(まあ別に、このまま館内の職員雇っとけば問題なしだしね。)

と、楽天的な思考で簡潔させてみる。



「何を言っているのだね?

 『育成所』以外にすることは無かろうに?」






(…育成所?)






はて?育成所って何の事だっただろうか?

と、一瞬思考が停止しかけたが、数日前、マオが勇者育成を始めるといった事を思い出し、

はっ、と我に返る。


「!? 勇者を育てるって本気だったんですか!?」


「それに、マ、マオ様!!ここ、育成所じゃないですから!博物館ですから!!」

(じょ、冗談とかじゃなかったんだ。確実に着実に用意進めていたんですね…。)

(あわわわわわわ〜〜…。)

いまさら、何の話をしているのだね?といった風に見て取れるマオと慌てるカーニャ。




「ここは、勇者の資格を取った日に、購入したのだ。」




――――そうなのです、この目の前の『勇者』もとい『魔王』は、勇者資格を持っているのです。

王都に来た3年前、カーニャが少し目を離した隙に、勇者の資格をとっており…。


「何で、勇者試験なんて受けているんですか…。」

の問いかけに、

「それは何度も説明しただろうに?」

のセリフ。


「いいえいいいえ、説明なんて受けていませんが!!」

と、何度叫び出したかったことだろう…。そしてその、マオのいう説明というのが、



『ヒマだったから。』の一言…。



「………。」




「ほら、僕が勇者になって、僕を倒す!というのがとても面白そうだと思ったのだが。

よくよく考えて見れば、僕がどのように僕を倒すのだろうか?」


「なんなら、いっそのこと、僕を倒すスペシャリストを育てたほうが手っ取り早いんじゃないだろうか?という訳になるのだよ、カニャさん。」


「何言っているんですか!!

 今更、自分で自分を倒す事が不可能なんて気付くはず無いじゃないですか!!

 それに、自分を倒すスペシャリストなんて育てないで下さい!!」


もう!! っと勢いよくカーニャは椅子から飛び降り、マオの前で仁王立ちの体制をとる。

カーニャが立った事によって同じ目線になった2人。

しかし、その勢いに押される様子も無く、マオは飄々《ひょうひょう》と話し続ける。



「加え、僕なら、魔王ぼくの弱点をバッチリ教え込む事も可能というわけになるのだよ。」



「もう!! 何で貴方が自分の弱点を教えなくちゃいけないんですか!!

 それに、3年前、勇者になって、すぐさま、ここを買ったということは、

 既に、勇者を育てる気満々で王都に来たんんですね!!マオ様!!」



なんだか、胃がキリキリする…



(ああ、ごめんなさい、父さま、母さま…。私は、魔王様このひとの暴走を止めることができませんでした…。)

そのまま上を向き、部屋の天井の一点を見つめる。

きっと、きらきら輝く星でも見えているのでだろうか、ぶつぶつと現実逃避を始める。



(どうしよう…。このまま本当に

魔王様を倒す勇者育てちゃいました♪

なんて、言って帰ったら、皆になんて言われるか…。)


ぶるぶるぶる…。


(だから、私にはマオさまのお供は荷が重いって!!あれほどアレほど!

血を吐くぐらい(の勢いで)絶叫したのに!!!)



と、なにやら1人でぶつぶつと話しているカーニャの手を取り、

マオはおもむろに椅子から立ち上がった。



「では、行くぞ。カニャさんの部屋でティータイムにしよう。」


「それに、そろそろ客人の来る時間なのだよ。」

とカーニャはマオに手を引かれ、長い廊下を歩き始めた。



マオとカーニャの掛け合いは如何でしたでしょうか?

文章力のなさが悲しいです。

さて、次回とりあえず新キャラ登場です。

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狐の森
作者のゲーム作成サイト
「魔王が勇者育てました(仮)」経営ゲーム作成中です

ブログ(物語の裏設定話)はこちら<
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